異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第三章 咆哮の誇り ※序盤、シリアス、途中、切ない系、終盤、怒涛のカタルシス

第32話 ミィナの決意ーー交わる絆が、アマトを動かす

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診療室を飛び出したミィナの足取りに、迷いはなかった。

風が頬をかすめ、日の光が道を照らす。
ただ、胸の奥にある確かな思いが、彼女を真っ直ぐに突き動かしていた。

(今度こそ、向き合いたい。それと、伝えたい……)

そして、村外れの草原に立つひとりの青年の姿を見つける。

アマトは遠くの空を見ていた。 

「アマト様!」

その声に、アマトが振り返る。

「……ミィナ?」

ミィナはアマトの前に立ち、息を整えると、まっすぐにその目を見つめた。

「少しだけ、お時間をください。……お話したいことがあります」

アマトは軽く頷く。

「わかった」

ミィナは一歩近づき、落ち着いた声で口を開いた。

「ルノアから聞いたんです。……“アマト様から、前世の話を聞いた”って」

その瞬間、アマトの表情が強く変わった。
瞳が大きく見開かれ、眉間にしわが寄る。
まるで胸を抉られたかのような、焦りと不安が一気に噴き出す。

「……聞いたのかっ!?」

その声には、切羽詰まった色がにじんでいた。
すぐさま、彼はミィナに詰め寄ろうとした瞬間――

『待て!』

静かながらも鋭く響く声が、それを制した。
精神世界で回廊に引っかかっているゼルヴァスである。 

『落ち着け。焦るな。……おそらくミィナは、“内容”までは聞いておらん。
話したことがあったという、それだけじゃろう。ならば、呪いにはかからん』

アマトはその言葉に、しばし沈黙したまま立ち尽くす。

だが、やがて――息を深く吐き、感情をゆっくりと沈めていく。

「……そうか」

アマトはしばらくの間、ミィナを見つめていた。
静寂の中、風が草原を渡っていく。

ミィナが決意したように切り出す。

「私、アマト様のことを、もっと知りたい。
強さも、優しさも、弱さも、過去も――ぜんぶ」

その言葉が空に溶けていったとき、もうひとつの気配が立った。

『ミィナちゃんは、真剣よ』

ティアマトが答える。

『だから、あなたも、それに応える覚悟を持つべきだわ』

アマトは、その視線から逃れずに応じる。
ティアマトの目はやわらかいが、曖昧さは微塵もなかった。

『このままでは、彼女の想いを踏みにじることになる。今ここで、向き合わなければ――その後悔は、あなたの中にずっと残り続けるわ』

言葉が空気を締めつけるように重く響く。

『……同感だ』

低く落ち着いた声と共に、ゼルヴァスが言う。
彼もまた、飾り気のない厳しい表情を浮かべていた。

『お前が、ルノアの呪いに対して責任を感じるのはしかたのないことだ。
だがな――誰にも頼らず、誰にも預けず、すべて自分で抱え込む必要はない。
それは覚悟ではあるが、同時に今のお前の“弱さ”でもある』

ゼルヴァスがさらに続ける。

『お前にとってミィナがどれだけ特別かはわからん。しかし、今はあいつを信じてみるのはどうだ。この件で、良き理解者いることはお前の救いになるぞ』

アマトは、唇をかすかに噛んだ。

「……しかし、ルノアの呪いの真実を知れば、ミィナは――」

『大丈夫。ミィナちゃんなら、受け止めてくれるわ』

ティアマトの声が、そっと重なる。

『彼女はもう、あなたを真っ直ぐに見て、言ったじゃない。あなたのすべてを知りたいって。それは、強さや優しさだけじゃない。あなたが隠している傷も――その全部を、知ろうとしてるの』

(……)

アマトは、静かに目を閉じ、深く息を吸いミィナに話始める。

「それにより、聞かなければよかったと後悔することになるかもしれない。それでもいいのか?」

ミィナは、少し驚いた顔を見せるも、すぐに覚悟を決めたように目を大きく見開き、ゆっくりと頷く――。その表情には、恐れも戸惑いもなかった。ただ、信じる者としての覚悟と、受け止める者の静かな強さがあった。

「……わかった」

アマトが、まっすぐにミィナを見据え、はっきりと告げる。

「では、今起きていることを話そう……」

アマトは、静かに目を伏せていた。
そして、ゆっくりと口を開く。

「……まず、俺は、自分の“前世”を誰にも語ることができない」

ミィナの目が、かすかに揺れる。

「それを話せば……語った者か、それを聞いた者に“呪い”が降りかかる」

アマトの声は、感情を抑えていたが、その奥底に痛みが滲んでいた。

「その呪いは、“ウロボロスの痣”として現れる。体に現れたそれは、やがて呪いを実現してしまう」

「……!」

ミィナの喉が小さく震える。

「俺は……それを知らなかった。そして――ルノアに話してしまった。自分の前世を」

アマトの拳が、かすかに震える。

「その結果、ルノアの体に、痣が現れた。彼女は、呪われたんだ。俺のせいで」

風が、言葉の隙間を縫うように通り抜けていく。

「本当は、俺はこの世界でやるべき目的があった。だが今は……その前に、ルノアの呪いをどうにかしなければならない」

ミィナは、ただ静かに聞いていた。
真剣な表情のまま、言葉のすべてを受け止めるように。

「……ショックだったかもしれない。だが、それが俺の……今、抱えている現実だ」

しばし沈黙が流れる。

しかし――
ミィナは、顔を上げて、アマトをまっすぐに見た。

そして、言った。

「……確かに、ショックです。でも、それ以上に……ルノアのことを、放ってはおけません」

その声は、震えていなかった。

「それに、アマト様のせいなんかじゃありません。私も、ルノアも、自分の意思であなたに向き合ったんです。だから今度は――私も、自分の意思で、アマト様と共に立ち向かいたい。
ルノアを助けたいんです」

その決意のこもった言葉に、アマトは目を見開いた。

『こいつはいけるかもしれない――』

割って入ったのは、ゼルヴァスだった。

『“軽癒”を、ミィナに渡すべきだ』

アマトは、小さく息を呑んだ。
その提案が、静かに胸の奥に広がっていく。

『前にも言ったが、スキルが使いこなせるかどうかは、それを使うものの“意思”にかかっている。
“軽癒”の場合は、他人を救いたいという――強い意志だ』

アマトの目に映るミィナの姿――
その内に宿る揺るぎない願いを、ゼルヴァスも確かに感じ取っていた。
精神の奥底に、静かな肯定が広がっていく。

『ミィナには、それがある。そしてアマト、お前は、それを信じるべきだ。仲間として――認めることだ』

「……仲間!?」

アマトの声に、思わず驚きがにじむ。

ゼルヴァスは表情を崩さず、続けた。

『そうだ。お前は、こちらに来てから本当の意味で“仲間”として誰かを見たことがあるか?その異常な力により、どこか軽視してきたのではないか?』

「……」

『だがな、ルノアの件も、赫夜の件も――必ず、他者の力が必要になる時が来る』

アマトは目を伏せる。
そして、ふと、遠い記憶がよみがえる。

(天澄夕璃。天霧雷牙……)

いつも傍らにいた仲間たち。
傷を背負ったとき、孤独に囚われそうになったとき――誰よりも支えてくれた存在。

「……そうだったな……」

アマトは苦笑した。

「俺は……一人じゃなかった」

視線を上げ、ミィナを見つめる。

まっすぐな瞳。
揺らぐことなく、ただこちらを信じている目。

アマトは、まっすぐにミィナを見つめたまま、穏やかに言う。

「ミィナ――お前に、俺の力の一部を預けたいがいいか?」

ミィナの顔がパッと明るくなり、はっきりした声で応える。

「はい!」

その言葉を確かめると、アマトは、そっと右手を差し出した。
その手が、静かにミィナの手に触れる。
重なる手のひらから、微かな熱が伝わった。

それは魔素のぬくもりではない。
もっと、素朴で、あたたかなものだった。

「……”貸与”」
アマトは静かに目を伏せ、そっと言葉を紡いだ。

次の瞬間、淡い光が掌からあふれ出す。

その輝きは彼女の体をゆっくりと包み込み、胸元で静かに広がっていった。

風が草原を渡り、二人の間に流れる空気が、ぬくもりに変わっていく。

重なる手のひら――

それはただの“力の受け渡し”ではなく、確かな絆の証だった。

やがて光は収まり、ミィナの瞳に静かな決意の光が宿る。
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