43 / 129
第2章 テイマー
第42話
しおりを挟む1夜明けて。
俺は、謁見の間に匹敵するほどの広さをもつ食堂で、朝食をいただいていた。
別に1月や2月食わんでも、体調的には問題ないんだがな。
朝昼晩と食事することは、生活リズムを保つのにいい。
味を楽しむのも好きだ。
特にナスビ入りのクリームシチューなど大好きだな!
「ところで……イールギットは呼んでないのか?」
機能的とは思えない極縦長テーブルについているのは、俺とアリーシャだけ。
あとは給仕役のマロネ(メイド服)しかこの場にはいないが、そのマロネが「ハア?」と臣下らしからぬ返事をこぼした。
「呼んでるわけないじゃないですか。あいつはゼルス様を殺しに来たんですよ?」
「そりゃそうだが、まあほら、俺がそうしろって言って送り出したわけだしな? いいじゃないか」
「よくないでぃす」
「今はどこなんだ? イールギットは」
「地下牢でぃす」
「……地下室でなく?」
「でぃす」
「おいおい。まるで罪人だな、かわいそうに!」
「罪人でぃす。咎人でぃす。このマロネが直々にゴーモンしてやるでぃす」
「ンまぁこの子ったら!?」
「宙づりにして、すっぱだかにひんむいて、エエ音のするムチでピッシャンピッシャンやってやるでぃす! そのあとは女体に飢えたスレイプニルの群れにでも放りこみ――」
「テイムされるぞ」
「うわくっそアイツめんどくさっ!?」
「はっはっはっ、マロネは意地悪だなあ。ま、イールギットとは馬が合わないのも、知ってはいるが」
違います、とマロネの頬がぷくっとふくれた。
メイド服の効果か、いつにも増してあざとい。
かわいいのみならず、裏がなくても疑いたくなるタイプのあざとさだな。
「確かにアイツがこの城で修行してたとき、いろいろありはしましたよ? でもそれは大したことじゃないです」
「そうなのか?」
「はい。たかだか、廊下ですれ違うたびにちょっと蹴り合ったりとか」
「ふむ」
「修行相手の魔物のグレードこっそり上げといたら、精霊封じの護符でトイレに閉じ込められたりとか」
「ふ、む……」
「互いのごはんに劇物仕込むのが日常茶飯事になってたりとか、その程度ですから」
「待って。そんな後ろ暗いバイオレンスが繰り広げられてたのに、俺ぜんぜん気づいてなかったんだけど」
魔王いささかショックな心地。
我ながら情けない……もっと部下たちのことにも心を配らねば。
「まあ確かに、ゼルス様に気づかれたら負け、みたいなところもありましたね」
「利用されてすらいる……魔王とはいったい……」
「でもそもそも、今のアイツは、前のダクっちとも違います」
「ふむ?」
「ダクっちは、勇者パーティから追放されたことを認めて、いわば帰ってきました。イールギットは今のところ、それについて語りません。我々の仲間に戻ったわけではないので、捕らえておくのは当然かと」
「なるほど……?」
そう言われるとな……
しかし。
「イールギットほどのテイマー、勇者として迎えられなかったとは思えん。なぜ話してくれないんだ……?」
「ですからそのへんをカラダに聞いてやるんじゃないですかあゲヒヒゲヒヒヒヒ」
「どう思う、アリーシャ?」
たいへん美しく朝食を食べ終えていたアリーシャが、魔王城自慢のコーヒーをたしなみながら目を伏せた。
「わたしには、なんとも……ですが、昨日のあの戦いぶり。誇り高く、また気位も高そうなお方と見ました」
「ああ。イールギットはがんばり屋さんだぞ! アリーシャにも負けないくらいだ」
「恐れ入ります。であればやはり、話せないか……話したくないのではないでしょうか。魔王様のおっしゃる通り、まわりが放っておく力とは思えません」
そうだろうそうだろう。
やはり、弟子をほめられるとうれしくなってしまうな。
「しかし、まあ……そこを明らかにしてもらえない限り、客人扱いは無理か……?」
「このマロネの目が黒いうちはゆるしませんねえ! ヤツの晩メシはそこらの草のゾーキン汁スープです!」
「陰湿な姑かおまえは。わかった! 俺が話を聞いてみよう」
「えぇ~~~」
「そんな顔するな、発情しそこねたオークか。この朝ごはんも持っていってやろう。アリーシャも来るか?」
お供いたします、とアリーシャが立ち上がる。
よし。
みんなでイールギットの獄中見舞いといこう!
「犯罪者の家族面会みたいですね。マロネは胸がすっとします、ふひひひ」
おまえ以上に悪魔的性格してるやつ、俺知らんわ。
**********
お読みくださり、ありがとうございます。
次は12/8、19時ごろの更新です。
0
あなたにおすすめの小説
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる