魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第1章 支援術師

第8話

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 なあ? と目を向けたマロネが、ぽりぽりとあごの先を指でかく。

「マロネは魔王様ほどピュアじゃありませんけど、ま、とりあえずその方向で考えないと……。実際、勇者にふさわしい力がなかったから、パーティを追い出された。それ以外になにか理由ある、アリーシャ?」

「いいえ、まあ……。ただ、わたしの目には、ダクテム様はたいへんお強く見えました。魔王様相手に堂々の立ち回り、見事なものだったかと」

「えぇ~すごいじゃんマロネも見たかった~ん」

「魔王様は、ダクテム様のどういったところが、勇者として不足と見なされたと思われるのですか?」

「あ、そう、それは確かに。マロネも気になっちゃいました」

 そこだ、と俺はうなずいた。
 マロネとアリーシャを交互に見やり、にやりと笑って、正直に答える。

「わからん」

「……はあ」

「こんな気持ちは初めてなんだ」

「ほえ……?」

 マロネが大きな両目をぱちぱちさせる。
 川辺できれいな石を見つけたような心地で、俺はイスから立ち上がった。

「ダクテムはじゅうぶんに強いと、俺も思っていた。だから魔王城ここから送り出したんだ。どんな勇者パーティに入っても、必ず役に立てると。何人もの魔王を倒して、いつか俺のところにもやってくると。それだけの修行に、あいつは耐え抜いてくれたからな」

「ええ、そうですね」

「だが。俺が……俺が間違っているのかもしれない!」

「ほあ」

「あの修行では足りなかったのかもしれない! だから役に立てなかったのかもしれない! あるいは今、人間の勇者たちが求めているのは、また別の強さなのかもしれない!!」

「ちょっと落ち着いてくださいゼルス様、なんでテンション上がってるんです?」

「これが落ち着いていられるかバカマロネ!」

「ば!? ば、ばかってゆわれたー!!」

「ダクテムですら! 及びもつかないほどの実力が、今の勇者たちにあるのなら! この辺境の地まで、彼らがやってくる日も近い。俺が彼らと戦う日も近い!! そうなれば……!!」

 そうなれば。

 ……こほん、と俺はひとつ咳払いをした。
 確かに少し、興奮しすぎたようだな。

「ま……もろもろ冷静に考えてみても、ダクテムを追い出すとはただごとでない。少なくとも俺にとってはな」

「そーですねー。おバカなマロネには、なんにもわかりませんけどねー。へっ」

「すねるなよ、かわいいな」

「うっ……うえ、う、うへへへ。かわいいってゆわれたー……♪」

「ともかく、いちばんまずいのが……さっきも言ったが、今の勇者たちが必要としていることが、俺の認識とずれている場合だ。修行の内容を考え直さねばならなくなる」

 ちらりと横目でアリーシャを見やる。
 ダクテムだけのことじゃない。
 アリーシャの今後にも、かかわってくるかもしれないからな。

「この目で、耳で、肌で、今現在の『冒険』を確かめておきたい。そしてかなうものなら、今の勇者たちの強さを実感しておきたい!」

「あー」

「ふふふ……かわいいダクテムを追放するようなやつらだぞ。想像するだけでたまらんじゃあないか……!」

「なるほど。このマロネ、オッサンをで散らかす魔王なんぞというケッタイなシロモノにはいまだ慣れませんが、お考えのほどはよくわかりました」

「おまえほんとそのくちよ」

「しかれどもそのお役目、ゼルス様御自ら赴かれる必要はないのでは? マロネにおまかせくだされば、あらゆる情報・諜報技術を駆使して、ダクテムの元パーティを調べ上げましょう」

「無論、それも頼む……だが、俺が行く理由がふたつある」

 俺は指を2本立て……
 ふところから白い手袋を取り出し、右手にはめて。
 改めて、指を2本立てた。

「ひとつめの理由は」

「なんでやり直したんです?」

「手袋してたほうが指かっこいいだろ。ひとつめの理由は、ダクテムの追放を決めた勇者当人からこそ、聞けることがあるはずだ。心の内のことなのだからな、やはり直接会う以外あるまい」

「そこまで勇者に接近なさっては……」

「そう。最初に言っただろ、勇者と同じパーティに入る。つまり正体を見破られてはならんということだ。相当な実力が求められるし、演技力や思いきりも大事だぞ」

「思いきり?」

「当然、場合によっては勇者とともに、魔族たちと戦うからな!」

「ゼルス様あ!?」

我が領土ここに向かってこないといいなあ、はっはっはっ!」

 うへぇ~、とマロネが肩を落とした。
 説得はあきらめてくれたようだな。助かるぞ。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は11/18、21時ごろの更新です。
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