魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第1章 支援術師

第24話

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「先ほどのゴブリンは、この浅い階層ながら、すでに氷属性を持っている様子でした」

 おお。
 アリーシャ、気づいていたか。
 そうなのだ。

 周囲の気温がとりたてて低いわけじゃないが、やつらは普通の門番ではなかった。
 このダンジョンの魔王というのは、存外、気の利いた主なのかもしれないな。
 炎支援にしなかった理由は、俺も気になるところだが?

「無論、ゼルスン様はそういった属性スキルも……」

「きみは私を疑うのか?」

「……疑う?」

「私は王国公認の勇者だ。結果がすべてを語っているだろう!」

 うむ……?
 どうしたファレンス?
 勇者が簡単に怒ってはいけないんじゃあないか。

「私の力を強化すれば、凡百のモンスターなど物の数ではない! 今の戦闘は、私が支配していたのだ!」

「左様ですか」

「私の力にはまだまだ余裕がある。ゴブリン程度にはあれでじゅうぶんと思ったまでだ! そういうレベルの話は、弟子の身分ではわからないか?」

 もちろん、と俺は口を挟んだ。

「そうなんだろう、ファレンス殿は勇者だからな。今のはほんの小手調べに違いない」

「言うまでもない! これから私は、魔王を倒そうというのだからな」

「ああ。まだ例の必殺パターンも、見せてもらってないことだし」

「それこそ! あんなゴブリンなんぞにはもったいない。楽しみにしておくがいい、ゼルスン。アリーシャもな」

「おお! 楽しみだとも」

 本当に。
 心から。
 すぐにでも目にしたいものだ!

「……ゼルスン様。お騒がせいたしました」

「おいおいあんた、ダメだって」

 進撃を再開するファレンスについていこうとすると、鎧くんが話しかけてきた。
 出発前のあいさつ以来、初絡みだな!
 相変わらず、なんて名前だったっけ……

「ファレンスによけいなクチ挟むのはよせよ。俺たちゃ、言われたことだけやってりゃいいんだ」

「ああ、そうだな。ファレンス殿は勇者だからな。きっと俺やアリーシャにはわからない、戦いの考えがあるんだろう」

「あん? いや、そうじゃなくってだな……あいつの機嫌損ねたら、もらうもんもらい損ねるって話だよ」

 そうさ、と弓ちゃんもまざってくる。

「下手に口出しして、戦闘がこじれて、それでこっちに責任がきたら面倒じゃん? 魔王を倒せようが倒せまいが、あたしらには大して関係ないしさ」

「しかし、それが勇者の本分なのでは?」

「ほ! マジメだね、あんた。まあ確かに、実入りはぜんぜん違ってくるから、手を抜くってわけじゃないけどさ。ファレンスまかせがいちばん楽だし、確実なんだよ」

 ふむ……なるほど?
 これはこれで、勇者への信頼のかたち、なのだろうか?

『ゼルス様あ~』

 うん?
 なんだ、マロネ?
 見ての通り、今も返事しづらいぞ。

『もしものお話、していいですか~?』

 テメーこのやろう、なんだそりゃ!?
 こっちはこれでもがんばって戦ってんだぞ! スキル1個使っただけだけど。
 なにをそんな、

「ヒマこいたマーメイドが波打ち際でするみたいな世間話ふってくれやがる……!?」

『おもしろいじゃないですか、マーメイドちゃんたちの世間話』

 それはまあそうなんだよね。
 海を伝っていろんな場所に行ってるから、めちゃめちゃ物知りだしな。
 俺の領土もいちおう海あるけど、マーメイドが好む砂浜はちょびっとしかない。
 でもときどき来てくれるんだ。みんなかわいいぞ。

『もしも、すっごい勇者がいたとして~』

 うわ自然に話はじまった。

『その勇者が、すっごく強い必殺技を持ってる、ってウワサされてたとしますね』

 しかもなにそれワクワクする。
 魔王の心にぐいぐいきちゃう。
 いやまあ、普通はゾクゾクくるもんなんだろうけど……

『でも本当は、そんな技なくて』

 ん?

『勇者になったのも、単にくじ引きの結果で。なのに俺は勇者だー、っていばり散らしてる。そういう人間がいたら、ゼルス様、どう思われますか?』

 …………
 それは……

「勇者じゃないんじゃないか?」

 ん、と先頭を行くファレンスが振り返った。

「なにか言ったか、ゼルスン?」

「いいや? ファレンスの剣を見てただけさ」

「ああ。つい見惚れてしまうだろう? 前にも言ったが、このロンダルギアを所持できるのはSクラス勇者のみ」

「ああ」

「だが私は、Sクラスの中でもひとにぎり、真の勇者にしか使いこなせない武器だと思っている! 頼もしい相棒だ」

「いいねえ、そういうの」

 その武器に固有の強力スキル、か。
 いやが上にも期待が高まるじゃないか!

 で?
 なんだったか、マロネ?

『いいえ~、じゅう・・・ぶんです・・・・。なんだかマロネも楽しみになってきちゃいました』

 お、そうだろうそうだろう。
 きっと我々の勇者育成プログラムに、大きなヒントをもらえるぞ!

『もし……もしも、ゼルス様の期待が裏切られるようなことがあれば。そのときは……』

 ん?
 マロネ、何ぶつぶつ言ってるんだ?

『ゼルス様のベッド、めっちゃ寝心地いいですう! そ~れシーツぐしゃ~♪』

 はっはっはっ、そうかそうか!
 おまえ帰ったらツインテで亀甲縛りにしてやる。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は11/24、7時ごろの更新です。
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