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第1章 支援術師
第4話
しおりを挟む「ほう……!」
「おおおおおおお!」
吠える男の全身に、今までにない力がみなぎっている。
狙い通りに事が運んでいるのだろうに、少しも油断した様子はない。
裂けた大槍の破片も、短槍と同様だ。
意図的でなければなりようもないほど粉々になって、この魔王を何重にもとりまいている。
破片のひとつひとつに、確かな力が宿っているのがはっきりとわかった。
これが、狙い澄ました勝負手。
なるほど!
「<ランダウンフォーギュスト>!!」
ドムンンンン……!!
地の底まで震わせるような轟音とともに、俺の体をゆがんだ力が襲った。
これは。|
支援技《・・・》。
本来は、味方の力を増幅させ、サポートするスキル。
その応用だ。
俺の中にある魔力を暴走させようとしている。
俺が自らスキルを使うことを防ぎ、なおかつ力の方向をコントロールして、自爆に至らせようと押し包んでくる!
なんと繊細な技だ。
「すばらしい……!!」
「……くっ……!?」
「見事な力だ、勇者よ。そうとも勇者よ」
押しとどめられていた右足を、俺は改めて振り上げた。
ドッ、と石床に叩きつけると同時。
俺の周囲でうずまいていた力が吹き散らされる。
「ぐあっ!?」
猛烈な余波に襲われて、男がよろめき、倒れた。
慌てて起き上がったときには、俺がもう、目の前にいる。
「……――~~~ッ……!! ……う」
「勇者よ」
「うおおおおおおお!!」
弾かれたように立ち上がり、男は右腕を振り上げた。
その場から動かない俺の左目を、正確に拳が捉えて――
「ぐ、っあ……!」
砕けた指を押さえ、男が後退った。
……さっきのスキルに、力のすべてを込めたか。
今のパンチは、何の魔力もまとっていなかった。
ただ生身で、向かってきた。
「……ふ、く、ふふ」
男が、今度こそはっきりと苦笑し、両腕をだらりと脱力する。
「ワシの負けだ……殺せ」
「ダクテムよ」
「!!」
「ダクテム・オルテドスよ。腰を下ろせ」
ほうけた表情の男の肩に手を置き、俺はむりやり座らせた。
玉座のほうを振り向くと、すぐにアリーシャが駆けつけてくる。
なかなかに心得たものだ……
俺の弟子というだけで、配下でもなんでもないんだけどな、アリーシャは。
「彼の手を治療してやってくれ。マロネが来るまでの間に合わせでいい」
「承知しました」
「俺の使える回復スキルは、人間には合わん。もっと死にかけレベルに重傷ならともかく、拳が砕けたくらいだと、治りすぎて手がもう1本生えかねんからな! はっはっはっ」
話が! と男が――ダクテムが立ち上がった。
よほど不本意らしく、ひび割れた唇を噛みしめている。
まあ、そりゃそうだろうがな。
「話が違う!! 再び見えるときは、真剣勝負と……命のやりとりと! そう約束したはずだ!!」
「やかましい、このバカモノ。先に約束を破ったのはおまえのほうだ」
「なっ……!?」
「倒しに来いと言ったぞ。俺はな。勇者となって、俺を倒しに来いと。真剣勝負、そう、この命を奪えと! そういう約束だったはずだ」
「なればこそ――」
「死にに来い、などと言った覚えはない」
「……!!」
「約束を破った罰だ。娘以下の年齢のカワイ子ちゃんに世話される屈辱を味わうがいい」
しばらくそのまま立ち尽くし、やがてダクテムは、倒れこむように腰を下ろした。
ふはは、とまたしても苦笑が聞こえてくる。
「これは……1本、取られましたな」
「だろうよ。さっきのも俺の勝ちだからな? またたくまに2本取られた気分はどうだ?」
「悪くありません。ええ、久方ぶりに……どこか、胸がすっとしたような気分です」
「約束はどうあれ……」
俺は片ひざをつき、ダクテムの左手をとった。
「武器が尽きても、よく向かってきてくれた。それでこそ勇者だ」
「……いえ。自分は……」
「光なき死地に光を見出すことこそ人間の力だ。次は左の手でも殴ってこいよ! 急に拳に力が宿って、魔王絶対殺すパンチにならんとも限らんからな」
「そんな……はは。はははは……!」
わざと大きく笑ってみせるダクテムの目じりに、わずかな涙が光るのを、俺は見逃さない。
ダクテムよ……
おまえ……
相変わらず感受性の強いやつめ~!
こいつめこいつめ、愛い愛い~!
**********
お読みくださり、ありがとうございます。
ここまでで、もし「おもしろい」と感じていただけたり、
「オッサンがかわいいとは……!?」と首をひねってくださったり、
そういうのなくてもお心がゆるすようでありましたら、
心やさしきブックマーク、またご感想など、
なにとぞよろしくお願いいたします!
次は11/17、19時ごろの更新です。
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