異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第四章 森の精霊

第88話 新たな魔獣召喚装置、到着。その背後で静かに動き出す者たち

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ガルドリアの玉座の間――

「さっそく新魔獣召喚装置が来たか!そちの申した通りであったな。褒めて遣わすぞ!」

アークリオスが興奮気味に階下にいるアルデオリスを見た。

「お褒めに預かりありがたき幸せ」

そう言って、膝をつき、腕を胸に当てるアルデオリス。

その様子を窓際に座っているラグニアが嘲笑している――。

「しかし、思いのほか早い対応でした。何か、理由でもあるのでしょうか?」

顔を伏せたまま、アルデオリスがこう問いかけると

「オルギーのやつが召喚を急がせたいみたいだ。あやつめ!私に指図してきおったわ!」

とアークリオスがイラつきながら答えた。

「と、言いますと?」

アルデオリスが上段にいるアークリオスを静かに見上げると、続けてアークリオスが言った。

「新しい召喚装置を渡す代わりに、すぐにエルシアの森とドルムの里へ魔獣を召喚せよ。さもなければ、我が国を通って軍隊を魔族界へ向かわせる、などとぬかしおおった!」

「それぐらいの緊急事態が魔族界で起こっている……と?」

アルデオリスは少し考えるような口調で問い返した。

「あぁ、どうやら牙咆のルダルが現れたみたいだ。しかも、以前より強くなっていると!」

怒声に似た口調で答えるアークリオス。

「牙咆のルダル……ですか」

「そうじゃ。しかも、力を持った異世界人も現れたとも言っておったわ!」

アルデオリスの顔が僅かに微笑んだかのように見えた。

そして、真顔のラグニアが、突如、声を発する。

「異世界人!?一大事じゃない!」

ラグニアが話しかけてきたことに喜んで同調するアークリオス。

「おぉ、確かに大変なことだ。そなたが言うのであるから間違いない」

「……」

まるで緊張感のないアークリオスにあきれた表情でため息をつくラグニア。

「……話にならないわね」

そう言って席を立ち、玉座の間から出て行ってしまった。

その後ろ姿をあっけにとられて見ているアークリオス。

アルデオリスはラグニアが部屋を出て行くのを見届けると、

「では、私も魔獣召喚の準備をいたしましょう。よろしいでしょうか?」

と言って立ち上がり、アークリオスを見た。

アークリオスは我に返ってアルデオリスを見ると、

「おっ、おう。そうじゃな。よろしく頼む」

と返した。

「では、失礼いたします」

アルデオリスは頭を垂れ、後ろに振り向き、玉座の間の扉へ向かって歩き始めた。

しかし、その口元はわずかに上がり、その足取りはどこか力強いものが満ちていた。



アルデオリスが玉座の間を出て、長い廊下を歩いていくと、その前にはラグニアが腕を組んで立っていた。

アルデオリスは彼女の前まで歩み寄ると頭を下げる。

「オルギーの奴、何を考えているの?」

ラグニアが少しイラつきながらアルデオリスに問いかける。

「オルギー閣下には彼なりの考えがおありなのでしょう。おそらくは、ルダルとその異世界人の実力を魔獣で推し量ろうとしているのかと……」

落ち着いた口調で答えるアルデオリス。

ラグニアは目をカッと見開き、彼に詰め寄る。

「ルダルはともかく、新たな異世界人が魔物界にいるなんてどう考えてもおかしいわ!」

そんなラグニアをアルデオリスは無言で見つめ返していた。

「”異世界人”が話題に上がるってことは、”最後の選択”の転生者の可能性があるってことでしょ!?だったら、七つの大罪より……」

興奮状態のラグニアがそう言いかけた時、アルデオリスがゆっくりと落ち着いた声で遮った。

「”最後の選択”……あなた様方、異世界人の元の世界の最終兵器が使われたときのこと、ですね」

ラグニアはその言葉で我に返る。

「ラグニア様……今はまだ情報がなさすぎます。まずはできることから行うべきかと」

ラグニアは唇を噛み、視線を落とした。

「そうね。確かに情報が必要だわ……」

そんな様子のラグニアを見て、アルデオリスは穏やかに笑みを浮かべ、続けた。

「あなた様は、あのお方へ、ご連絡を差し上げてはいかがでしょうか?」

ハッとした顔となり、

「そ、そうするつもりよ!」

と少しばつの悪そうなラグニアは、アルデオリスの前をかすめると、そのまま廊下をカツカツと音を立てて歩き去って行った。

その姿をアルデオリスは見届け、わずかにほほ笑むと、気持ちを切り替えるように前を向き、そのまま歩き出した。



自部屋に着いたラグニアは、机の引き出しから紙とペンを取り出し、席に着く。

少し考えるそぶりをした彼女が手紙を書き始める。

しばらくするとペンを置き、手紙を丁寧に折る。

そして、目の前の鳥かごから小鳥を取り出し、手紙をその小鳥の脚に巻き付けた。

彼女は、その小鳥を左手の人差し指にのせ、頭を右手で優しく撫でると、

「お願いね」

と言ってほほ笑んだ。

すると、小鳥は羽ばたき、窓から外へ飛び立っていった。

そしてあるところまで飛んでいくと、その目の前の空間に入り口のようなものが現れ、その中へ小鳥が消えていったのだった。

ラグニアは、いつまでも優しいまなざしでその小鳥が飛び立った先を見続けていた――。



あたりは深い霧に包まれている――。

そこに廃寺のような古びた建物がうっすらと浮かび、一つの窓から灯りが漏れていた。

その上空に突如、空間の穴が開き、そこから小鳥が出てくると、そのまま建物へと飛んで行った。

小鳥は、灯りの漏れていた窓の淵に留まると、ククゥ、と鳴いた。

その小鳥に近づく黒衣を纏った大柄の男――その男は好青年を思わせる整った容姿の持ち主だった。

男は、小鳥を掌にのせて足についた手紙をほどき、それを広げた。

そこには――、

”異世界人、魔族界に現る。ラグニア”

とだけ記されていた。

その文字を見て微笑む男に後ろから声がかかる。

「レマルガ。ラグニアは何を言ってきた?」

レマルガが振り向くと、そこには長く白い眉毛と髭を生やした老爺が椅子に座っていた。

「どうやら、新たな異世界人が魔族界に現れたみたいだ」

と、レマルガが明るい口調で返した。

「ほう。それは面白いことになった」

その老人も眉毛で半分隠れた奥まった眼を見開き穏やかに笑う。

「ハクギョウ、そろそろ動く時かもしれないな」

ハクギョウを見るレマルガの眼が光る。

「あぁ、そうだな」

ハクギョウの奥まった眼光も鋭くなった。

「まずはその異世界人だな。さてどんな奴なのか……」

ニヤリと笑うレマルガ。

「そうすることとしよう。わしもその異世界人にはものすごく興味がある。ただ……」

ハクギョウが一呼吸置くと続けた。

「今、ラグニアまで動いてしまうと世界が動き出してしまう。彼女にはもう少しそのままでいてもらおう」

「……あぁ、わかっている」

そう言ってレマルガが窓際にいる小鳥を見る。

「そのように伝えよう……」

その言葉は、窓を越え、外の濃い霧の中を静かに伝達していくかのような余韻が漂っていた――。
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