46 / 129
第2章 テイマー
第45話
しおりを挟む「引き続き、マロネがお調べいたします」
「そうしてくれ」
「が!」
「が?」
「が!!」
なんだよ。
うれしそーな顔してんなこいつ。
「これで明らかになってしまいましたねえ、やはりあのバーカギットは追放の身!」
「バーカギットて」
「マロネはなにやら気分が高揚しております! あやつの牢屋付近を掃除する役目を買って出ながら、遠回しにチクチクネチネチ追放についてイビリたおす楽しみ! いったい誰が止められましょうや!」
「俺が止めるわバカタレ、なにを画策しとんだ」
「えー」
「えーじゃありません。なあアリーシャ?」
まあ、とアリーシャが紅茶のカップを皿に戻す。
「魔王様がどうなさりたいかにもよりますが、その後の選択肢は狭まるでしょうね」
「俺が?」
「はい。イールギット様を、どのようになさるおつもりですか? ダクテム様のときは、改めて修行をとお考えのようでしたが」
「うむ……そうだなあ」
イールギットは、大輪の花のような子だった。
よく笑い、よく泣き、よくマロネとケンカをした。
今もその素地は変わっていない、ようではあるが……
「慌てている……焦っている……いや。なんというんだろうな、今のイールギットは……」
「……自暴自棄、でしょうか?」
「! そう! それだ。ヤケになっているような、そんなふうに見えた。俺との約束を果たすためだけにやってきたダクテムとは、少し違うような……」
「傷ついていらっしゃるのでしょう。わたしより年上とはいえ、ダクテム様よりはずいぶんお若いですし」
えー、とまたマロネがくちびるを尖らせる。
「傷ついてるう? あいつがあ?」
「そう感じましたが……おかしいでしょうか」
「そんなタマじゃないもん絶対。ひとつひとつに呪い刻んだ毒つぶて、マロネのごはんに混ぜこんでくるようなやつだよ?」
「何に混ぜられたんですか、そんなもの……」
「マロネの大好きなレーズンパン……」
「殺意の高さは感じますけれど」
イールギットはいつでもいっしょけんめいな子だなあ。
「ふむ……その、イールギットを追放したという国、あと彼女を守らなかったパーティとやらも気にはなるが……」
「また潜入しちゃいますか?」
「いや。それよりもイールギットのことが優先だ。本当に傷ついているのだとしたら、魔王城へはむしろ救いを求めに来たと考えねばならん」
「その言葉尻だけ追ってもずいぶんわけわかんねーですよ……」
「うむ……いったい……」
「魔王城に救いとか、ねえ? タチの悪い冗談ってなもんで……」
「どうやれば救えるというんだ……?」
「悩みの方向性よ!!」
なんだよ。
なんかおかしいか?
「我が弟子が傷ついているならば、癒やさない選択肢などなかろうに?」
「あるわ!! って言っても聞かないんでしょーねこの勇者スキスキ魔王様は!」
「勇者、好き。イールギット、好き。ふたつ合わせて大好き……」
「聞きたくねえーーー!!」
「まあ、そう言うなマロネよ。なんだかんだ、おまえがいちばんイールギットと近しかった。どうすれば彼女を慰められると思う?」
「……そりゃあー……」
不満たらたらながらも考えるあたり、こいつも本音ではイールギットを気にしているんだろうな。
「やっぱ、アレじゃないですか……? イールギットはへこんでるわけだから……」
「うむ」
「ゼルス様が河原に呼び出して」
「うむ。河原?」
「正々堂々コブシで来い!! つって」
「コブシ!?」
「体力の尽きるまで殴り合ったあと、2人して転がって夕焼け眺めながら『まだまだいいパンチ持ってんじゃねえか』『へっ、うるせえよ……』ってやったら、イイ笑顔で復活すんじゃないですか?」
「なるほどな!! どう思うアリーシャ!?」
アリーシャは、両手で大きく「×」を作っていた。
ダメかー。
「個人的には、やってみたいシチュエーションではあったんだけどな……獣化のスキル使って、手のひら肉球でぷにぷににして」
「チィッ! イールギットの頬にめりこむゼルス様パンチを見たかったのに!」
「そんなことだろうと思ったわ! おまえを相手にしてやろうか!」
「え! ゼルス様に、本気でひっぱたかれる……!? そんな、やだ……マロネってば、ドキドキしちゃってる……?」
「そういう方向に持っていくのはよせ……魔王勝てる気しないから……」
しかし、弱ったな……
おまえは傷ついてるから癒やさせろ、なんて言っていいものでも、治るものでもない。
人の心は摩訶不思議。
だからこそおもしろいわけだが……
「お……そうだ」
「魔王様?」
「いつだったか……イールギットではなかったが、おもしろいことを言っていた弟子がいたな。世界が平和になったなら、田舎でも開拓してのんびり暮らしたい、とか」
「なるほど。人間にはままあることです」
「そうなのか? それはよい」
「はい……?」
イールギットの心が今、どのような状態かは知れぬこと……
しかし、ま、のんびりして悪いことはなかろう。
幸いここは、ド田舎だ!
**********
お読みくださり、ありがとうございます。
次は12/15、19時ごろの更新です。
0
あなたにおすすめの小説
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる