魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第2章 テイマー

第45話

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「引き続き、マロネがお調べいたします」

「そうしてくれ」

「が!」

「が?」

「が!!」

 なんだよ。
 うれしそーな顔してんなこいつ。

「これで明らかになってしまいましたねえ、やはりあのバーカギットは追放の身!」

「バーカギットて」

「マロネはなにやら気分が高揚しております! あやつの牢屋付近を掃除する役目を買って出ながら、遠回しにチクチクネチネチ追放についてイビリたおす楽しみ! いったい誰が止められましょうや!」

「俺が止めるわバカタレ、なにを画策しとんだ」

「えー」

「えーじゃありません。なあアリーシャ?」

 まあ、とアリーシャが紅茶のカップを皿に戻す。

「魔王様がどうなさりたいかにもよりますが、その後の選択肢は狭まるでしょうね」

「俺が?」

「はい。イールギット様を、どのようになさるおつもりですか? ダクテム様のときは、改めて修行をとお考えのようでしたが」

「うむ……そうだなあ」

 イールギットは、大輪の花のような子だった。
 よく笑い、よく泣き、よくマロネとケンカをした。
 今もその素地は変わっていない、ようではあるが……

「慌てている……焦っている……いや。なんというんだろうな、今のイールギットは……」

「……自暴自棄、でしょうか?」

「! そう! それだ。ヤケになっているような、そんなふうに見えた。俺との約束を果たすためだけにやってきたダクテムとは、少し違うような……」

「傷ついていらっしゃるのでしょう。わたしより年上とはいえ、ダクテム様よりはずいぶんお若いですし」

 えー、とまたマロネがくちびるを尖らせる。

「傷ついてるう? あいつがあ?」

「そう感じましたが……おかしいでしょうか」

「そんなタマじゃないもん絶対。ひとつひとつに呪い刻んだ毒つぶて、マロネのごはんに混ぜこんでくるようなやつだよ?」

「何に混ぜられたんですか、そんなもの……」

「マロネの大好きなレーズンパン……」

「殺意の高さは感じますけれど」

 イールギットはいつでもいっしょけんめいな子だなあ。

「ふむ……その、イールギットを追放したという国、あと彼女を守らなかったパーティとやらも気にはなるが……」

「また潜入しちゃいますか?」

「いや。それよりもイールギットのことが優先だ。本当に傷ついているのだとしたら、魔王城ここへはむしろ救いを求めに来たと考えねばならん」

「その言葉尻だけ追ってもずいぶんわけわかんねーですよ……」

「うむ……いったい……」

「魔王城に救いとか、ねえ? タチの悪い冗談ってなもんで……」

「どうやれば救えるというんだ……?」

「悩みの方向性よ!!」

 なんだよ。
 なんかおかしいか?

「我が弟子が傷ついているならば、癒やさない選択肢などなかろうに?」

「あるわ!! って言っても聞かないんでしょーねこの勇者スキスキ魔王様は!」

「勇者、好き。イールギット、好き。ふたつ合わせて大好き……」

「聞きたくねえーーー!!」

「まあ、そう言うなマロネよ。なんだかんだ、おまえがいちばんイールギットと近しかった。どうすれば彼女を慰められると思う?」

「……そりゃあー……」

 不満たらたらながらも考えるあたり、こいつも本音ではイールギットを気にしているんだろうな。

「やっぱ、アレじゃないですか……? イールギットはへこんでるわけだから……」

「うむ」

「ゼルス様が河原に呼び出して」

「うむ。河原?」

「正々堂々コブシで来い!! つって」

「コブシ!?」

「体力の尽きるまで殴り合ったあと、2人して転がって夕焼け眺めながら『まだまだいいパンチ持ってんじゃねえか』『へっ、うるせえよ……』ってやったら、イイ笑顔で復活すんじゃないですか?」

「なるほどな!! どう思うアリーシャ!?」

 アリーシャは、両手で大きく「×バツ」を作っていた。
 ダメかー。

「個人的には、やってみたいシチュエーションではあったんだけどな……獣化のスキル使って、手のひら肉球でぷにぷににして」

「チィッ! イールギットの頬にめりこむゼルス様パンチを見たかったのに!」

「そんなことだろうと思ったわ! おまえを相手にしてやろうか!」

「え! ゼルス様に、本気でひっぱたかれる……!? そんな、やだ……マロネってば、ドキドキしちゃってる……?」

「そういう方向に持っていくのはよせ……魔王勝てる気しないから……」

 しかし、弱ったな……
 おまえは傷ついてるから癒やさせろ、なんて言っていいものでも、治るものでもない。
 人の心は摩訶不思議。
 だからこそおもしろいわけだが……

「お……そうだ」

「魔王様?」

「いつだったか……イールギットではなかったが、おもしろいことを言っていた弟子がいたな。世界が平和になったなら、田舎でも開拓してのんびり暮らしたい、とか」

「なるほど。人間にはままあることです」

「そうなのか? それはよい」

「はい……?」

 イールギットの心が今、どのような状態かは知れぬこと……
 しかし、ま、のんびりして悪いことはなかろう。
 幸いここは、ド田舎だ!


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は12/15、19時ごろの更新です。
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