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番外編ー第一次世界大戦ー
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創生歴1910年。ベルグラードで一発の銃声が轟き、ハプストリア帝国の皇太子は血濡れで倒れることになる。
これにより、ハプストリア帝国はしばらくの外交交渉を通した後にサラエボ王国に対して宣戦布告を通達、それに伴ってルーシ帝国は総動員令を発令し、それに呼応してライヒ帝国も動員令を発令、それに伴って仏軍が総動員令を布告し、かくして一回の攻勢で数十万発の砲弾が叩き込まれる国家総力戦が幕を開けたのだ。
マリーエン・ライヒ城。 ライヒ帝国東部方面軍
皮肉なことに、かつてのライヒ騎士団の本拠であり、ライヒ帝国がヴァロイセン王国だった時代に設置されていた東部方面軍——そこと全く同じ場所に本拠を構えた方面軍は、押し寄せるルーシ帝国軍の効率的な撃退を進めていた。
「———ヴェルーシ帝国は100年を経て、多少の進歩はあるだろうがそれは武器の進化を齎すだけであり、本質的に私の生きた100年の進歩を経験することは不可能であろう」
「ルーデンドルフ。また、古代の戦術家の書籍を読んでいたのか?」
東部方面軍総司令官であるヒンデンブルクがそう尋ねれば、司令部に座っている彼は顔をあげた。
「いえ、違います。預言書と現実を照らし合わせていたのですよ、総司令閣下」
皮肉交じりにそう返す彼は、エーリヒ=フォン=ルーデンドルフ。もっと過去をさかのぼれば、彼の血筋にはヴァルト=ユンガー家に属する英雄が確かに残されており、本人もそれに勝るとも劣らない資質を持つと喧伝されていた若手のホープであった。
彼のヴァルト地方に持つ500エーカーの農地を保有する地主である彼らは、工業化の波に乗って服に必要な商品作物を生産することで、ルーシ帝国の安価な農作物の攻勢を阻止、財産を守り切ることができた。
結果、何不自由ない豊かな生活を送ることができたルーデンドルフは、成績優秀で傲慢な面はそのままに、それでも貴族的な振る舞いを場合によっては行使できる上昇志向の強い将校というバタフライエフェクトが生じていたのだ。
それでも、軍拡予算を通してから東部方面軍に左遷されてしまう史実を辿ったのは、なんというか…彼の生来の優秀さと傲慢さの両方が表に出た形であろう。
戦線はポラーブ立憲王国から、ラトニエン地方、ライヒ帝国の最東端にて戦っており、多くのルーシ帝国兵が塹壕に突撃しては肉になる日々を繰り返しているのである。
そして、ルーデンドルフはたった今、エストラントのリーガまで一気に打通し、ルーシ帝国軍の北方軍の半分を包囲殲滅する計画を立案している最中だった。
「今、東部戦線には少数ですがディッケ・ベルタが配備されています。ルーシ帝国の塹壕はディッケ・ベルタの42㎝砲には耐えられません…そこを起点に精鋭歩兵を流し込み、戦線を突破して敵軍を包囲殲滅するのです。
また、ルーシ帝国の第一軍と第二軍は連携が取れていないようですので、最低限の兵力を第二軍に割り当て、一時的に大兵力を作り出し第一軍にぶつけることで勝利は確実になることでしょう」
「しかし、だ。君の唱える浸透戦術は君の御先祖様が考えた遥かに古い骨董品の戦術であろう?塹壕戦に通用するのかね?」
それは否定というよりも、確認という類の質問であった。或いは、彼の頭を洗練させるための処置でもあるだろう。
「いえ、通用します。むしろ、通用しなければおかしいのです。100年前の戦争は大兵力を国境に貼り付け、全面をカバーするような長大な戦線を持つことはありませんでした。グラウス=ユンガーが浸透戦術を唱えた時代は、動員兵力の限界から点と点の戦いが主流でした。
そのため、私の祖先が唱える浸透戦術は根本的に成立しえないのです……まるで空前絶後の規模の大戦争が発生していることを予想していなければ、誕生しえない戦術なのですよ」
「……頭の良い君が預言書と称するわけだ。君の御先祖様は未来から過去に飛んでいるのかね?」
「そんなことはあり得ませんよ。ただ、彼が私よりも幾段にも優れている…それだけの話です」
兵学校で厳重に保管されている《ユンガーの論文》は、高位軍人しかアクセスできない、ライヒ帝国…否、ヴァロイセン王国時代からの秘儀の秘儀であった。触れるのは参謀本部の作戦室というエリート中のエリートしか触れることができない古書。
この大戦争が始まってから、急遽この論文の全てがひっくり返されるような勢いで読み直され、彼の唱える消耗戦術が速やかに成立した。
本来は西部戦線派であった参謀総長であるファルケンハインも、まずは機関銃と大砲の量産と配備による大規模な殺し間を作ることを決定し、多くの兵を東部に送ったのである。
また、シュリーフェン・プランによって英軍が参戦にしたことについて、ライヒ帝国はベルギエン国境から即時に撤退して賠償金を支払うことで強引に決着させ、ベルギーの主権を守るためとして参戦する大義を失った英軍は撤退せざるを得なかったのだ。
結果、戦争は仏露と独墺の戦争に収まっており、西部戦線には大いなる余裕が生まれていた。
エランなんたらを掲げて突進してくるカエルは機関銃と砲弾の雨によってミンチになっており、消耗戦術に則って、小規模攻勢を仕掛けて、あえて敗北し、敵の攻撃を釣りだしたりする戦術も採用。
当初トントンであったキルレートは瞬く間に改善し、ブランタリア共和国軍の攻撃力は徐々に失われつつあった。
「皇帝陛下の唱える世界政策を実現するための序章です。グラウス=リッターが唱えるスラヴァ民族との決戦である三度目のターネンベルクを必ずや実現して見せましょう」
かくして、ルーデンドルフは第三次ターネンベルク作戦を指導させることで、ルーシ帝国北方戦線の第一軍を撃破殲滅することになり、二度目のターネンベルクの勝利を喧伝することになるのだが、それは本編とは関係がない話である。
————
「ユンガーの遺言書」
娘二人の中の一人をルーデンドルフ家に送り、彼に1900年になったら見せるように念押しして死去後、ルーデンドルフに受け継がれる。ユンガーの論文が具体化された状態で書き上げられており、総力戦体制の不備(食料は文民に統制させるべきなど)の意見が書かれている他、ルーシ帝国の後進国状態、地獄のような塹壕戦、シュリーフェンプランについての実行と失敗が明確に列挙されており、ルーデンドルフからは「預言書」として聖書のような扱いを受けている。
後の歴史家たちは《ユンガーは神の使いなのか!?》と呼ばれることになる《預言書》の誕生である。
後にルーデンドルフは、彼の予言書に記されていた軽戦車の1号軽戦車、後にルーデンドルフ戦車を大量に生産し、WW1のフランス軍に決定的な勝利を掴むことになるのだが、それはまた別の話。
「第三次ターネンベルク作戦」
ターネンベルクは戦場にすらなっていないが《スラブ民族に対する民族的勝利》を喧伝したどっかのバカのせいで、ルーデンドルフは御先祖様のように民族的勝利を成し遂げるぞ!とゲン担ぎをするために命名された。
多分、この世界だとターネンベルクの意味が《スラブ民族に勝利した》とか《民族・国家的大勝利》になってそう。
これにより、ハプストリア帝国はしばらくの外交交渉を通した後にサラエボ王国に対して宣戦布告を通達、それに伴ってルーシ帝国は総動員令を発令し、それに呼応してライヒ帝国も動員令を発令、それに伴って仏軍が総動員令を布告し、かくして一回の攻勢で数十万発の砲弾が叩き込まれる国家総力戦が幕を開けたのだ。
マリーエン・ライヒ城。 ライヒ帝国東部方面軍
皮肉なことに、かつてのライヒ騎士団の本拠であり、ライヒ帝国がヴァロイセン王国だった時代に設置されていた東部方面軍——そこと全く同じ場所に本拠を構えた方面軍は、押し寄せるルーシ帝国軍の効率的な撃退を進めていた。
「———ヴェルーシ帝国は100年を経て、多少の進歩はあるだろうがそれは武器の進化を齎すだけであり、本質的に私の生きた100年の進歩を経験することは不可能であろう」
「ルーデンドルフ。また、古代の戦術家の書籍を読んでいたのか?」
東部方面軍総司令官であるヒンデンブルクがそう尋ねれば、司令部に座っている彼は顔をあげた。
「いえ、違います。預言書と現実を照らし合わせていたのですよ、総司令閣下」
皮肉交じりにそう返す彼は、エーリヒ=フォン=ルーデンドルフ。もっと過去をさかのぼれば、彼の血筋にはヴァルト=ユンガー家に属する英雄が確かに残されており、本人もそれに勝るとも劣らない資質を持つと喧伝されていた若手のホープであった。
彼のヴァルト地方に持つ500エーカーの農地を保有する地主である彼らは、工業化の波に乗って服に必要な商品作物を生産することで、ルーシ帝国の安価な農作物の攻勢を阻止、財産を守り切ることができた。
結果、何不自由ない豊かな生活を送ることができたルーデンドルフは、成績優秀で傲慢な面はそのままに、それでも貴族的な振る舞いを場合によっては行使できる上昇志向の強い将校というバタフライエフェクトが生じていたのだ。
それでも、軍拡予算を通してから東部方面軍に左遷されてしまう史実を辿ったのは、なんというか…彼の生来の優秀さと傲慢さの両方が表に出た形であろう。
戦線はポラーブ立憲王国から、ラトニエン地方、ライヒ帝国の最東端にて戦っており、多くのルーシ帝国兵が塹壕に突撃しては肉になる日々を繰り返しているのである。
そして、ルーデンドルフはたった今、エストラントのリーガまで一気に打通し、ルーシ帝国軍の北方軍の半分を包囲殲滅する計画を立案している最中だった。
「今、東部戦線には少数ですがディッケ・ベルタが配備されています。ルーシ帝国の塹壕はディッケ・ベルタの42㎝砲には耐えられません…そこを起点に精鋭歩兵を流し込み、戦線を突破して敵軍を包囲殲滅するのです。
また、ルーシ帝国の第一軍と第二軍は連携が取れていないようですので、最低限の兵力を第二軍に割り当て、一時的に大兵力を作り出し第一軍にぶつけることで勝利は確実になることでしょう」
「しかし、だ。君の唱える浸透戦術は君の御先祖様が考えた遥かに古い骨董品の戦術であろう?塹壕戦に通用するのかね?」
それは否定というよりも、確認という類の質問であった。或いは、彼の頭を洗練させるための処置でもあるだろう。
「いえ、通用します。むしろ、通用しなければおかしいのです。100年前の戦争は大兵力を国境に貼り付け、全面をカバーするような長大な戦線を持つことはありませんでした。グラウス=ユンガーが浸透戦術を唱えた時代は、動員兵力の限界から点と点の戦いが主流でした。
そのため、私の祖先が唱える浸透戦術は根本的に成立しえないのです……まるで空前絶後の規模の大戦争が発生していることを予想していなければ、誕生しえない戦術なのですよ」
「……頭の良い君が預言書と称するわけだ。君の御先祖様は未来から過去に飛んでいるのかね?」
「そんなことはあり得ませんよ。ただ、彼が私よりも幾段にも優れている…それだけの話です」
兵学校で厳重に保管されている《ユンガーの論文》は、高位軍人しかアクセスできない、ライヒ帝国…否、ヴァロイセン王国時代からの秘儀の秘儀であった。触れるのは参謀本部の作戦室というエリート中のエリートしか触れることができない古書。
この大戦争が始まってから、急遽この論文の全てがひっくり返されるような勢いで読み直され、彼の唱える消耗戦術が速やかに成立した。
本来は西部戦線派であった参謀総長であるファルケンハインも、まずは機関銃と大砲の量産と配備による大規模な殺し間を作ることを決定し、多くの兵を東部に送ったのである。
また、シュリーフェン・プランによって英軍が参戦にしたことについて、ライヒ帝国はベルギエン国境から即時に撤退して賠償金を支払うことで強引に決着させ、ベルギーの主権を守るためとして参戦する大義を失った英軍は撤退せざるを得なかったのだ。
結果、戦争は仏露と独墺の戦争に収まっており、西部戦線には大いなる余裕が生まれていた。
エランなんたらを掲げて突進してくるカエルは機関銃と砲弾の雨によってミンチになっており、消耗戦術に則って、小規模攻勢を仕掛けて、あえて敗北し、敵の攻撃を釣りだしたりする戦術も採用。
当初トントンであったキルレートは瞬く間に改善し、ブランタリア共和国軍の攻撃力は徐々に失われつつあった。
「皇帝陛下の唱える世界政策を実現するための序章です。グラウス=リッターが唱えるスラヴァ民族との決戦である三度目のターネンベルクを必ずや実現して見せましょう」
かくして、ルーデンドルフは第三次ターネンベルク作戦を指導させることで、ルーシ帝国北方戦線の第一軍を撃破殲滅することになり、二度目のターネンベルクの勝利を喧伝することになるのだが、それは本編とは関係がない話である。
————
「ユンガーの遺言書」
娘二人の中の一人をルーデンドルフ家に送り、彼に1900年になったら見せるように念押しして死去後、ルーデンドルフに受け継がれる。ユンガーの論文が具体化された状態で書き上げられており、総力戦体制の不備(食料は文民に統制させるべきなど)の意見が書かれている他、ルーシ帝国の後進国状態、地獄のような塹壕戦、シュリーフェンプランについての実行と失敗が明確に列挙されており、ルーデンドルフからは「預言書」として聖書のような扱いを受けている。
後の歴史家たちは《ユンガーは神の使いなのか!?》と呼ばれることになる《預言書》の誕生である。
後にルーデンドルフは、彼の予言書に記されていた軽戦車の1号軽戦車、後にルーデンドルフ戦車を大量に生産し、WW1のフランス軍に決定的な勝利を掴むことになるのだが、それはまた別の話。
「第三次ターネンベルク作戦」
ターネンベルクは戦場にすらなっていないが《スラブ民族に対する民族的勝利》を喧伝したどっかのバカのせいで、ルーデンドルフは御先祖様のように民族的勝利を成し遂げるぞ!とゲン担ぎをするために命名された。
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