異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第46話 ゼルヴァス視点のルダル回想 その2

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俺様の名は、魔王ゼルヴァス。

魔族界の頂点に君臨する者――今は、異世界人アマトの精神世界に佇んでいる。

この状態になってから、しばらくたつが、あの時は、さすがの俺様も面を食らってしまった。

そう、あれは、ミィナ、ルノア、エメルダの3人とアマトの魔素供給訓練をしていたときだった。


ギィィ――ッ。


突如、扉が目の前に現れ、開いたかと思うと、その先には、ルダルが倒れているではないか。

「ルダルっ!?」

俺様の口からも思わず声が漏れた。

『ルダルじゃねぇか。あいつ、あそこで何してやがる』

エメルダが状況を把握できない様子で声に出した。

その直後、ルダルの前に立ちはだかる巨体な影が目に入った。

ルノアがその陰に気づく。

『やべぇっ!エメルダ』

『おぅ。やるぞ』

ルノアとエメルダは、スライムとゴブリンの姿に変わると同時に、雷矢と土塊を放った。

(なかなかの瞬発力だ。俺様の指導のたまものだな)

我ながら自分の指導力に感心する。いや、それはさておき――

(しかし、この状況は一体……)

ふと、俺様の脳裏をかすめたのは、ルダルとの別れの時にアマトが放ったスキル”幻扉”だ。

(まさか、幻扉のしわざか!?)

次の瞬間、アマトの精神空間にあるスキルのインジケータを見る。

すると、幻扉がアクティブ状態になっているではないか!

「まったく、お前の魔素力はどうなっている!!」

あきれを通り越して、怒りに似た感情で叫んでいた。

「幻扉はただの通信手段のはずだ!それを、空間を繋ぐスキルに進化させるとは!」

これまでも、アマトの力にはあきれることが多くあったが、今回のそれは別格だ。

「そう騒ぐな。仕方ないだろ。俺がスキルを使うとこうなっちまうんだから」

「……」

「それに、そのおかげでルダルが九死に一生を得るかもしれない」

「……あぁ、確かにその通りだ」

俺様は、あきらめたように納得した。

そして、次の瞬間、

「アマト、はやくあいつを助けてやってくれ」

というと、

「大丈夫だ。ルノアとエメルダでやれる」

「なに?」

幻扉の一件で、魔獣と二人の娘の戦局を把握していなかった俺様は驚いた。

スライムとゴブリンの娘たちが、互角に、いや、優勢に魔獣を追い詰めていた。

そして――

ズッシーン!

魔獣が倒れたのだ。

「信じられん」

俺様の素直な気持ちが言葉に出た。

喜んで笑顔を向けてくるルノアとエメルダ。

その瞬間、ルダルのうめきが聞こえた。

「大変!」

ミィナがルダルへ向かって駆けていく。

そして、ミィナの”軽癒”で、みるみる傷口が回復していくルダル……。

(こいつら、どんどん強くなっているぞ)

そう、俺様は思わざるを得なかったのだ。


――


ん!?この者は一体……

俺様は、ルダルの前にある骸を目にして戸惑った。

ルダルがつかんでいる腕の太さ、屈強そうに見える脚、

誰が見ても、一目で強者であったことがわかる。

そして、不意に俺様の脳裏をかすめた――

(グレオニウスか!?)

「お前ほどの男が……」

あまりに突然のことに、俺様も同様を隠せなかった。

「知っているやつか」

アマトが聞いてくる。

「あぁ、俺様の10傑の一人、グレオニウスだ。間違いない」

「そうか」

アマトの短い返事に救われた気持ちになる。

これ以上、言葉にならなかったからだ。


――


新たな魔獣が出現した時だ。

(どうして、こんなに魔獣が出て来やがる)

俺様でさえ、連続する魔獣の出現に理解が追い付かなかった。


ルダルが吐いた言葉――

『……すまない、託していいか?』

戦士として、これほどつらい思いはなかっただろう。

(それでも、この娘たちに託す判断、あっぱれだ。ルダル)

その後、ルノアとエメルダが攻撃を続けるも、なかなか魔獣が倒れない。

(さすがに、この魔獣は強すぎるのか?)

そう思った矢先だ。

『アマト様、後は、よろしくお願いしまーす!』

ルノアがにこやかに言った。

「お、おまえら!誇りというものがないのかっ!愚か者!ルダルの覚悟はどうなる!」

あきれて、俺様が言った。

「おい、アマト。あいつらにやらせなくていいのか!」

「仕方ないだろう。勝てないって言うんだから」

と言いながら、小石を拾おうとするアマト。

『待ってくれ……』

ルダルが言う。

『私に……魔素を供給してくれないか。……私が戦う』

この申し出に、さすがの俺様もアマトに言うしかなかった。

「アマトよ、俺様からも頼む。ルダルに魔素を分けてやってくれないか」

外の世界のルダルが話し終わると、

『……わかった』

アマトの声が精神空間の映像から流れた。

(感謝するぞ。アマト)

そう素直に俺様は思った。

その後のルダルの戦いは、さすがであった。

10傑のころ以上の技の切れ味だ。

アマトの魔素のなせるものであったのかもしれない。


――

あまりに多くの犠牲だった。

「俺がお前の結界を破ってしまったせいかもしれない……」

たくさんの遺体を前に、アマトがつぶやく。

「なぁ、ゼルヴァス。俺が”恩恵”をつかったら、ここの者たちはみんな生き返るなってことはあるのか?」

アマトが、とんでもないことを聞いてくる。

「それはない。生命の生死は、世界の摂理だ。この摂理を越えた能力はあり得ない」

残念ながらこれは間違いないのだ。この世界においては、魔素が一つのところにとどまってはならない。

そうでなければ、魔素の偏りが生じて世界そのものが崩壊する。これが古くから言われ続けてきた理だ。

すると、ミィナがアマトに向かって言ってきた。

『アマト様、私もお願いがあります』

その顔は、覚悟を決めた者が醸し出す特有のオーラを放つかのようであった。

アマトが頷く。

ミィナが何も言わなくても察しがついていたのであろう。

『私に、”恩恵”を貸与してください』

アマトが静かに手をミィナに向けてかざし、

『……貸与』

と言うと、ミィナの身体を淡い光で包み込んだ。

俺様も、この光景に思わず息をのむ。

そして、ミィナが獣族の者たちに話をし始めた。

(ミィナ……何をするつもりだ?)

俺様には、ミィナの行動を予測できなかった。

ミィナが唱える。

『……”恩恵《おんけい》”』

俺様も驚いた。

損傷の激しかった亡骸がみるみる元の姿を取り戻していくことに……

『……奇跡だ……』

まさにその通りだ。

そして、これをやりのけたミィナには感服せざるを得なかった。

(ミィナよ。見事だ。褒めて遣わす)

『さあ、みなさん。最後のご挨拶を……』

獣族の者たちは、それぞれ別れの挨拶に向かった。

そして――

「ゼルヴァス、お前もだ」

アマトの言葉に、俺様は心の奥底で何かが揺れるのを感じた。

そして、グレオニウスに向かって言った。

「グレオニウス……大儀であった」
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