魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第2章 テイマー

第56話

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 しばしのち。

「あー……だいぶ楽になった……」

 冷たい岩の上に寝転がり、俺は静かにため息をついた。
 湧き水の流れる、小さな池のそば。
 フラワーモンスターが拠点にしているだけあって、なかなか良い環境だ。

 冷たい空気が、体の中まで癒やしてくれる。
 特に胃のあたりを……

「そ、そう……。なんか、その、ごめんね……?」

 近くに座ったイールギットが、おずおずと言う。
 さすがに思うところがあるのか、大きな葉っぱを扇がわりに、はたはたあおいで風を送ってくれている。
 ふ、と俺は小さく笑った。

「謝ることはない……見事であった」

「そ、そう? 見事……?」

「一群を率いる親玉モンスターを、ああも意のままに操るとは。深くテイムできている証拠だ。特にあの、風車のごとき触手の動き……」

「ごめんって」

「速度に緩急をつけることで、相手に間合いを測らせず、また振り回す武器・・・・・・への遠心力も緩急自在……」

「なんか聞いてるあたしまで気持ち悪くなってきた」

「マロネと張り合うには、あのくらいしなければな。魔王に遠慮はいらないぞ」

「どーゆー気遣いよ……。てゆーか、別に張り合ってないし! 向こうがいちいち絡んでくるだけだから!」

 マロネは、俺に酔い覚ましを持ってくると言って、いったん城に戻ってくれている。
 確かに、あいつが付いてきているとは、俺も知らないことだったがな。

「あれはあれで、おまえを心配しているんだ」

「ハア……? 心配? なにがどう転がったらそんな単語が出るのよ?」

「なんだかんだで、あれとしっかりやり合ってくれる相手は、歴代の弟子でもイールギットくらいだったからな。貴重なケンカ友だちだ」

「チッ……いい迷惑よ」

「アリーシャには通用してないしな、マロネのあの勢いは」

「すごいわねアリーシャあの子。弟子入りしようかしら」

 実際、イールギットがやって来てから、マロネはいつにも増して活き活きしている。
 ウザ絡みにしてもそうだし……我が城の諜報官筆頭としてもそうだし。

 女王フラワーをはじめ、植物モンスターたちは水辺でおとなしくしている。
 理想的な門番になってくれそうだし、それに落ち着いて見ると、花の香りもなかなかよろしい。
 ふむ。

「よいしょこらせと……」

 身を起こした俺に、イールギットがあわてた。

「だ、大丈夫なの? 寝てたほうがいいわよ!」

「平気だ。すぐに酔い覚ましもくる」

「そ、そう……?」

「それに、今朝大量に酒を飲んでなければ、これほどにはならなかっただろうしな」

「おい」

「女王フラワーよ、ちょいと失敬」

 ふところから取り出した水筒に、大きな花びらから垂れる蜜を受ける。

「なんでそんなもん持ってんのよ!?」

「半分ピクニックのつもりだったから……」

「おい! さっきからおい!」

「大丈夫だ。水筒の中身はただのハーブティーだから」

「お酒じゃなくて安心したけど何がどう大丈夫なわけ!?」

 炎のスキルで焚き火を起こし、水筒ごと温める。
 うむ。
 思った通り、いいにおいだ。

「てゆーか、いまだに朝から飲んでるの!? やめなさいって言ったでしょ!?」

「はは、そうだったそうだった。イールギットにはいつも叱られていたな」
「っう……!」

「飲みすぎると長生きできない、ってな。魔王の寿命を気遣ってくれたのは、おまえくらいのものだった」

「し……知らない! 忘れたわ!」

 自分で今言ったんじゃないか。
 本当にやさしい子だな。

「さあ、できたぞ」

 コップに注ぎ分け、片方をイールギットに差し出す。

「即席だが、花蜜のシロップティーだ」


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