異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

文字の大きさ
45 / 98
幕間

第45話 ゼルヴァス視点のルダル回想 その1

しおりを挟む
俺様の名は、魔王ゼルヴァス。
魔族界の頂点に君臨する者――今は、ある理由から、異世界人アマトの精神世界に“佇んで”いる。

今日も、アマトの目を通して映し出される光景を眺めつつ、今後の策略を巡らせていた。

そんな時――

『この者……見たところ、狼種のようですな』

現実世界にいるゼルミスの声が響く。

(狼種……?)

俺様は画面に食らいつくように視線を注いだ。そして、次の瞬間――息を呑んだ。

「ルダル……なぜお前が、ここにいる……?」

懐かしき顔。
俺様が誇った“十傑”のひとり――芽胞《がほう》のルダル。
かつて異世界人との戦で、もっとも戦果を挙げた誇り高き戦士の一人だ。

だが、今目の前にいるのは、その名に似つかわしくない、ボロボロの姿。

「知っているのか?」

アマトの問いかけに、俺様は即座に応じた。

「ああ。あいつは俺様の十傑の一角。数多の戦いを勝ち抜いた男だ」

それにしても――

「……あれほどの男が、こんな姿で……何があった?」

アマトが呟く。

「ん、目を覚ましたな」

映像が続く。

『……二体の魔獣……襲われ……だ……』

ルダルの声がやっと聞き取れる程度に流れ、俺様の眉がピクリと動く。

「どういうことだ。俺様の結界が壊されてから、ポタ村の一体を合わせると、立て続けに三体出現したことになる。異常すぎるぞ」

思わず吐き捨てるように俺様は言った。

「そもそも、魔獣って何なんだ? ミィナが以前、タルタロスから転移してくるって言ってたが」

アマトの問いかけが、やけに落ち着いた調子で帰ってきやがる。

「その話は、古の神々の戦いにまで遡る……。まぁ、今度教えてやる。今はルダルが先だ」

「……あぁ、わかった」

アマトが答えたそのとき。

映像の中で、なぜか嬉しそうな顔をしたエメルダが前に出た。

「ん? エメルダが前に出たぞ。あいつ、何かやらかさないだろうな」

アマトが呟き、俺様も無意識に息を呑んだ。

その刹那――ルダルがアマトを見据えた。

「……!? こっち見たぞ?」

思わず声が漏れた。

その直後、ルダルの体が狼へと変じ、怒声を上げ、アマトに飛びかかってくる。

「手を出すな!」

俺様が叫んだその時、アマトは平然とした声で言った。

「大丈夫だ。エメルダがいる」

次の瞬間――
エメルダの拳がルダルを鎮めた。

「……なに!?」

思わず声が出た。

(あのルダルを、たった一撃で? 馬鹿な……)

俺様は信じられなかった……。

その後、ルダルは気を失って起き上がることはなかった。

―――

もう一度言うが、俺様は、決して暇潰しをしていたわけではない。
今後のために情報を収集していたのだ。

そんな中、ミィナがアマトに話しかける姿が見えた。

『アマト様、あの、ルダル様がお話がしたいと……』

アマトが短く頷き、『わかった』と返すと、ミィナは明るい笑顔を見せた。


(ふむ。この子は実にいい子だ……。魔王である俺様ですら、そう思うくらいの笑顔だ)


そして、場面が変わり、診療室に入るアマト。


ルダルがじっとアマトを見つめている。緊張感のある空気だ。

「……おいおい、飛びかかってきたりしないだろうな」

俺様は思わず身構えたが、アマトは冷静に言い放った。

「お前、部下を信じられないのか? あれは、襲ってくる目じゃない」

「そ、そんなことは当然わかっている……!」と、俺様は慌てて返したが、内心、少し冷や汗をかいていたのは否めない。

そして、ルダルの口から出た問いが、場を一気に張り詰めさせた。

『お前は、“災厄”なのか、“恩恵”なのか』

「……また単刀直入に聞いてきやがったか。あいつは昔から、そういう男だったな」

アマトは少し目を伏せ、落ち着いた声で答えた。

『……俺は、どっちでもない』

(……ほぅ。自分でもわかってないくせに、言い切るとはな。だが……その迷いのなさが、時として人を動かすのかもしれん)

そんなことを思っていると、アマトが人間界と神界へ行くことが最終目的ということを話した。

そして、ルダルが小さく呟く。

『“記憶封じの楔”か……』

俺様は思わず口を挟む。

「ルダルにはわかるのか?」

アマトが俺様に尋ねてきた。俺様は鼻で笑いながら返す。

「笑止。伊達に人間界で異世界人どもと戦っていない。俺様の十傑であれば当然の知識だ」

ルダルは、しばし何かを考えるように目を伏せた後、再び顔を上げ、笑い始めたかと思うと、

『……わかった。俺はもうお前を敵視しない。……アマト……すまなかった』

と言ったのだ。

「……さすが、ルダル。相変わらず、本質を見抜くのが早い男だ。褒めてやるぞ」

そして、ルダルが少し笑みを浮かべ、口元を緩めた。

『……それにしても、お前の魔素力は異常だな。それに、小石で魔獣を倒したそうじゃないか……あきれるばかりだ』

「まったくだ。俺様ですら理解不能な奴だ……」

ルダルの言葉にアマトが肩を軽くすくめ、小さな笑みを見せた。

―――

俺様は、例によって……。もう、いいか……。

ふと見えたのは、ルダルの背中。

「ついに……ガルテラへ戻るか」

映像の中で、アマトがぼそりと呟く。

「……あぁ、あいつなりに、けじめをつけに行くんだろう」

俺様は、鼻を鳴らして応えた。

「だが、もしかすると、つらい現実にぶつかるかもしれないぞ」

「それをすべて含めての判断なんだろう」

「……そうだな。あいつは、そういう男だ」

それにしても――

「……にしても、こいつら、ずいぶん仲良くなったじゃないか」

「……あぁ、俺の仲間は、こういう奴らだ」

アマトが、穏やかな目で仲間たちの笑顔を見ていた。
その視線を感じた俺様は、思わず黙り込む。

(仲間……か)

言葉にしなかったが、その響きが心の奥に、わずかに刺さった。

そして、ルダルがアマトに向き直り、低い声で言った。

『……もし、私がまだ生き残っていたら、今度は酒でも酌み交わそう』

アマトも、静かに、そして短く答えた。

『ああ、そうだな』

……何やら、いい雰囲気だが……

「ふっ、その時は、俺様も一緒に飲むぞ」

思わず口をついて出た言葉に、アマトが小さく笑みを浮かべ、心の中で突っ込む。

「お前、飲めるのか? その状態で……」

「笑止。俺様は、なんだってできるんだ」

その時、ルダルが背を向け、ゆっくりと歩き出す。

その後ろ姿を見送りながら、俺様は、何か言わずにはいられなかった。

「……頼む。あいつに“忘れるな。お前の後ろには俺がいつでもいる”とだけ、言ってやってくれ」

アマトが軽く頷き、低く呟く。

『忘れるな。お前の後ろには俺がいつでもいる』

その言葉が風に乗り、ルダルの背に届く。

ルダルは足を止め、少しだけ振り返り、そして――わずかに笑った。

『……不思議なものだ。今の言葉、昔、何度も聞いた覚えがある。……ありがとう、アマト。少しだけ、背中を押された気がする』

そして再び、前を向き、歩き出した。

俺様は、ルダルの背中を見つめながら、ぼそりと呟く。

「……それと、これは保険だが、ルダルに“幻扉”をかけておけ」

アマトは軽く目を閉じ、静かに呟いた。

『――幻扉』

ルダルの背が、次第に夕闇に溶けていく。

俺様は、ただその背中に向かって、心の中で呟いた。

(ルダルよ……死ぬなよ)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k
ファンタジー
お祈りメールの嵐にくじけそうになっている谷河内 新(やごうち あらた)は大学四年生。未だに内定を取れずに打ちひしがれていた。 ライトノベルの異世界物が好きでスローライフに憧れているが、新の生存確認にやってきたしっかり者の妹には、現実逃避をしていないでGWくらいは帰って来いと言われてしまう。 「スローライフに憧れているなら、まずはソロキャンプくらいは出来ないとね。それにお兄ちゃん、料理も出来ないし、大体畑仕事だってやった事がないでしょう? それに虫も嫌いじゃん」 いや、スローライフってそんなサバイバル的な感じじゃなくて……とそんな事を思っていたけれど、ハタと気付けばそこは見知らぬ森の中で、目の前にはお助け妖精と名乗るミニチュアの幼児がいた。 魔法があるという世界にほんのり浮かれてみたけれど、現実はほんとにサバイバル? いえいえ、スローライフを希望したいんですけど。  そして、お助け妖精『コパン』とアラタの、スローライフを目指した旅が始まる。

処理中です...