魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第1章 支援術師

第9話

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「それにな……ふたつめの理由だが」

 イスの背もたれをきしませ、俺は酒を飲み干した。

「パーティ追放の原因がダクテムの実力不足だとしたら、それは俺が、勇者たちに迷惑をかけてしまったことになると思うのだ」

「迷惑、ですか……?」

「1回は、ダクテムを仲間に入れてくれたんだ。彼の力に期待して、きっとどこかの魔王を倒すつもりだったんだろう。それができなかったというならば、我々の……俺の監督不行き届き」

「仮にも闇の権化たる魔王が口にしていいジャンルの言葉じゃないですけどねそれ」

「弟子の不始末は師匠の罪というらしいじゃないか、人間の世界では? このままではまったく申しわけない。かなうならば、ぜひこの俺の手で、埋め合わせをしたいのだ……」

「…………」

「ふ。我が気高き志に感動し、なにも言えぬかマロネよ……」

「……ふ~~~ん……?」

 うっ。
 な、なんだそのリアクションは。
 なんだそのまぶたを半分引き下ろしたジト目は。かわいいぞ。

「部下の魔族ならともかくぅ……魔王さまが人里におりるときは、ほんとパッと行ってパッと帰ってくる程度しか、ふつーはムリだからぁ……」

「うう」

「この機会に乗じて、がっつり人の町を堪能するおつもり、とかぁ……」

「うぐぐぐ」

「ぶっちゃけ、自分で勇者体験できるまたとないチャンスだから、『場合によっては』なんて言ってたけどほんとは『よーしパパ、勇者といっしょに魔王張り倒しちゃうぞ』くらいノリノリ、みたいなぁ……」

「ううううるさいっ! マロネ、マロネきさまきさま、ふ、不敬であるぞっ!?」

「ペッ」

「つばァーッ!? つば吐いた!? 魔王に!? ま、マジかこいつ!」

 こわい!
 魔王、自分の右腕がこわい!
 つーか「アホかオメー」よりよっぽど罪深いんでは!?

「マロネ様。魔王様は本気で、勇者に申しわけないと思っておられることかと……」

「んなことわかってるよ~。んもーありえないよねこの職場」

「まあ、はい」

「勇者気遣う魔王とかいる? 人間ファンにもほどがあるって」

「けれど、そんな魔王様だから、お仕えなさっているのでは……?」

「……ふん。ま、監督うんぬんはともかくとして」

 自分で吐いたつばを自分のハンカチでこしこし拭き取りながら、マロネがぶつぶつと言う。
 こういうとこちゃんとしてはいるんだが、だったら吐かなきゃいいのに……

「我々と勇者たちとのズレ、という部分は確かめないとですね。なにせ、我々が直接勇者を見てから……つまり、最後にこの魔王城に勇者が到達してから、もう50年近く経ちます」

「えっ、そんなになるか? はあー。時の経つのは早いものだなあ」

「ですので、我々の勇者認識は50年前の感覚です。人間社会は日進月歩と聞きます、深刻なズレが起きている可能性は否めません」

「ならば、やはり! 行かなければな! 俺が!」

 ビッ、と親指で自分を示してみせる。
 マロネは取り合わず、細腕を組んでうーんとうめいた。

 スルーは……
 スルーは、神にも魔王にも効く万能攻撃スキルだから……
 なるべくやめてほしい……

「では、そうですねえ……せめて供の者を」

「それはまあ、言うと思ったがな。しかし繰り返すが、相手は勇者だぞ? 少なくとも、俺と同等にはうまく魔力を隠す必要がある」

「その上、Sクラスパーティの役に立つ程度には、力を発揮できないといけないんでしょう……?」

「さすがだマロネ、話が早い。人材豊富な我が所帯といえど、それほどの者がいるかな?」

「及ばずながら、このマロネが」

「ダメだ。能力は申し分なかろうが、俺とおまえが同時に城をはなれてはいけない。運営できる者がいなくなる」

「うぐぅ……」

「あとアホだし」

「そのひとこといります!?」

「精霊だから太らないと思っておやつドカ食いしすぎの精神的デブだし」

「初めて耳にする種類の罵倒!? なんですかなんですかっ、そんなこと言ったら魔王領ここの人材なんてアホばっかりなんですから、それはもうトップの誰かさんがアホってことなんじゃないですかあー!?」

「んだとテメー!?」

「キーッ! キーキーッ!」

 わたしに、という声に2人で振り返る。
 酒瓶を片手に、アリーシャが挙手していた。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は11/19、8時ごろの更新です。
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