魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第2章 テイマー

第43話

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 魔王城の地下は、空気がひやりとして乾燥している。
 地下というとじめじめしたイメージがあるかもしれないが、食料や薬品の貯蔵庫になっている場所も多いからな。
 空気がうまく循環するように造った。
 結果、多くの種族にとって、すごしやすい環境になっているようだ。

「イールギット! 来たぞ!」

 その地下の奥、奥の奥。
 かつてダクテムが静養していた地下室よりも深いところに、イールギットは囚われていた。
 俺の声に彼女が顔を上げるより早く、

「入るぞ!」

 ガキョン、とカギを引き壊し・・・・、俺は地下牢の中に入った。

「!? ま、魔王……!?」

「こっちだこっち、それ運びこめー」

「な、なにをっ……ええええ!?」

 俺のあとにぞろぞろ続いてきたコボルトたちを見て、イールギットが目を丸くする。
 小さなモコモコの働き者たちは、大勢でよってたかって、わっしょいわっしょいとたくさんの家具を運びこんでくれた。

「この地下牢が使われるのも、めちゃめちゃ久しぶりだからな。ああもう思った通りだ、ベッドが錆びついてるじゃないか! こんなもの運び出せ!」

「な、な、な……!?」

「そう、その木材を組み合わせたら寝台になる。天蓋付きとまではいかないがな。化粧台はこっちに置いてくれ。燭台はもっとだ、もっとたくさん! そうそう」

 仕事を終えたコボルトたちが、ちょこまかと地下を出て行く。
 うむ。よし。
 床のじゅうたんが心地よい、ふんわかキラキラな女の子らしい部屋になったな!

「さあイールギット! 久しいことだ。積もる話をしようじゃないか!」

「…………」

 あれ……?
 どうしたイールギット?
 ソファに座りもせず、キッと俺をにらんで。
 おなかでも痛いのか……?

「どういうつもりよ……!? 魔王ゼルス!?」

「えっ?」

「あたしはあんたの命を狙ったのよ!? テイムして滅ぼそうとした! ふざけてるの!?」

「う……、ふ、ふざけてなどは、いないぞ? そう、そうだ。おまえは虜囚なのだ」

 むん、と俺は胸を張ってみせた。
 このソファふかふかで気持ちいいな。

「虜囚は情報のかたまりなのだ。今の人間どものことを聞き出さねばならん。どんな勇者がいて、どういう目的でどこにいるのか、などをな……」

「ふん……」

「それを聞き出すためには、虜囚がしゃべれる状態でなければならない。痛めつけるのが趣味のような魔王もいると伝え聞くが、しゃべれなくなってしまっては元も子もないからな」

「く……」

「さらに記憶をたどるためには、精神状態の安定が肝心だ。緊張していては何も思い出せまい。リラックスしてもらってこそ、重要な情報を聞き出せるというもの」

「うん……?」

「慣れ親しんだ生活様式に近づけることも大事だな、環境が変わっては口も重くなろう。朝食もすぐ来るぞ、味の感想も教えてくれ。ちゃんと人間に合わせて昼ごはんは12時、晩ごはんは19時程度を予定しているから、そのつもりで――」

「ふざけてんでしょッ!?」

 なんで!?

「くっくっくっくっ……」

「ぬ!?」

 振り向いた俺とイールギットの視線の先。
 牢屋の外から、小柄な影ともっと小柄な影がこちらを眺めていた。

「哀れなりイールギット……」

「ま、マロネ……!? なんのつもりよ!?」

「わからんのかアホが。お前にはもう、ゼルス様にかわいがられまくる以外の道など残されていない……」

「なっ……!?」

「しゃべらない限り、いつまでも続くぞ? まるで10とおにも満たぬ赤子にするような猫かわいがりがなあ!」

 どうでもいいけどマロネ、なんでそんな俺より魔王っぽい口調なんだ?

「それが嫌なら、真実を話すがいい……」

「かわいがるのはよくない? よくない?」

「ゼルス様ちょっと黙ってて。イールギット、お前……」

 ガシャ、と牢屋の格子戸をにぎって、マロネがにたりと笑った。

「追放されたんだろ? 勇者パーティを」

 ぐ、とイールギットの体に力がこもるのがわかった。
 うむ、まあ、大事なことではある……

 マロネがさっき言っていたように、イールギットが帰ってきた・・・・・なら客人として迎えられる。
 俺を襲ったことなどどうでもいい。
 俺の本意ですらあるというものだ。

 俺にとっても、かわいい弟子にかかわる経緯、気にはなる。
 しかしなあマロネ。
 繊細な話題だぞ、聞き方というものが……

「なるほど……」

 ん?
 どうしたイールギット?

「かわいがる、って、そういう意味か……さすがは魔王……」

「おう?」

「そうよね。あたしのためなんかじゃないわよね。魔王がするのに、薄い毛布1枚じゃね……確かにあたしは負けた……」

「イールギット?」

 とぼとぼと、イールギットができたての寝台に向かう。
 再び鋭い視線で、マロネをギロッとにらみつけてから――ばたっ、とあおむけに身を投げ出した。

「さあ! 好きにしたらいいじゃない! あたしの体を!」

「は?」

「こんなかたちで辱められるなんて! 故郷のお父さんお母さんごめんなさい!」

「いやおい」

「だけどあたしは絶対しゃべらない! 勇者のことも! 自分のことも!」

「なんでだよ!?」

 つーか何を言っとんだこの子は!?

「どうしたのよ魔王!? ベッドもできたわよ!? やればいいじゃない! どうせあたしじゃ魔王にはかなわないわよ!」

「いやだから!」

「わざわざギャラリーまで引き連れて、そうすれば口を割るとでも思った!? しゃべらないもん、嫌だけどね! 嫌だけど、うう、い、嫌だよおおおおお初めてはもっとムード満天がよかった……!」

「聞けイールギット! バカかおまえは!」

「言ったら別に魔王が嫌かといえばそんなこともないんだけどでもマロネのクソバカに見られながらなんてくううなんて効果的な精神攻撃さすがあたしの師匠いや魔王……!」

 もういい。
 つかつかと寝台に歩み寄り、俺は両手でイールギットを持ち上げた。

「ヒッ……! あれ……?」

 そのままじゅうたんの真ん中に、ぺたんと座らせる。
 俺もその正面に腰を下ろして――

「女の子がそんなこと言っちゃいけません!!!!!」

「ひぇっ」

「自分の体を大事にしろって、修業時代から何回も何回も何回も何回も言ってただろ!! このおバカ!! いいかッ!? そも人間にとって性というものはっ――」

 こんこんせつせつと言い聞かせ続ける。
 イールギットのピンク色の頭が、徐々にしおしおとしなだれていった。
 反比例して、マロネは笑いをこらえきれないようだ。

「くひひひひひひ自滅してやんのバ~カ! あーおもしれー!」

「この人とマロネ様って、ちょっと発想とか似てますよね……」

「なんてこと言うのアリーシャたん?」

 説教に熱をかたむけすぎて今はツッコめないけど、俺もそう思うぞアリーシャ。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は12/10、19時ごろの更新です。
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