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疑惑の仮面が踊るパレード
#5
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「つまり、あの派手な長身がマーゴ・フィオリトゥーラの正体で、キーノスに手品を教えたって事?」
「その通りです」
「キーノスさんがトランプ強いのって、手品師だからなんですか?」
「そちらもその通りです」
「何故いきなりここに来たんですか?」
「何故でしょうね、そういう方だとしか」
確かに先日衣装を見に来ると言ってましたが、本当に来るとは思いませんでした。
「だから年齢とか知ってたのか……」
「え、いくつなの?」
「五十だっけか」
「五十!? やだ、ワタシ長身の注文の衣装黄色いチェシャ猫にしちゃったわよ!」
「今日着てなかったみたいですけど、似合うと思いますよ! 多分」
「いや~うーん、似合いはしそうだけど、五十って……」
「そのお年であの服装なら、黄色いチェシャ猫でも大丈夫だと思いますよ」
カーラ様のデザインした衣装に興味はありますが、あの師匠が猫の格好はあまり見たくないのが本音です。
「それよりキーノス、手品なんて出来たの?」
「はい、何かお見せしましょうか?」
「僕見たいです! 今日トランプ持ってきてます!」
「良いですね、ババ抜きのリベンジしますか」
「結局キーノスの一人勝ちだったもんなぁ」
「そんな強いの?」
「口裏合わせてキーノスにジョーカー回したのに負けたもんなぁ」
「……そんな事をしてたのですか?」
確かに何度もジョーカーを引くのはおかしいと思っていましたが、仕組まれているとは思いませんでした。
「僕キーノスさんから何回引いたか分からないですよ、内心『なんで!?』って思ってました」
「前も言いましたが、ババ抜きではなくポーカーなどは」
「却下です」
「あぁ、却下だ」
「……理由を聞いても?」
「ババ抜きで勝てないんでしょ? じゃあポーカーなんて絶対ダメよ!」
そういう理由でしたか。
とりあえずトランプをカットするついでに、一つ手品を披露させていただきましょう。
突然師匠が現れた事に対してのお詫びのつもりです。
トランプ遊びを楽しんでいたところで、鳥の衣装を着た方が二名屋上へいらっしゃいました。
一人は鷹の面を付け、襟が羽で装飾された紺色のスーツを着ております。
もう一人は、おそらく極楽鳥でしょうか。オレンジと黄色の羽装飾が全身に施され、仮面は水色と黒というなんとも派手な出で立ちです。
多分、カズロ様とビャンコ様ですね。
「ビャンコさん、派手ねぇ……」
「カズロはそのまんまだな」
「仮装してるんだから、もう少し誰かとか議論して欲しかったな」
カズロ様が仮面を外して苦笑いします。
「オレもー。なんで鳩じゃないの? とか言われると思ってたのに」
ビャンコ様も仮面を外しますが、不満そうな顔をなさっています。
「来ていないのはお二人だけでしたし、カズロが鷹なのはみんな予想してましたから」
「ビャンコさんのは極楽鳥ですか?」
「そうだよ、前にもらったんよね。どう? 似合う?」
「すごくお似合いです!」
「良かったー、庁舎でずっとからかわれてたんだよね」
「鳩じゃないのか? って?」
「いんや、天使じゃないの? って。やだよ天使なんて」
普段から天使みたいなローブを着ているのに、今更何を言っているのかと思ってしまいます。
お二人も屋台で食べるものを買ってきたようで、食べ物が少なくなっていたテーブルの上に並べます。
串焼きと綿あめです。
そのままお二人がテーブルの空いた席に座ります。
「トランプしてたの?」
「あぁ、今度こそキーノス負かしてやりたいからな」
「あ、そうだ……でも」
「もしかしてカズロもキーノスの手品見たかったりして?」
「え、知ってたの?」
「さっき本物がここに来たんですよ」
「えっアイツ来たの?」
「なんだビャンコさん知り合いか?」
「知り合いってか……うぇ、アイツいるんだ」
「今日はもう来ないと思いますよ」
「あ、来ないの? なら良いや」
現在ババ抜きは私とシオ様は既に手札が無く、他の皆様の勝負となっています。
「さっき話してたんですが、殿下は留学と言いつつ仕事をしているように見えますが……そこはどうなんですか?」
「何か調べてたからこうなるかなぁとは思ってたんだよね、まさか関税率下げてくるとは思わなかったけど」
「じゃあ、聞いてなかったんですか?」
「うん、そのせいであれからすごく忙しいんだよね……」
「お疲れ様でした、私やカーラはとても助かってますよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
話してる間にメル様の手札がなくなったようです。
「庁舎の皆さんで仮装したんですか?」
「うん、留学生達とサヨナラパーティみたいなのやってきたんよ」
「そうなんですね! 留学生の方も仮装してたんですか?」
「いんや、軍服だったよ」
「いいなぁ、見たことないんですよね僕」
「最後の日見れるんじゃない? 国境の方の出口にいれば見れると思うよ」
こんなやりとりをしている内にババ抜きの決着がついたようです。
最後にジョーカーを持っていたのはカーラ様のようですね。
少し機嫌のよいミケーノ様が、私達を見て声をかけます。
「それじゃ、揃った事だし!」
各々お酒の入ったグラスを手にします。
「乾杯!」
グラスを合わせた後、一口飲みます。
乾杯の後、カズロ様から一通の封筒を渡されました。
「ギュンター君から君に渡して欲しいと言われて受け取って来たよ」
「ありがとうございます、手紙でしょうか」
「多分? その割に厚いよね、封筒」
封筒には封蝋がされており、かなり本格的な手紙のように見えます。
中に入っているのは紙だけのようですが、何枚か入っているのが想像できます。
「手紙もらったんですか?」
「そのようです。ギュンター様からとの事ですが、何故私に……」
「読んでみましょうよ、ゾフィさんの事かもしれませんよ!」
「メル様がそう言うなら」
個人的に頂いた手紙を集まりの場で開くのは気が引けますが、メル様も中身が気になっているようです。
封を開けるものが上がったので、テーブルの上にあったトランプの硬さを変化させてナイフの代わりにします。
中身を取り出してみたのは良いのですが、便箋が五枚……しかもどれを見ても文字数がかなり多いです。
「びっしりですね……読むの大変そうです」
「簡単に目を通して内容をお伝えします」
拝啓から始まり、季節の挨拶と続き、近況報告と……これだけで一枚です。
真面目な性格がよく出ていると思います。
二枚目と三枚目に目を通した結果、おそらく本題は……
「最終日にゾフィ様と会って欲しいそうです」
「じゃあ! やっぱり最終日はデートですね!」
「おーなんだよ、結局そうなのか」
「クラウンの衣装用意しとくわね!」
「いや、まだ全て読んだわけじゃ」
「良いじゃないですか、行きましょうよ」
「デート……なんて、経験ありません」
手紙の文中は謝罪の言葉も多く、とても断りづらい雰囲気を感じます。
とりあえず四枚目を読む事にします。
「今ならどっか予約取れんだろ」
「お店も良いですけど、この時期二人きりになれる場所が難しいですね」
「キーノスの部屋で良いだろそれは」
「気が早いわよ、それに最終日の次の日マルモワに帰るんでしょ? 泊まりは無理よね」
「リモワの外なら二人だけになれそうだけど、難しいかな」
「何時に待ち合わせかにもよるよな」
五枚目を読みます。
「どうなのかしら、会うのって夜? 昼?」
「その辺りはこれから決めるんじゃないですか?」
「夜だぞ、せめて夕方からにしろ」
「キーちゃんの師匠にバレないようにね、絶対邪魔しにくるよ」
手紙を読み終わり、大体の内容は把握出来ました。
私は短いため息をつき、皆様に声をかけます。
「相談をしても良いでしょうか?」
「良いわよ!」
「手紙によると、最終日にゾフィ様、ギュンター様、ケータ様とマスカレードの見学をしたいとの事です」
「え、四人で回るのか?」
「そのようです」
「彼、気がきかないわね」
「そこで、ある程度見晴らしが良く人目につきにくい場所に心当たりはありませんか?」
「難しい注文ですね」
「ホテルの最上階も埋まってそうだよね」
「ソレならワタシの倉庫の屋上はどう? 最終日ならその後予約も入ってないし、外階段から入れるわよ?」
「不審者入るんじゃねぇかそれ?」
「大丈夫よ、今も外階段に鍵ないし」
「不用心じゃないですか?」
「屋上だけよ、安心して」
カーラ様からご提案頂きましたが、一つ質問をさせていただきます。
「あの辺りは人通りが少ないのですか?」
「多くないわね、それに屋上なら誰かいるとは思わないんじゃないかしら?」
なるほど、確かに好条件です。
「では、その。ケータ様、ギュンター様と別行動をとる良い方法はありませんか?」
ミケーノ様が感心したような口笛を吹きます。
それから皆様から様々な方法を教えて頂きましたが、どれも私には難しい方法に思えます。
そもそも別行動を希望しているのはギュンター様ですので、私が気に病む必要はないのかもしれませんが。
何より、皆様に詳しい説明することが出来ないのが心苦しいです。
「その通りです」
「キーノスさんがトランプ強いのって、手品師だからなんですか?」
「そちらもその通りです」
「何故いきなりここに来たんですか?」
「何故でしょうね、そういう方だとしか」
確かに先日衣装を見に来ると言ってましたが、本当に来るとは思いませんでした。
「だから年齢とか知ってたのか……」
「え、いくつなの?」
「五十だっけか」
「五十!? やだ、ワタシ長身の注文の衣装黄色いチェシャ猫にしちゃったわよ!」
「今日着てなかったみたいですけど、似合うと思いますよ! 多分」
「いや~うーん、似合いはしそうだけど、五十って……」
「そのお年であの服装なら、黄色いチェシャ猫でも大丈夫だと思いますよ」
カーラ様のデザインした衣装に興味はありますが、あの師匠が猫の格好はあまり見たくないのが本音です。
「それよりキーノス、手品なんて出来たの?」
「はい、何かお見せしましょうか?」
「僕見たいです! 今日トランプ持ってきてます!」
「良いですね、ババ抜きのリベンジしますか」
「結局キーノスの一人勝ちだったもんなぁ」
「そんな強いの?」
「口裏合わせてキーノスにジョーカー回したのに負けたもんなぁ」
「……そんな事をしてたのですか?」
確かに何度もジョーカーを引くのはおかしいと思っていましたが、仕組まれているとは思いませんでした。
「僕キーノスさんから何回引いたか分からないですよ、内心『なんで!?』って思ってました」
「前も言いましたが、ババ抜きではなくポーカーなどは」
「却下です」
「あぁ、却下だ」
「……理由を聞いても?」
「ババ抜きで勝てないんでしょ? じゃあポーカーなんて絶対ダメよ!」
そういう理由でしたか。
とりあえずトランプをカットするついでに、一つ手品を披露させていただきましょう。
突然師匠が現れた事に対してのお詫びのつもりです。
トランプ遊びを楽しんでいたところで、鳥の衣装を着た方が二名屋上へいらっしゃいました。
一人は鷹の面を付け、襟が羽で装飾された紺色のスーツを着ております。
もう一人は、おそらく極楽鳥でしょうか。オレンジと黄色の羽装飾が全身に施され、仮面は水色と黒というなんとも派手な出で立ちです。
多分、カズロ様とビャンコ様ですね。
「ビャンコさん、派手ねぇ……」
「カズロはそのまんまだな」
「仮装してるんだから、もう少し誰かとか議論して欲しかったな」
カズロ様が仮面を外して苦笑いします。
「オレもー。なんで鳩じゃないの? とか言われると思ってたのに」
ビャンコ様も仮面を外しますが、不満そうな顔をなさっています。
「来ていないのはお二人だけでしたし、カズロが鷹なのはみんな予想してましたから」
「ビャンコさんのは極楽鳥ですか?」
「そうだよ、前にもらったんよね。どう? 似合う?」
「すごくお似合いです!」
「良かったー、庁舎でずっとからかわれてたんだよね」
「鳩じゃないのか? って?」
「いんや、天使じゃないの? って。やだよ天使なんて」
普段から天使みたいなローブを着ているのに、今更何を言っているのかと思ってしまいます。
お二人も屋台で食べるものを買ってきたようで、食べ物が少なくなっていたテーブルの上に並べます。
串焼きと綿あめです。
そのままお二人がテーブルの空いた席に座ります。
「トランプしてたの?」
「あぁ、今度こそキーノス負かしてやりたいからな」
「あ、そうだ……でも」
「もしかしてカズロもキーノスの手品見たかったりして?」
「え、知ってたの?」
「さっき本物がここに来たんですよ」
「えっアイツ来たの?」
「なんだビャンコさん知り合いか?」
「知り合いってか……うぇ、アイツいるんだ」
「今日はもう来ないと思いますよ」
「あ、来ないの? なら良いや」
現在ババ抜きは私とシオ様は既に手札が無く、他の皆様の勝負となっています。
「さっき話してたんですが、殿下は留学と言いつつ仕事をしているように見えますが……そこはどうなんですか?」
「何か調べてたからこうなるかなぁとは思ってたんだよね、まさか関税率下げてくるとは思わなかったけど」
「じゃあ、聞いてなかったんですか?」
「うん、そのせいであれからすごく忙しいんだよね……」
「お疲れ様でした、私やカーラはとても助かってますよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
話してる間にメル様の手札がなくなったようです。
「庁舎の皆さんで仮装したんですか?」
「うん、留学生達とサヨナラパーティみたいなのやってきたんよ」
「そうなんですね! 留学生の方も仮装してたんですか?」
「いんや、軍服だったよ」
「いいなぁ、見たことないんですよね僕」
「最後の日見れるんじゃない? 国境の方の出口にいれば見れると思うよ」
こんなやりとりをしている内にババ抜きの決着がついたようです。
最後にジョーカーを持っていたのはカーラ様のようですね。
少し機嫌のよいミケーノ様が、私達を見て声をかけます。
「それじゃ、揃った事だし!」
各々お酒の入ったグラスを手にします。
「乾杯!」
グラスを合わせた後、一口飲みます。
乾杯の後、カズロ様から一通の封筒を渡されました。
「ギュンター君から君に渡して欲しいと言われて受け取って来たよ」
「ありがとうございます、手紙でしょうか」
「多分? その割に厚いよね、封筒」
封筒には封蝋がされており、かなり本格的な手紙のように見えます。
中に入っているのは紙だけのようですが、何枚か入っているのが想像できます。
「手紙もらったんですか?」
「そのようです。ギュンター様からとの事ですが、何故私に……」
「読んでみましょうよ、ゾフィさんの事かもしれませんよ!」
「メル様がそう言うなら」
個人的に頂いた手紙を集まりの場で開くのは気が引けますが、メル様も中身が気になっているようです。
封を開けるものが上がったので、テーブルの上にあったトランプの硬さを変化させてナイフの代わりにします。
中身を取り出してみたのは良いのですが、便箋が五枚……しかもどれを見ても文字数がかなり多いです。
「びっしりですね……読むの大変そうです」
「簡単に目を通して内容をお伝えします」
拝啓から始まり、季節の挨拶と続き、近況報告と……これだけで一枚です。
真面目な性格がよく出ていると思います。
二枚目と三枚目に目を通した結果、おそらく本題は……
「最終日にゾフィ様と会って欲しいそうです」
「じゃあ! やっぱり最終日はデートですね!」
「おーなんだよ、結局そうなのか」
「クラウンの衣装用意しとくわね!」
「いや、まだ全て読んだわけじゃ」
「良いじゃないですか、行きましょうよ」
「デート……なんて、経験ありません」
手紙の文中は謝罪の言葉も多く、とても断りづらい雰囲気を感じます。
とりあえず四枚目を読む事にします。
「今ならどっか予約取れんだろ」
「お店も良いですけど、この時期二人きりになれる場所が難しいですね」
「キーノスの部屋で良いだろそれは」
「気が早いわよ、それに最終日の次の日マルモワに帰るんでしょ? 泊まりは無理よね」
「リモワの外なら二人だけになれそうだけど、難しいかな」
「何時に待ち合わせかにもよるよな」
五枚目を読みます。
「どうなのかしら、会うのって夜? 昼?」
「その辺りはこれから決めるんじゃないですか?」
「夜だぞ、せめて夕方からにしろ」
「キーちゃんの師匠にバレないようにね、絶対邪魔しにくるよ」
手紙を読み終わり、大体の内容は把握出来ました。
私は短いため息をつき、皆様に声をかけます。
「相談をしても良いでしょうか?」
「良いわよ!」
「手紙によると、最終日にゾフィ様、ギュンター様、ケータ様とマスカレードの見学をしたいとの事です」
「え、四人で回るのか?」
「そのようです」
「彼、気がきかないわね」
「そこで、ある程度見晴らしが良く人目につきにくい場所に心当たりはありませんか?」
「難しい注文ですね」
「ホテルの最上階も埋まってそうだよね」
「ソレならワタシの倉庫の屋上はどう? 最終日ならその後予約も入ってないし、外階段から入れるわよ?」
「不審者入るんじゃねぇかそれ?」
「大丈夫よ、今も外階段に鍵ないし」
「不用心じゃないですか?」
「屋上だけよ、安心して」
カーラ様からご提案頂きましたが、一つ質問をさせていただきます。
「あの辺りは人通りが少ないのですか?」
「多くないわね、それに屋上なら誰かいるとは思わないんじゃないかしら?」
なるほど、確かに好条件です。
「では、その。ケータ様、ギュンター様と別行動をとる良い方法はありませんか?」
ミケーノ様が感心したような口笛を吹きます。
それから皆様から様々な方法を教えて頂きましたが、どれも私には難しい方法に思えます。
そもそも別行動を希望しているのはギュンター様ですので、私が気に病む必要はないのかもしれませんが。
何より、皆様に詳しい説明することが出来ないのが心苦しいです。
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