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愛しの都は喧騒の中に
#8
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「いやもう、ホントお店の子が笑いこらえながら入ってきた時は何かと思ったわよ~。でもアレは無理、裏にいたから良かったけど声出して笑ったわ」
「女装は無理だろ女装は、肩幅とか首の太さとか」
「そうなの! 服のサイズ全然合ってないから足は丸見えだし肩は破れそうだし、それなのに堂々としてるんだもの。キーノスは無表情だし」
「ぐっ……想像しただけでも笑えるな」
ミケーノ様がくっくっと笑います。
昼間のカーラ様の笑い方と比較するとかなり控えめなご様子ですが、実際にご覧になっていたら、カーラ様と同じ反応をなさったかもしれません。
「なんでそんな事が、騎士団の罰か何かか?」
「最近スリ被害が多く出ているそうで、その調査に必要だと仰ってました」
「それであの女装? 目立つだけじゃないの」
「なのでネストレ様にお願いして、カーラ様のお店まで付いてきていただきました」
ミケーノ様がその様子を想像したのか、グラスを手にしたまま腕で口元を抑えます。
「もう誰かに言いたくて仕方なかったわ、ミケーノが居てくれて良かった」
───────
昼の時刻を過ぎた休憩時間。
ここ最近は表には出ず、裏の作業部屋でひたすらデザイン画と格闘している。
余程の事がなければ呼ばれることはないが、その日は少し慌てたようなノックが聞こえてきた。
「店長、今お時間よろしいですか?」
声が少し上ずっているように聞こえる。
何か酷い文句でも付けられたのかと心配になり、作業部屋のドアを開けた。
「どうしたの、何か……」
言いかけたところで、店のカウンターの前に二人の人物が見えた。
一人はキーノス、もう一人はネストレ様に見えるけど服がおかしい。
「おぉ、レウロ君! 久しぶりだな!」
服、はち切れそうよ?
なのになんでそんな爽やかなの、忘年会の時は服もかっこよかったじゃない。
という言葉を飲み込む。
小さく咳払いをして、気を取り直して笑顔を作る。
「あー、えっと? 何事なのか聞いても良い?」
「キーノス君が買い物に付き合って欲しいと言うから買い物に来……ハッ、来ましたのよ!」
突然思い出したように女性のような話し方をする。
何これ、ワタシの普段の話し方に関して物言いに来たのかしら?
ここからだと上半身しか見えないけどまさかその服、まさかよね?
「カーラ様、お忙しいところ申し訳ないのですが」
そう言ってキーノスが事情を簡単に説明を始めようとした。
逃げるなら今だとばかりに、店の子が素早くお辞儀して小走りに立ち去る。
店の子も気にはなっているみたいだけど、それ以上にここから逃げたいようだった。
「何か事情がありそうだし、こっち来てもらえる? ソコから入っていいから」
そう伝えると、カウンターの中に入ってきたネストレ様の全身が見えてしまった。
「んな、ちょっと」
スカートじゃないの!
ふくらはぎが逞しいわよ! それに靴は男物じゃない、ウエストの位置も高いし、待って? 何が起きてるの?
混乱する頭を他所に、ネストレ様は作業部屋に入ってくる。
「どう? アタシ、ネレーアって言いますのよ? このお洋服、中々似合ってますでしょ?」
スカートを手で掴んで広げてみせる、せめて摘んでちょうだい、あと太もも見えちゃってるわよ!
キーノスはもう慣れたのか、顔色一つ変えずに作業部屋に入ってきてドアを閉めた。
「何、えっと? キーノスが買い物しに来たんだっけ?」
「そうなのっ、さっき噴水の前で待ち合わせしてすぐによ? 何を買いに来たのか気になって仕方ないのっ」
「うぅんその、お買い物はキーノスの物を買いに来たの?」
「そうなの~。キーノス君の選ぶお洋服ってどんなのかしらっ! ネレーア、すっごく楽しみっ!」
「えぇ、でもその、ネストレ様はどうしちゃったの?」
「ネ・レー・ア! アタシはネレーアよっ」
拉致があかない、ネストレ様壊れたのかしら?
「ご説明いたします」
そこでキーノスがここまでの流れを説明してくれた。
───────
「あんなの笑うなって方が無理よ、よくキーノスあんな冷静に説明出来たわね」
「俺だったらずっと笑ってんな」
ミケーノ様は、先程から笑いが止まらないご様子です。
「写真も撮らせてくれたのよ、見る?」
「あんのかよ、見せてくれ」
そう言えば撮ってましたね。
ネストレ様は記念と言って一枚貰っていたかと思います。
カーラ様がお持ちになってきたカバンから、一枚の写真を取り出します。
それを見た瞬間、ミケーノ様が堪えられなかったようで大きな笑い声をあげました。
「分かるかしら、私の今日の気持ち」
「なんでこんな得意げなんだよ、元が良いからいけるんじゃねぇかとか少しは思ってたのに」
「服以外はネストレ様のまんまよ、明日新聞に載るわきっと」
出来ればスリを捕まえた記事が載る事を祈るばかりです。
「くっ……それで、女装を完璧に仕上げたのか?」
「騎士様の体格で女の子の服なんて無理よ、あの服どうやって手に入れたのかしら?」
「妹がいるっつってたからそれじゃねぇか?」
「無茶するわね……」
お二人は少し笑いが収まったようで、グラスの中のレイシュを飲み干してから、お互いのグラスにデキャンタから注ぎ合います。
「それで着替えさせたのがこっちよ」
カーラ様が着替えた後の写真を取り出して、ミケーノ様にお見せします。
こちらの写真もネストレ様はお持ち帰りになられておりました。
「はー、こっちは普通に良いな。キーノス柄シャツ似合うじゃねえか」
「でしょ? ネストレ様が最初はどうなるかと思ったけど、すごく楽しかったわぁ」
「さっきのよりはこっちのが目立たないし、スリは捕まえたのか?」
「はい、無事に取り押さえる事が出来ました」
結果として、カーラ様が選んでくださった服のお陰と言えるかもしれません。
「素敵なお召し物を選んでいただき、誠にありがとうございます」
「そう言って貰えるのが一番嬉しいわ! あのお洋服も普段着てもらえるのが一番良いけど」
「そのようにさせていただきます」
昼間あのネストレ様と二人で長い間外にいたにも関わらず、ネストレ様に話しかけたり近寄ってくるような方はおりませんでした。
カーラ様に頼めば、フードなど被らずに目立たないようにすることは簡単な事なのかもしれません。
「キーノスの場合、目立ちたくないなら顔と髪色何とかすれば大丈夫よ。すんごくもったいないけど」
「今リュンヌの貴族来てるらしいから見つかったら面倒だろうしな」
かの帝国の貴族の話が出た瞬間、カーラ様の動きがぴたりと止まります。
「あぁ……そうね」
「? どうした、マズい事言ったか?」
カーラ様のご様子に驚き、ミケーノ様が心配そうな表情を浮かべます。
以前爵位を与えるなどの話がありましたが、それと関連するのでしょうか?
「そのお貴族様ね、ドレスの注文に来てるのよ」
「えぇ? 男だって聞いたぞ?」
「あの時シアンさんとオランディ出入り禁止になった家以外に、もう一人お貴族様いたの覚えてる?」
「あーなんかいたな、よく覚えてないが」
「その人が、キーノスとビャンコさんに毒盛ったあんの夫人に、ドレス送りたいからってウチに来てるのよ!」
カーラ様がコツンと音を立ててグラスを置きます。
確かピエール子爵とかいう方ですね。
シアン様程ではありませんが、やや控えめな方だったように記憶しております。
「ソイツも出禁って聞いたぞ?」
「それがあんの夫人の家門から離れたんですって」
「なんだそりゃ、それでオランディ入ってこれるのか?」
「検査は大変みたいね、ウチに来てずーっと愚痴言ってるわよ。男の泣き言ってうっとおしいのよね」
深くため息をつきながら、ご注文されたモロキュウを一つ口に運びます。
「最初は断固拒否したのよ? だけど何なのかしらね、くどくどこっちが受けるまでお店の中でずっと同じ事繰り返すのよ。もう相手するのに疲れちゃって、根負けっていうか」
「たまーにいるよな、リモワにも」
「あぁ~確かにいるわね。なんかあのリュンヌ訛りのせいかしら、クドさがすごいのよ。あぁいう人って苦手だわワタシ」
再びモロキュウにフォーク刺し、上に向けて揺らしてみせます。
「点数がね、点数が……減らしに減らしてもアンサンブルとか小物もセットで五点よ? ここ数日ドレスとドレスとドレスよ。そろそろマスカレードの準備で楽しい時期なのに毎日フリルにレースに……アシスタンテの子と分担してるけど、ワタシの頭が童話の国に旅立つ寸前よ」
「やっぱ普通の服の方が楽しいんだな」
「んー、そういう訳でもないんだけどね。お貴族様のドレスってルールが多いのよ、あとオランディにいる人で似合いそうな人とか想像しにくいから、なーんかふわふわするっていうか」
「なら今日のネストレさんとか思い出し……ぐっ……」
そこでなぜネストレ様を例に出されたですか、と口をついて言いそうになるのを我慢します。
カーラ様とミケーノ様は笑っていらっしゃいますが、私が初めて拝見した時は強い焦燥感に駆られたものです。
「男に似合うドレスだなんて、肩幅から何とかしないと」
ゆっくりと回転していたフォークが止まります。
「そうよ、肩よ肩! コルセットのことばっかり考えてたから駄目なのよ、あとアレ、ウェストも別にあんな細くなくたって良いんだわ!」
「な、なんだよ急に」
「盲点だったわ、毒盛ったことが許せなくて冷静になれてなかったのよ」
カーラ様がフォークに刺さっていたキュウリをようやく口になさいます。
「なんかよく分かんねえけど、キーノスが倒れたアレって泥らしいぞ」
「え、泥ってどういう事?」
ミケーノ様はそのお話を始める前に新しくレイシュのご注文をなさいました。
カーラ様のデザインされているドレスに興味はありますが、同じくらい明日の新聞の記事が気になっております。
どちらも良い物になれば何の問題も無いのでしょう。
「女装は無理だろ女装は、肩幅とか首の太さとか」
「そうなの! 服のサイズ全然合ってないから足は丸見えだし肩は破れそうだし、それなのに堂々としてるんだもの。キーノスは無表情だし」
「ぐっ……想像しただけでも笑えるな」
ミケーノ様がくっくっと笑います。
昼間のカーラ様の笑い方と比較するとかなり控えめなご様子ですが、実際にご覧になっていたら、カーラ様と同じ反応をなさったかもしれません。
「なんでそんな事が、騎士団の罰か何かか?」
「最近スリ被害が多く出ているそうで、その調査に必要だと仰ってました」
「それであの女装? 目立つだけじゃないの」
「なのでネストレ様にお願いして、カーラ様のお店まで付いてきていただきました」
ミケーノ様がその様子を想像したのか、グラスを手にしたまま腕で口元を抑えます。
「もう誰かに言いたくて仕方なかったわ、ミケーノが居てくれて良かった」
───────
昼の時刻を過ぎた休憩時間。
ここ最近は表には出ず、裏の作業部屋でひたすらデザイン画と格闘している。
余程の事がなければ呼ばれることはないが、その日は少し慌てたようなノックが聞こえてきた。
「店長、今お時間よろしいですか?」
声が少し上ずっているように聞こえる。
何か酷い文句でも付けられたのかと心配になり、作業部屋のドアを開けた。
「どうしたの、何か……」
言いかけたところで、店のカウンターの前に二人の人物が見えた。
一人はキーノス、もう一人はネストレ様に見えるけど服がおかしい。
「おぉ、レウロ君! 久しぶりだな!」
服、はち切れそうよ?
なのになんでそんな爽やかなの、忘年会の時は服もかっこよかったじゃない。
という言葉を飲み込む。
小さく咳払いをして、気を取り直して笑顔を作る。
「あー、えっと? 何事なのか聞いても良い?」
「キーノス君が買い物に付き合って欲しいと言うから買い物に来……ハッ、来ましたのよ!」
突然思い出したように女性のような話し方をする。
何これ、ワタシの普段の話し方に関して物言いに来たのかしら?
ここからだと上半身しか見えないけどまさかその服、まさかよね?
「カーラ様、お忙しいところ申し訳ないのですが」
そう言ってキーノスが事情を簡単に説明を始めようとした。
逃げるなら今だとばかりに、店の子が素早くお辞儀して小走りに立ち去る。
店の子も気にはなっているみたいだけど、それ以上にここから逃げたいようだった。
「何か事情がありそうだし、こっち来てもらえる? ソコから入っていいから」
そう伝えると、カウンターの中に入ってきたネストレ様の全身が見えてしまった。
「んな、ちょっと」
スカートじゃないの!
ふくらはぎが逞しいわよ! それに靴は男物じゃない、ウエストの位置も高いし、待って? 何が起きてるの?
混乱する頭を他所に、ネストレ様は作業部屋に入ってくる。
「どう? アタシ、ネレーアって言いますのよ? このお洋服、中々似合ってますでしょ?」
スカートを手で掴んで広げてみせる、せめて摘んでちょうだい、あと太もも見えちゃってるわよ!
キーノスはもう慣れたのか、顔色一つ変えずに作業部屋に入ってきてドアを閉めた。
「何、えっと? キーノスが買い物しに来たんだっけ?」
「そうなのっ、さっき噴水の前で待ち合わせしてすぐによ? 何を買いに来たのか気になって仕方ないのっ」
「うぅんその、お買い物はキーノスの物を買いに来たの?」
「そうなの~。キーノス君の選ぶお洋服ってどんなのかしらっ! ネレーア、すっごく楽しみっ!」
「えぇ、でもその、ネストレ様はどうしちゃったの?」
「ネ・レー・ア! アタシはネレーアよっ」
拉致があかない、ネストレ様壊れたのかしら?
「ご説明いたします」
そこでキーノスがここまでの流れを説明してくれた。
───────
「あんなの笑うなって方が無理よ、よくキーノスあんな冷静に説明出来たわね」
「俺だったらずっと笑ってんな」
ミケーノ様は、先程から笑いが止まらないご様子です。
「写真も撮らせてくれたのよ、見る?」
「あんのかよ、見せてくれ」
そう言えば撮ってましたね。
ネストレ様は記念と言って一枚貰っていたかと思います。
カーラ様がお持ちになってきたカバンから、一枚の写真を取り出します。
それを見た瞬間、ミケーノ様が堪えられなかったようで大きな笑い声をあげました。
「分かるかしら、私の今日の気持ち」
「なんでこんな得意げなんだよ、元が良いからいけるんじゃねぇかとか少しは思ってたのに」
「服以外はネストレ様のまんまよ、明日新聞に載るわきっと」
出来ればスリを捕まえた記事が載る事を祈るばかりです。
「くっ……それで、女装を完璧に仕上げたのか?」
「騎士様の体格で女の子の服なんて無理よ、あの服どうやって手に入れたのかしら?」
「妹がいるっつってたからそれじゃねぇか?」
「無茶するわね……」
お二人は少し笑いが収まったようで、グラスの中のレイシュを飲み干してから、お互いのグラスにデキャンタから注ぎ合います。
「それで着替えさせたのがこっちよ」
カーラ様が着替えた後の写真を取り出して、ミケーノ様にお見せします。
こちらの写真もネストレ様はお持ち帰りになられておりました。
「はー、こっちは普通に良いな。キーノス柄シャツ似合うじゃねえか」
「でしょ? ネストレ様が最初はどうなるかと思ったけど、すごく楽しかったわぁ」
「さっきのよりはこっちのが目立たないし、スリは捕まえたのか?」
「はい、無事に取り押さえる事が出来ました」
結果として、カーラ様が選んでくださった服のお陰と言えるかもしれません。
「素敵なお召し物を選んでいただき、誠にありがとうございます」
「そう言って貰えるのが一番嬉しいわ! あのお洋服も普段着てもらえるのが一番良いけど」
「そのようにさせていただきます」
昼間あのネストレ様と二人で長い間外にいたにも関わらず、ネストレ様に話しかけたり近寄ってくるような方はおりませんでした。
カーラ様に頼めば、フードなど被らずに目立たないようにすることは簡単な事なのかもしれません。
「キーノスの場合、目立ちたくないなら顔と髪色何とかすれば大丈夫よ。すんごくもったいないけど」
「今リュンヌの貴族来てるらしいから見つかったら面倒だろうしな」
かの帝国の貴族の話が出た瞬間、カーラ様の動きがぴたりと止まります。
「あぁ……そうね」
「? どうした、マズい事言ったか?」
カーラ様のご様子に驚き、ミケーノ様が心配そうな表情を浮かべます。
以前爵位を与えるなどの話がありましたが、それと関連するのでしょうか?
「そのお貴族様ね、ドレスの注文に来てるのよ」
「えぇ? 男だって聞いたぞ?」
「あの時シアンさんとオランディ出入り禁止になった家以外に、もう一人お貴族様いたの覚えてる?」
「あーなんかいたな、よく覚えてないが」
「その人が、キーノスとビャンコさんに毒盛ったあんの夫人に、ドレス送りたいからってウチに来てるのよ!」
カーラ様がコツンと音を立ててグラスを置きます。
確かピエール子爵とかいう方ですね。
シアン様程ではありませんが、やや控えめな方だったように記憶しております。
「ソイツも出禁って聞いたぞ?」
「それがあんの夫人の家門から離れたんですって」
「なんだそりゃ、それでオランディ入ってこれるのか?」
「検査は大変みたいね、ウチに来てずーっと愚痴言ってるわよ。男の泣き言ってうっとおしいのよね」
深くため息をつきながら、ご注文されたモロキュウを一つ口に運びます。
「最初は断固拒否したのよ? だけど何なのかしらね、くどくどこっちが受けるまでお店の中でずっと同じ事繰り返すのよ。もう相手するのに疲れちゃって、根負けっていうか」
「たまーにいるよな、リモワにも」
「あぁ~確かにいるわね。なんかあのリュンヌ訛りのせいかしら、クドさがすごいのよ。あぁいう人って苦手だわワタシ」
再びモロキュウにフォーク刺し、上に向けて揺らしてみせます。
「点数がね、点数が……減らしに減らしてもアンサンブルとか小物もセットで五点よ? ここ数日ドレスとドレスとドレスよ。そろそろマスカレードの準備で楽しい時期なのに毎日フリルにレースに……アシスタンテの子と分担してるけど、ワタシの頭が童話の国に旅立つ寸前よ」
「やっぱ普通の服の方が楽しいんだな」
「んー、そういう訳でもないんだけどね。お貴族様のドレスってルールが多いのよ、あとオランディにいる人で似合いそうな人とか想像しにくいから、なーんかふわふわするっていうか」
「なら今日のネストレさんとか思い出し……ぐっ……」
そこでなぜネストレ様を例に出されたですか、と口をついて言いそうになるのを我慢します。
カーラ様とミケーノ様は笑っていらっしゃいますが、私が初めて拝見した時は強い焦燥感に駆られたものです。
「男に似合うドレスだなんて、肩幅から何とかしないと」
ゆっくりと回転していたフォークが止まります。
「そうよ、肩よ肩! コルセットのことばっかり考えてたから駄目なのよ、あとアレ、ウェストも別にあんな細くなくたって良いんだわ!」
「な、なんだよ急に」
「盲点だったわ、毒盛ったことが許せなくて冷静になれてなかったのよ」
カーラ様がフォークに刺さっていたキュウリをようやく口になさいます。
「なんかよく分かんねえけど、キーノスが倒れたアレって泥らしいぞ」
「え、泥ってどういう事?」
ミケーノ様はそのお話を始める前に新しくレイシュのご注文をなさいました。
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