ゲームキャスターさくら

てんつゆ

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格闘ゲーム編5 ここですか?

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 私はVRゲームが大好きですがゲームセンターでコインを入れてやるゲームも家で遊ぶのとは違う楽しみ方が出来て大好きです。

 今日はお客さんの数は比較的少ない方ですが、それでもかなりギチギチにすし詰め状態になっていて通路を通るのすら大変そう。

 どうして私が怖い通路を通ってまでこのゲームセンターに来るのかと言うと――――。

「うぎゃあああああ」

 と、前方からお店に入ってきた時とは違う人の悲鳴が聞こえてきました。

 どうやら相手に完全無敵になるバグ技を使われて叫ぶ事くらいしかやる事が無くなったんだと思います。

 ――――そう。

 このゲームセンターには禁止ルールというものは存在しません。
 永久コンボ、ハメ技、バグ技、隠しボスなどが全て使用可能。

 筐体を叩いたりする人としてのモラルに関わるマナー違反は駄目ですが、ゲーム画面の中ではどんな事をしても誰も文句は言わないし、言わせない。

 この場所で価値があるのは対戦後に表示されるWINNERの文字ただ1つ。

 …………と、言う空気も無いわけでは無いですが、実は初心者向けの大会もちょくちょく開いてたりもして、新規獲得も積極的に行っている初心者にも優しいゲームセンターになっています。

「所で桜はなんのゲームやりに来たの?」
「クイーンオブファイターズの新作が稼働したみたいなのでちょっとやってみようかと」

 ――――クイーンオブファイターズ。
 通称QOFとは3人で1組のチームを作って対戦するゲームです。

 普通の格闘ゲームだと個々のプレイスタイルで個性を出すのが一般的なのですが、総勢60キャラから3人を選ぶこのゲームはチーム選びの時点から個性が現れると言っても過言ではありません。

 バランスよくチームを組んだり近距離特化や、はたまた遠距離特化にするなどチームの組み合わせは無限大と言っても過言は無いでしょう。

 ちょうどさっきまで行われていた対戦が終わり台が空いたみたいなので、私は負けて台を離れた人が座っていた台に座ってコインを投入しました。
 コインを投入するとゲームのタイトルを告げる音声が流れ、そのままスタートボタンを押すとニューチャレンジャーの文字と共に対戦相手に挑戦状が叩きつけられました。

 どうやら相手の人は使いやすいハイスタンダードキャラでチームを組んでいるので私は火力が高いキャラと相手を拘束するサポートが使えるキャラを使う事にしました。

 早速対戦が始まり私は後ろに下がって距離を取ると相手も同じように後ろに下がったみたいで、相手はそのまま牽制のためか飛び道具を撃って来ました。

 ――――どうやら堅実な立ち回りをするタイプみたいです。

 対戦をあまり長引かせたら厄介だと思った私は一気に勝負を決めるべく相手の飛び道具を前転で交わしながら距離を詰めます。

 相手は近付かれるのを嫌ってか無敵のアッパーカットを繰り出してきましたが、私はそれを見逃しませんでした。

 相手の攻撃を読んだ私はすかさずレバーを後ろに倒して攻撃をガードすると、ふわりと落下してくる隙だらけの相手に高火力コンボをおみまいします。

 タタンとテンポ良くボタンを滑らせ半分くらい体力を減らしてからサポートキャラを呼び出して相手を拘束してから更にコンボをもう1回。

 すると、満タンだったはずの相手の体力は私の高火力コンボで全て消し飛んだのでした。

「ふぅ。ロケテストで猛威を奮っていたコンボが修正されず、そのままだったみたいです」
「…………ねえ桜。このゲームいろいろ大丈夫なの?」
「もちろん大丈夫です。このゲームは3人で1チーム……つまり、1コンボで1キャラの体力を全て減らしても、チーム全体で見れば実質3分の1しか減っていません――――そう考えたら火力が低いまでありますね」
「いや、全然大丈夫じゃないでしょ」

 私はそのままロケテストをプレイした優位性を押し付けたゲーミングを続け、一段落した頃にこのお店の店長である所店長がやってきました。

「やあ桜ちゃん。絶好調じゃないか」
「あっ、店長お久しぶりです」

 久しぶりに店長に会った事で嬉しくなった私はいつもの言葉を投げかけました。

「ところてん!」
「おやめ」

 私の言葉に即座に反応した忍さんはツッコミを入れ、店長は苦笑いを浮かべました。
 所店長は昔、同居人に金目の物を全て持ち逃げされた過去があり、その時に生活が苦しくなり借金をして借金を返す為に比較的楽なゲームセンターの仕事を始めたという壮絶な過去があります。

 その重い過去の話を聞くと空気が重くなる事から「ところで店長はどうして店長になったの?」略して「ところてん」と聞いた人に対し「おいやめろ」こちらも略して「おやめ」と返すのがお約束みたいな感じになっています。
 ちなみに借金は店長や周りの人の頑張りで全て完済され、人望の高さが伺えます。

「どうだい新作は? 中々いい感じだろう?」
「そうですね。出来ればキャラが画面から消えたり必要以上にバウンドしたりするバグが見つかるともっと楽しめるのですが――――」
「いや、普通に遊びなさいよ…………」

 まあ最近はバグが見つかってもすぐにアップデートで修正されるので、そういった面白バグのあるゲームは中々無いんですけどね。



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