魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第1章 支援術師

第5話

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 魔王城地下の1室に、ダクテムは運びこまれていた。

 ……牢屋とかじゃないぞ、念のため。
 最後のスキルに力のすべてを注ぎこんだのは本当だったようで、ダクテムは立つこともままならなくなってしまったからな。
 人間が安静にするのに、魔王城でいちばん適した環境が地下室というだけだ。

「ゆっくり休めよ……」

 ベッドに横たわったダクテムに、静かに声をかける。
 返事はない。
 闇の精霊による回復を受け、昏睡状態になっているのだ。

 精霊の力は人間にも効果があるが、やはり闇の眷属のすること。
 精神エネルギーのバランスが、しばらくのあいだ大きく崩れてしまう。
 戦った手応えからしても……目を覚ますまで、かなりの時間がかかるだろう。

 よくぞそこまで力を尽くしたな。
 見事だったぞ、ダクテム。

 俺はアリーシャを連れ、地下室を出た。
 やたらめったら長い階段をあっちこっちのぼり、謁見の間ではなく俺の私室へ戻る。

「やれやれ……ずっと思ってるが、広すぎるな魔王この城。ちょっと普段と違うところ行くと、とたんに疲れるぞ」

「仕様でしょう」

「そうだけども」

「あまりにコンパクトなお城では、せっかくたどり着いた勇者たちも肩すかしというものです」

「城門開けたら謁見の間! 斬新でいいと思うがなあ」

「斬新であればいいというものでは……」

 極めてまっとうなアリーシャの意見ののち、俺たちは黙りこんだ。
 アリーシャは……ふむ。
 口を開く様子はないな。

 俺がなにか話したそうにしている、とすでに察しをつけて、自分から話があるとしても待つつもりなのだろう。
 賢い子だ。
 しかし、どう切り出したものかなあ――

『ゼルス様~。こちらですかー?』

 ノックの音とともに、甲高い声が聞こえた。
 入室を許可すると、ツインテールの少女が入ってくる。

 背が低い。
 そのわりに服がでかい。
 真っ黒なローブのすそを思いきり引きずりながら、ちまちました両手を高々と掲げる。

「魔王がために死なんことを!!」

「おう、ありがとう。そのあいさつ定期的にするのほんとおまえだけだな、マロネ」

「ふふん? 皆、自覚が足りないのですね。魔王ゼルス様の部下としての」

 小さな胸をせいいっぱい反らして、闇の精霊マロネは得意げに笑った。
 こんなちんちくりんだが、俺の侍従にして、右腕でもある。
 我が組織に、軍に、なくてはならない存在だ。

「マロネは常にゼルス様の第1の臣下たるべく、あらゆる努力を尽くしております。努力? いいえ言葉が違いましたね。マロネにとって生きるとは、すなわちゼルス様にお仕えすること! 呼吸すらも努力に等しいのです」

「今日はいつにも増してセリフ長いなおまえ」

「あっと申しわけありません、マロネとしたことが。敬愛の気持ちが抑えきれず。ひと仕事こなしたあとのゼルス様のお顔は格別ですゆえ!」

「せっせと持ち上げてくれるわりには、かげでいろいろほざいとるようだな? なんだ? 俺の言うことは鼻で笑って聞き流せだとか?」

「ぎくり」

「蒸し返すわけじゃないが今思い出した、昨日のおやつの様子がおかしかったぞ。北からの差し入れだとかいうあのケーキ、数のわりに皿がでかすぎた」

「ぎくぎく」

「誰ぞが盗み食いしたと考えると、なにやら頭の中でピーンと音がするんだが……」

「ご病気では?」

「ぶっとばすぞおまえ」

 アリーシャあ!! といきなりマロネが牙をむいた。
 無表情のまま全身でビクッと反応する器用なアリーシャに、ガルルルと詰め寄る。

「おまえかあ! ゼルス様の神聖なお耳にしょ~~~もないこと告げ口したのは!」

「確かにそれはわたしですけど、魔王が神聖とはこれいかに……」

「ほんとだねー、言葉ってむつかしい。黙らっしゃいッ!! ちょっとあんたどーゆーこと!? ひみつダヨ、ってマロネ言ったじゃん! あんたもハイって言ったじゃん! なのにしゃべっちゃうとか悪魔かオメー!?」

「人間です」

「だねー。いやいやいや! キーッ!!」

 どっちかというと悪魔はおまえだろ、闇の精霊。
 出自的にも、口の悪さ的にも。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は11/17、21時ごろの更新です。
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