魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第1章 支援術師

第14話

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 場外の悲喜こもごもはさておくとして。

『整理番号1番の方』

 風のスキルで増幅された係員の声が、淡々と広場に呼びかけた。
 外周に連なる屋台にたむろし、談笑していた冒険者たちも、すぐに反応して中央のステージへと寄っていく。
 やはり誰もが、パーティメンバーをさがしているか、あるいは新たな冒険者に興味を持っているか。

 開会宣言などもないのは、正直意外だったが……
 この場の趣旨を、誰もが理解している。
 アリーシャも当たり前のような顔をしてついてくるが、わかっているかな?
 これは生き物全体で見れば、特異も特異なことなのだ。

「何度体験しても、興奮するな……この社会システムというやつは……!」

「ゼルス様? なにか?」

「いいや。我がゼルス領もがんばらねば! とな」

「……?」

 勇者パーティが安定供給されているわけだ。

 ……そのわりに、どこそこの魔王が倒されたとか。
 そこここの土地が浄化されたとか。
 最近、あまり聞こえてこないのは気になっているが……

 そのあたりの情報も、この遠出でつかめるといいんだがな。

「あれがステータス登録か……」

 人混みの向こう、ステージを眺める。
 パッと見、それは正直な話、大道芸のようだった。

 小高く作られたステージの、その上空にいくつもの魔法陣。
 ステージの奥に居並んでいる、位の高そうな魔法使いたちの手によるものだろう。

 あの魔法陣ひとつ作るのに、そうだな、Aクラス魔法使いでも数時間かかるだろうな。
 登録会が日時を決めて執り行われるわけだ。

「アリーシャは、登録したことがあるのか?」

「はい、何度か」

「そのときもこんな感じだったか?」

「似たようなものですね。……今、出てきたのが、司会者です」

 司会者。さっき番号を呼んだ人間かな?
 これまた熟達の冒険者風、腰に長剣を帯びてフードをかぶっている。
 さっきの声は青年のように聞こえたが、顔が見えんなー。

 彼に続くようにして、こっちは「風」どころではなく明らかな冒険者がステージに現れる。
 こっちが登録希望者、番号1番か。

「ゼルス様も、ステージに上がったあとは、司会者の指示に従ってください」

「わかった。どんなことを言われるんだ?」

「まず職種を聞かれます。答えますと……」

 ステージ上で、司会者と冒険者が会話している。
 こっちに声は届かないんだな?
 まあ、そんな必要もないということか。

 司会者が手元でなにやら操作すると、ステージ手前のクリスタルボードに『魔法剣士』と、光が文字の形に走った。

「ああして周知されます」

「なるほど。魔法剣士を求めるパーティは要注目、ということか」

「左様です」

「俺はー……」

「武装神官ですね」

「やっぱそうか。それさー、仕える神とか聞かれるんじゃないか?」

「ああ、確かに……あ、いえ。そういえば、服を用意したときに、マロネ様がおっしゃっていました」

「マロネが?」

「はい。神官に対して仕える神を問い、その返答にあった神を質問者が知らなければ、それは失礼にあたると。特に人間の神官はプライドが高いので、怒り出す者もいるのだとか」

「うへ。それはめんどくさい」

「厳正な教会では聞かれるかもしれませんが、ステータス登録会などではまず些末な質問はされないだろう、と」

 なるほどなるほど。
 神の類いは、邪神も含めて人間界にはいないが、数は魔王よりさらに多い。
 ぜんぶ把握してるやつのほうが珍しいだろうし、そんなものかもしれないな。

 マロネにしては、うまく考えたものだ。はっはっはっ。

――うおおおおおおおおおおっ!!

 ステージから雄叫び。
 魔法剣士の男が、光り輝く剣を天に掲げている。

 エネルギーを受けた魔法陣のいくつかが、バチバチと火花を散らし――
 白く輝いていた表面を、赤やオレンジに変じた。

「ほ~~~、美しい……。けどなんだあれ? どういう意味?」

「あの魔法陣は、囲んだ中で発動したスキルの力を吸収するものです」

「だな、器用なもんだ。それはわかるが……?」

「色の変化は、どの程度吸収したかを示します。数多く、かつ濃い色に変えられるほど、強いスキルであると」

「そういうことか。それで魔法陣が何重にもなってるんだな」

「はい。ゼルス様、決してすべての魔法陣を変色させよう、などとはお考えになりませぬよう」

 むう?
 本気を出す出さないはともかくとして、それは狙ってみたいなと今思っていたんだが……

「ダメか?」

「登録会のルールとして、Sクラス冒険者が3人同時に全力を出さねば破壊できない強度の魔法陣結界を設置する、というものがあります」

「あー。もし壊せてしまったら……?」

「先ほどお話ししたように、どこの王宮専属勇者が来たのだ、という騒ぎになり……」

「魔王困っちゃう、というわけか」

「目安として、3つの魔法陣が完全変色すればSクラス相当、といったところです。先ほどの魔法剣士殿はAクラスくらいでしょうか」

「ふむー……。ま、ターゲットのパーティメンバーが、この会場にいるとも限らんしな……」

 もしいるようなら、多少怪しまれようとも力を見せる、という選択肢もある。
 小金稼ぎではなく、魔王に挑もうという気概の連中なら、確実に食いついてくる……

 人心の、そういう部分をくすぐるのは得意だ。
 魔王だからな。
 しかしここでは、賭けに過ぎるか。

「4つ程度の変色を狙うかな」

「妥当なところかと」

 ステージの上では、駆け出し冒険者とおぼしき少女が、懸命の回復魔法で魔法陣1つをほんのり色づかせていた。

『整理番号3番の方』

 ふむ。
 3番。

「俺だな?」

「はい。お荷物をお預かりいたします」

「助かる。アリーシャ、楽しみにしてろよ? カッコいいところを見せてやるぜ!」

「はい」

 淡々とした反応。
 魔王ちょっぴり空回りの心地。
 こういうところは、マロネと違ってハリキリがいがないんだよな……
 ま、それはそれでいこと。

「お気をつけていってらっしゃいませ」

 目立たない程度に礼を示すアリーシャに片手をあげ、俺は気合いを入れ直した。
 第1関門、というやつだ。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は11/20、21時ごろの更新です。
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