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雪景色に踊る港の暴風
#10
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時刻は昼過ぎ、空は昨日から雨模様。
窓を打ち付ける雨が、私をこの室内に留めようとしているようです。
私はいつものように、新聞を読みながら遅い昼食を食べていました。
そろそろかと予想はしていましたが、新聞の見出しにユメノ様が登場しました。
『夜の市場で "黒い暴風" が荒れ狂う』
とある女性Y.Bが夜の市場で港の管理部に暴言を吐き、止めようとした騎士団員と居合わせた客数名に重軽傷を負わせた。
現場の屋台十数件からの被害報告もあり、騎士団が調査を進めている。
女性は現行犯で逮捕されており、現在は騎士団の監視下に置かれている。
ミケーノ様の話から随分経った日の新聞に載った事から考え、昨日辺り情報規制の一部が解かれたのかと思います。
もう誌面の情報を統制するだけでは意味がありませんし、人の口にとは立てられませんからね。
市場にいた何人かは女性の正体に気付いているでしょう。
私はユメノ様が本当の意味で認められる日を楽しみにしていたのですけどね……
きっとこれは私のエゴなのでしょうけど。
食器類を片付け、今日は読書をして過ごそうと考えていた時。
来客を告げるチャイムが鳴りました。
大家さんだと思いドアを開けたところ、色々と予想外な事が待ち受けていました。
「初めまして、君がキーノス君だよね?」
見目麗しい騎士の方が気さくに挨拶をしてくださいました。
先程の陰鬱とした気分を吹き飛ばすような、春を思わせる笑顔を浮かべています。
「初めまして、私がキーノスでございます。失礼ですが、」
「うぃーっす! キーちゃん!」
挨拶を返している最中に、聞きなれた声が聞こえました。
私をそのように呼ぶ人間はこの世で一人です。
「ご無沙汰しておりますビャンコ様」
「おひさ! 寒いから入って良い?」
「申し訳ありませんが、本日は来客の予定がありませんので、ご遠慮いただけますと幸いです」
「ぶふっ、店の外もそんな感じなの?」
「大変申し訳ありません」
嫌な予感がします。
先程から気になって仕方がないですが、ローブを着ているのに、肝心の猫が見当たりません。
「ハナビ」
白い男が囁きました。
「ここに鳩呼んでいい? 百匹くらい」
白い男が白い鳥をここへ呼ぶつもりのようです。
「噴水前でどうぞ」と言いたいのを堪え、私は軽く頭を下げてから申しあげました。
「まだ寒い季節ですし、よろしければこの部屋のリビングにご招待させていただきますがいかがでしょうか?」
「ありがと! 寒かったんだよね!」
私の招待を聞いてすぐ、ビャンコ様が私を押しのけて部屋に入り、玄関で靴を脱ぎ始めます。
一緒にいらした騎士様が、この様子を見て震えております。
「よろしければ、騎士様もいかがですか?」
「ふっ……ありがたくご招待お受けする」
気を取り直したのか、慣れた様子で上品にお辞儀をなさいました。
私は軽く会釈をして応じます。
靴と格闘なさっているビャンコ様の横を通り抜け、お客様の為にお茶の用意を始めます。
幸い部屋は片付いておりますのでお通ししましたが……
「キーちゃん寝室どこ?」
「リビングにてお待ちください」
「えーじゃあお風呂は?」
「リビングにてお待ちください」
「トイレならいいよね?」
「リビングにてお待ちください」
「今躱してもまた来るから無駄だよ?」
「近々引っ越す予定がございますのでご安心ください」
玄関からリビングへ続く狭い廊下には猫ローブが広がって落ちていました。
私がお茶の用意をしている間に部屋を漁ろうとするのを、なんとか口頭で止めます。
「あっちが寝室?」
「お待たせしました。お茶をお持ち致しましたので、そちらのソファへお掛けになってください」
ドアノブに手をかけた状態で阻止することに成功しました。
ちなみにその部屋は書斎です。
私はお茶と小さなお菓子を配膳した後、騎士様の上着を受け取りビャンコ様のローブ拾い、玄関の衣類スタンドに二人の上着を掛けました。
リビングに戻ると二人は私が出した紅茶を召し上がっていました。
何かされた様子も無い事に安心し、テーブルの横にある椅子へ腰掛けました。
「突然の訪問申し訳ない、私はネストレ・アドルナート、オランディ王の下で騎士をしている」
「ご丁寧な自己紹介ありがとうございます、お会いできて光栄です」
「久しぶりだねキーノス。今日はいきなり来たりして悪かったね」
綺麗に自己紹介してますが、ニヤけた口元と脱ぎ捨てられたローブがあらゆるものを台無しにしております。
「お待たせして大変申し訳ありませんでした、本日はどういったご用件でこちらへ?」
「あー、まずはビャンコが失礼を詫びる」
どれに関してでしょうか?
メカブの件か、ソファの件か、あだ名の件か、女装の……
「大丈夫だよいつもの事だし、キーちゃんこんな事じゃ怒らんよ」
「しかし初対面の相手の私室で服を脱ぎ捨てたり部屋を漁ったりするのは、いくらなんでも失礼だろ?」
「オレは初対面じゃないし、服はいつもの事だし、漁るほど物はないし」
本当にネストレ様は紳士的な方のようです。
ビャンコ様はすでに漁っていらしたのですね。
「お気になさらないでください、ネストレ様もお寛ぎいただけますと幸いです」
ビャンコ様までとは言いませんが。
「はは、そうか。じゃあすまないが少し楽にさせてもらうよ」
ネストレ様は一番上まで止めていたボタンを外し、首元を緩めました。
それから一息つき、真剣な表情になりこちらを見ました。
「まずは、例の薬品の件の証言が欲しい」
「言っとくけど。オレ庁舎でネッすんとハナビ見てたから、ネッすんにはハナビがオレじゃないのはバレてんよ」
「左様でございましたか」
「オレも納得してハナビ犯なったけど、例の薬品を見つけた証言も必要でね」
「ビャンコから色々話は聞いてるし、不要に話を広めないと約束する」
困りました。
発見の経緯ならメル様の理解の話をしなけれはなりません。
誰かの秘密にするべき内容を第三者に口外するのは気が引けます。
「メルクリオ君の事は知ってんよ。てかあの日キーちゃんから聞いた話はネッすんだけにはしてあるし」
「まさかテロの証拠を新年祝いに変えるとはね、楽しい考えをお持ちだ」
「……光栄です」
「ちゃっかり自分の店の宣伝してたよね、全然伝わってなかったけど」
「そのつもりはありませんでした」
「ま、とにかくキーちゃんの口から説明してもらっていい? 報告書と公表する内容は上手く誤魔化すから」
「承知致しました」
私は年末に起きた話を話しました。
ほとんどビャンコ様にお話した内容と変わりませんが、本人からの説明を聞くことに意味があるのでしょう。
「ビャンコの話と一致する」
「でしょ?」
「いくつか質問をしても良いかな?」
「もちろんです」
紅茶を一口召し上がり、ネストレ様が話を続けました。
「君もメルクリオ君も、そしてビャンコも実際に見てるんだろうけど、僕にはユメノ嬢がそこまで酷いことを言うとは思えなく……」
背もたれに身を預け、腕を組んで何かを思い出しているようです。
「問題のある人物なのは分かるが、噴水広場で街中の人に殺意を込めた発言をする人物とまでは思えないんだ」
「ネッすんユメノのこと好きなん?」
「好感を持つほど興味がないと言うのが正しいかな」
「だって噴水前で『視界に入る奴ら全員死ねば良いのよ!』だよ?やばいでしょ」
ビャンコ様が裏声でユメノ様の真似をします。
「それが実際聞けたらねぇ……」
「例のメガネを試していただければ良いのでは」
「あれは術士が使えばハッキリ見えるけど、ネッすんが使っても発言とか見た目にモヤがかかるくらいだってよ」
「発言が少し聞き取りにくくなったから、君たちの言ってることが正しいのは分かるんだがね」
そんな差があったのですか。
「薬品の件をしらばっくれててね……そんなものだとは知らなかった、変わったコーヒーだと思ってた、殺すなんて怖いこと言えない、メルクリオ君の罠だ……で埒が明かない状態で」
「オレも尋問参加したけど、ぜ~んぜんダメ。メガネを掛けると罵詈雑言なんだけど、実際に聞こえんのは『違うんですぅ~』だし。術士だけ分かる物じゃ証拠にはしにくいんよね」
「ある程度の拘束は出来るけど、今の罪状だけなら罰金と保釈金払えばすぐに外に出れるんだよね」
「彼女は現在実質無職ですから、罰金はかなり手痛い事では?」
「彼女の後見人のブランカ氏がね……自分の監督不行届だと言って、全額払おうとしてるんだ」
ブランカ様は大きな商会をお持ちで、何より人格者として有名です。
商会もお人柄で成り立っているような方です。
自他ともに厳しいあの方ならやりそうですね。
「倍賞金や復興支援はもちろん、その後はちゃんと見張るとは言ってるんだが……」
「ユメノが公務員をクビになった後はしばらくは軟禁してたみたいよ。『冒険者になる』発言以降は軟禁も難しかったみたい」
今回のユメノ様の件は、後見人のブランカ様と本当の暴言が確認できない事で、騎士団は動けなくなってしまったようですね。
「もし暴言も認識出来たら解決しますか? 仮にそれが術の力によるものでも」
私には暴言は簡単な問題だと考え、ネストレ様に提案してみました。
「そんな事が可能なのか? もちろん解決するし、術の使用は問題にならない。元々はメガネ越しに見たものを証拠にする予定だったし」
春の花のような明るい笑顔を咲かせます。
ビャンコ様は私が解決のご提案を始めてからずっとニヤニヤと私を見ています。
こうなる事を予測していたのでしょう。
「準備と協力者が必要です」
「協力出来ることがあれば言ってくれ、何でもするぞ!」
私は考えた作戦をお伝えした結果、二日後決行する流れになりました。
窓を打ち付ける雨が、私をこの室内に留めようとしているようです。
私はいつものように、新聞を読みながら遅い昼食を食べていました。
そろそろかと予想はしていましたが、新聞の見出しにユメノ様が登場しました。
『夜の市場で "黒い暴風" が荒れ狂う』
とある女性Y.Bが夜の市場で港の管理部に暴言を吐き、止めようとした騎士団員と居合わせた客数名に重軽傷を負わせた。
現場の屋台十数件からの被害報告もあり、騎士団が調査を進めている。
女性は現行犯で逮捕されており、現在は騎士団の監視下に置かれている。
ミケーノ様の話から随分経った日の新聞に載った事から考え、昨日辺り情報規制の一部が解かれたのかと思います。
もう誌面の情報を統制するだけでは意味がありませんし、人の口にとは立てられませんからね。
市場にいた何人かは女性の正体に気付いているでしょう。
私はユメノ様が本当の意味で認められる日を楽しみにしていたのですけどね……
きっとこれは私のエゴなのでしょうけど。
食器類を片付け、今日は読書をして過ごそうと考えていた時。
来客を告げるチャイムが鳴りました。
大家さんだと思いドアを開けたところ、色々と予想外な事が待ち受けていました。
「初めまして、君がキーノス君だよね?」
見目麗しい騎士の方が気さくに挨拶をしてくださいました。
先程の陰鬱とした気分を吹き飛ばすような、春を思わせる笑顔を浮かべています。
「初めまして、私がキーノスでございます。失礼ですが、」
「うぃーっす! キーちゃん!」
挨拶を返している最中に、聞きなれた声が聞こえました。
私をそのように呼ぶ人間はこの世で一人です。
「ご無沙汰しておりますビャンコ様」
「おひさ! 寒いから入って良い?」
「申し訳ありませんが、本日は来客の予定がありませんので、ご遠慮いただけますと幸いです」
「ぶふっ、店の外もそんな感じなの?」
「大変申し訳ありません」
嫌な予感がします。
先程から気になって仕方がないですが、ローブを着ているのに、肝心の猫が見当たりません。
「ハナビ」
白い男が囁きました。
「ここに鳩呼んでいい? 百匹くらい」
白い男が白い鳥をここへ呼ぶつもりのようです。
「噴水前でどうぞ」と言いたいのを堪え、私は軽く頭を下げてから申しあげました。
「まだ寒い季節ですし、よろしければこの部屋のリビングにご招待させていただきますがいかがでしょうか?」
「ありがと! 寒かったんだよね!」
私の招待を聞いてすぐ、ビャンコ様が私を押しのけて部屋に入り、玄関で靴を脱ぎ始めます。
一緒にいらした騎士様が、この様子を見て震えております。
「よろしければ、騎士様もいかがですか?」
「ふっ……ありがたくご招待お受けする」
気を取り直したのか、慣れた様子で上品にお辞儀をなさいました。
私は軽く会釈をして応じます。
靴と格闘なさっているビャンコ様の横を通り抜け、お客様の為にお茶の用意を始めます。
幸い部屋は片付いておりますのでお通ししましたが……
「キーちゃん寝室どこ?」
「リビングにてお待ちください」
「えーじゃあお風呂は?」
「リビングにてお待ちください」
「トイレならいいよね?」
「リビングにてお待ちください」
「今躱してもまた来るから無駄だよ?」
「近々引っ越す予定がございますのでご安心ください」
玄関からリビングへ続く狭い廊下には猫ローブが広がって落ちていました。
私がお茶の用意をしている間に部屋を漁ろうとするのを、なんとか口頭で止めます。
「あっちが寝室?」
「お待たせしました。お茶をお持ち致しましたので、そちらのソファへお掛けになってください」
ドアノブに手をかけた状態で阻止することに成功しました。
ちなみにその部屋は書斎です。
私はお茶と小さなお菓子を配膳した後、騎士様の上着を受け取りビャンコ様のローブ拾い、玄関の衣類スタンドに二人の上着を掛けました。
リビングに戻ると二人は私が出した紅茶を召し上がっていました。
何かされた様子も無い事に安心し、テーブルの横にある椅子へ腰掛けました。
「突然の訪問申し訳ない、私はネストレ・アドルナート、オランディ王の下で騎士をしている」
「ご丁寧な自己紹介ありがとうございます、お会いできて光栄です」
「久しぶりだねキーノス。今日はいきなり来たりして悪かったね」
綺麗に自己紹介してますが、ニヤけた口元と脱ぎ捨てられたローブがあらゆるものを台無しにしております。
「お待たせして大変申し訳ありませんでした、本日はどういったご用件でこちらへ?」
「あー、まずはビャンコが失礼を詫びる」
どれに関してでしょうか?
メカブの件か、ソファの件か、あだ名の件か、女装の……
「大丈夫だよいつもの事だし、キーちゃんこんな事じゃ怒らんよ」
「しかし初対面の相手の私室で服を脱ぎ捨てたり部屋を漁ったりするのは、いくらなんでも失礼だろ?」
「オレは初対面じゃないし、服はいつもの事だし、漁るほど物はないし」
本当にネストレ様は紳士的な方のようです。
ビャンコ様はすでに漁っていらしたのですね。
「お気になさらないでください、ネストレ様もお寛ぎいただけますと幸いです」
ビャンコ様までとは言いませんが。
「はは、そうか。じゃあすまないが少し楽にさせてもらうよ」
ネストレ様は一番上まで止めていたボタンを外し、首元を緩めました。
それから一息つき、真剣な表情になりこちらを見ました。
「まずは、例の薬品の件の証言が欲しい」
「言っとくけど。オレ庁舎でネッすんとハナビ見てたから、ネッすんにはハナビがオレじゃないのはバレてんよ」
「左様でございましたか」
「オレも納得してハナビ犯なったけど、例の薬品を見つけた証言も必要でね」
「ビャンコから色々話は聞いてるし、不要に話を広めないと約束する」
困りました。
発見の経緯ならメル様の理解の話をしなけれはなりません。
誰かの秘密にするべき内容を第三者に口外するのは気が引けます。
「メルクリオ君の事は知ってんよ。てかあの日キーちゃんから聞いた話はネッすんだけにはしてあるし」
「まさかテロの証拠を新年祝いに変えるとはね、楽しい考えをお持ちだ」
「……光栄です」
「ちゃっかり自分の店の宣伝してたよね、全然伝わってなかったけど」
「そのつもりはありませんでした」
「ま、とにかくキーちゃんの口から説明してもらっていい? 報告書と公表する内容は上手く誤魔化すから」
「承知致しました」
私は年末に起きた話を話しました。
ほとんどビャンコ様にお話した内容と変わりませんが、本人からの説明を聞くことに意味があるのでしょう。
「ビャンコの話と一致する」
「でしょ?」
「いくつか質問をしても良いかな?」
「もちろんです」
紅茶を一口召し上がり、ネストレ様が話を続けました。
「君もメルクリオ君も、そしてビャンコも実際に見てるんだろうけど、僕にはユメノ嬢がそこまで酷いことを言うとは思えなく……」
背もたれに身を預け、腕を組んで何かを思い出しているようです。
「問題のある人物なのは分かるが、噴水広場で街中の人に殺意を込めた発言をする人物とまでは思えないんだ」
「ネッすんユメノのこと好きなん?」
「好感を持つほど興味がないと言うのが正しいかな」
「だって噴水前で『視界に入る奴ら全員死ねば良いのよ!』だよ?やばいでしょ」
ビャンコ様が裏声でユメノ様の真似をします。
「それが実際聞けたらねぇ……」
「例のメガネを試していただければ良いのでは」
「あれは術士が使えばハッキリ見えるけど、ネッすんが使っても発言とか見た目にモヤがかかるくらいだってよ」
「発言が少し聞き取りにくくなったから、君たちの言ってることが正しいのは分かるんだがね」
そんな差があったのですか。
「薬品の件をしらばっくれててね……そんなものだとは知らなかった、変わったコーヒーだと思ってた、殺すなんて怖いこと言えない、メルクリオ君の罠だ……で埒が明かない状態で」
「オレも尋問参加したけど、ぜ~んぜんダメ。メガネを掛けると罵詈雑言なんだけど、実際に聞こえんのは『違うんですぅ~』だし。術士だけ分かる物じゃ証拠にはしにくいんよね」
「ある程度の拘束は出来るけど、今の罪状だけなら罰金と保釈金払えばすぐに外に出れるんだよね」
「彼女は現在実質無職ですから、罰金はかなり手痛い事では?」
「彼女の後見人のブランカ氏がね……自分の監督不行届だと言って、全額払おうとしてるんだ」
ブランカ様は大きな商会をお持ちで、何より人格者として有名です。
商会もお人柄で成り立っているような方です。
自他ともに厳しいあの方ならやりそうですね。
「倍賞金や復興支援はもちろん、その後はちゃんと見張るとは言ってるんだが……」
「ユメノが公務員をクビになった後はしばらくは軟禁してたみたいよ。『冒険者になる』発言以降は軟禁も難しかったみたい」
今回のユメノ様の件は、後見人のブランカ様と本当の暴言が確認できない事で、騎士団は動けなくなってしまったようですね。
「もし暴言も認識出来たら解決しますか? 仮にそれが術の力によるものでも」
私には暴言は簡単な問題だと考え、ネストレ様に提案してみました。
「そんな事が可能なのか? もちろん解決するし、術の使用は問題にならない。元々はメガネ越しに見たものを証拠にする予定だったし」
春の花のような明るい笑顔を咲かせます。
ビャンコ様は私が解決のご提案を始めてからずっとニヤニヤと私を見ています。
こうなる事を予測していたのでしょう。
「準備と協力者が必要です」
「協力出来ることがあれば言ってくれ、何でもするぞ!」
私は考えた作戦をお伝えした結果、二日後決行する流れになりました。
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