異界劇場 <身近に潜む恐怖、怪異、悪意があなたを異界へと誘うショートショート集>

春古年

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返してもらうわ

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妻へのプレゼントを探そうと、フリーマーケットが有ると聞きバイクで出かけた。
駐車場の壁際にバイクを止め、会場を散策していると、ふと、ある置物が目に入る。

それは、陶器で出来た少女の人形で、良い物かどうかは俺にはわからないが、妻の好みに合うモノだった。

値段を見ると、一万二千円の値札が置かれている。
「すみません。もう少し安く成りませんか?」
そうダメもとで尋ねて観ると、
「いいわ、大切にして貰えるなら1万円でどうかしら」
と、交渉が成立した。

割れない様にと、新聞紙で包まれて手渡される。
俺は、それをバックパックにそっとしまい込む。


そのまま会場を一回りした後、駐車場に戻りバイクにまたがる。
「あっ!」
不意にバランスを崩し、立ちごけしそうになる。

ガシャン!

壁際だったため、どうにか壁にもたれる事で立ちごけする醜態は避けられたが、何かが割れる嫌な音がした。

バックパックの中を確認してみる。
「ああ……マジかよ……」
さっき買った置物の右足が砕けていた。
どう見ても、簡単に直せそうにない。


俺は意気消沈して、やむなく帰る事にした。
と、交差点を右折したその時、
「返してもらうわ」
そう声が聞こえた気が……。

ドン!

その刹那激しい衝撃が全身を覆う。
視界がブラックアウトしていく……。



目が覚めると白い天井が見える。
右手に温かい感触。
妻の手の感触だ。
「良かった。やっと目を開けてくれて……」
そう、彼女は涙を流しながら微笑んでいる。

どうやら、俺は事故に遭ったってことらしい。
「なんか心配掛けちゃって、ゴメン」
そう、声を掛けたその時、激しい痛みが襲う。
「うっ!」
「あ、あなたどうしたの?」
「あ、いや、右足が痛くって。折ったのかな……?」
妻の表情が不自然に強張って曇る。

どうかしたのか妻に尋ねようとしたその時、ふと、サイドテーブルに見覚えのある置物が飾られているのが目に入る。
それは、買った時と全く同じ姿で、そこに置かれていた……。

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現在こちらの動画は有りませんが、
是非、YouTubeにて"異界劇場"とご検索下さい。
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