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第19話
しおりを挟む似たような表情の2人を並べて、俺は自分のステータスに関することをすべて説明した。
勇者適性のこと。
スキルのこと。
アビリティ、特に<次元視>のこと。
そして、町のギルドで経験した、受付嬢との奇妙なやりとりのこと。
自分でも、まったく何がなにやらわかっていないことばかりだ……それらを一気に聞いてもらうなど、少々無理が過ぎたかもしれない。
なつかしい顔に再会できて、俺も甘えが出てしまっているのかもしれないな。
「と……いうのが現状なのだ。セシエには、特にすまないな。もっと早くに説明しておくべきだったかもしれない。ただ、だますつもりは――」
「確かめましょうっ、お師匠さま!」
「む?」
「今すぐ! ちょっとお待ちください!」
だだだだ、と神殿の奥に駆けていったパルルが、どどどどと戻ってくる。
両手で大事そうに、透明な水晶玉を持って……、まさか。
「パルル、おまえそれは」
「はいっ! 魂色視鏡《ステータスミラー》でぁああッ!?」
何もないところでつまずき、べしゃりと石畳に転倒してしまうパルル。
実に痛そうだ。たぶん泣くだろう。
宙に投げ出された水晶玉を、はッ! とかけ声一閃、セシエがジャンプして受け止めた。
……この2人、すでにけっこういいコンビなのではないか?
すたっ、と軽やかに着地したセシエが、水晶玉をためつすがめつする。
「こ、これは……確かに魂色視鏡《ステータスミラー》であります! 昨今、地方への普及率も高まってきているでありますが、それでも普通は手に入れられない貴重品のはず。いったいどこで……?」
「いたたた……つ、作りましたあ」
「作った? ……どなたが?」
「わたしが」
「ええーーーっ!?」
おお。セシエがびっくりしている。
確かに驚くべきことだ。俺にとっては二重の意味で。
やはり今の世でも貴重品だった魂色視鏡《ステータスミラー》を、たった1人で手作りしたことも。
それを行ったのが、あのパルルであることも。
「本当に、成長したんだな、パルル……そういえば、転んでも泣いていないな」
「はいっ。パルル、強くなりました! お師匠さまのおかげですう」
「何を言う。俺の死んでいる間、地道に努力していたんだろう? その成果に決まっている」
「いえ、まあ修行はずっと続けてましたけど。でもお師匠さまのおかげなんです、ほんとに」
「? ……それは?」
「覚えてらっしゃいますか? お別れのきわに、わたしに手作りの聖水をくださったこと」
聖水を手作り!? とセシエがまたびっくりしている。
もちろん、よく覚えているとも。
あんなことしか、してやれずじまいだったが……
「あれぜんぶ飲んだらハイエルフになりました」
……なんと。
「あっ、そういえば、パルルさんは下級エルフだとうかがっていたであります!? 疑問には思っていたでありますが……せ、聖水を、何でありますと!?」
「飲みましたあ。なれましたあ」
「前代未聞であります……!」
まあ、そうだな。
普通は、魔法適性の高いダークエルフなどでも、聖域のある寺院や神殿で相応の期間、魔力を鍛えなければハイエルフと呼ばれる領域には達しない。
しかし、そうか。あの聖水が。
というか、
「飲むか、普通……? もっと適切な使いかたはなかったのか?」
「だって、知らなかったですもん、そんなの。聖水の使いかたなんて、一度も修行しなかったじゃないですかあ」
「……なるほど」
「それに、『お亡くなりになってもお師匠さまはわたしの中で生き続けるんだッ!!』って、あのとき思ったら……テンション上がっちゃって」
「飲んだらハイエルフになった、と」
「ドラゴンなら3体同時召喚できますう!」
それはすさまじい。魔法使いでいえばSクラス並だ。
1体ですらコントロールを失って暴走させるドジっぷりを見せてもらったばかりだが。
まあ、喚べるのと使えるのとは違う、というからな……
「ということはパルル殿、よほど幅広い適性をお持ちなのでは? 今は魔法使い? それとも司祭でありますか?」
「違いますう。わたしも村人です」
「……え゛」
「確かに聖水を飲んだとき、魔力といっしょに適性幅も広がりましたから……教会に行って、ジョブ変更して、適性を鍛えることもできましたけど。でも、わたしは勇者になるつもりですから! それ以外のジョブには興味ないですう!」
「き……極端な師弟でありますなあ」
返す言葉もない。
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