魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第1章 支援術師

第13話

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「このあたりで、少々お待ちください」

 広場にたむろする群衆の中に俺を残し、マロネは設営されたテントのほうへ小走りに去っていった。
 魔王ひとりぼっち。

 ……ふふ。
 わかっているぞ。
 このゼルス様にはな。

 俺は今、人間らしく振る舞うべきなのだ。
 それっぽいたたずまいが求められている。
 あるいはアリーシャめ、我を試そうというのだな?

 よかろう驚かせてやる。
 つい我とか言っちゃった照れくさい。

「ただいま戻りました」

「ご苦労、アリーシャ!」

「何をなさっているのですか」

 見ての通りだ。
 両手の指で挟めるだけ、肉の串焼きを挟んでいる。

 ……ぜんぜんびっくりしてくれない……
 魔王とて、ちょっぴりへこむときもある。

「人間はこういうとき、気を利かせるのではないかと思ってだな……マロネにもらったお小遣いで……」

「お小遣い制度だったんですか。なんということ。あのわたし、朝食もじゅうぶんごちそうになりましたから」

「はっはっはっ、なんだそんなこと! 遠慮するなアリーシャ、食う子は育つぞ!」

「……ありがとうございます。では、魔……ゼルス様はこちらを」

 串焼きの束と引き換えに、アリーシャが木の切れっ端を渡してくれた。

「ふむ? 数字が書いてあるが?」

「それが整理番号です。ゼルス様は3番と。いずれステージから呼ばれますので」

「呼ばれたら?」

「ステージに上がって、神官のスキルを披露してください。ステータス登録会とは、その名の通り、冒険者が自らの力量をこの町のギルドに報告するものですから」

 うむ。
 以前、アリーシャから受けた説明を、忘れていたわけでは無論、ない。

 この登録会で確かめられた実力が、町のギルドのリストに反映される。
 掲示板等にも貼り出され、パーティメンバーを求める者たちは、それらを見てさがすことができる。
 そういう仕組みだ。見事なり人間社会。
 ただ……

「手っ取り早くパーティを組みたい冒険者や、急いでメンバーを求めている冒険者などは、この場で直接声をかけます」

「めぼしい人材には、早くつばをつけたいものな」

「登録会はもともと、誰もいない荒野などを選んで行われていたようですが、現場で見物したい要望が増え、またスキルの検証技術や環境も向上した結果、こうした町中で開かれるようになったと聞き及びます」

「さすがだアリーシャ。人間の社会にいたころから勤勉だったのがよくわかるぞ」

「恐れ入ります」

「串焼きはうまいか?」

「おいしいです」

 口をもぐもぐさせながら頭を下げるアリーシャ――ほめたことに対してか、串焼きの礼なのかは定かでないが――から、俺は視線を青空へと投げた。

「だが……本当にいいのか?」

「はい。タレが絶品です」

「串焼きでなくて」

「はい?」

「アリーシャよ。俺はステージにのぼり、求められたスキルを披露する」

「はい」

「それだけでいいのか?」

「え……」

もっとできる・・・・・・ぞ。俺が全力を出せば、もっともっとおもしろいこと・・・・・・・ができる」

「……ゼルス様」

 ごくり、とアリーシャが生つば(か肉)を呑む。
 俺は口元の笑みを深めた。

「ここは人の町だ。俺はアリーシャに従う。だが、知っているだろう? 我が力を。幾度も目の当たりにしたはずだ」

「もちろん、です……」

「この場の者たちにも、わからせる。よい付加価値・・・・ではないか?」

「いけません。スキル登録の際も、決して本気を振るわれてはなりません、ゼルス様」

「これは異なことを言う。高いクオリティで登録したほうが、ターゲットの目にも入りやすいだろう」

「おっしゃる通りですが、高すぎればこの場で怪しまれます。わたしもうかつでした、その可能性に思い至らず……ゼルス様の御力であれば、当然、想定してしかるべきなのに」

 ふむ。
 俺に反論しつつ、冷静に自戒してもいる。
 修行においても、成長が早いわけだな、アリーシャ。

「ゼルス様。我々はあくまで、旅の途中にまとまった路銀をかせぐため、魔王討伐に志願する支援術士とその弟子です。人間の師弟ということにしておかねばなりません」

「ふむ」

「あまりにも強い力、それこそ勇者の力をしのぐほどの結果を出してしまっては、素性を調べられてしまいます。マロネ様が細工を施してくださってはいますが、疑われないに越したことはありません」

「スキルの威力を抑え……勇者どもが『うちに最適だ』と思う、ちょうどよい結果を出すべきだ、と。そういうわけだな?」

「ご賢察いただき、ありがとうございます」

 ほっとした様子のアリーシャの前で、俺は平らげた串焼きの串をまとめてボキリと折った。
 右手にそれを。
 左手になにも。
 足を広げて腕を引き絞り・・・・、顔は渾身のびっくり仰天。
 きょとんとするアリーシャに、

「最後の矢をとうとしたら折れてて唖然とするケンタウロス!!」

「……は」

「続きまして」

 地面に座り、下半身をくねらせ……
 くっ、これ体勢めっちゃキツい。

「自分のしっぽを手入れしてるつもりが、よそのヘビのしっぽを丹念に磨いちゃってることに気づいたときのラミア!!」

「はい……。はい?」

「どうしても自分で自分の羽を毛繕いできなくて、なんでオレのことこんな体にしたの?と創造神に詰め寄るペガサス!!」

「お待ちください」

「今のが気に入ったか? クククわかった、ではステージ上でペガサスネタをぶちかまし、勇者どもをドッカンドッカンさせてくれようぞ!」

「お待ちください」

 ん?
 やっぱりラミアのほうがいいか?

「確かに……その手のモノも、何度も、ええ、拝見しておりますが」

「うむ。まだまだあるぞ、俺様のものまねレパートリー! これで勇者たちの目も」

「絶対にやらないでください」

 な!
 に!?

「な……なぜゆえ!?」

「なぜでもです。絶対です。やらないでください。絶対です」

「に、2回も絶対を。しかしだな、ドッカンドッカンさせれば……」

「ダメ絶対です」

 強く言おうとしすぎて語順までバラバラに……

『やらかしたらもう魔王城にも入れてあげません』

 還るべき場所まで!?
 てゆーか余計なとこだけ聞いてんじゃねーよマロネ!!


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は11/20、19時ごろの更新です。
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