近世ファンタジー世界を戦い抜け!

海原 白夜

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戦後処理

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 勝利、勝利、大勝利だ!
 俺は内心でウキウキしていた。
 これまで全滅近い犠牲を常に垂れ流し続け、狂犬と呼ばれているのは敵味方の高い死傷率の高さと犠牲者の上に連なっていた、その汚名をようやっと挽回することができたからだ!

 それはつまり、北ライヒの王国盟主と言っても良いヴァロイセン王国の軍部たちに少々疎まれていた事実がある。第八師団長からはこの高い死傷者率が同胞殺しとして昇進を止められる言いがかりにされていた事実がある。

 しかし、今回の戦争は違う。2500近くの主に農民の群れを追い散らし、こちらの犠牲は下士官たちの報告によれば50にも満たないという。曰く、敵軍の破壊者は500近く。20%の犠牲でもやっぱり逃げ散ってしまうのはやっぱり敵軍の指揮統率能力の不足を大いに感じるところである。
 更に、勇敢な騎兵隊が追撃を提案。うーん、こんな雑魚ちらしに騎兵を使うのもと思いつつも、騎兵たちが手番なさそうで不満を垂れ流し、忠誠心がググンとさがってくるような音が聞こえてきそうなほどに不満を溜めいこんでいるようだったので、仕方なく追撃を許可する。
 すると、彼らは威勢よく声をあげながら、槍衾を作りながら突撃を敢行。かつてのフサーリア騎兵と比べても何ら見劣りしない華麗な突撃で敵を追い散らし、食いちぎり、戦列を噛みちぎり、そこを戦列歩兵たちが一気に食い込んで滅茶苦茶に破壊する。
 …そして、堂々と血に濡れた槍を掲げながら、歩兵たちの大歓声を受けて戻ってきた。

「うんうん、なんて理想的な要塞攻略!」
「お、思った以上に敵軍の逃げ足も遅かったですね…」
「相手は農民兵だからなあ。本質的に俺たちと違って《戦友が死んだ場合にどうするか》っていう心構えがそもそもなってなかったりする。しかも一昼夜砲撃を浴びせ続けた後だぞ?敵の精神的な消耗は逃げ足にも関わる…多面的で多元的に考えることが戦の勝敗には重要なんだ」

 前半は確かだけど、後半には若干嘘が混じっている。俺から言わせれば、多面的に多元的に考えているわけではなく、死傷者を極限にまで減らす戦いをするためには、ありったけの砲弾や物資を利用した長期的な消耗的、物量戦術が理想的であることが分かっているからこそだ。
 精神的な消耗が齎すその他の利点は、圧倒的な兵力と砲弾数の差によって優越しうる。
 どれだけ優秀な大砲を、どれだけ命中精度の高い砲手を揃えたところで、その10倍を叩きつけ続け、徹底的に敵を疲弊せしめれば…兵力差で倒れるのは敵軍だ。

 今回は、敵軍がそもそも練度や物資が俺たち以下の水準だからこそ、圧倒的な勝利を掴めただけである。
 練度と破壊力が釣り合って成される物量戦術…要するにWW2米帝の戦闘と、ソ連のバグラチオン作戦のように、それは酷く恐ろしい力を持つ。多少の精神論、防御有利の法則を蹴散らすような大戦果を生み出し得るのだ。

「これを報告書として提出する。《要塞攻略に伴う大砲の重要性》とでもしておこうか」
 論文としてまとめるのは至極当然で当たり前の内容だ。つまり、要塞攻略に必要なより高火力で長射程な野戦砲の開発、更にそれを解決するための理論として、台車を下敷きにした金属製の履帯の提案をするが…そもそも開発が可能なのか、それが分からん。

 未来人の知識なんて原則受けいられるわけがない。特に、軍隊ではそれが顕著だ。
 俺だって、信頼性皆無の新兵器を渡されるくらいなら、信頼性が高い旧型の兵器の支給を頼むだろう。
 それを守旧派だ、頑迷だと言って嘲笑うのは至極簡単なことだ。しかして、そもそも我ら軍人は兵器に文字通りの命を懸けているのを忘れてはいけない。それを守旧派といって嘲笑うのであれば、それはただの理想主義な阿呆である。

「……満足しておられないのですか?」
「いや、満足しているとも。ただ、足りないと思っていないとどうしても思ってしまうのだよ。あれがあれば、これがあれば…今の技術では不可能だと分かり切っているのだが、それでもなぁ」

 俺の部隊に割り当てられている武器や兵の充足率を見ても、それはすぐにわかる。
 兵士たちはすぐに徴兵され、部隊の割合を減らさないように充足され続けるし、兵器も消耗した分を頼めばドカドカ送り付けてくれる。更に、騎兵なんて豪華な兵種を割り当てられ、砲兵も満足に割り当てられていることを考えれば、俺が率いる旅団がいかに期待されているか…なんて鈍い俺だって理解できる。

 しかし、それと同時に、前世で学んでしまった執拗なまでの未来兵器の利便性が、その火力が、知ってしまっているからこそ…今の兵器に対して物足りなさを覚えてしまうのだ。

「閣下の理想が高すぎる…と、いうわけではありませんね。確かに大砲の飛距離がもっと伸びてくれれば、銃の射程がもっと伸びてくれれば、装填がもう少しだけ楽になれば…誰だってそう思うでしょう」
「違いない。特に銃の装填問題は深刻だ」

 せめて後装式ライフルが誕生してくれねぇかなぁと思う。弾込めする時間があまりにも長いんだよ、マジで。結果として銃剣突撃なんてモノが生まれる始末だ。ウチの部隊だけが実現できている塹壕戦術をこうも生かしきれないのは、ちょっと…なぁ?

「…所で、捕虜については如何なさいましょう?」
「処刑。ポラーブ一般ランド法に用いれば、祖国に対する反逆は死刑1択であり、反逆は名誉剥奪の上での処刑である…せめて戦死したとしてやれば、戦士の名誉は守られるだろう」
「「「………」」」
 
 レヴィーネだけではなく、俺の周りにいる大隊長たちが一斉に沈黙する。

「しかし、一兵卒にそれを任せるには少々荷が重いな。とはいえ、君たちをそのような雑事に奔走させるには少々問題がある…やはり、引き渡すのが道理であろう。一昔であれば奴隷も選択肢にあったかもしれんが…な?」
「子爵閣下、それはシャレになっていません」

 俺にとって奴隷の選択はナシだからこそジョークなのだが、どうやら周りは嫌なモノを想像してゾッとしてしまったようだ。確かに言われてみれば、連合王国の奴隷法の撤廃も結構最近だからな。言われてみりゃ、笑えないジョークだ。

「と、まぁそういうわけだ。捕虜の連行については一兵卒に任せたまえ。下士官たちには風紀の引き締めをも忘れず。後叛逆されると面倒だから後の処置について兵卒には伝えるなよ?暴動とか、脱走とかされたら面倒だ」
「「はっ!」」

 と、まぁそういうわけで。数十名の捕虜を成果としてひっとらえて、俺たちは未だに弾痕が残るとはいえ、後に東欧のパリスと呼ばれるヴァルシャワを観光した後に、ヴァロイセン王国の駐屯地に帰還するのだった。
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