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ガス灯で煌めく危険な炎
#2
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不幸の手紙という物があるらしい。
サチさんから聞いた話なら、その手紙を貰った人には不幸が訪れるとか。
その手紙を何日以内に何人かに同じ内容を送れば回避できるとか。
呪いの儀式か何かみたいだけど、どちらかと言えば嫌がらせとかイジメの手段に思える。
つまり、嫌がらせとか悪気のある手紙を総じて「不幸の手紙」って言えるに違いない。
「局長、どうしました?」
部下のコが声をかけてくる。
机の上の封筒を睨んでいるんだから、何をしてるのか聞かれても仕方ない。
黒い封筒に金色の字で宛名が書かれていて、真っ赤な封蝋でカラスの羽が止めてある。
こんな露骨な不幸の手紙ってある?
「この手紙いつ届いたのかなーって」
「さぁ? 僕が来た時にはあったから昨日の夜じゃないですか?」
「夜かぁ……」
「それ誰からですか? 珍しいデザインの封筒ですね」
「多分ヴァローナの奴からだと思う」
「ヴァローナ! 流石顔が広いですね」
そう言って部下のコはニコニコと笑いながら仕事に戻った。
なんとなく手紙の中身は分かっているが、一通り目を通す。
やはり年末に送った委任状だ。
ヤツのサインの部分がヴァローナの言葉で書かれてて正直読めない。
だけど他の体裁がしっかりしてるのが腹立たしい、受理するしかない。
オレはこの時「目的」の部分にもっと文句を付けるべきだった。
ーー私用
ってナメてんのか!
なら半日くらいかなー、前にリモワの外でマルモワの小隊片付けた時みたいな?
なんて思ってたら、この手紙を受け取った時点でキーちゃんが居なくなって一週間は過ぎてたらしい。
それを知るのは一ヶ月が過ぎた頃の事になるなんて、オレは不幸の手紙をナメてたのかもしれない。
───────
「髪色がオレンジの女?」
「あぁ、たまに街中でデカい喧嘩になるんだよ。女が原因なら痴話喧嘩みたいなもんだが、何度も同じ内容が出るのはおかしいだろ」
庁舎で防衛に関する会議で、団長が第二騎士団から上がった報告を話している。
一通り辺境や王都郊外の報告が済んだ後で、補足として話している。
「そんなに美人なの? 見てみたい気もするね」
「どうだか、頻度がちょっと異常だからただの美人ってワケでもないんじゃねぇか?」
「ふぅん、ちょっと息子にも変わった事ないか聞いてみとくよ」
「防具屋で変わった事があったら問題だろ」
防衛局の局長のバルトロメオのオッサンは、堅苦しい肩書きとは違って人の良い商人みたいな人だ。
イザッコの方がよほど肩書きに近い雰囲気はあるけど、そういう立場は嫌だと断ってギリギリで団長なんかやってる。
「俺から見ると異常に見えるんだが、なんかまた魔獣が悪さしてるとかじゃないよな?」
稀に王都でそういう珍事件が起きる。
たしか前は王都から犬と猫が居なくなった時だが、あれは今は解決している。
「どうでしょうか、その女性の近くに行かないと何とも言えません」
一応普通の職員や騎士もいるのでらしく振る舞う。
「一応調べてみてくれ、やり方は任せる」
「承知致しました」
微笑みながら了承する。
とりあえずその女が何者なのか調べるとこからだろう。
情報が髪色のみだけど、目立つ喧嘩をしてるなら猫に聞けば何か知っているかもしれない。
「あとヴァローナからの委任状に関してご報告が」
例の委任状に関して話をする。
ネウゾロフの名前が出た時にはイザッコとバルトロメオのオッサンの顔色が悪くなる。
「大丈夫だよね? 今度はふっかけられる理由も思いつかないけど……」
「他には黙っとけ、また説教されるだろ」
「そうですね。もし彼に何かあればネウゾロフ氏の責任になりますから、流石にこちらに連絡があるとは思いますよ」
あの交渉で委任状を許した理由の一つだ。
委任状は「オランディの国民の一人をヴァローナの代表として預ける」という内容だ。
何かあったらアイツのせい、だから無茶すぎる事はさせないはずだ。
それから少し今後の方針の話をして会議は解散になった。
キーちゃんの事は置いといて、まずはそのオレンジの髪の女に接触してみよう。
───────
とりあえず猫達にオレンジの髪の女について聞いてみた。
最近オランディに来た移住者で、住まいは郊外のパラッツォ。
誰かと二人で話してたって話が多いけど、その人数が多い。
猫達は「気が多い女」だって言うから、相手は男が多いんだろう。
ちょっと聞いて回っただけで情報が集まるのは意外だった。
特徴が「喧嘩の原因らしいオレンジ髪の女」ってだけよ?
ユメノの時みたいに釣り銭詐欺とかしてるなら分かるけど。
最近は港によくいるそうだから、いつもの格好で行ってみよう。
気が多いっていうなら目立つ方が良いだろう。
港についてからすぐに目につく出来事があった。
喧嘩だ、男性同士で口論をしている。
「お前適当な事言ってんじゃねぇぞ!」
「言ってねぇよ、お前こそ言いがかりだろうが!」
なんだなんだ、これがイザッコが言ってた喧嘩か?
「マリエッタがお前んち泊まったの見たんだぞ!」
「だからそれは俺の作った晩御飯を食べたいって言うから、それだけで泊まってねぇよ!」
「それだけで済むわけないだろ!」
修羅場だっけ、こういうの。
とりあえず勝手にやらせておいてオレンジ髪の女を探す。
辺りを見回してみたら、市場の屋台の影から目立つ髪色の女が頭だけを出して喧嘩を観察してる。
他の人は興味半分迷惑半分な顔なのに、彼女は薄く笑って喧嘩の様子を楽しんでいた。
うっわ、性格悪そう……。
面倒な予感しかないけど、さっさと終わらせるために直接話しかける事にした。
「お嬢さん、大丈夫ですよ。あの喧嘩はすぐに収まりますから」
無難に微笑みながらオレンジ髪の女に声を掛けた。
彼女は邪魔されたからか一瞬嫌な顔をしたが、オレを見て目の色を変えた。
「心配して、くれるんですか?」
「こんな場所から見てるなんて、余程怖かったんですね」
「はい、男の人の怒鳴り声って怖くって。アルブムさんの優しい声、落ち着きます……」
は?
「まだその、少し怖くって……静かな場所に行きたいです。そのお声、もっと聞きたくって」
この女、なんなんだ。
特有のニオイはない、術士じゃない。
「海辺はもう暑いし……あっ、涼しい喫茶店ってどうですか?」
魔獣? たまにニオイを隠せる奴がいるからそういう?
コイツ、サチさんの千里眼でも分からなかったオレの名前言い当てやがった。
なんだコイツ?
「ねぇ、アルブムさん? どうしたんですか?」
『精霊さん、コイツの中のオレの記憶消して』
闇のコが彼女の目の前に飛んでいって額に手を置く。
その隙にオレは彼女の前から姿を消した。
もっと別の方法で情報集めよう、あれはただの性格悪い女じゃない。
───────
オレンジ髪の女と会ってから、もう二ヶ月は経った。
色々調べてはみたけど、そろそろ限界がきていた。
何せアイツのやってる事っていったら、色んなところで喧嘩の種を撒き散らしてるだけだ。
そのせいで喧嘩は多いけど、本当にそれだけ。
相手を事前に調べた上で声をかける、人によって態度を変える性格悪い女ってだけ。
術を使っていないし、庁舎の個人情報を見れる立場ではない。
それに個人情報が見れたからって、オレの名前が言い当てられた説明にはならない。
さしあたっての問題は、ネっすんのストレスがヤバい。
痴話喧嘩が起きて騎士が止めに入って、収集がつかない時はネっすんが呼ばれる。
するとそこにオレンジ頭がササーっと現れて
「怖かったです、街中で喧嘩って……私、見てられなくって」
とかなんとか言ってしなだれ掛かってくるそうだ。
いやいや見てたよな? とか聞く前に、喧嘩してた二人がネっすんを睨みつける。
ネっすんは女を騎士に預けて場の収集をさせたいが女が離れない。
ネっすんはいつも明るく笑ってるけど、最近は本当に元気がない。
オレンジ色を見るだけで嫌そうな顔をする。
一時的に第二と第一の騎士団の団長入れ替わるかの話も出たが、第一の団長は今辺境の討伐に出ていてそれも難しい。
オレにとってはオランディに住み始めてから一番警戒してる女なんだけど、これ以上どうしようもない。
裏路地を歩いて、なんとなくモウカハナの前に来た。
看板はCHIUSOのまま。
階段を降りて行くとドアがある。
当然鍵はかかってるけど、これは普通の鍵じゃない。
何せ鍵穴がない。
それに強力な結界が張ってあるのか、下手に壊すとどうなるかも分からない。
「なんか、疲れたなぁ」
最近はアイツに警戒して外を出歩く事も減った。
キーちゃんの店が開いてないから気を抜いて外で過ごせる時間も減ったし、ここのお客さんと話してないから交友関係も減ったし。
キーちゃんが居なくなって二ヶ月は過ぎた。
まだ二ヶ月なのか、もう二ヶ月なのか。
あの雷男、二ヶ月も戻さないなんて何してんだホント。
ん?
そういえばそうだ、アイツ委任されてる立場なのに二ヶ月も何の報告もない。
ふと思った事だけど、ホントに何してんのアイツ?
問い合わせるべき?
いや、目的に「私用」とかナメた事書く奴がまともな回答を返してくるとも思えない。
様子見行くなら仕事としてアリだな、ついでに旅行しても怒られることは無いよな。
それにサチさんはこういうの「思い立ったら吉日」って言ってたな。
どうせなら本当に旅行でも良いんじゃない?
雷男には会いたくないけど、ヴァローナのヨーグルトと煮込み料理は美味いんだよね。
一応仕事だし、一ヶ月くらいは許されるよね! 多分、多分。
サチさんから聞いた話なら、その手紙を貰った人には不幸が訪れるとか。
その手紙を何日以内に何人かに同じ内容を送れば回避できるとか。
呪いの儀式か何かみたいだけど、どちらかと言えば嫌がらせとかイジメの手段に思える。
つまり、嫌がらせとか悪気のある手紙を総じて「不幸の手紙」って言えるに違いない。
「局長、どうしました?」
部下のコが声をかけてくる。
机の上の封筒を睨んでいるんだから、何をしてるのか聞かれても仕方ない。
黒い封筒に金色の字で宛名が書かれていて、真っ赤な封蝋でカラスの羽が止めてある。
こんな露骨な不幸の手紙ってある?
「この手紙いつ届いたのかなーって」
「さぁ? 僕が来た時にはあったから昨日の夜じゃないですか?」
「夜かぁ……」
「それ誰からですか? 珍しいデザインの封筒ですね」
「多分ヴァローナの奴からだと思う」
「ヴァローナ! 流石顔が広いですね」
そう言って部下のコはニコニコと笑いながら仕事に戻った。
なんとなく手紙の中身は分かっているが、一通り目を通す。
やはり年末に送った委任状だ。
ヤツのサインの部分がヴァローナの言葉で書かれてて正直読めない。
だけど他の体裁がしっかりしてるのが腹立たしい、受理するしかない。
オレはこの時「目的」の部分にもっと文句を付けるべきだった。
ーー私用
ってナメてんのか!
なら半日くらいかなー、前にリモワの外でマルモワの小隊片付けた時みたいな?
なんて思ってたら、この手紙を受け取った時点でキーちゃんが居なくなって一週間は過ぎてたらしい。
それを知るのは一ヶ月が過ぎた頃の事になるなんて、オレは不幸の手紙をナメてたのかもしれない。
───────
「髪色がオレンジの女?」
「あぁ、たまに街中でデカい喧嘩になるんだよ。女が原因なら痴話喧嘩みたいなもんだが、何度も同じ内容が出るのはおかしいだろ」
庁舎で防衛に関する会議で、団長が第二騎士団から上がった報告を話している。
一通り辺境や王都郊外の報告が済んだ後で、補足として話している。
「そんなに美人なの? 見てみたい気もするね」
「どうだか、頻度がちょっと異常だからただの美人ってワケでもないんじゃねぇか?」
「ふぅん、ちょっと息子にも変わった事ないか聞いてみとくよ」
「防具屋で変わった事があったら問題だろ」
防衛局の局長のバルトロメオのオッサンは、堅苦しい肩書きとは違って人の良い商人みたいな人だ。
イザッコの方がよほど肩書きに近い雰囲気はあるけど、そういう立場は嫌だと断ってギリギリで団長なんかやってる。
「俺から見ると異常に見えるんだが、なんかまた魔獣が悪さしてるとかじゃないよな?」
稀に王都でそういう珍事件が起きる。
たしか前は王都から犬と猫が居なくなった時だが、あれは今は解決している。
「どうでしょうか、その女性の近くに行かないと何とも言えません」
一応普通の職員や騎士もいるのでらしく振る舞う。
「一応調べてみてくれ、やり方は任せる」
「承知致しました」
微笑みながら了承する。
とりあえずその女が何者なのか調べるとこからだろう。
情報が髪色のみだけど、目立つ喧嘩をしてるなら猫に聞けば何か知っているかもしれない。
「あとヴァローナからの委任状に関してご報告が」
例の委任状に関して話をする。
ネウゾロフの名前が出た時にはイザッコとバルトロメオのオッサンの顔色が悪くなる。
「大丈夫だよね? 今度はふっかけられる理由も思いつかないけど……」
「他には黙っとけ、また説教されるだろ」
「そうですね。もし彼に何かあればネウゾロフ氏の責任になりますから、流石にこちらに連絡があるとは思いますよ」
あの交渉で委任状を許した理由の一つだ。
委任状は「オランディの国民の一人をヴァローナの代表として預ける」という内容だ。
何かあったらアイツのせい、だから無茶すぎる事はさせないはずだ。
それから少し今後の方針の話をして会議は解散になった。
キーちゃんの事は置いといて、まずはそのオレンジの髪の女に接触してみよう。
───────
とりあえず猫達にオレンジの髪の女について聞いてみた。
最近オランディに来た移住者で、住まいは郊外のパラッツォ。
誰かと二人で話してたって話が多いけど、その人数が多い。
猫達は「気が多い女」だって言うから、相手は男が多いんだろう。
ちょっと聞いて回っただけで情報が集まるのは意外だった。
特徴が「喧嘩の原因らしいオレンジ髪の女」ってだけよ?
ユメノの時みたいに釣り銭詐欺とかしてるなら分かるけど。
最近は港によくいるそうだから、いつもの格好で行ってみよう。
気が多いっていうなら目立つ方が良いだろう。
港についてからすぐに目につく出来事があった。
喧嘩だ、男性同士で口論をしている。
「お前適当な事言ってんじゃねぇぞ!」
「言ってねぇよ、お前こそ言いがかりだろうが!」
なんだなんだ、これがイザッコが言ってた喧嘩か?
「マリエッタがお前んち泊まったの見たんだぞ!」
「だからそれは俺の作った晩御飯を食べたいって言うから、それだけで泊まってねぇよ!」
「それだけで済むわけないだろ!」
修羅場だっけ、こういうの。
とりあえず勝手にやらせておいてオレンジ髪の女を探す。
辺りを見回してみたら、市場の屋台の影から目立つ髪色の女が頭だけを出して喧嘩を観察してる。
他の人は興味半分迷惑半分な顔なのに、彼女は薄く笑って喧嘩の様子を楽しんでいた。
うっわ、性格悪そう……。
面倒な予感しかないけど、さっさと終わらせるために直接話しかける事にした。
「お嬢さん、大丈夫ですよ。あの喧嘩はすぐに収まりますから」
無難に微笑みながらオレンジ髪の女に声を掛けた。
彼女は邪魔されたからか一瞬嫌な顔をしたが、オレを見て目の色を変えた。
「心配して、くれるんですか?」
「こんな場所から見てるなんて、余程怖かったんですね」
「はい、男の人の怒鳴り声って怖くって。アルブムさんの優しい声、落ち着きます……」
は?
「まだその、少し怖くって……静かな場所に行きたいです。そのお声、もっと聞きたくって」
この女、なんなんだ。
特有のニオイはない、術士じゃない。
「海辺はもう暑いし……あっ、涼しい喫茶店ってどうですか?」
魔獣? たまにニオイを隠せる奴がいるからそういう?
コイツ、サチさんの千里眼でも分からなかったオレの名前言い当てやがった。
なんだコイツ?
「ねぇ、アルブムさん? どうしたんですか?」
『精霊さん、コイツの中のオレの記憶消して』
闇のコが彼女の目の前に飛んでいって額に手を置く。
その隙にオレは彼女の前から姿を消した。
もっと別の方法で情報集めよう、あれはただの性格悪い女じゃない。
───────
オレンジ髪の女と会ってから、もう二ヶ月は経った。
色々調べてはみたけど、そろそろ限界がきていた。
何せアイツのやってる事っていったら、色んなところで喧嘩の種を撒き散らしてるだけだ。
そのせいで喧嘩は多いけど、本当にそれだけ。
相手を事前に調べた上で声をかける、人によって態度を変える性格悪い女ってだけ。
術を使っていないし、庁舎の個人情報を見れる立場ではない。
それに個人情報が見れたからって、オレの名前が言い当てられた説明にはならない。
さしあたっての問題は、ネっすんのストレスがヤバい。
痴話喧嘩が起きて騎士が止めに入って、収集がつかない時はネっすんが呼ばれる。
するとそこにオレンジ頭がササーっと現れて
「怖かったです、街中で喧嘩って……私、見てられなくって」
とかなんとか言ってしなだれ掛かってくるそうだ。
いやいや見てたよな? とか聞く前に、喧嘩してた二人がネっすんを睨みつける。
ネっすんは女を騎士に預けて場の収集をさせたいが女が離れない。
ネっすんはいつも明るく笑ってるけど、最近は本当に元気がない。
オレンジ色を見るだけで嫌そうな顔をする。
一時的に第二と第一の騎士団の団長入れ替わるかの話も出たが、第一の団長は今辺境の討伐に出ていてそれも難しい。
オレにとってはオランディに住み始めてから一番警戒してる女なんだけど、これ以上どうしようもない。
裏路地を歩いて、なんとなくモウカハナの前に来た。
看板はCHIUSOのまま。
階段を降りて行くとドアがある。
当然鍵はかかってるけど、これは普通の鍵じゃない。
何せ鍵穴がない。
それに強力な結界が張ってあるのか、下手に壊すとどうなるかも分からない。
「なんか、疲れたなぁ」
最近はアイツに警戒して外を出歩く事も減った。
キーちゃんの店が開いてないから気を抜いて外で過ごせる時間も減ったし、ここのお客さんと話してないから交友関係も減ったし。
キーちゃんが居なくなって二ヶ月は過ぎた。
まだ二ヶ月なのか、もう二ヶ月なのか。
あの雷男、二ヶ月も戻さないなんて何してんだホント。
ん?
そういえばそうだ、アイツ委任されてる立場なのに二ヶ月も何の報告もない。
ふと思った事だけど、ホントに何してんのアイツ?
問い合わせるべき?
いや、目的に「私用」とかナメた事書く奴がまともな回答を返してくるとも思えない。
様子見行くなら仕事としてアリだな、ついでに旅行しても怒られることは無いよな。
それにサチさんはこういうの「思い立ったら吉日」って言ってたな。
どうせなら本当に旅行でも良いんじゃない?
雷男には会いたくないけど、ヴァローナのヨーグルトと煮込み料理は美味いんだよね。
一応仕事だし、一ヶ月くらいは許されるよね! 多分、多分。
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