18 / 129
第1章 支援術師
第18話
しおりを挟むファレンスに連れ込まれた店は、酒場というよりは高級レストランだった。
客は身なりのしっかりした者ばかり。
おそらく貴族階級か特級商人たちだろう。
楽団のしめやかな演奏が響く中、食事と談笑を楽しんでいる。
これは……なるほど。
ワイワイガヤガヤグビグビガシャーン、的なのを想像してただけに、少々面食らったのも確かだが。
そういうその、アレだな。わかるぞ。
魔王こーゆーふいんきも知ってる。
だって魔王だし。
「なじみの店だからな、遠慮なくやってくれたまえ」
ワインのテイスティングをすませたファレンスが、テーブルの向かいで悠然と構えている。
給仕が、俺とアリーシャのグラスにも注いでくれるが……
「高価いんだろうな、これ」
「間違いないかと」
「もしマロネがいたら、ボトル奪って『売り飛ばしましょう!』とかなってそうだな」
「それも間違いないかと。食器類も、かなりの物ばかりですよ」
「む、言われてみれば……! テーブルごと売り払いかねないな」
「そういえば、マロネ様のお声が聞こえませんね」
「あっちはあっちでメシだとよ。オレのいぬまに豪勢なモン食ってやがった、帰ったらしばき倒す」
ひそひそと貧乏くさいことをささやき合う俺たちに、ふふん、とファレンスが笑った。
笑ったよな今の?
鼻で? かもしれないけど。
「仲がいいんだな。本当に師弟かい?」
「うん? そうだが?」
「自分でなまぐさと言っていたし、恋人だったりするのかな?」
「はっはっはっ、おもしろいことを言う」
修行の妨げになるだけだ。
それでなくても、アリーシャに恋人だと?
……ゆるさん! なんとなくゆるさん!
恋人なんて魔王ゆるさないからな、アリーシャ!
「だがゼルスン。私のパーティに加わる以上は、ルールを覚えていってもらいたい」
「まだゼルスン様は、ファレンス様のパーティに加わるとお返事したわけではないのでは」
「むん……?」
これこれ、と俺はやんわりアリーシャをおさえた。
「口を挟むな、アリーシャ。ファレンス殿、ルールって言ったか?」
「ああ、そうだ。この勇者ファレンスと行動をともにするためのルールだ」
「騎士団には団規があるというが、そういうものかい?」
「それと同等以上と考えてもらいたい」
なにそれこわい。
「ひとつ。私に聞こえない話はしてはいけない。すべての情報は、私を通すように」
「……それは?」
「パーティは1個の生き物だ。その頭脳、すなわち意思決定をするのは私。行動に差し障りがないように、メンバーのことは常に把握しておきたい、というわけだ」
「なるほど。そういうものか」
ふむ、とひとつうなずいておく。
聞く限り、トップにかなりの負担がかかるやりかたに思えるが……
さばききる自信があるということなんだろうな。
さすがは勇者だ。
「…………」
アリーシャが横目で訴えかけてくるが、俺はただ料理を食べることで答えとした。
今は、ファレンスに自由にしゃべらせてみたい。
「もうひとつ。常に全力を尽くすこと。それを前提に、作戦を組み立てさせてもらう」
「ふむ。わかった」
「きみの能力は、ステータス登録会で把握させてもらった。力だけでなく、小技にも期待しているよ」
「がんばるよ」
「さらにひとつ。セオリーを守ること。これがいちばん重要だ」
「セオリー?」
「私のパーティには必勝の手段がある」
ほう……!
そーゆーの。
そーゆーのだよファレンスくん。
「教えてもらえるのかい?」
「もちろんだ。といって、そう大げさなものでもない」
「うむ?」
「私のこの剣、ロンダルギアには固有スキルがある。聖なる炎を波と化し、斬撃とともに敵に叩きつける技……<ヴァイオレットジャスト>というスキルだ」
「ほお~……」
「美しい技……ああ、とても強く、とても美しい技なのだよ」
あれ。
またうっとりしてるぞコイツ。
ワイン片手に。
あっちがう、ワイングラスに映る自分と見つめ合ってやがる!
スゲー! なにやってんのスゲーオモシレー!
「…………」
アリーシャの半眼もけっこーオモシレー。
「あの技で灼かれる敵は幸運というものだ。最強の技こそが最大の慈悲。ゼルスン、アリーシャ、きみたちにも早く見せてあげたいな! <ヴァイオレットジャスト>の赤い輝きを……!」
「めっちゃ楽しみにしてる。めっちゃ」
「ありがとう。まあ要するに、<ヴァイオレットジャスト>で敵を倒す。パーティ全体で、そのために尽くす。それが必勝の戦術だ」
「ファレンス殿。俺は、そう、あのアレだ、支援スキルしか使えないんだが?」
そういう設定でやらせていただいております。
魔王城から旅に出たときのダクテムに、なるたけ近くした状態だな。
「そうなのか? 神官は器用なものだと思っていたが」
「そうなんだろうさ。俺が不器用なだけでね。不合格かな?」
「とんでもない、だったらはじめから声をかけたりしない。昼間のあの力だけで、私にはきみの有能さが見えている。使えるスキルは?」
「強化なら、対象を問わない。弱体化は生物に限る。無生物、ゴーレムなんかが相手だと、デバフはしんどいな」
できるけどね。
「いや、立派なものだ。強化対象を問わないということは、たとえば私と、私の剣とを同時に強化できたりも?」
「お安いご用だ」
「すばらしい。きみはすばらしいぞゼルスン。そしていち早くきみを見出した私もまたすばらしい」
その流れ好きだなファレンスくん。
これも固有スキルなんじゃないのか。
それはともかく、これ、お酒おかわりもらっていいのかな?
あ、勝手に注いでくれた。うれしい。
ありがとう給仕くん。
**********
お読みくださり、ありがとうございます。
次は11/22、7時ごろの更新です。
0
あなたにおすすめの小説
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる