魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第3章 前衛タンク

第82話

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 くりゃくりゃ、と杖の先端で俺を小突き回すクソジジイに、

「朝から元気だな、ユグスじい!」

 張りのある声がかかった。
 若い女の声だ。

 長剣を腰にはいた赤毛の女性が、大股でこっちにやって来る。
 おお、とジジイが俺からはなれ、打って変わったにこにこ顔で1礼した。

「セオリナ姫様、おはようございます」

「おはよう。ずいぶん騒がしいな? 朝食のメニューでモメたか?」

「いえ、実は……あの者たちが……」

 ジジイが俺たちを指さしつつ、ごにょごにょと耳打ちする。
 なんか……状況が変わりそうな、変わらなそうな。

 正座させられてるだけで縛られてないし、これ1回逃げるべきかな?
 でもそうすると、もっかい入りこみ直すのが面倒だしなあ。

「ふむ……」

 ざくざくと、再び歩を進めた女が、俺たちの前にイスを置いて座る。

「私がセオリナだ。名前は?」

「ゼルスン。こっちの子はアリーシャ」

「ゼルスン。大人にしては、いたずらが過ぎるのではないかな? 朝起きて、知らない人間がいたらびっくりするだろう」

 確かに。
 人間じゃないけど。

「どうして我が隊に入りこんだんだ? かなり怒っている者もいるぞ?」

「お……俺たちは」

「うん?」

「俺たちは働きたいんだ!!」

 ぶわっ、と俺は両目から涙をあふれさせた……
 つもりで述べた。

「俺たちは貧乏で! そりゃもう貧乏で! なあアリーシャ!」

「はい」

「去年は魔物に畑も荒らされて! ツインテールの妹に食べさすメシもなくて! なあアリーシャ!」

「はい」

「ともかくも銭コになる仕事がしたい! そう焦るあまり! なあマロネ! じゃなかったアリーシャ!」

「はい」

『シャケは塩焼きに限るぅ』

 ツインテちぎってもみあげに植えかえるぞ。

「どうか! どうかお許しくだせえ姫様!!」

「は! なにをほざくかと思えば」

 さっきの若い騎士が嘲笑する。
 むむう……。名前なんだったっけなコイツ。

「たとえうそでも、もう少し練れ! とってつけたにもほどがある」

「うそじゃないんだ、ローモン殿!」

「ロームンだ! だいたい貴様ら、兄妹か? あまり似てないようだが」

「兄妹じゃないが、とてもこみいった事情があるから、仲良くなるまで聞かないでくれサーモン殿」

「ロームンだ!! わざとか!?」

 マロネの朝ごはんにつられて……

「姫様! やはりこいつら、近隣国のスパイでは!? お取り調べを!」

「……なんと……」

「姫様?」

「なんとけなげな……!」

「姫様!?」

 あれ?
 お姫さん泣いてる。
 どしたんどしたん?

「生きるために……家族のために、体を張って……そんな粗末な装備で! ううっ、貧困が憎いぞ……!」

「姫様! 絶対うそですって! よしんば本当だとしても、そこらの農村に立ち寄ればいくらでも転がってる設定ですって!」

「ロームン! 私のお小遣い入れをもて! 馬1頭ぶんの金を与えたい!」

「おやめください!? 我々が国王様にしかられてしまいます!」

 ふむ。
 そいつはー……金をくれるだかいうのは、こっちにも都合が悪い。
 せっかくだし、食らいつかせてもらうぞ。

「施しを受けるわけにはいかねえ! どうか俺たちの腕前を買ってください姫様!」

「おお、見事な倫理観……誇り高い……!」

「こっそり忍びこんだのも、はぐれ魔獣にでも遭遇したときに活躍させてもらえば、部隊のほうから入ってくれと言うに違いない! そう思ったからで」

「……ほう」

 涙をぬぐうセオリナ姫の、目つきが変わった。
 はは。
 そういう雰囲気がムンムンではあったが……
 この姫、根っからの戦闘好きだな?

「腕試しの機会さえいただければ、金をもらうに値することを証明してみせます」

「なるほどな。なかなかの口上だ……気に入った」

 姫様!? とうろたえる騎士と魔法使いを、彼女は片手をあげて制した。

「よい。どのみち、このところ人手不足だろう。ゼルスンとやら、我が国に冒険者登録は?」

「してないでやんす」

「ふむ、ならば相当ハードルは高いぞ? 後付け手続きは面倒だからな。それを我々にいとわせない自信は?」

「自信かあ……」

 すく、とアリーシャが立ち上がった。
 何の合図もしていないが、すでに全身から闘気があふれ出している。

 色めき立つ部下たちを抑えるセオリナ姫に、俺はにやりと笑ってみせた。

「確信でよければ、ってとこですかね」


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は5/30、19時ごろの更新です。
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