11 / 53
第一章 柴イヌ、冒険者になる
第十一話 謎の組織ドッグラン
しおりを挟む
「やっぱりな……俺様、いま確信したわ」
なにをでしょうか? なんかこのイヤな人は勝手にどんどんと、ケンカへの道を突き進んでいくみたいなんですが……
「言っとくけど、俺様ってAランカーの槍使いなわけ。その槍をまぐれとかで躱す事は絶対に不可能だから、あり得ないから!」
「はあ、そうですか……」
「お前さ、一体何者なの?」
「さっきも自己紹介しましたが、柴イヌのコテツです」
「はーん、読めたぜっ! 柴イヌってえのがお前の二つ名か……で、どこでその武術を学んだわけ? ヤバい組織の匂いがするぜ……もう隠しても無駄だっ!」
そんな匂いは全然しませんが……
「組織ってなんですか?」
「は? とぼける気なの? お前、仲間が大勢いるんだろ? 吐けよ! そこは何なんだよっ!」
組織とは仲間のイヌが一杯集まるところのことでしょうか? それなら。
「ドッグラン?」
「ドッグランか……なかなか手強そうな組織みてえだな。フッ、俺様の目は節穴じゃねえ! お前がその仲間の中じゃトップクラスなのは分かってんだっ!」
うーん、イヌの仲間の中では柴イヌは確かに人気ですね。
「かも、しれません……」
「やっぱりな。でなきゃ俺様の槍を躱せるわけがねえ」
「こ、コテツ殿っ! そ、それは本当ですかッ!?」
ん? なんかリリアンさんが興奮していますね。
「つまり、そのドッグランという組織の首領がキモオタ様だと……くっ! 私にとっては憎い組織だッ!」
「おい、お前! 一体何の目的でこのギルドに潜入した? その組織はここで何をするつもりだっ!」
潜入もなにも、オレはリリアンさんに教えてもらったわけで。
「働いてお金を貰うためですが?」
「しらばっくれやがって……」
「いや待てジェイン──さま。コテツ殿は今はもうドッグランなる組織を脱退されているんだ! だが……首領のキモオタのせいでいまだに悪夢に悩まされていて……くっ!」
「なんだリリアン、お前詳しいな」
「いや、いま知った」
リリアンさんまでこのイヤな人と一緒になって、おかしなこと言いだしました……
「そうか……だが脱退していようが得体が知れねえ事に変わりはねえ! 俺様が直々にお前の実力を測ってやるぜッ!」
てかもうこれ、ケンカというより何て言うか……ほら、あれです。ご主人様がテレビという板の中の人間がやっていることを見て笑っていた……えっと。
そう! コントです! それをする人間のことをお笑い芸人というそうです。
このイヤな人は、もしかしてお笑い芸人なのでしょうか?
まあオレもコントはキライじゃないので、お付き合いしたわけですが──
「ハアハア、当たらねえ……何度やっても俺様の槍が当たらねえっ! 全部こいつに躱されちまう。一体どういうことだあッ!」
いや、そりゃ当たったらイタいですから避けますよ。オレはお笑い芸人じゃありませんし……
「ねえリリアン、あんたコテツさんがこれほど強いって知ってたから、さっき落ち着いて見てたのね?」
「うんモニカ、実は知っていた。一度私もな、コテツ殿に剣で完敗しているんだ」
「そうなんだ……でもコテツさんて、本当にドッグランとかいう謎の組織にいたのかしら? 本当だとしても、この実力みたら納得できちゃうけど」
「うむ、おそらくな。そこで幼い頃からの洗脳と虐待の日々のなか、武術の達人にまで鍛え上げられたのだろう……悲しい過去だな」
「うん……涙がでてきちゃった。謎の組織ってより悪の組織だわ! 本当に逃げてこられて良かったわね」
「ああ、せめて私たちはコテツ殿に優しくしてあげようじゃないか。今まで辛かった分までも……」
こっちでもコントをしているのでしょうか……いやリリアンさんとモニカさん、優しくしてくれるのは嬉しいですが、その理由がわけわかりません。
「おいお前っ! 命かける覚悟はあるか」
「ないです」
「うるせえっ! これから俺様が、Aランカーの本当の恐ろしさを味あわせてやんよ!」
そんなの全然味わいたくないですが……
「おいジェイン! まさか魔槍術を遣うつもりじゃないだろうな!?」
「遣うけど? てか、ジェイン様だろうがっ!」
「ジェイン──さま。それはやりすぎだぞっ!」
ああ、リリアンさん、優しいです。オレを恐ろしい味から守ってくようとしてくれるなんて……あとでペロペロして感謝の気持ちを伝えましょう。
「んなことねえ! 実戦なら魔法攻撃なんて普通だろ、こいつレベルの実力なら当然対処できるだろうさ。まあ、俺様には通用しねえがなっ!」
「そうかもしれんが……しかしコテツ殿!」
「はいっ! なんでしょうリリアンさん」
「ジェインは魔槍術を遣うつもりです、なので魔法防御結界をすぐに編んで下さい!」
「なんですか、それ?」
「魔槍術は物理攻撃の力を魔法攻撃に変換したものです、なので魔法防御結界が有効なんです。出来ますよね?」
「いいえ、出来ません!」
「えっ!? そんなっ!」
難しい言葉だらけでチンプンカンプンですね。でもなんかリリアンさんが本気で焦っているのは伝わりました。
なので念のため「デキるオス」モードで集中して、動きをゆっくりにしておきましょう。
「いくぜッ! 柴犬のコテツ、覚悟しやがれっ!」
おっ? イヤな人が持っている棒の先が蒼白く燃えてますね。なんかお墓に飛んでる火の玉みたいです。
「待てジェイン! コテツ殿は魔法防御結界を持っていないッ!」
「知るかよっ! それに様をつけろ! てか死ねッ!」
「やめろーーッ!」
あっ、火の玉消えた。おや? 消えたと思ったら火の玉の大きさの空気みたいのが、ゆらゆらしながらこっちに向かってますね……
これが恐ろしい味でしょうか?
とりあえずそんな味はお断りなので、避けておきましょう──ヒョイ。
もう危険は去ったようなので、集中をやめてゆっくり状態から元に戻してもいいのですが……ちょっとこのイヤな人に、ご主人様の顔をクシャクシャにした罰を与えたいですね。
とは言ってもネコのような陰湿なことはしません。このご主人様の張り紙をイヤな人の背中に張りつけてと……これで広めてもらいましょう!
では、元に戻します──って!?
その途端、ものすごい音が鳴り響いて壁に大きな穴があきました。
「コテツ殿ーーッ!」
「はいっ! リリアンさん、なんでしょう?」
「えっ?」
「あれ?……なぜか、俺様の後ろから声がするのだが?……」
「ぶ、無事だったのですねコテツ殿っ!」
「コテツさんっ! 怪我はないですかっ? どこも痛くないですかッ!?」
「リリアンさんにモニカさん、オレは全然大丈夫ですよ!」
「ねえ、お前、なんでそこにいんの? 俺様の魔槍術、なんで食らってないの? さっきまで俺様の目の前にいたよね?」
イヤな人が首だけこっちに回して何か言ってますね。背中の張り紙はまだバレていないようです。
「あなたの後ろにいる理由は罰のためです! あと、まそうじゅつ? は避けておきました」
「へ、へえ……魔法も避けちゃうんだ……」
「コテツ殿! 本当に魔法を避けたのですか? 魔法の目視は不可能なはずですが……」
「そうなんですか? ゆらゆらしてましたけど、リリアンさんには見えないんですか?」
「見えないです……すごいですね」
「俺様……今日はもう帰るわ……なんか疲れた……あ、リリアン、例の特別依頼な、二日後に出発だから……」
「わかった、壁の修理代は払えよ、ってジェイン、お前の背中……」
「うん?……なに?」
「いや、なんでもない……」
「あっそ……」
どうやらイヤな人はお帰りのようです。尊いご主人様の顔を背中に張り付けたまま、トボトボ歩いて行ってしまいました。
「コテツ殿、あの張り紙はいつ?」
「えっと、さっきまそうじゅつ? とかされた時です」
なんだかさっきからリリアンさんの目の色が恐いです。真剣というか必死というか……
「コテツ殿ッ!」
「は、はいっ! リリアンさん、なんでしょうッ?」
「図々しいお願いなのですが、私にコテツ殿の会得した武術をご教授頂けませんでしょうか!」
「いいですよ! 確か前にリリアンさんへの恩返しで、そんなことをお願いされていましたけっね」
「お、憶えて頂けていたのですね……感激ですっ!」
「もちろんですとも、恩返しはイヌの基本ですから!」
ところで武術とはなんですかね?
「では早速お願いします! ギルドの裏庭が広い訓練場になっていますので、そちらへ行きましょうッ!」
オレはリリアンさんと一緒に訓練場というところへ行きました。
そしたらそこ、素晴らしいんです! まさに理想的なドッグランですっ、走り放題ですッ!
あ、でもいまは走っている場合ではありません。まずは武術とはなにかがわからなければ教えようがありませんからね。
「ところでリリアンさん。武術とは一体なんなのでしょうか?」
「はい?……武術とは何か、とは?」
「…………」
「ハッ! これはまさか私を試しているのかっ!? くっ……! は、恥ずかしながら未熟者ゆえ、いまだその答えには辿り着いておりません……」
「そうですか、困りましたね……じゃあズバリ訊いちゃいますが、リリアンさんはオレに何を教えて欲しいのですか?」
「た、体捌きの極意をっ! 肉体のみで魔法回避をも可能とする神業をぜひッ! も、もちろんすぐに会得できるなどとは自惚れていませんっ。ですがせめてその道程の入口にだけでも立ちたいのですッ!」
ああ、なるほど! つまり「デキるオス」モードになりたいのですね。
しかしあれは病気にならなければならないですし……うーん。
「リリアンさん、あれを会得するには病気にならないといけないんです……」
「び、病気に?……」
「はい、つまりデキるメスイヌにならねばなりません」
「めっ!? メス犬に……!」
「そうです。イヌの動きなんで」
「犬の動き……あっ! そ、それは犬にまで堕とされ、病気になるほどの精神的虐待の副産物としてこの武術が生み出されたということかっ?……だ、だとしたらなんて哀しい技なんだ……」
「リリアンさんがイヌのように動きたいのならやってみますか?」
「は、はい! 哀しき技といえども技に罪はありません! 恐ろしき鍛練が必要なようですが……覚悟は出来ていますッ!」
リリアンさんはそんなにイヌになりたいのでしょうか? きっとイヌが大好きなんでしょうね、いい人だなあ。
よし、ならばオレも頑張りますっ!
なのでオレはリリアンさんに普段からイヌがやる行動を教えることにしたのでした。
なにをでしょうか? なんかこのイヤな人は勝手にどんどんと、ケンカへの道を突き進んでいくみたいなんですが……
「言っとくけど、俺様ってAランカーの槍使いなわけ。その槍をまぐれとかで躱す事は絶対に不可能だから、あり得ないから!」
「はあ、そうですか……」
「お前さ、一体何者なの?」
「さっきも自己紹介しましたが、柴イヌのコテツです」
「はーん、読めたぜっ! 柴イヌってえのがお前の二つ名か……で、どこでその武術を学んだわけ? ヤバい組織の匂いがするぜ……もう隠しても無駄だっ!」
そんな匂いは全然しませんが……
「組織ってなんですか?」
「は? とぼける気なの? お前、仲間が大勢いるんだろ? 吐けよ! そこは何なんだよっ!」
組織とは仲間のイヌが一杯集まるところのことでしょうか? それなら。
「ドッグラン?」
「ドッグランか……なかなか手強そうな組織みてえだな。フッ、俺様の目は節穴じゃねえ! お前がその仲間の中じゃトップクラスなのは分かってんだっ!」
うーん、イヌの仲間の中では柴イヌは確かに人気ですね。
「かも、しれません……」
「やっぱりな。でなきゃ俺様の槍を躱せるわけがねえ」
「こ、コテツ殿っ! そ、それは本当ですかッ!?」
ん? なんかリリアンさんが興奮していますね。
「つまり、そのドッグランという組織の首領がキモオタ様だと……くっ! 私にとっては憎い組織だッ!」
「おい、お前! 一体何の目的でこのギルドに潜入した? その組織はここで何をするつもりだっ!」
潜入もなにも、オレはリリアンさんに教えてもらったわけで。
「働いてお金を貰うためですが?」
「しらばっくれやがって……」
「いや待てジェイン──さま。コテツ殿は今はもうドッグランなる組織を脱退されているんだ! だが……首領のキモオタのせいでいまだに悪夢に悩まされていて……くっ!」
「なんだリリアン、お前詳しいな」
「いや、いま知った」
リリアンさんまでこのイヤな人と一緒になって、おかしなこと言いだしました……
「そうか……だが脱退していようが得体が知れねえ事に変わりはねえ! 俺様が直々にお前の実力を測ってやるぜッ!」
てかもうこれ、ケンカというより何て言うか……ほら、あれです。ご主人様がテレビという板の中の人間がやっていることを見て笑っていた……えっと。
そう! コントです! それをする人間のことをお笑い芸人というそうです。
このイヤな人は、もしかしてお笑い芸人なのでしょうか?
まあオレもコントはキライじゃないので、お付き合いしたわけですが──
「ハアハア、当たらねえ……何度やっても俺様の槍が当たらねえっ! 全部こいつに躱されちまう。一体どういうことだあッ!」
いや、そりゃ当たったらイタいですから避けますよ。オレはお笑い芸人じゃありませんし……
「ねえリリアン、あんたコテツさんがこれほど強いって知ってたから、さっき落ち着いて見てたのね?」
「うんモニカ、実は知っていた。一度私もな、コテツ殿に剣で完敗しているんだ」
「そうなんだ……でもコテツさんて、本当にドッグランとかいう謎の組織にいたのかしら? 本当だとしても、この実力みたら納得できちゃうけど」
「うむ、おそらくな。そこで幼い頃からの洗脳と虐待の日々のなか、武術の達人にまで鍛え上げられたのだろう……悲しい過去だな」
「うん……涙がでてきちゃった。謎の組織ってより悪の組織だわ! 本当に逃げてこられて良かったわね」
「ああ、せめて私たちはコテツ殿に優しくしてあげようじゃないか。今まで辛かった分までも……」
こっちでもコントをしているのでしょうか……いやリリアンさんとモニカさん、優しくしてくれるのは嬉しいですが、その理由がわけわかりません。
「おいお前っ! 命かける覚悟はあるか」
「ないです」
「うるせえっ! これから俺様が、Aランカーの本当の恐ろしさを味あわせてやんよ!」
そんなの全然味わいたくないですが……
「おいジェイン! まさか魔槍術を遣うつもりじゃないだろうな!?」
「遣うけど? てか、ジェイン様だろうがっ!」
「ジェイン──さま。それはやりすぎだぞっ!」
ああ、リリアンさん、優しいです。オレを恐ろしい味から守ってくようとしてくれるなんて……あとでペロペロして感謝の気持ちを伝えましょう。
「んなことねえ! 実戦なら魔法攻撃なんて普通だろ、こいつレベルの実力なら当然対処できるだろうさ。まあ、俺様には通用しねえがなっ!」
「そうかもしれんが……しかしコテツ殿!」
「はいっ! なんでしょうリリアンさん」
「ジェインは魔槍術を遣うつもりです、なので魔法防御結界をすぐに編んで下さい!」
「なんですか、それ?」
「魔槍術は物理攻撃の力を魔法攻撃に変換したものです、なので魔法防御結界が有効なんです。出来ますよね?」
「いいえ、出来ません!」
「えっ!? そんなっ!」
難しい言葉だらけでチンプンカンプンですね。でもなんかリリアンさんが本気で焦っているのは伝わりました。
なので念のため「デキるオス」モードで集中して、動きをゆっくりにしておきましょう。
「いくぜッ! 柴犬のコテツ、覚悟しやがれっ!」
おっ? イヤな人が持っている棒の先が蒼白く燃えてますね。なんかお墓に飛んでる火の玉みたいです。
「待てジェイン! コテツ殿は魔法防御結界を持っていないッ!」
「知るかよっ! それに様をつけろ! てか死ねッ!」
「やめろーーッ!」
あっ、火の玉消えた。おや? 消えたと思ったら火の玉の大きさの空気みたいのが、ゆらゆらしながらこっちに向かってますね……
これが恐ろしい味でしょうか?
とりあえずそんな味はお断りなので、避けておきましょう──ヒョイ。
もう危険は去ったようなので、集中をやめてゆっくり状態から元に戻してもいいのですが……ちょっとこのイヤな人に、ご主人様の顔をクシャクシャにした罰を与えたいですね。
とは言ってもネコのような陰湿なことはしません。このご主人様の張り紙をイヤな人の背中に張りつけてと……これで広めてもらいましょう!
では、元に戻します──って!?
その途端、ものすごい音が鳴り響いて壁に大きな穴があきました。
「コテツ殿ーーッ!」
「はいっ! リリアンさん、なんでしょう?」
「えっ?」
「あれ?……なぜか、俺様の後ろから声がするのだが?……」
「ぶ、無事だったのですねコテツ殿っ!」
「コテツさんっ! 怪我はないですかっ? どこも痛くないですかッ!?」
「リリアンさんにモニカさん、オレは全然大丈夫ですよ!」
「ねえ、お前、なんでそこにいんの? 俺様の魔槍術、なんで食らってないの? さっきまで俺様の目の前にいたよね?」
イヤな人が首だけこっちに回して何か言ってますね。背中の張り紙はまだバレていないようです。
「あなたの後ろにいる理由は罰のためです! あと、まそうじゅつ? は避けておきました」
「へ、へえ……魔法も避けちゃうんだ……」
「コテツ殿! 本当に魔法を避けたのですか? 魔法の目視は不可能なはずですが……」
「そうなんですか? ゆらゆらしてましたけど、リリアンさんには見えないんですか?」
「見えないです……すごいですね」
「俺様……今日はもう帰るわ……なんか疲れた……あ、リリアン、例の特別依頼な、二日後に出発だから……」
「わかった、壁の修理代は払えよ、ってジェイン、お前の背中……」
「うん?……なに?」
「いや、なんでもない……」
「あっそ……」
どうやらイヤな人はお帰りのようです。尊いご主人様の顔を背中に張り付けたまま、トボトボ歩いて行ってしまいました。
「コテツ殿、あの張り紙はいつ?」
「えっと、さっきまそうじゅつ? とかされた時です」
なんだかさっきからリリアンさんの目の色が恐いです。真剣というか必死というか……
「コテツ殿ッ!」
「は、はいっ! リリアンさん、なんでしょうッ?」
「図々しいお願いなのですが、私にコテツ殿の会得した武術をご教授頂けませんでしょうか!」
「いいですよ! 確か前にリリアンさんへの恩返しで、そんなことをお願いされていましたけっね」
「お、憶えて頂けていたのですね……感激ですっ!」
「もちろんですとも、恩返しはイヌの基本ですから!」
ところで武術とはなんですかね?
「では早速お願いします! ギルドの裏庭が広い訓練場になっていますので、そちらへ行きましょうッ!」
オレはリリアンさんと一緒に訓練場というところへ行きました。
そしたらそこ、素晴らしいんです! まさに理想的なドッグランですっ、走り放題ですッ!
あ、でもいまは走っている場合ではありません。まずは武術とはなにかがわからなければ教えようがありませんからね。
「ところでリリアンさん。武術とは一体なんなのでしょうか?」
「はい?……武術とは何か、とは?」
「…………」
「ハッ! これはまさか私を試しているのかっ!? くっ……! は、恥ずかしながら未熟者ゆえ、いまだその答えには辿り着いておりません……」
「そうですか、困りましたね……じゃあズバリ訊いちゃいますが、リリアンさんはオレに何を教えて欲しいのですか?」
「た、体捌きの極意をっ! 肉体のみで魔法回避をも可能とする神業をぜひッ! も、もちろんすぐに会得できるなどとは自惚れていませんっ。ですがせめてその道程の入口にだけでも立ちたいのですッ!」
ああ、なるほど! つまり「デキるオス」モードになりたいのですね。
しかしあれは病気にならなければならないですし……うーん。
「リリアンさん、あれを会得するには病気にならないといけないんです……」
「び、病気に?……」
「はい、つまりデキるメスイヌにならねばなりません」
「めっ!? メス犬に……!」
「そうです。イヌの動きなんで」
「犬の動き……あっ! そ、それは犬にまで堕とされ、病気になるほどの精神的虐待の副産物としてこの武術が生み出されたということかっ?……だ、だとしたらなんて哀しい技なんだ……」
「リリアンさんがイヌのように動きたいのならやってみますか?」
「は、はい! 哀しき技といえども技に罪はありません! 恐ろしき鍛練が必要なようですが……覚悟は出来ていますッ!」
リリアンさんはそんなにイヌになりたいのでしょうか? きっとイヌが大好きなんでしょうね、いい人だなあ。
よし、ならばオレも頑張りますっ!
なのでオレはリリアンさんに普段からイヌがやる行動を教えることにしたのでした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる