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悩める局長の受難
#7
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お出しした料理が無くったタイミングで、シオ様からデキャンタでレイシュとグラス四つ、アサヅケのご注文をいただきました。
ミケーノ様から追加でエダマメ、カーラ様からはチップス、カズロ様は塩キャベツを。
もちろん準備しておりますので、すぐにご用意しお出しします。
一通り料理とお酒がそろったタイミングで、カズロ様はお話を再開しました。
「評価の書類がそろったから今度は個人面談をするんだ。局長と局員、あと僕の上の方の三人だ」
「カズロの上司? って…」
「今は王太子殿下だね」
───────
トゥオーノ・オランディ殿下は、17歳で王太子になってから部下の意見を積極的に取り入れ、三年で国の流通を磐石にした聡明な方だ。
混じり気のないプラチナブロンドと済んだアクアマリンの瞳。整った顔立ちとスラリと伸びた足で、たくましく鍛えられた体躯を感じさせず優美に見せる。
国内外から人気の殿下だが「国民が喜んでくれるのが一番嬉しい、王太子だからできる事があるならどんどん頼って欲しい」などと言ってはばからない……天は二物も三物も与えたようなお方だ。
その日、ユメノはいつもより早く起きて朝の支度にいつも以上に時間をかけた。
あの王子様に会える!
ネストレ様もカズロ様も素敵だけど、王子は次元が違う!
前の面談の時は王妃様だった。
農産局は本当に酷い場所だった……いつも農薬の匂いがするし、オジサンばっかだし! 若い娘がいるのに邪魔扱い!
近くの聖獣の小屋でもふもふ出来なかったら耐えられたもんじゃなかったわ……
面談では王妃さま、アタシが喋る度に扇子で口元を隠してイヤな顔……本当に感じが悪かった。
そのまま聖獣局に移動希望出したけど、あっちはあっちで……
今はイケメンのカズロさんの下でメキメキ働いてるんだし、そろそろ昇給しても良いはずよね!
アタシは今日の17時から面談。統計局員で一番最後になるらしい。
それまで暇だから、適当に抜け出して散歩でもしておこう。
───────
「ちょ、ちょっと待って、なんでカズロがユメノの行動にそんな詳しいの?」
「本人が面談で全部言ってたからね」
「う、わぁ……」
───────
17時、カズロさんからの伝書鳩が。
ついに王太子様と会えるのね!
前髪の乱れをチェックして……よし、今日もかわいい!
指定された会議室をノックする
「どうぞ」
この低音ボイスはカズロさん!
「失礼しまーす!」
元気よく入室すると……そこにはキラキラ輝く、文字通り王子様が…
「お、王子様……ステキ……」
思わず口から感想が飛び出してしまった。
それを聞いたカズロさんの眉間にシワが……
王子様は爽やかに微笑んで
「ふふ、ありがとう。とりあえず時間も短いから座ってくれるかな?」
と声をかけてもらっちゃった!
ふら~と椅子まで歩いて、そのまますとんと座る……
椅子に座ったのを確認してか、カズロさんが話始めました。
酷い! 酷すぎる!
悪口ばっかりじゃない!
顔が良いからって言っていいことと悪いことがある!!
「はっ!? はぁーー!? なんでそんな事になるの!?」
ありえない! ありえなすぎる!
昇給なしどころか、減給!? 移動!?
「君は今日、昼休憩から面談までどこに居たんだ?」
「席にいましたっ」
「意見書の中に君の離席の多さの指摘が多数あったから、先週から一時間ごとに写真を撮る写真機が置いてあったんだ」
「はぁ?」
「どうも、半分近く君が写っていないね」
「な、何それ! プライバシーの侵害です!」
「君は今日、昼休憩から面談までどこに居たんだ?」
「だからプライバシーの」
「君は、今日、昼休憩から、面談まで、どこに、居たんだ?」
言葉を切ってカズロさんが言う。わたしの話を聞いてくれないなんて!
「……たまたま備品の補充で居なかったんです」
「それに関しては局員から総務に頼んでいないと聞いている」
「そんな事ないです! それ部長の事言ってるんですよ!」
「部長から毎月備品の納入記録を預かっている。何故部長から受け取っているか分かるか?」
「さぁ? そんな記録があるの今聞きましたし」
そういえばそんな話あったような……最初の頃部長が説明してた気がするけど、適材適所で部長がやる事になったんだっけ。
「君は今日備品の補充をしていたんだよね、なら納入記録があるはずだが?」
「そんなもの見たこともありません!」
「では、どうやって何を補充していたんだ?」
「それは……共同テーブルのインクが減ってたら棚から持ってきて補充したり」
「……」
「あ、あと共同テーブルのメモ用紙が減ってたら棚から補充して……」
「つまり、共同テーブルの備品を補充していたと?」
「そうです! 統計局のみんなのために! って!」
───────
「話の腰を折るようで申し訳ないのですが」
「どうぞ、シオ」
「備品の補充というか管理って、注文と納入の伝票管理・各所への補充と在庫管理……とは違うのですか?」
「その通りだよ」
「どうにもユメノさんとそこの会話が噛み合ってないような……」
一口レイシュを飲むと、カズロ様は答えました。
「そこもだけど、総務部でやってほしかったのは備品管理、会議スケジュールの管理と予約、局員の出張に纏わる宿・交通費・雑費などの経費と……っていう雑用全般だったんだけど」
「私の会社の総務はもう少し色々やってくれますよ」
「ワタシのとこは掃除までしてくれてるの! 優秀な子なのよ~!」
「俺んとこのは暇な時野菜の処理してくれる事もあるぜ!」
皆様優秀なスタッフが在籍されてるようですね。
当店は私以外の従業員はおりません。
「備品管理すら満足にこなしてくれてないんだよね」
「え、じゃあ何してんだ? 暇じゃねーの?」
「お散歩、かね……」
「健康的ですね……」
「ここは証拠がないからどうしようもなくて。だから基本的な仕事もしていないって路線で詰めることにしたんだ」
ここまではカズロ様の計画通りのようですね。
ただこれだけでは公務員資格剥奪とまではいかないのでは……
「前の面談は農産局での面談だったんだけど、面談相手の王妃様がギブアップしてなんとか逃げおおせたんだ。だから逃げようのない罠を張って、自白させるように誘導したんだ」
「さすがカズロ……ここ最近は見なかったけど、鷹の名は健在ね」
「それ、恥ずかしいからやめて欲しいんだよね……」
カズロ様は今でこそ優しい局長だと言われておりますが、過去に豪商の数字の不正を見抜いた事から、鷹と呼ばれております。
王国の鷹の罠、私もとても興味があります。
ミケーノ様から追加でエダマメ、カーラ様からはチップス、カズロ様は塩キャベツを。
もちろん準備しておりますので、すぐにご用意しお出しします。
一通り料理とお酒がそろったタイミングで、カズロ様はお話を再開しました。
「評価の書類がそろったから今度は個人面談をするんだ。局長と局員、あと僕の上の方の三人だ」
「カズロの上司? って…」
「今は王太子殿下だね」
───────
トゥオーノ・オランディ殿下は、17歳で王太子になってから部下の意見を積極的に取り入れ、三年で国の流通を磐石にした聡明な方だ。
混じり気のないプラチナブロンドと済んだアクアマリンの瞳。整った顔立ちとスラリと伸びた足で、たくましく鍛えられた体躯を感じさせず優美に見せる。
国内外から人気の殿下だが「国民が喜んでくれるのが一番嬉しい、王太子だからできる事があるならどんどん頼って欲しい」などと言ってはばからない……天は二物も三物も与えたようなお方だ。
その日、ユメノはいつもより早く起きて朝の支度にいつも以上に時間をかけた。
あの王子様に会える!
ネストレ様もカズロ様も素敵だけど、王子は次元が違う!
前の面談の時は王妃様だった。
農産局は本当に酷い場所だった……いつも農薬の匂いがするし、オジサンばっかだし! 若い娘がいるのに邪魔扱い!
近くの聖獣の小屋でもふもふ出来なかったら耐えられたもんじゃなかったわ……
面談では王妃さま、アタシが喋る度に扇子で口元を隠してイヤな顔……本当に感じが悪かった。
そのまま聖獣局に移動希望出したけど、あっちはあっちで……
今はイケメンのカズロさんの下でメキメキ働いてるんだし、そろそろ昇給しても良いはずよね!
アタシは今日の17時から面談。統計局員で一番最後になるらしい。
それまで暇だから、適当に抜け出して散歩でもしておこう。
───────
「ちょ、ちょっと待って、なんでカズロがユメノの行動にそんな詳しいの?」
「本人が面談で全部言ってたからね」
「う、わぁ……」
───────
17時、カズロさんからの伝書鳩が。
ついに王太子様と会えるのね!
前髪の乱れをチェックして……よし、今日もかわいい!
指定された会議室をノックする
「どうぞ」
この低音ボイスはカズロさん!
「失礼しまーす!」
元気よく入室すると……そこにはキラキラ輝く、文字通り王子様が…
「お、王子様……ステキ……」
思わず口から感想が飛び出してしまった。
それを聞いたカズロさんの眉間にシワが……
王子様は爽やかに微笑んで
「ふふ、ありがとう。とりあえず時間も短いから座ってくれるかな?」
と声をかけてもらっちゃった!
ふら~と椅子まで歩いて、そのまますとんと座る……
椅子に座ったのを確認してか、カズロさんが話始めました。
酷い! 酷すぎる!
悪口ばっかりじゃない!
顔が良いからって言っていいことと悪いことがある!!
「はっ!? はぁーー!? なんでそんな事になるの!?」
ありえない! ありえなすぎる!
昇給なしどころか、減給!? 移動!?
「君は今日、昼休憩から面談までどこに居たんだ?」
「席にいましたっ」
「意見書の中に君の離席の多さの指摘が多数あったから、先週から一時間ごとに写真を撮る写真機が置いてあったんだ」
「はぁ?」
「どうも、半分近く君が写っていないね」
「な、何それ! プライバシーの侵害です!」
「君は今日、昼休憩から面談までどこに居たんだ?」
「だからプライバシーの」
「君は、今日、昼休憩から、面談まで、どこに、居たんだ?」
言葉を切ってカズロさんが言う。わたしの話を聞いてくれないなんて!
「……たまたま備品の補充で居なかったんです」
「それに関しては局員から総務に頼んでいないと聞いている」
「そんな事ないです! それ部長の事言ってるんですよ!」
「部長から毎月備品の納入記録を預かっている。何故部長から受け取っているか分かるか?」
「さぁ? そんな記録があるの今聞きましたし」
そういえばそんな話あったような……最初の頃部長が説明してた気がするけど、適材適所で部長がやる事になったんだっけ。
「君は今日備品の補充をしていたんだよね、なら納入記録があるはずだが?」
「そんなもの見たこともありません!」
「では、どうやって何を補充していたんだ?」
「それは……共同テーブルのインクが減ってたら棚から持ってきて補充したり」
「……」
「あ、あと共同テーブルのメモ用紙が減ってたら棚から補充して……」
「つまり、共同テーブルの備品を補充していたと?」
「そうです! 統計局のみんなのために! って!」
───────
「話の腰を折るようで申し訳ないのですが」
「どうぞ、シオ」
「備品の補充というか管理って、注文と納入の伝票管理・各所への補充と在庫管理……とは違うのですか?」
「その通りだよ」
「どうにもユメノさんとそこの会話が噛み合ってないような……」
一口レイシュを飲むと、カズロ様は答えました。
「そこもだけど、総務部でやってほしかったのは備品管理、会議スケジュールの管理と予約、局員の出張に纏わる宿・交通費・雑費などの経費と……っていう雑用全般だったんだけど」
「私の会社の総務はもう少し色々やってくれますよ」
「ワタシのとこは掃除までしてくれてるの! 優秀な子なのよ~!」
「俺んとこのは暇な時野菜の処理してくれる事もあるぜ!」
皆様優秀なスタッフが在籍されてるようですね。
当店は私以外の従業員はおりません。
「備品管理すら満足にこなしてくれてないんだよね」
「え、じゃあ何してんだ? 暇じゃねーの?」
「お散歩、かね……」
「健康的ですね……」
「ここは証拠がないからどうしようもなくて。だから基本的な仕事もしていないって路線で詰めることにしたんだ」
ここまではカズロ様の計画通りのようですね。
ただこれだけでは公務員資格剥奪とまではいかないのでは……
「前の面談は農産局での面談だったんだけど、面談相手の王妃様がギブアップしてなんとか逃げおおせたんだ。だから逃げようのない罠を張って、自白させるように誘導したんだ」
「さすがカズロ……ここ最近は見なかったけど、鷹の名は健在ね」
「それ、恥ずかしいからやめて欲しいんだよね……」
カズロ様は今でこそ優しい局長だと言われておりますが、過去に豪商の数字の不正を見抜いた事から、鷹と呼ばれております。
王国の鷹の罠、私もとても興味があります。
応援ありがとうございます!
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