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第九話 それぞれの想い
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(まったく……。何をどう思えば俺が同性愛者ってことになるんだよっ!)
グロリエンは自分の想いの欠片がヘルミーネへ届かなかった事に、ガックリと肩を落とす。しかもとんでもない誤解までされてしまった。
もちろん彼には同性愛者への偏見は無い。騎士の世界ではありふれた性的指向でもあるからだ。
しかしながらグロリエンは王太子なのだ。世継ぎをつくる事が使命でもある彼にとって、結婚対象が男である訳がないだろう。
(まあでも、強者を引き合いに出した俺の失敗でもあるんたけどさ……)
実を言えばグロリエンは知っていたのである。ヘルミーネが彼女自身を強者だなどとは少しも考えておらず、己の強さなんかに全く興味が無い事を。
ヘルミーネはいつだって公爵令嬢なのだ。人々に古今無双と謳われようが、貴族の女性らしくたおやかで気品のある自分で在りたいと彼女は願っている。
(ほんとおかしな奴だよ。けど、そんなヘルミーネだからこそ俺は愛しているんだよな)
僅かに頭を振って苦笑いをしたグロリエンは思う。もしヘルミーネと出逢っていなかったら、自分は最悪な為政者の道を選んでいたに違いないと。
(これも運命というやつなんだろう──)
グロリエンが神より授かった勇者の加護は、大陸の覇者ともなる可能性を秘めた伝説級の加護である。
その規格外の異能によりグロリエンは幼い頃から大人をも圧倒し、みるみるうちに王国有数の強者となっていった。
だがその強さと比例する様にして、グロリエンの自我も急速に増長していった。
やがて人間なんて弱くてつまらないと思う様になるほどに。
誰もがグロリエンに覇王となる未来を望み、グロリエン本人もまたその未来を疑いはしなかった。
勇者の加護を持った幼い王子は着々と強さを身に付けて、来るべき戦争と恐怖の時代へと真っ直ぐにと進んでゆく。
そんな頃である、少年だったグロリエンがヘルミーネと出逢ったのは。
ちょうど暇をしていたグロリエンの前に小さな女の子が現れる。聞けば従者の妹であるらしく、広い王宮で迷子になってしまったのだと言う。
『俺の暇潰しに付き合うのなら、お前を助けてやってもいいぞ』
いかにも人見知りで気の弱そうなその少女は、半分泣きべそをかきながらもグロリエンに助けを求めた。
そんな少女をみてグロリエンは、もっと泣かせたら面白そうだと意地の悪い事を考えている。
『お前、名前は?』
『ヘルミーネ……です」
『よしヘルミーネ、お前これから俺とボクシングをしろ。この俺に一発でもパンチが当たったらお前の勝ちだ』
『ボクシングって?』
『殴り合うスポーツだ』
『どうしてそんな事するの?』
『うるさいなあ、お前が勝ったら助けてやると言ってるんだよ』
『そう……。ならします』
そう言ってコクりと頷いたヘルミーネをグロリエンは馬鹿だと思った。普通なら殴り合うと聞いただけで、少女なら怖くて泣き出すはずだからだ。
しかしまあ脅して泣かすのも、この少女を軽く小突いて泣かすのも一緒かとグロリエンは意地悪そうにニヤリとする。
『準備はいいか?』
『はい……』
グロリエンはただ突っ立っているヘルミーネに対して、ファイティングポーズをとって見せる。
そして『いつでもかかって来い』と言いかけたのであるが──
『グエッ!!』
その言葉が終わる前にヘルミーネのパンチがグロリエンの腹に突き刺さったのである。それも強烈なパンチがだ。
しばらく息も出来ずに踞ってしまったグロリエンは、やっとの思いで顔を上げてヘルミーネを睨む。
『お、お前、何をしたっ』
『パンチ……です』
『それは分かっている! 加護か? 加護を使ったんだろっ』
『はい、たぶん……』
『お前の加護は何だ? 言えっ!』
『き、筋力強化……』
怯えて泣きそうになりながらもそう答えたヘルミーネに、グロリエンは声を荒らげて苛立ちをぶつけた。
『嘘を言うな! 筋力強化なんて下級加護で、この俺にパンチを当てられるもんかっ』
『嘘じゃないもん、ほんとうだもん……わたし嘘つきじゃないもん……』
とうとうシクシクと泣き出してしまった少女を見ても、グロリエンは可哀想とさえ感じない。むしろますますと苛立っていくばかりである。
『おい、もう一度俺と勝負しろ。今度は俺も勇者の加護を使って、お前の加護の正体を暴いてやる!』
ヘルミーネは泣きながらも『もう一度パンチを当てたら、お部屋まで連れていってくれるの?』と、ビクビクしながら尋ねた。
『ああいとも。もしパンチを当てられたらだけどな!』
『なら、する……』
すでに勇者の加護を使っていたグロリエンは、底意地の悪い笑みを浮かべて再びファイティングポーズをとったのであった。
もはや自分が負けるはずがないと、そう思った途端である。
『さあっ──グエッ!!』
ヘルミーネのパンチは無情にもグロリエンの腹を撃ち抜いた。
未来の覇王は、もはや言い訳の出来ない敗北を喫する事となったのであった。
その日からグロリエンは、一人でいるヘルミーネを捕まえては何度も何度も勝負を挑む。だが一度として勝つ事が出来なかった。
不思議と明るくなり勝負を楽しむようになっていくヘルミーネとは対照的に、グロリエンは元気がなくなりションボリする姿が目立ち始める。
ついには『あのぉヘルミーネさん、今日も勝負をお願いできるでしょうか?』と、とても謙虚な態度をみせる様になった。
この期に及びグロリエンは覚ったのである。こんな少女の、しかも筋力強化という下級加護にさえ一度も勝てない自分は、紛れもなく弱者であるのだと。
『何が勇者の加護だッ……何が未来の覇王だよッ。俺は図に乗っていた今までの自分が恥ずかしい!』
増長していた自我はすっかりと消え失せて、入れ替わる様にして育っていったのは彼が本来持っていた優しさだった。
他人を見下さず親切にしていると、何故だかとても毎日が快適なのだ。覇王の道を歩んでいた時のような息苦しさがまるで無い。
ある日、グロリエンは何気なくヘルミーネに聞いてみた事があった。
『なあヘルミーネ、お前は覇王の事をどう思う?」
『覇王ってなあに?』
『覇王ってのはな、沢山の戦争に勝って大陸を一つの国にする王様の事だ』
『沢山戦争をするの? そしたら一杯人が死んじゃうよ?』
『でも仕方がないんだ。それが覇王っていう王様の仕事だからな』
『だったらそんな王様キライ! だってあたし戦争なんてイヤだもん!』
『じ、じゃあ俺が覇王になったら、ヘルミーネは俺のことが嫌いになるのか?』
『うん、大キライになる!』
『そうなのか……』
そのヘルミーネとの会話がグロリエンにとって人生の転換点となる。彼は平和主義の国王となる事を心に誓ったのだ。
ヘルミーネに好きでいて貰える様な国王でありたい。そう思ったグロリエンの心には、すでにヘルミーネへの恋心が芽生えていたのかもしれない。
そんな昔を思い出していたグロリエンは、優しい眼差しでカップの中を見つめているヘルミーネを見て思う。
(お前はずっと変わらないな──)
だからこそである。弱者だから覇王への道を諦めるのではない。ヘルミーネという真の強者に勝ってなお、覇王である道を自らの意志で捨てたいのだ。
そうでなければ本当の意味で平和を望む国王とは言えないだろう。
(俺は俺自身に胸を張れる男になって、ヘルミーネにプロポーズがしたいんだ!)
「な、なんですの? そんなにジロジロ見つめられたら気まずいですわ」
グロリエンからの強い視線に気がついたヘルミーネは、少し困ったような顔をして口を尖らせた。
「あ、いや、すまん。何でもない」
「??……」
グロリエンの心中など知る由もないヘルミーネは、彼女は彼女で色々と考えていたようである。
結局のところグロリエンに恋愛対象と見て貰えない事は、決してグロリエンの罪ではないのだ。自分にその魅力がないだけなのに、僻んだ心で彼を責めては筋が通らない。
それにヘルミーネ自身でさえ、自分に女性的な魅力があるとは思っていないのである。なのにグロリエンにだけそれを求めるのは傲慢と言うものだ。
そういった反省がこの短い時間に、ヘルミーネの頭を駆け巡っていた。
(私、もっと頑張ろう──)
何を頑張ろうと思ったのかはヘルミーネにしか分からない。しかし今の彼女は別人のように晴れ晴れとしている。
やがて大きく息を吸ったヘルミーネは真っ直ぐにグロリエンを見た。そして背筋を伸ばし毅然とした態度で言ったのである。
「ところでグロリエン様。先ほどの謝罪、受け入れる事にいたします」
「えっ、ほんと? ありがとう!」
「兄にも伝えておきますわ。これでようやく無意味な婚約からも解放されそうです」
「それは良かった! どうやら俺はもうヒヤヒヤしないで済みそうだ。助かるよ」
するとヘルミーネは不思議そうな顔をして尋ねたのである、「どうして私が婚約から解放されると、グロリエン様が助かるのでしょうか?」と。
「うっ、それは……秘密だ!」
「秘密? どうしてですの?」
「と、とにかく教えん!」
「まあ、ケチンボ!」
子供の頃からずっとこうして、喧嘩と仲直りを繰り返してきた二人であった。
どうやら今回もそんな繰り返しの一つであったようだ。
二人が手放さない限り、何時だって同じ場所へと戻ってこれる。もしかしたらそんな居場所が二人にはあるのかもしれない。
グロリエンは自分の想いの欠片がヘルミーネへ届かなかった事に、ガックリと肩を落とす。しかもとんでもない誤解までされてしまった。
もちろん彼には同性愛者への偏見は無い。騎士の世界ではありふれた性的指向でもあるからだ。
しかしながらグロリエンは王太子なのだ。世継ぎをつくる事が使命でもある彼にとって、結婚対象が男である訳がないだろう。
(まあでも、強者を引き合いに出した俺の失敗でもあるんたけどさ……)
実を言えばグロリエンは知っていたのである。ヘルミーネが彼女自身を強者だなどとは少しも考えておらず、己の強さなんかに全く興味が無い事を。
ヘルミーネはいつだって公爵令嬢なのだ。人々に古今無双と謳われようが、貴族の女性らしくたおやかで気品のある自分で在りたいと彼女は願っている。
(ほんとおかしな奴だよ。けど、そんなヘルミーネだからこそ俺は愛しているんだよな)
僅かに頭を振って苦笑いをしたグロリエンは思う。もしヘルミーネと出逢っていなかったら、自分は最悪な為政者の道を選んでいたに違いないと。
(これも運命というやつなんだろう──)
グロリエンが神より授かった勇者の加護は、大陸の覇者ともなる可能性を秘めた伝説級の加護である。
その規格外の異能によりグロリエンは幼い頃から大人をも圧倒し、みるみるうちに王国有数の強者となっていった。
だがその強さと比例する様にして、グロリエンの自我も急速に増長していった。
やがて人間なんて弱くてつまらないと思う様になるほどに。
誰もがグロリエンに覇王となる未来を望み、グロリエン本人もまたその未来を疑いはしなかった。
勇者の加護を持った幼い王子は着々と強さを身に付けて、来るべき戦争と恐怖の時代へと真っ直ぐにと進んでゆく。
そんな頃である、少年だったグロリエンがヘルミーネと出逢ったのは。
ちょうど暇をしていたグロリエンの前に小さな女の子が現れる。聞けば従者の妹であるらしく、広い王宮で迷子になってしまったのだと言う。
『俺の暇潰しに付き合うのなら、お前を助けてやってもいいぞ』
いかにも人見知りで気の弱そうなその少女は、半分泣きべそをかきながらもグロリエンに助けを求めた。
そんな少女をみてグロリエンは、もっと泣かせたら面白そうだと意地の悪い事を考えている。
『お前、名前は?』
『ヘルミーネ……です」
『よしヘルミーネ、お前これから俺とボクシングをしろ。この俺に一発でもパンチが当たったらお前の勝ちだ』
『ボクシングって?』
『殴り合うスポーツだ』
『どうしてそんな事するの?』
『うるさいなあ、お前が勝ったら助けてやると言ってるんだよ』
『そう……。ならします』
そう言ってコクりと頷いたヘルミーネをグロリエンは馬鹿だと思った。普通なら殴り合うと聞いただけで、少女なら怖くて泣き出すはずだからだ。
しかしまあ脅して泣かすのも、この少女を軽く小突いて泣かすのも一緒かとグロリエンは意地悪そうにニヤリとする。
『準備はいいか?』
『はい……』
グロリエンはただ突っ立っているヘルミーネに対して、ファイティングポーズをとって見せる。
そして『いつでもかかって来い』と言いかけたのであるが──
『グエッ!!』
その言葉が終わる前にヘルミーネのパンチがグロリエンの腹に突き刺さったのである。それも強烈なパンチがだ。
しばらく息も出来ずに踞ってしまったグロリエンは、やっとの思いで顔を上げてヘルミーネを睨む。
『お、お前、何をしたっ』
『パンチ……です』
『それは分かっている! 加護か? 加護を使ったんだろっ』
『はい、たぶん……』
『お前の加護は何だ? 言えっ!』
『き、筋力強化……』
怯えて泣きそうになりながらもそう答えたヘルミーネに、グロリエンは声を荒らげて苛立ちをぶつけた。
『嘘を言うな! 筋力強化なんて下級加護で、この俺にパンチを当てられるもんかっ』
『嘘じゃないもん、ほんとうだもん……わたし嘘つきじゃないもん……』
とうとうシクシクと泣き出してしまった少女を見ても、グロリエンは可哀想とさえ感じない。むしろますますと苛立っていくばかりである。
『おい、もう一度俺と勝負しろ。今度は俺も勇者の加護を使って、お前の加護の正体を暴いてやる!』
ヘルミーネは泣きながらも『もう一度パンチを当てたら、お部屋まで連れていってくれるの?』と、ビクビクしながら尋ねた。
『ああいとも。もしパンチを当てられたらだけどな!』
『なら、する……』
すでに勇者の加護を使っていたグロリエンは、底意地の悪い笑みを浮かべて再びファイティングポーズをとったのであった。
もはや自分が負けるはずがないと、そう思った途端である。
『さあっ──グエッ!!』
ヘルミーネのパンチは無情にもグロリエンの腹を撃ち抜いた。
未来の覇王は、もはや言い訳の出来ない敗北を喫する事となったのであった。
その日からグロリエンは、一人でいるヘルミーネを捕まえては何度も何度も勝負を挑む。だが一度として勝つ事が出来なかった。
不思議と明るくなり勝負を楽しむようになっていくヘルミーネとは対照的に、グロリエンは元気がなくなりションボリする姿が目立ち始める。
ついには『あのぉヘルミーネさん、今日も勝負をお願いできるでしょうか?』と、とても謙虚な態度をみせる様になった。
この期に及びグロリエンは覚ったのである。こんな少女の、しかも筋力強化という下級加護にさえ一度も勝てない自分は、紛れもなく弱者であるのだと。
『何が勇者の加護だッ……何が未来の覇王だよッ。俺は図に乗っていた今までの自分が恥ずかしい!』
増長していた自我はすっかりと消え失せて、入れ替わる様にして育っていったのは彼が本来持っていた優しさだった。
他人を見下さず親切にしていると、何故だかとても毎日が快適なのだ。覇王の道を歩んでいた時のような息苦しさがまるで無い。
ある日、グロリエンは何気なくヘルミーネに聞いてみた事があった。
『なあヘルミーネ、お前は覇王の事をどう思う?」
『覇王ってなあに?』
『覇王ってのはな、沢山の戦争に勝って大陸を一つの国にする王様の事だ』
『沢山戦争をするの? そしたら一杯人が死んじゃうよ?』
『でも仕方がないんだ。それが覇王っていう王様の仕事だからな』
『だったらそんな王様キライ! だってあたし戦争なんてイヤだもん!』
『じ、じゃあ俺が覇王になったら、ヘルミーネは俺のことが嫌いになるのか?』
『うん、大キライになる!』
『そうなのか……』
そのヘルミーネとの会話がグロリエンにとって人生の転換点となる。彼は平和主義の国王となる事を心に誓ったのだ。
ヘルミーネに好きでいて貰える様な国王でありたい。そう思ったグロリエンの心には、すでにヘルミーネへの恋心が芽生えていたのかもしれない。
そんな昔を思い出していたグロリエンは、優しい眼差しでカップの中を見つめているヘルミーネを見て思う。
(お前はずっと変わらないな──)
だからこそである。弱者だから覇王への道を諦めるのではない。ヘルミーネという真の強者に勝ってなお、覇王である道を自らの意志で捨てたいのだ。
そうでなければ本当の意味で平和を望む国王とは言えないだろう。
(俺は俺自身に胸を張れる男になって、ヘルミーネにプロポーズがしたいんだ!)
「な、なんですの? そんなにジロジロ見つめられたら気まずいですわ」
グロリエンからの強い視線に気がついたヘルミーネは、少し困ったような顔をして口を尖らせた。
「あ、いや、すまん。何でもない」
「??……」
グロリエンの心中など知る由もないヘルミーネは、彼女は彼女で色々と考えていたようである。
結局のところグロリエンに恋愛対象と見て貰えない事は、決してグロリエンの罪ではないのだ。自分にその魅力がないだけなのに、僻んだ心で彼を責めては筋が通らない。
それにヘルミーネ自身でさえ、自分に女性的な魅力があるとは思っていないのである。なのにグロリエンにだけそれを求めるのは傲慢と言うものだ。
そういった反省がこの短い時間に、ヘルミーネの頭を駆け巡っていた。
(私、もっと頑張ろう──)
何を頑張ろうと思ったのかはヘルミーネにしか分からない。しかし今の彼女は別人のように晴れ晴れとしている。
やがて大きく息を吸ったヘルミーネは真っ直ぐにグロリエンを見た。そして背筋を伸ばし毅然とした態度で言ったのである。
「ところでグロリエン様。先ほどの謝罪、受け入れる事にいたします」
「えっ、ほんと? ありがとう!」
「兄にも伝えておきますわ。これでようやく無意味な婚約からも解放されそうです」
「それは良かった! どうやら俺はもうヒヤヒヤしないで済みそうだ。助かるよ」
するとヘルミーネは不思議そうな顔をして尋ねたのである、「どうして私が婚約から解放されると、グロリエン様が助かるのでしょうか?」と。
「うっ、それは……秘密だ!」
「秘密? どうしてですの?」
「と、とにかく教えん!」
「まあ、ケチンボ!」
子供の頃からずっとこうして、喧嘩と仲直りを繰り返してきた二人であった。
どうやら今回もそんな繰り返しの一つであったようだ。
二人が手放さない限り、何時だって同じ場所へと戻ってこれる。もしかしたらそんな居場所が二人にはあるのかもしれない。
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