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ガス灯で煌めく危険な炎
#1
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昼の港町は日差しが強く、初夏でも汗ばむ気温です。
港で仕事の用事を済ませてから、今はミケーノの店で涼みながら遅い昼食を食べた後です。
シャツの下の汗もひいて、厨房から出てきたミケーノと雑談を交わしています。
「今日は少し暑いくらいですね」
「そうだなぁ、天気も良いし散歩に良さそうだ」
「行ってきたらどうです?」
「夜の仕込みにかかりそうなんだよ、今日いつもより一人少なくてな」
昼時を過ぎた後ならミケーノの店でも人が少ないです。
少し雑談するくらいに時間を貰うことができます。
「相変わらず忙しいですね」
「そうでもねぇよ、もっと暑くなって観光増える事考えればな」
実はここ一ヶ月で、私には二つ困った事があります。
「モウカハナはまだ休みか?」
「はい、まだ帰ってきてないみたいですね」
「長いな、アイツ大丈夫なのか?」
「まぁ何かあったら帰って来るとは思いますが」
モウカハナが休業してからもう一ヶ月経過しました。
すぐ戻ると思っていましたが、今に至るまで何も変わりません。
「心配だが……ビャンコさんに相談しようにも、モウカハナ以外で声かけるの勇気いるしなぁ」
「そうですね」
「カズロにもだな、ネストレさんも」
「庁舎のお偉いさんですからね」
二人してため息をつきます。
私がよく行く飲食店はいくつかありますが、静かに客同士で会話が出来る場はリモワではそう多くはありません。
ましてや庁舎で働く高位の方々が気楽に飲みに来る店など、モウカハナくらいしかないでしょう。
ビャンコさんは術士だからとして。
カズロはモウカハナでは砕けた印象ですが、他では鷹の局長として近寄り難い事で有名です。
ネストレさんはどこに行っても女性に囲まれるので、そもそも飲食店であまり見かけません。
「ミケさーん、ちょっと良いすか?」
ミケーノが店の奥から呼ばれ、私に短い挨拶をして店の奥へ入っていきました。
私も職場へ戻るため、店を出て港の前の通りを歩きます。
ミケーノとカーラはリモワの商会の中でも人望が厚く、私と関わりの薄い各方面の情報に強いです。
ケータ君から異世界の文化の話を聞けましたし、マルモワで有名なベルツ姉弟と知り合えたのもかなり貴重です。
ボイヤー侯爵と会ってなかったら、別邸の譲渡の話が私の元にすんなりとは来なかったと思います。
ないとしたら娼館に関わる内容くらいですが、それも彼の師匠の噂を聞く限りキーノスが言わないだけでしょう。
私から見ると、モウカハナはかなり貴重な情報交換の場になっています。
彼には直接言いましたが、彼は自分の価値を正しく分かってないと思います。
港を抜け人が少なくなってきた辺りで、私が最近困ってることの一つは目の前に現れました。
その人物は控えめに手を振りながら笑顔でこっちに歩いてきます。
「サヴィーノさん! 良いお天気ですね」
タイミングを考えれば、待ち伏せされたとしか思えません。
胡散臭いですが、無碍にする程酷いことをされた訳でもなく対応に困っています。
「こんにちわ、前に私の愛称を教えませんでした?」
「シオさん、ですか? サヴィーノさんって名前好きで、つい……」
「私をサヴィーノと呼ぶ人はほとんどいませんよ、今日はこんなところでどうしたんですか?」
オレンジとしか言えない髪色と短い前髪、明らかに染めている分かります。
「良い香木が入荷されたって話、サヴィーノさんにお伝えしたくって!」
「それはわざわざありがとうございます」
「かなり大きいって話ですよ、二メートルくらいで太さも五十センチはあるって!」
「貴重ですね」
香木なら、私が懇意にしているカマルプールの木材の問屋に頼めば手に入ります。
「良い香りのする家具って素敵だなって、そう思って!」
「素敵なご提案ですね、検討してみますね」
「嬉しい! 私って、サヴィーノさんのお役に立てました?」
「えぇ、勿論です」
そのサイズで作れるものは限られてますし、原価を考えると家具にしたらかなり高額になります。
小さい香木で作った小物の方が利率も需要も高いです。
「他にご用件はありますか?」
「あ……いえ、またお会い出来ると嬉しいなって」
「はい、ではまた」
とりあえず無難に笑顔を作りながら職場へと歩きます。
多分私が興味がありそうな話をしてるのでしょうけど、知識や想像力があまりにも浅いです。
彼女との会話は退屈です、同じ話なら別の方と話したいです。
私はカーラと同じく、名前の方は滅多に言いません。
貴族への挨拶も家具店の店主と名乗りました。
あちらの方々は家名の有無を気にするので充分です。
それを初対面から「そう呼ばれてるのを聞いて」などと浅はかな嘘をつきます。
彼女に関して困っているのはこれだけではありません。
私が庁舎前の広場で彼女を口説いていた、そうです。
しかも一度ではなく何度か。
そもそもあの広場に行く事は滅多にありませんし、その時間なら職場にいます。
幸い噂などにはなっていないようですが、背中に虫が這うような嫌悪感があります。
「どうするかなぁ……」
思わずボヤキが出ます。
あの女性がもし私に興味があって名前を調べたというのなら、まだ可愛げがあります。
それが少し調べてみた所、似たような噂をいくつか聞くことが出来ました。
名前の件と噂のせいで、どうにも彼女への警戒心が抜けません。
───────
日付が変わりそうな時刻ですが、私はまだ店で書類の確認をしています。
幸い事業は概ね黒字で、書類の確認の作業が楽しいです。
それでも流石に帰ろうかと考えた時、窓を叩く音がしました。
気のせいだと思いましたが、何回か音がしたので窓に視線をやります。
窓の外には白い人影がいて、笑顔で手を振っています。
それから指と口の動きで窓を開けるように伝えてきます。
ここは三階で、ベランダなどもないはずですが……
窓際に歩み寄り、窓を開けた時その答えは分かりました。
グリフォンが窓の装飾に足をかけて止まっており、その肩の上にビャンコさんが座っていました。
「シオさん久しぶり! 元気してた?」
「お久しぶりです、予想できない形でお会いしましたね」
庁舎で着ているローブ姿なので、彼もまだ勤務中なのかもしれません。
現実離れした光景が飛び込んできたせいか、少し呆気に取られています。
「入っても良い?」
「もちろんです」
ビャンコさんは器用に窓から室内に入ってきます。
それからグリフォンに何か告げ、グリフォンは屋上へ飛んでいきました。
「ごめんね夜中に。シオさんとこ遠いから中々行けなくて」
「いえいえ、ソファへどうぞ」
「まだ仕事中だった? って職場オシャレだね」
「ふふ、ありがとうございます」
やはり外見とは違い緩い口調で安心します。
私はソファセットへ彼を案内してから、保冷庫からコーヒーのポットを取り出し二つのコップに注ぎます。
「いきなりで悪いんだけどさ、オレンジ頭の女知ってる?」
「えぇ、最近よく見かけますね」
「ソイツから変な事言われなかった? なんか『なんでお前がそれ知ってんの?』みたいな」
「よくご存知ですね、結構警戒してたんです」
「さすが、来て良かった!」
ビャンコさんの表情がパッと明るくなります。
テーブルにコーヒーを置き、彼の正面に腰掛けます。
「普段こういうのキーちゃんに聞くんだけど今いないじゃん? カーラさんとミケさんとこにも行ったんだけどなーんか歯切れ悪くて、猫に聞いてもよく分からんし」
「彼女何かあるんですか?」
「簡単に言えば人によって態度変える奴になんだけど、それが的確すぎるというか……で、個人情報漏れてんじゃないのか? って苦情来たんよ」
「あぁ、私もその可能性を考えてました」
「あ、そうなの?」
ビャンコさんがコーヒーに口を付けます。
それから少し目を見開いて、コップを置いて続きの話をします。
「でもそんな形跡ないから『術でそういうのないの?』って聞かれて。オレンジ頭の近くに寄ってみたけど、あいつ術士じゃないから違うんよね」
「分かるんですか?」
「近づけばね。それに道具も使ってないっぽいし、あいつ何なんだろ?」
なるほど、確かにこういう相談はキーノス以外には難しいでしょうね。
「私に関してなら、彼女は私の名前を初対面から知ってました。どうやって知ったかを聞いたら『誰かが言ってた』などと言ってましたよ」
「どっかの店でサイン見たとかは?」
「仮に見たとしても最初の一文字しか書きませんから、そこから推測するのも無理があります」
「確かにそうだね」
「あと、やたら気を引くような話をしてくるのも苦手ですね」
「そうなの? みんなそれでオレンジ頭を庇う感じになるから、シオさんみたいな人が貴重なんよ」
「そうなんですか」
庇うほど、ですか。
それなら中々な悪女です。
「彼女は個人の名前が分かるようですね」
「そうね、それをどうやって? が分からんよね」
「術では分からないんですか?」
「うー……ん、無理とは言わないけど、余程の事だね。まだスパイの方が現実的ってレベル」
ビャンコさんは背筋を後ろに逸らして考え込んでいましたが、ピタっと動きを止めてからコーヒーを飲み干しました。
このコップをテーブルへ置き、私の顔を見てにこりと微笑みます。
「ありがとう、参考になったわ! また困ったら聞きに来ても良い?」
「はい、タイミングが合えば是非」
それからビャンコさんは来た時と同じように窓から颯爽と去っていきました。
ここ一ヶ月。
モウカハナが休みになった事と不審な女性が現れた事で、私を取り巻く環境がほんの少し変化しています。
キーノスはいつ帰ってくるんでしょうかか。
異世界の家具の約束、忘れていないと良いんですけど。
港で仕事の用事を済ませてから、今はミケーノの店で涼みながら遅い昼食を食べた後です。
シャツの下の汗もひいて、厨房から出てきたミケーノと雑談を交わしています。
「今日は少し暑いくらいですね」
「そうだなぁ、天気も良いし散歩に良さそうだ」
「行ってきたらどうです?」
「夜の仕込みにかかりそうなんだよ、今日いつもより一人少なくてな」
昼時を過ぎた後ならミケーノの店でも人が少ないです。
少し雑談するくらいに時間を貰うことができます。
「相変わらず忙しいですね」
「そうでもねぇよ、もっと暑くなって観光増える事考えればな」
実はここ一ヶ月で、私には二つ困った事があります。
「モウカハナはまだ休みか?」
「はい、まだ帰ってきてないみたいですね」
「長いな、アイツ大丈夫なのか?」
「まぁ何かあったら帰って来るとは思いますが」
モウカハナが休業してからもう一ヶ月経過しました。
すぐ戻ると思っていましたが、今に至るまで何も変わりません。
「心配だが……ビャンコさんに相談しようにも、モウカハナ以外で声かけるの勇気いるしなぁ」
「そうですね」
「カズロにもだな、ネストレさんも」
「庁舎のお偉いさんですからね」
二人してため息をつきます。
私がよく行く飲食店はいくつかありますが、静かに客同士で会話が出来る場はリモワではそう多くはありません。
ましてや庁舎で働く高位の方々が気楽に飲みに来る店など、モウカハナくらいしかないでしょう。
ビャンコさんは術士だからとして。
カズロはモウカハナでは砕けた印象ですが、他では鷹の局長として近寄り難い事で有名です。
ネストレさんはどこに行っても女性に囲まれるので、そもそも飲食店であまり見かけません。
「ミケさーん、ちょっと良いすか?」
ミケーノが店の奥から呼ばれ、私に短い挨拶をして店の奥へ入っていきました。
私も職場へ戻るため、店を出て港の前の通りを歩きます。
ミケーノとカーラはリモワの商会の中でも人望が厚く、私と関わりの薄い各方面の情報に強いです。
ケータ君から異世界の文化の話を聞けましたし、マルモワで有名なベルツ姉弟と知り合えたのもかなり貴重です。
ボイヤー侯爵と会ってなかったら、別邸の譲渡の話が私の元にすんなりとは来なかったと思います。
ないとしたら娼館に関わる内容くらいですが、それも彼の師匠の噂を聞く限りキーノスが言わないだけでしょう。
私から見ると、モウカハナはかなり貴重な情報交換の場になっています。
彼には直接言いましたが、彼は自分の価値を正しく分かってないと思います。
港を抜け人が少なくなってきた辺りで、私が最近困ってることの一つは目の前に現れました。
その人物は控えめに手を振りながら笑顔でこっちに歩いてきます。
「サヴィーノさん! 良いお天気ですね」
タイミングを考えれば、待ち伏せされたとしか思えません。
胡散臭いですが、無碍にする程酷いことをされた訳でもなく対応に困っています。
「こんにちわ、前に私の愛称を教えませんでした?」
「シオさん、ですか? サヴィーノさんって名前好きで、つい……」
「私をサヴィーノと呼ぶ人はほとんどいませんよ、今日はこんなところでどうしたんですか?」
オレンジとしか言えない髪色と短い前髪、明らかに染めている分かります。
「良い香木が入荷されたって話、サヴィーノさんにお伝えしたくって!」
「それはわざわざありがとうございます」
「かなり大きいって話ですよ、二メートルくらいで太さも五十センチはあるって!」
「貴重ですね」
香木なら、私が懇意にしているカマルプールの木材の問屋に頼めば手に入ります。
「良い香りのする家具って素敵だなって、そう思って!」
「素敵なご提案ですね、検討してみますね」
「嬉しい! 私って、サヴィーノさんのお役に立てました?」
「えぇ、勿論です」
そのサイズで作れるものは限られてますし、原価を考えると家具にしたらかなり高額になります。
小さい香木で作った小物の方が利率も需要も高いです。
「他にご用件はありますか?」
「あ……いえ、またお会い出来ると嬉しいなって」
「はい、ではまた」
とりあえず無難に笑顔を作りながら職場へと歩きます。
多分私が興味がありそうな話をしてるのでしょうけど、知識や想像力があまりにも浅いです。
彼女との会話は退屈です、同じ話なら別の方と話したいです。
私はカーラと同じく、名前の方は滅多に言いません。
貴族への挨拶も家具店の店主と名乗りました。
あちらの方々は家名の有無を気にするので充分です。
それを初対面から「そう呼ばれてるのを聞いて」などと浅はかな嘘をつきます。
彼女に関して困っているのはこれだけではありません。
私が庁舎前の広場で彼女を口説いていた、そうです。
しかも一度ではなく何度か。
そもそもあの広場に行く事は滅多にありませんし、その時間なら職場にいます。
幸い噂などにはなっていないようですが、背中に虫が這うような嫌悪感があります。
「どうするかなぁ……」
思わずボヤキが出ます。
あの女性がもし私に興味があって名前を調べたというのなら、まだ可愛げがあります。
それが少し調べてみた所、似たような噂をいくつか聞くことが出来ました。
名前の件と噂のせいで、どうにも彼女への警戒心が抜けません。
───────
日付が変わりそうな時刻ですが、私はまだ店で書類の確認をしています。
幸い事業は概ね黒字で、書類の確認の作業が楽しいです。
それでも流石に帰ろうかと考えた時、窓を叩く音がしました。
気のせいだと思いましたが、何回か音がしたので窓に視線をやります。
窓の外には白い人影がいて、笑顔で手を振っています。
それから指と口の動きで窓を開けるように伝えてきます。
ここは三階で、ベランダなどもないはずですが……
窓際に歩み寄り、窓を開けた時その答えは分かりました。
グリフォンが窓の装飾に足をかけて止まっており、その肩の上にビャンコさんが座っていました。
「シオさん久しぶり! 元気してた?」
「お久しぶりです、予想できない形でお会いしましたね」
庁舎で着ているローブ姿なので、彼もまだ勤務中なのかもしれません。
現実離れした光景が飛び込んできたせいか、少し呆気に取られています。
「入っても良い?」
「もちろんです」
ビャンコさんは器用に窓から室内に入ってきます。
それからグリフォンに何か告げ、グリフォンは屋上へ飛んでいきました。
「ごめんね夜中に。シオさんとこ遠いから中々行けなくて」
「いえいえ、ソファへどうぞ」
「まだ仕事中だった? って職場オシャレだね」
「ふふ、ありがとうございます」
やはり外見とは違い緩い口調で安心します。
私はソファセットへ彼を案内してから、保冷庫からコーヒーのポットを取り出し二つのコップに注ぎます。
「いきなりで悪いんだけどさ、オレンジ頭の女知ってる?」
「えぇ、最近よく見かけますね」
「ソイツから変な事言われなかった? なんか『なんでお前がそれ知ってんの?』みたいな」
「よくご存知ですね、結構警戒してたんです」
「さすが、来て良かった!」
ビャンコさんの表情がパッと明るくなります。
テーブルにコーヒーを置き、彼の正面に腰掛けます。
「普段こういうのキーちゃんに聞くんだけど今いないじゃん? カーラさんとミケさんとこにも行ったんだけどなーんか歯切れ悪くて、猫に聞いてもよく分からんし」
「彼女何かあるんですか?」
「簡単に言えば人によって態度変える奴になんだけど、それが的確すぎるというか……で、個人情報漏れてんじゃないのか? って苦情来たんよ」
「あぁ、私もその可能性を考えてました」
「あ、そうなの?」
ビャンコさんがコーヒーに口を付けます。
それから少し目を見開いて、コップを置いて続きの話をします。
「でもそんな形跡ないから『術でそういうのないの?』って聞かれて。オレンジ頭の近くに寄ってみたけど、あいつ術士じゃないから違うんよね」
「分かるんですか?」
「近づけばね。それに道具も使ってないっぽいし、あいつ何なんだろ?」
なるほど、確かにこういう相談はキーノス以外には難しいでしょうね。
「私に関してなら、彼女は私の名前を初対面から知ってました。どうやって知ったかを聞いたら『誰かが言ってた』などと言ってましたよ」
「どっかの店でサイン見たとかは?」
「仮に見たとしても最初の一文字しか書きませんから、そこから推測するのも無理があります」
「確かにそうだね」
「あと、やたら気を引くような話をしてくるのも苦手ですね」
「そうなの? みんなそれでオレンジ頭を庇う感じになるから、シオさんみたいな人が貴重なんよ」
「そうなんですか」
庇うほど、ですか。
それなら中々な悪女です。
「彼女は個人の名前が分かるようですね」
「そうね、それをどうやって? が分からんよね」
「術では分からないんですか?」
「うー……ん、無理とは言わないけど、余程の事だね。まだスパイの方が現実的ってレベル」
ビャンコさんは背筋を後ろに逸らして考え込んでいましたが、ピタっと動きを止めてからコーヒーを飲み干しました。
このコップをテーブルへ置き、私の顔を見てにこりと微笑みます。
「ありがとう、参考になったわ! また困ったら聞きに来ても良い?」
「はい、タイミングが合えば是非」
それからビャンコさんは来た時と同じように窓から颯爽と去っていきました。
ここ一ヶ月。
モウカハナが休みになった事と不審な女性が現れた事で、私を取り巻く環境がほんの少し変化しています。
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