38 / 185
雪景色に踊る港の暴風
#11
しおりを挟む
アタシの部屋の前に朝から騎士が来た。
「今日は陛下の前で話をしてもらう。改めて招集に来るので、準備して待つように」
「はぁ? 何でよ?」
招集? てかアンタ敬語使いなさいよ。
「同じ話ならアンタがしといてよ」
なんなのあの騎士の態度、異世界人に対して敬意がないわ!
本当になんなの? イライラする!
選ばれた人間よねアタシ。こんなに可愛くなったのに。
麗しの君もカズロさんも白い局長様も王子様もなびかない。
ここはアタシが魔法使えて幸せになるハッピーな世界よね? お金出してくれるオジサンも厳しいし、誰もアタシを称えない!
王様からの呼び出しはかわいそうな私への謝罪に違いないわ。
でも謝罪ならアンタ達が来なさいよ、何よ招集って!
───────
「ユメノ・ブランカ。中へ」
中からの偉そうな声に反応して騎士が扉を開ける。
ファンタジーチックな玉座? みたいな雰囲気だけどなんか半端な広さね。
でも、真ん中に長い赤いカーペット……その先に王様、隣に王子様!
ここってもしかして教会!?
謝罪じゃなくて王子様と結婚式!? 王子様、気が早くないかな? プロポーズもまだよ?
左右に人がたくさん……お祝いしてくれるのかな?
カズロさんと白い局長様もいる! でも……ごめんなさい、アタシは王子様と……
「ブランカ君、久しぶりだね」
王子様がアタシに声をかけてくれた。
緊張してるのかな、顔が強ばってる。アタシとの結婚でドキドキしてるのかな……
「はいっ! 王子様とまた会えて嬉しい……」
感動で変な声が。
「何度も悪いとは思うけど、君が市場で何をしたかを説明してくれるかな?」
「はいっもちろんです!」
まずは前座よね、やっぱ。
アタシは切々と訴えた……市場でコーヒーが盗まれた事、犯人を捕まえて欲しいのに何もしてくれなかった事。
犯人はあの店員で、市場に隠れていたかもしれない事。
被害者なのに閉じ込められた理由が分からなかったけど、ここで王子様と結婚式をやる為だと気付いて嬉しかった事!
「……それで全部かい?」
「はいっ! アタシ、覚悟が出来てます!」
王子様が王様を見て頷いた。
ついに式が始まるのかしら!
「そうか、いくつか聞くが構わんね?」
王様がアタシに? アンタに用はないのよ。
「何?」
「……君のコーヒーはこれだね?」
横にいた騎士が持ってたお盆からビンを取ってみせる。
アタシのコーヒー!
「それ! どうしてここに!」
「証拠品として提出されたんだ」
「証拠? アイツ捕まえたの?」
王様はアタシを無視して、コーヒーの粉を少しだけ取り出してマッチで火をつけようとする!
「ちょっと! そんな事したら!」
「ん? これはコーヒーなんだろ? だったら火をつけても問題なかろう?」
「大問題よ! 何してんの!?」
アタシの訴えを無視して火をつけた!
危ない!!
アタシはそう思ってしゃがんで頭を抱えた!
……? 何も起きない?
「頭を上げろ」
はァ? 偉そうに……。
アタシは大人しく立ち上がる。王様を見ると、何ともない。あれ?
「なぜ、しゃがんで頭を守った?」
「……そういうコーヒーだからよ。知らないの?」
「では飲んでみてはくれないか? 私はコーヒーが苦手でね」
「いらないわ! そんな事より」
「では次の質問だ」
は? まだやるの? もういいでしょアイツ捕まったんだし。
「君が言う犯人の彼だが」
「ここに呼んでよ、謝らせるから!」
「どうして彼が犯人だと思ったんだ?」
「は? だってアイツ、アタシが話しかけたらいきなり『それどこにあるの!?』って掴みかかってきたのよ? 狙ってたに決まってるわ!」
「どうして彼に話しかけた?」
「新聞に載ってた麗しの楽士様の居場所を知ってるからよ!」
「なぜ知ってると?」
「あの新聞のディーボ、アイツんとこの店長なのよね。店員なら知っててもおかしくないわ」
「……その楽士の話は聞けたのか?」
「それが、アイツ酷いのよ! 何聞いても『シリマセーン』『ワカリマセーン』であったま来て!」
思い出したらイライラしてきたわ……
「本当は殴ってやりたかったわ! でも人が多いから我慢して、脅しつけてやったの!」
「ほぉ、それはどんな風に?」
あら王様、こういう刺激的なお話が好き?
でもアタシの魔法で全部変換されちゃうのよね~。
さっきのも違う内容になってるんだろうなー、ホントウケる。
本当の事教えてあげられないのは可哀想だけど、仕方ないよね!
「これ以上下らない事言うなら、アンタ市場ごと爆発させるよ! って!」
ちょっとうろ覚えだけど、良い決めゼリフ!
みんなにはなんて聞こえてるのかな?
「そしたらいきなり『爆弾はどこ!?』って聞いてきて。だから市場にば……コーヒーがあったのも知ってたはずよ!」
この刺激的な話、楽しんでくれたかしら?
変ね、額に手を当てて首を振ってる。
面白くなかったかしら? 変換されたから?
「ミス・ブランカ。自分で言ってる事の矛盾に気付いてるか?」
「え? あそっか、ちゃんと聞こえないんだよね。こういう時面倒くさいわねこの魔法」
「……君はメルクリオがコーヒーを盗んだ犯人と言った」
「そうよ! 捕まえてくれたんでしょ?」
「疑った理由は、コーヒーの場所を知っているからだと」
「えぇ、間違いないわ!」
「知ったのは君との会話から、だな?」
「そうよ、ば……コーヒーはどこ!? ってすごい勢いだったわ!」
「これがその『コーヒー』」
「そうよ!」
「さっきこれに火をつけようとしたら頭を抱えてしゃがんだな、なぜだ?」
「そ、それは……そういうコーヒーだからよ!」
「君は彼に爆破予告をしたんだよな?」
「え??」
「楽士の居所を教えなければ、市場ごと爆発させる、と。」
え? なんでちゃんと伝わってるの?
騎士団の尋問でも全く伝わらなかったのに。
「今度はちゃんと見ろ」
王様はまた爆弾の粉に火を……!
「良いか、ちゃんと見ろ」
さっきは王様無事だったし、ちょっとなら大丈夫……かな?
王様が火をつけた!
……あれ? 青白く光っただけ? ていうかそれ、年末の花火の色……
「え! あの花火ってアタシの」
「同じものが使われている」
「じゃあアレアイツがやったの!?」
ふぅーーっと長いため息を王様がつく。
ちょっと失礼じゃない!?
「これは、君の、コーヒー」
「そっそう」
「メルクリオに、市場で、盗まれた」
「だから」
「このコーヒーは、ハナビと同じ色」
「そうね、だか」
「先程の爆発予告」
王様がアタシを睨みつけた!
「爆破予告なんて! ちょっと脅かしただけよ!」
「だが現にコーヒーが見つかっている」
「そうだわ、その爆弾を勝手にアイツが花火にしたのよ! それはアタシのコーヒーじゃないわ!」
なかなか良い回避じゃない?
「ところで、さっきコーヒーに火をつけようとしたら頭を抱えたな。君のコーヒーもあの量で頭を抱える程危険か?」
「そうよ! 火気厳禁よ!」
「どのくらいあったんだ?」
「一箱に十二本、それが四つね!」
「四十八本分のコーヒーを、君は波止場に置いといたのか?」
「爆発物だなんて! ただのコーヒーよ!」
「……本当に埒が明かんな、想像以上のバカっぷりだ」
ハァ!? 王様だからって……もう無理! ありえなすぎる!!
「アンタさっきから何? 謝罪だと思ってきてみたらグダグダと、アタシはコーヒーを盗まれた被害者よ!? なんでアタシが悪いみたいになってんのよ!」
「お前が悪いからだ」
「ハァァ!? 何が悪いのよ! あの爆弾集めるの大変だったのよ!? それを盗んで使う方が酷いじゃない!」
「語るに落ちたな、テロ主犯で決定だ」
「テロとか! 変な言いがかりやめてよ!」
「さっき爆発予告してたな」
「そもそもなんで聞こえるのよ! そこがおかしいわ!」
「何がおかしい」
「うるっさいなこの老害が! 大人しくアタシに謝れ! モーロクジジイは今すぐ寿命で死ぬか謝るかしろ!!」
一息に言い切った! どうせ誰にも……
その時、周りにいた騎士が何人か来て、アタシを地面に組み伏せた!
酷い、何すんのよ!
「傷害、器物破損、冤罪、不敬罪、脅迫、テロ未遂」
横に並んでた人の一人が言った。
誰よアンタ?
「確定で良いかと思います」
「そうだな、モウロクジジイで悪かったな」
待って待って! なんで分かってんの!?
アタシ混乱したまま、騎士に引きずられながら部屋をおいだされる!
ねぇ、結婚式は!?
───────
庁舎の中庭で積雪を眺めながら、私は本を読んでいます。
ここの中央には大きな日時計があり、周辺には職員の手によって四季折々の花が彩られます。
日時計によると今は午後三時。
そろそろモウカハナで使う野菜を買いに行きたいのですが、ビャンコ様からの鳩が来ません。
お貸しした香炉を受け取るだけなのですが、一時間も遅れています。
寒さは問題ありませんが、市場の野菜は待ってくれません。
「キーノスさん! お待たせ!」
快活な声が聞こえ振り向くと、おとぎ話に登場しそうな王子様が、無邪気な笑顔で駆け寄って来ます。
「ビャンコさんからコレ渡す役強奪してきたんだ! 久しぶりにキーノスさんに会いたくて!」
王太子殿下です、こんな雑用して良い方ではありません。
私はあるべき態度で接するため、立ち上がり一礼しました。
「ご無沙汰しております、王太子殿下」
「硬いなぁ。ハイ、これ!」
私は王太子殿下から香炉を受け取り一礼します。
「お手間を取らせ大変申し訳ございませんでした、感謝致します」
「いいえ! すんっごっく! 助かりました!」
この後王太子殿下と少し会話をし、私は市場へ向かいました。
聞いた話では、香炉の効果を証明した後で謁見が開始されたそうです。
謁見でのユメノ様はいつもと違い、不敬罪も真っ青なやりとりが行われたようです。
これでユメノ様がテロを起こすことは不可能でしょう、彼女の考え方が変わってくれるのが一番良いでしょうけど、難しそうですね。
「今日は陛下の前で話をしてもらう。改めて招集に来るので、準備して待つように」
「はぁ? 何でよ?」
招集? てかアンタ敬語使いなさいよ。
「同じ話ならアンタがしといてよ」
なんなのあの騎士の態度、異世界人に対して敬意がないわ!
本当になんなの? イライラする!
選ばれた人間よねアタシ。こんなに可愛くなったのに。
麗しの君もカズロさんも白い局長様も王子様もなびかない。
ここはアタシが魔法使えて幸せになるハッピーな世界よね? お金出してくれるオジサンも厳しいし、誰もアタシを称えない!
王様からの呼び出しはかわいそうな私への謝罪に違いないわ。
でも謝罪ならアンタ達が来なさいよ、何よ招集って!
───────
「ユメノ・ブランカ。中へ」
中からの偉そうな声に反応して騎士が扉を開ける。
ファンタジーチックな玉座? みたいな雰囲気だけどなんか半端な広さね。
でも、真ん中に長い赤いカーペット……その先に王様、隣に王子様!
ここってもしかして教会!?
謝罪じゃなくて王子様と結婚式!? 王子様、気が早くないかな? プロポーズもまだよ?
左右に人がたくさん……お祝いしてくれるのかな?
カズロさんと白い局長様もいる! でも……ごめんなさい、アタシは王子様と……
「ブランカ君、久しぶりだね」
王子様がアタシに声をかけてくれた。
緊張してるのかな、顔が強ばってる。アタシとの結婚でドキドキしてるのかな……
「はいっ! 王子様とまた会えて嬉しい……」
感動で変な声が。
「何度も悪いとは思うけど、君が市場で何をしたかを説明してくれるかな?」
「はいっもちろんです!」
まずは前座よね、やっぱ。
アタシは切々と訴えた……市場でコーヒーが盗まれた事、犯人を捕まえて欲しいのに何もしてくれなかった事。
犯人はあの店員で、市場に隠れていたかもしれない事。
被害者なのに閉じ込められた理由が分からなかったけど、ここで王子様と結婚式をやる為だと気付いて嬉しかった事!
「……それで全部かい?」
「はいっ! アタシ、覚悟が出来てます!」
王子様が王様を見て頷いた。
ついに式が始まるのかしら!
「そうか、いくつか聞くが構わんね?」
王様がアタシに? アンタに用はないのよ。
「何?」
「……君のコーヒーはこれだね?」
横にいた騎士が持ってたお盆からビンを取ってみせる。
アタシのコーヒー!
「それ! どうしてここに!」
「証拠品として提出されたんだ」
「証拠? アイツ捕まえたの?」
王様はアタシを無視して、コーヒーの粉を少しだけ取り出してマッチで火をつけようとする!
「ちょっと! そんな事したら!」
「ん? これはコーヒーなんだろ? だったら火をつけても問題なかろう?」
「大問題よ! 何してんの!?」
アタシの訴えを無視して火をつけた!
危ない!!
アタシはそう思ってしゃがんで頭を抱えた!
……? 何も起きない?
「頭を上げろ」
はァ? 偉そうに……。
アタシは大人しく立ち上がる。王様を見ると、何ともない。あれ?
「なぜ、しゃがんで頭を守った?」
「……そういうコーヒーだからよ。知らないの?」
「では飲んでみてはくれないか? 私はコーヒーが苦手でね」
「いらないわ! そんな事より」
「では次の質問だ」
は? まだやるの? もういいでしょアイツ捕まったんだし。
「君が言う犯人の彼だが」
「ここに呼んでよ、謝らせるから!」
「どうして彼が犯人だと思ったんだ?」
「は? だってアイツ、アタシが話しかけたらいきなり『それどこにあるの!?』って掴みかかってきたのよ? 狙ってたに決まってるわ!」
「どうして彼に話しかけた?」
「新聞に載ってた麗しの楽士様の居場所を知ってるからよ!」
「なぜ知ってると?」
「あの新聞のディーボ、アイツんとこの店長なのよね。店員なら知っててもおかしくないわ」
「……その楽士の話は聞けたのか?」
「それが、アイツ酷いのよ! 何聞いても『シリマセーン』『ワカリマセーン』であったま来て!」
思い出したらイライラしてきたわ……
「本当は殴ってやりたかったわ! でも人が多いから我慢して、脅しつけてやったの!」
「ほぉ、それはどんな風に?」
あら王様、こういう刺激的なお話が好き?
でもアタシの魔法で全部変換されちゃうのよね~。
さっきのも違う内容になってるんだろうなー、ホントウケる。
本当の事教えてあげられないのは可哀想だけど、仕方ないよね!
「これ以上下らない事言うなら、アンタ市場ごと爆発させるよ! って!」
ちょっとうろ覚えだけど、良い決めゼリフ!
みんなにはなんて聞こえてるのかな?
「そしたらいきなり『爆弾はどこ!?』って聞いてきて。だから市場にば……コーヒーがあったのも知ってたはずよ!」
この刺激的な話、楽しんでくれたかしら?
変ね、額に手を当てて首を振ってる。
面白くなかったかしら? 変換されたから?
「ミス・ブランカ。自分で言ってる事の矛盾に気付いてるか?」
「え? あそっか、ちゃんと聞こえないんだよね。こういう時面倒くさいわねこの魔法」
「……君はメルクリオがコーヒーを盗んだ犯人と言った」
「そうよ! 捕まえてくれたんでしょ?」
「疑った理由は、コーヒーの場所を知っているからだと」
「えぇ、間違いないわ!」
「知ったのは君との会話から、だな?」
「そうよ、ば……コーヒーはどこ!? ってすごい勢いだったわ!」
「これがその『コーヒー』」
「そうよ!」
「さっきこれに火をつけようとしたら頭を抱えてしゃがんだな、なぜだ?」
「そ、それは……そういうコーヒーだからよ!」
「君は彼に爆破予告をしたんだよな?」
「え??」
「楽士の居所を教えなければ、市場ごと爆発させる、と。」
え? なんでちゃんと伝わってるの?
騎士団の尋問でも全く伝わらなかったのに。
「今度はちゃんと見ろ」
王様はまた爆弾の粉に火を……!
「良いか、ちゃんと見ろ」
さっきは王様無事だったし、ちょっとなら大丈夫……かな?
王様が火をつけた!
……あれ? 青白く光っただけ? ていうかそれ、年末の花火の色……
「え! あの花火ってアタシの」
「同じものが使われている」
「じゃあアレアイツがやったの!?」
ふぅーーっと長いため息を王様がつく。
ちょっと失礼じゃない!?
「これは、君の、コーヒー」
「そっそう」
「メルクリオに、市場で、盗まれた」
「だから」
「このコーヒーは、ハナビと同じ色」
「そうね、だか」
「先程の爆発予告」
王様がアタシを睨みつけた!
「爆破予告なんて! ちょっと脅かしただけよ!」
「だが現にコーヒーが見つかっている」
「そうだわ、その爆弾を勝手にアイツが花火にしたのよ! それはアタシのコーヒーじゃないわ!」
なかなか良い回避じゃない?
「ところで、さっきコーヒーに火をつけようとしたら頭を抱えたな。君のコーヒーもあの量で頭を抱える程危険か?」
「そうよ! 火気厳禁よ!」
「どのくらいあったんだ?」
「一箱に十二本、それが四つね!」
「四十八本分のコーヒーを、君は波止場に置いといたのか?」
「爆発物だなんて! ただのコーヒーよ!」
「……本当に埒が明かんな、想像以上のバカっぷりだ」
ハァ!? 王様だからって……もう無理! ありえなすぎる!!
「アンタさっきから何? 謝罪だと思ってきてみたらグダグダと、アタシはコーヒーを盗まれた被害者よ!? なんでアタシが悪いみたいになってんのよ!」
「お前が悪いからだ」
「ハァァ!? 何が悪いのよ! あの爆弾集めるの大変だったのよ!? それを盗んで使う方が酷いじゃない!」
「語るに落ちたな、テロ主犯で決定だ」
「テロとか! 変な言いがかりやめてよ!」
「さっき爆発予告してたな」
「そもそもなんで聞こえるのよ! そこがおかしいわ!」
「何がおかしい」
「うるっさいなこの老害が! 大人しくアタシに謝れ! モーロクジジイは今すぐ寿命で死ぬか謝るかしろ!!」
一息に言い切った! どうせ誰にも……
その時、周りにいた騎士が何人か来て、アタシを地面に組み伏せた!
酷い、何すんのよ!
「傷害、器物破損、冤罪、不敬罪、脅迫、テロ未遂」
横に並んでた人の一人が言った。
誰よアンタ?
「確定で良いかと思います」
「そうだな、モウロクジジイで悪かったな」
待って待って! なんで分かってんの!?
アタシ混乱したまま、騎士に引きずられながら部屋をおいだされる!
ねぇ、結婚式は!?
───────
庁舎の中庭で積雪を眺めながら、私は本を読んでいます。
ここの中央には大きな日時計があり、周辺には職員の手によって四季折々の花が彩られます。
日時計によると今は午後三時。
そろそろモウカハナで使う野菜を買いに行きたいのですが、ビャンコ様からの鳩が来ません。
お貸しした香炉を受け取るだけなのですが、一時間も遅れています。
寒さは問題ありませんが、市場の野菜は待ってくれません。
「キーノスさん! お待たせ!」
快活な声が聞こえ振り向くと、おとぎ話に登場しそうな王子様が、無邪気な笑顔で駆け寄って来ます。
「ビャンコさんからコレ渡す役強奪してきたんだ! 久しぶりにキーノスさんに会いたくて!」
王太子殿下です、こんな雑用して良い方ではありません。
私はあるべき態度で接するため、立ち上がり一礼しました。
「ご無沙汰しております、王太子殿下」
「硬いなぁ。ハイ、これ!」
私は王太子殿下から香炉を受け取り一礼します。
「お手間を取らせ大変申し訳ございませんでした、感謝致します」
「いいえ! すんっごっく! 助かりました!」
この後王太子殿下と少し会話をし、私は市場へ向かいました。
聞いた話では、香炉の効果を証明した後で謁見が開始されたそうです。
謁見でのユメノ様はいつもと違い、不敬罪も真っ青なやりとりが行われたようです。
これでユメノ様がテロを起こすことは不可能でしょう、彼女の考え方が変わってくれるのが一番良いでしょうけど、難しそうですね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
23
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる