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第十九話 湖畔でピクニック
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グロリエンは執務室の机に広げた一通の手紙を前にして、難しい顔で唸っている。
かれこれ二時間もそうしている彼は、やがて組んでいた腕を解くと今日何度目かの溜め息をついた。
(うぅむ分からん。俺はこの手紙の内容をどう解釈すれば良いのだろうか……)
その手紙の差出人はヘルミーネであった。先日彼女は親友のエリスティアにまんまと乗せられて、グロリエンをデートに誘う決心をした。
ヘルミーネ自身にも、自分が乙女失格だと思う焦りもあったからだ。
何をもって乙女失格なのか、ヘルミーネにその明確な基準があるわけではない。要するにデートの一つも出ないような女性では、何だか駄目な気がしているだけなのだ。
しかし本人は深刻に思っていたのだろう。駄目な女性でいたくはないという一心で、グロリエンへと手紙を送ったのである。
《親愛なるグロリエン殿下。清秋の候、湖畔でピクニックをするに素晴らしい季節にて、宜しければご一緒に如何。ヘルミーネ》
何とも味も素気もない手紙である。それだけにグロリエンはかえって悩んでしまったようだ。
(ピクニックか。もしかしたらこれは決闘を意味する隠語なのだろうか? いやそれとも俺と一緒にピクニックをしたいという、そのままの意味か? だとしたらこれはヘルミーネからのデートのお誘いじゃないか!)
そう思ったグロリエンはみるみる相好を崩してゆき、なんとも嬉しそうにした。
(はっ! いかんいかん。こうして俺を油断させる新手の果たし状かもしれんっ)
パンパンと平手で頬を叩いたグロリエンは、緩んだ心に活を入れる。こんな事をさっきから二時間も繰り返しているのだ。
要はグロリエンが手紙の内容に勝手な憶測をつけて混乱しているだけなのだが、一概に笑えないところもある。
先日エリスティアは今時女性から男性へデートの誘いくらい普通にすると、ヘルミーネに話していた。
だがそれは事実ではなく真っ赤な嘘である。女性から男性をデートに誘うなど、未だ非常識な世の中なのだ。
ゆえに嘘とは知らずに出されたヘルミーネの手紙は、当然悩ましい意味を持ってしまった。
グロリエンがその手紙を訝しがったのは、ある意味尋常な反応なのだ。
(だけどなあ……)
とはいえ、もしヘルミーネが本当にグロリエンをデートに誘っているのなら、これはよほど勇気を出しての手紙であろう。
もしその勇気を蔑ろにした返事をしたら、ヘルミーネが酷く傷つく事は容易に想像がつく。
(でもなあ……)
ところがでる。もしグロリエンがこの手紙をヘルミーネからのお誘いと断定し、彼女の勇気に応える誠実な返事をしたとする。
しかしヘルミーネにそのつもりが無かったとしたら、当然彼女は慎みのない女性と誤解された事に恥辱と怒りを覚えるだろう。
「ああっ! もうワケが分からんッ!」
早い話、グロリエンにとってこの手紙が果たし状であったら一番楽なのだ。
それはいつもの事の繰り返しで、何も悩まなくて済むのだから。しかし乙女心が混じったその手紙は、グロリエンの心を千々にと乱す。
結局悩み抜いた挙げ句グロリエンは、『万事了解した』という短い返事を返した。
これまた味も素っ気もない文面だが、ヘルミーネの気持ちは全て受け取るという彼なりの覚悟の表れであったようだ。
ともあれ二人は湖畔でピクニックをする日を迎えた──デートのはじまりである。
◇
(な、何か話してよっ!)
ヘルミーネは王家専用の豪華な馬車の中で、向かい合って座ているグロリエンを見ながら無言の叫び声をあげる。
さっきから二人は殆ど会話をしておらず、これから楽しいピクニックへ向かうという雰囲気がまるでない。言うまでもないが二人ともつまらまらなくて黙っているのではなく、緊張して黙っているのだ。というか喋れない。
ヘルミーネは時が経つにつれ、自分のしたこの大胆な行為に恐れをなしてしまっていた。今も微かに震えているほどだ。
グロリエンはグロリエンで、本当にこのピクニックがヘルミーネからのデートの誘いであった事に衝撃を受けて、頭が真っ白になっている。
(話題っ、話題は何かないかっ! そうだ、とにかくヘルミーネを褒めようッ)
焦ったグロリエンはさながら初対面の相手にするように、社交辞令でこの場の空気を飾ろうと試みる。
そっとヘルミーネを盗み見るようにして、どこか褒める場所はないかと探してみた。
今日の彼女は編み込まれた髪に花飾りを着け、その飾りと同じ薄桃色の可愛いドレスがとてもよく似合っていた。
弾けるような肌には僅かに化粧が施されていて、紅を差した唇がほんのり色っぽい。
(ぜっ、全部可愛いッ!)
グロリエンは社交辞令を言うどころか本気でその可愛いさに感動してしまい、なおさら緊張して口を引き結んでしまう。
(くっ、無理だ……。ヘルミーネの素晴らしいパンチは称賛できるのに、どうしてこの可愛さを俺は素直に称賛できないんだッ?)
これが惚れた弱みというものか。王太子として数多の美女と立場的な交際を色々してきたグロリエンにとって、ヘルミーネ程度の美しさは本来気に止めるようなものではないだろう。
それなのに今の彼は思春期の少年のようにウブになっている。幸い馬車の中はヘルミーネと二人だけなので、この醜態を誰にも見られない事だけが救いであった。
当然ながら今回のピクニックも本当の意味では二人でという訳ではない。
王太子と公爵令嬢が出掛けるのである。そこにはどうしても格式や警護が付いてまわり、総勢三十人という大所帯でのピクニックとなってしまっていた。
「へ、ヘルミーネっ!」
「は、はいっ!」
しかしながらいつまでもモジモジとしていては男が廃るとばかりに、グロリエンは意を決してヘルミーネにと話しかける。
「湖に着いたら水泳で競争しよう!」
「…………」
ちなみに今は秋である。グロリエンは無反応なヘルミーネがぴくりと眉根を寄せたのを見逃さない。同時に冷や汗が流れ落ちる。
「いやっ、冗談だ! ははは」
「だと思いましたわ! おほほ」
乾いた空気が馬車の中を満たしてゆくのを感じたグロリエンは、いよいよヤバいと危機感を覚えた。
「そ、そうだヘルミーネ!」
「は、はいっ!」
「今日は宮廷から一流のシェフを同行させているんだ。湖畔での昼食を楽しみにするといいぞ!」
「それは本当に楽しみですわ!」
「だ、だろっ!」
ようやく二人の会話が転がり始めそうになり、二人がホッとしたのも束の間。
「よし、じゃあ大食い競争をするか!」
「…………」
ヘルミーネは再び無反応へと戻って額に青筋を立てた。当然この変化もまたグロリエンは見逃してはいない。
さっきの十倍の勢いで冷や汗を流しながら、引きつった笑顔でまた言い訳をする。
「も、もちろん冗談だ! はは……は」
だが今度のヘルミーネはその言い訳に乗ってはくれなかった。むしろ怒りを増幅させている様にも見える。
「さっきからグロリエン様は何なのですか? 競争競争って……。私とは勝負以外のことはなさりたくございませんのっ!?」
勝負から離れたくてデートに誘ったヘルミーネにしてみれば、グロリエンの態度はその気持ちを踏みにじる様なものだろう。
「そんなに勝負がなさりたいのなら、わざわざピクニックにお付き合い頂かなくても結構ですわ!」
「ち、違う、そうじゃないっ!」
「もう分かりました。お洒落しようが何しようが、グロリエン様は私にそういう興味はお持ちでないのです!」
「それは酷い誤解だっ! 俺はただ……」
グロリエンはいつになく真剣にヘルミーネの目を真っ直ぐにと見る。
「ただ、今日のお前がどうも俺には眩し過ぎたんだ。だから調子が狂ってしまって……。すまなかった」
「眩しい? どういう意味ですの?」
「お前が可愛いという意味だ」
途端にヘルミーネは顔を、いやおそらく全身を真っ赤にさせて絶句する。
もしこの場にエリスティアが居たならば、「チョロすぎぃー」と言ったに違いない。それほどヘルミーネの機嫌は急速に回復されていったのである。
「そ、そんなの嘘ですっ!」
「嘘じゃない、本当に可愛いんだ。だから俺は自分の気持ちを持て余してしまっているんだと思う」
「し、信じられませんわ。じゃ、じゃあ私の一体どこが可愛いのですか!?」
「もちろん全部だッ!」
この時二人はすっかり忘れていた。ヘルミーネが興奮状態になると、無意識に筋力強化の加護を発揮させてしまう事を。
身を乗り出すようにしてそう言い切ったグロリエンに、ヘルミーネはギュッと目を瞑り「ち、近いですッ!」と顔を背ける。
顔を背けただけなら良かったのだが、ヘルミーネは同時にグロリエンを押し返してしまった。
当然のごとくグロリエンはブッ飛ばされて、馬車の内壁へとめり込んだ。
「グエッ!!」
「あっ!……」
馬車から物凄い音と振動を感じた馬たちが、嘶きをあげて立ち止まる。
むろん護衛の騎士たちもこの異変に血相を変えて集まってきた。
「何事ですかッ!」
急いで馬車のドアを開けて中の様子を見てみれば、オロオロとしているヘルミーネと気を失っているグロリエンがいる。
普通ならこのただならぬ状況を看過出来る者など居はしまい。
だが護衛の騎士たちは分かっていた。ああ、いつものヤツだと。
そして何事も無かった様にしてパタリと馬車のドアを閉め、三十人の一行は再び目的地の湖へと出発しだしたのであった。
かれこれ二時間もそうしている彼は、やがて組んでいた腕を解くと今日何度目かの溜め息をついた。
(うぅむ分からん。俺はこの手紙の内容をどう解釈すれば良いのだろうか……)
その手紙の差出人はヘルミーネであった。先日彼女は親友のエリスティアにまんまと乗せられて、グロリエンをデートに誘う決心をした。
ヘルミーネ自身にも、自分が乙女失格だと思う焦りもあったからだ。
何をもって乙女失格なのか、ヘルミーネにその明確な基準があるわけではない。要するにデートの一つも出ないような女性では、何だか駄目な気がしているだけなのだ。
しかし本人は深刻に思っていたのだろう。駄目な女性でいたくはないという一心で、グロリエンへと手紙を送ったのである。
《親愛なるグロリエン殿下。清秋の候、湖畔でピクニックをするに素晴らしい季節にて、宜しければご一緒に如何。ヘルミーネ》
何とも味も素気もない手紙である。それだけにグロリエンはかえって悩んでしまったようだ。
(ピクニックか。もしかしたらこれは決闘を意味する隠語なのだろうか? いやそれとも俺と一緒にピクニックをしたいという、そのままの意味か? だとしたらこれはヘルミーネからのデートのお誘いじゃないか!)
そう思ったグロリエンはみるみる相好を崩してゆき、なんとも嬉しそうにした。
(はっ! いかんいかん。こうして俺を油断させる新手の果たし状かもしれんっ)
パンパンと平手で頬を叩いたグロリエンは、緩んだ心に活を入れる。こんな事をさっきから二時間も繰り返しているのだ。
要はグロリエンが手紙の内容に勝手な憶測をつけて混乱しているだけなのだが、一概に笑えないところもある。
先日エリスティアは今時女性から男性へデートの誘いくらい普通にすると、ヘルミーネに話していた。
だがそれは事実ではなく真っ赤な嘘である。女性から男性をデートに誘うなど、未だ非常識な世の中なのだ。
ゆえに嘘とは知らずに出されたヘルミーネの手紙は、当然悩ましい意味を持ってしまった。
グロリエンがその手紙を訝しがったのは、ある意味尋常な反応なのだ。
(だけどなあ……)
とはいえ、もしヘルミーネが本当にグロリエンをデートに誘っているのなら、これはよほど勇気を出しての手紙であろう。
もしその勇気を蔑ろにした返事をしたら、ヘルミーネが酷く傷つく事は容易に想像がつく。
(でもなあ……)
ところがでる。もしグロリエンがこの手紙をヘルミーネからのお誘いと断定し、彼女の勇気に応える誠実な返事をしたとする。
しかしヘルミーネにそのつもりが無かったとしたら、当然彼女は慎みのない女性と誤解された事に恥辱と怒りを覚えるだろう。
「ああっ! もうワケが分からんッ!」
早い話、グロリエンにとってこの手紙が果たし状であったら一番楽なのだ。
それはいつもの事の繰り返しで、何も悩まなくて済むのだから。しかし乙女心が混じったその手紙は、グロリエンの心を千々にと乱す。
結局悩み抜いた挙げ句グロリエンは、『万事了解した』という短い返事を返した。
これまた味も素っ気もない文面だが、ヘルミーネの気持ちは全て受け取るという彼なりの覚悟の表れであったようだ。
ともあれ二人は湖畔でピクニックをする日を迎えた──デートのはじまりである。
◇
(な、何か話してよっ!)
ヘルミーネは王家専用の豪華な馬車の中で、向かい合って座ているグロリエンを見ながら無言の叫び声をあげる。
さっきから二人は殆ど会話をしておらず、これから楽しいピクニックへ向かうという雰囲気がまるでない。言うまでもないが二人ともつまらまらなくて黙っているのではなく、緊張して黙っているのだ。というか喋れない。
ヘルミーネは時が経つにつれ、自分のしたこの大胆な行為に恐れをなしてしまっていた。今も微かに震えているほどだ。
グロリエンはグロリエンで、本当にこのピクニックがヘルミーネからのデートの誘いであった事に衝撃を受けて、頭が真っ白になっている。
(話題っ、話題は何かないかっ! そうだ、とにかくヘルミーネを褒めようッ)
焦ったグロリエンはさながら初対面の相手にするように、社交辞令でこの場の空気を飾ろうと試みる。
そっとヘルミーネを盗み見るようにして、どこか褒める場所はないかと探してみた。
今日の彼女は編み込まれた髪に花飾りを着け、その飾りと同じ薄桃色の可愛いドレスがとてもよく似合っていた。
弾けるような肌には僅かに化粧が施されていて、紅を差した唇がほんのり色っぽい。
(ぜっ、全部可愛いッ!)
グロリエンは社交辞令を言うどころか本気でその可愛いさに感動してしまい、なおさら緊張して口を引き結んでしまう。
(くっ、無理だ……。ヘルミーネの素晴らしいパンチは称賛できるのに、どうしてこの可愛さを俺は素直に称賛できないんだッ?)
これが惚れた弱みというものか。王太子として数多の美女と立場的な交際を色々してきたグロリエンにとって、ヘルミーネ程度の美しさは本来気に止めるようなものではないだろう。
それなのに今の彼は思春期の少年のようにウブになっている。幸い馬車の中はヘルミーネと二人だけなので、この醜態を誰にも見られない事だけが救いであった。
当然ながら今回のピクニックも本当の意味では二人でという訳ではない。
王太子と公爵令嬢が出掛けるのである。そこにはどうしても格式や警護が付いてまわり、総勢三十人という大所帯でのピクニックとなってしまっていた。
「へ、ヘルミーネっ!」
「は、はいっ!」
しかしながらいつまでもモジモジとしていては男が廃るとばかりに、グロリエンは意を決してヘルミーネにと話しかける。
「湖に着いたら水泳で競争しよう!」
「…………」
ちなみに今は秋である。グロリエンは無反応なヘルミーネがぴくりと眉根を寄せたのを見逃さない。同時に冷や汗が流れ落ちる。
「いやっ、冗談だ! ははは」
「だと思いましたわ! おほほ」
乾いた空気が馬車の中を満たしてゆくのを感じたグロリエンは、いよいよヤバいと危機感を覚えた。
「そ、そうだヘルミーネ!」
「は、はいっ!」
「今日は宮廷から一流のシェフを同行させているんだ。湖畔での昼食を楽しみにするといいぞ!」
「それは本当に楽しみですわ!」
「だ、だろっ!」
ようやく二人の会話が転がり始めそうになり、二人がホッとしたのも束の間。
「よし、じゃあ大食い競争をするか!」
「…………」
ヘルミーネは再び無反応へと戻って額に青筋を立てた。当然この変化もまたグロリエンは見逃してはいない。
さっきの十倍の勢いで冷や汗を流しながら、引きつった笑顔でまた言い訳をする。
「も、もちろん冗談だ! はは……は」
だが今度のヘルミーネはその言い訳に乗ってはくれなかった。むしろ怒りを増幅させている様にも見える。
「さっきからグロリエン様は何なのですか? 競争競争って……。私とは勝負以外のことはなさりたくございませんのっ!?」
勝負から離れたくてデートに誘ったヘルミーネにしてみれば、グロリエンの態度はその気持ちを踏みにじる様なものだろう。
「そんなに勝負がなさりたいのなら、わざわざピクニックにお付き合い頂かなくても結構ですわ!」
「ち、違う、そうじゃないっ!」
「もう分かりました。お洒落しようが何しようが、グロリエン様は私にそういう興味はお持ちでないのです!」
「それは酷い誤解だっ! 俺はただ……」
グロリエンはいつになく真剣にヘルミーネの目を真っ直ぐにと見る。
「ただ、今日のお前がどうも俺には眩し過ぎたんだ。だから調子が狂ってしまって……。すまなかった」
「眩しい? どういう意味ですの?」
「お前が可愛いという意味だ」
途端にヘルミーネは顔を、いやおそらく全身を真っ赤にさせて絶句する。
もしこの場にエリスティアが居たならば、「チョロすぎぃー」と言ったに違いない。それほどヘルミーネの機嫌は急速に回復されていったのである。
「そ、そんなの嘘ですっ!」
「嘘じゃない、本当に可愛いんだ。だから俺は自分の気持ちを持て余してしまっているんだと思う」
「し、信じられませんわ。じゃ、じゃあ私の一体どこが可愛いのですか!?」
「もちろん全部だッ!」
この時二人はすっかり忘れていた。ヘルミーネが興奮状態になると、無意識に筋力強化の加護を発揮させてしまう事を。
身を乗り出すようにしてそう言い切ったグロリエンに、ヘルミーネはギュッと目を瞑り「ち、近いですッ!」と顔を背ける。
顔を背けただけなら良かったのだが、ヘルミーネは同時にグロリエンを押し返してしまった。
当然のごとくグロリエンはブッ飛ばされて、馬車の内壁へとめり込んだ。
「グエッ!!」
「あっ!……」
馬車から物凄い音と振動を感じた馬たちが、嘶きをあげて立ち止まる。
むろん護衛の騎士たちもこの異変に血相を変えて集まってきた。
「何事ですかッ!」
急いで馬車のドアを開けて中の様子を見てみれば、オロオロとしているヘルミーネと気を失っているグロリエンがいる。
普通ならこのただならぬ状況を看過出来る者など居はしまい。
だが護衛の騎士たちは分かっていた。ああ、いつものヤツだと。
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