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第三章 柴イヌ、出世する
第四十七話 作戦の結末
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部屋の外ではレーガンさんたちと七匹のホムムクソスとの戦いが始まりました。
オレとパフさんはおネエさまの捕縛を失敗して、予定の作戦とは違う展開になってしまっています。となるとオレが加勢に行った方がいいのでしょう。
なのでドアの隙間からこっそりと戦いを見ていたオレは、一緒に見ているパフさんにそのことを言ったんです。
ところが……
「待ってコテッちん! あのね多分だけどボルトミはまだあたいたちがホムンクルスと戦っている最中だと勘違いしていると思うの。もしコテッちんがいま参戦したら、ボルトミは劣勢を覚って転移スクロールで逃げちゃうんじゃないかな?」
ふむ。確かにそれはありえそうですね。てか、きっとそうなりますよっ!
「パフさん天才ですかっ!」
「い、いや、うん。だからね今のうちにこっそりとボルトミの背後に回って隠形から一気に捕縛したいなあって思ったの」
「なるほど、そうしましょう!」
パフさんが言うには、この部屋の二つ隣の部屋まで行けばおネエさまの背後に回れるそうです。
ちなみにレーガンさんたちはまだ一匹もホムムクソスを倒していません。とはいえ怪我をした人もいないようですね。
攻めきれていない理由はオークたん三匹が肉の壁になって、後ろから伸びる爪で攻撃するリザくん四匹を守っているからだとパフさんが教えてくれました。
おネエさまが魔法結界を張りながら細かく指示を出している分、七匹も手強くなっているそうです。
よくわかりませんが、それでもレーガンさんたちは強いのでそのうち倒してくれるでしょう。
「そうだねコテッちん。でもだからこそ戦況が膠着気味の今のうちにボルトミを捕まえなくちゃだね!」
「でもパフさん。どうやっておネエさまの後ろまで行くんですか?」
「それが難しいんだけど……結局は壁に穴を開けて二つ隣の部屋まで行くしか方法がないんだよお。調べてみたらレンガの壁だったからそれほど硬くはないんだけど、火焔石とかのアイテムで派手に壊すと爆発音でボルトミに警戒されちゃうんだよね……」
「あのぉ……。ちょっといいですか?」
おや? さっき捕まえたおネエさまの匂いのするおじさんが、何か言いたそうにして話しかけてきました。
オレたちのおしゃべりに参加したいのでしょうかね。もちろん大歓迎ですよ!
けどパフさんはイヤだったみたいで、ジロリとおじさんを睨みつけると素早くナイフを抜きました。
「なんだい? いま忙しいんだけど。邪魔をするならまた猿轡をかまそうか?」
「ち、違うんです! え、えっと……。みなさんにとって有益な情報があるのです。わ、私も拉致されて嫌々ここで働かされているもので……。その辺を酌量して頂けるようお口添えを貰えましたら……。えっと、その情報をお伝えしたいなあと」
「はぁ? 何それ取引のつもり?」
パフさんはおじさんの首にナイフを当てて凄んでいます。ちょっと恐いです。
「ひぃ! す、すみませんっ!」
「でも話だけは聞いてあげるよ。言ってごらん、いい情報だったら口添えも考えてあげない事もないから」
「は、はい……。えっと、そこにいるスラ蔵を壁に突っ込ませれば、壁が溶けて穴が開くと思うのです……」
「あ、なるほど! でもどうやって突っ込ませればいいのさ?」
「そ、それは、スラ蔵の足はゴブリンの普通の足で出来ているので……。足を持って壁に叩きつけると、攻撃されたと勘違いして壁に消化液を出すかなと……」
「ホントかなあ……。足を持った途端、攻撃されたと思ったスライムがこっちに消化液出してくるんじゃないの?」
「それは……。だ、大丈夫です」
「怪しいなあ、あたいたちを騙そうとしていない? 騙したら殺すよ?」
ふむ。パフさんはおじさんを疑っていますが、おじさんからはウソを言っている匂いはしてきません。きっとその話は本当なのでしょう。
なのでオレは恐い顔をしているパフさんにそう伝えてあげました。
「そっか。コテッちんがそう言うなら試してみる価値はありそうだね……。うん、やってみよう!」
ということでオレたちはスラ蔵さんに協力してもらって、壁に穴を開けてみることにしました。
スラ蔵さんはとても軽いので、オレ一匹でも余裕で持ち上げられます。これなら振り回すのも簡単ですね。
「コテッちん、足以外のところに触ったら駄目だよお、気をつけてね!」
「はい気をつけます! ではスラ蔵さん、行きますよっ──ブンッ!」
ベチャッ!!
壁に叩きつけたスラ蔵さんがベッチャリと拡がって張りつきました!
するとブシューッと音をたてながら、壁を見事に溶かし始めたのです。素晴らしいですねっ!
「すごっ! 見てよコテッちん、あっという間に穴が開いたよっ。スライムこわっ! てか、これ失敗作でマジ良かったね……。こんなのと戦いたくないよお」
オレは開いた穴から隣の部屋へと入り、続けてその部屋の奥の壁へと急ぎました。そしてその壁めがけてスラ蔵さんを振りかぶったのです。
さあ、もう一度お願いしますよスラ蔵さん、ベチャッといってくださいっ。そーれッ!
スラ蔵さんを叩きつけた壁からはブシューッという頼もしい音が響きます。見事にやってのけてくれたスラ蔵さんの作った穴は、見惚れてしまうほどに立派です。
オレは思わずスラ蔵さんをペロペロしたくなりましたが、舌が溶けてしまうことを思いだし危ういところでやめました。
壁から引き剥がしたスラ蔵さんはすぐに元の形へと戻ります。どこか誇らしげな顔をしているスラ蔵さんを、オレは部屋の隅に丁重に立たせてあげました。
「ありがとうスラ蔵さん!」
無口なスラ蔵からは返事はありません。でも心が通じ合った気がしたオレは、親しみを込めてスラ蔵さんの肩をポンと叩いたのです。それなのに……
「アチッーいっ!!」
「なにやってんのさコテッちんッ! そんなことしたら手が溶けちゃうじゃんッ!」
いや、ちょっぴり溶けましたよ! くっ、おのれスラ蔵めえっ……
まあいいです。スラ蔵とは友だちになってはあげませんので! てか、二度と関わるのはよしましょう。
「コテッちん傷みせて、もうっ、気をつけてよね!」
怒りながらもパフさんは、小瓶から水みたいなのをふりかけてくれてヤケドを治してくれました。ほんと優しい人で大好きです。ペロペロしたいですね!
スラ蔵なんかにペロペロしたいと思った自分がバカでした。
「あのぉ……。先ほどの件、ご納得頂けましたでしょうか……」
「ん? ああ、トリムさん。いいよ、口添えしてあげる、ありがとうね」
さあ、急いでおネエさまを捕まえてレーガンさんたちの加勢をしましょう!
なのでオレとパフさんはドアを少しだけ開けると、その隙間からこっそり覗いてもう一度戦いの様子を見てみました。
「ボルトミは……。うん、上手く後ろに回れたみたい! 良かったあ、これならコッソリ捕縛できそう。あ、でもレーガンさんたちがホムンクルスに押されててヤバいかもっ! コテッちん、急ごうッ!」
確かにヤバそうです。オークたんとリザくんが一匹ずつ死んでいますが、こっちもバウワーさんとごっつぁんですさんが血まみれですね。ミネルバさんも疲れきっています。
パフさんはすでに隠形という魔法で姿をかくしているようです。なので声と気配と匂いだけになっています。
「コテッちん、準備はいい?」
オレは急いでイヌの牙をつけると準備はできたと頷きました。もちろんデキるオスも全開です。
「じゃあドアを開けたらいくよ! 三、二、一、いまっ!」
ドアから飛び出したオレはその勢いのまま一匹のリザくんの背中に飛び乗って、いつもの様にうなじから首の骨を噛み砕いてやりました。
後ろからはおネエさまの驚いた叫び声が聞こえてきます。
「ウソぉーっ! コテツちゃん死んでなかったのぉ!? えっ? というか何でそこから飛び出して──」
トンッ。
おネエさまの声が途絶え、代わりにトンッが聞こえてきました。
パフさんが無事におネエさまの捕縛に成功したのでしょう。
レーガンさんにもそのことがわかったようですね。トンッの音と同時に一気にオークたんに攻撃をし始めました。
「よしっ結界が解けたぞっ! オーク型ホムンクルスに魔法をブチかませッ!」
「ごっつぁんですッ!」
わおっ! 突然二匹のオークたんが炎に包まれて丸焼きになっています! しかも丸焼きになりながらも、ごっつぁんですさんへと突進している姿は大迫力ですね。
でも今度はバウワーさんの大きなトンカチが、燃えているオークたんの頭を順番に割っていきました!
「ブギャーッ!」
なんか、残酷ですね……。って、見とれている場合じゃありません。リザくん二匹がオレに襲いかかってきているのでした。
まあ、この伸びる爪も見飽きているので、余裕で避けられますけど。
しかし避けるまでもなく、レーガンさんの剣がリザくんの爪を切り落としてくれたようです。
「コテツ君っ、そっちのホムンクルスを頼むよッ!」
「わかりましたっ!」
レーガンさんの剣がものすごい速さで、何度も何度もリザくんの皮膚の同じ所を突き刺さしています。
リザくんの皮膚は硬いですからねえ。それでもイヌのオレに噛み千切れないものはありません。
オレは残ったリザくんの喉に噛みつくと、アゴに力を込めて身体を回転させます。
ブチブチと音のするその硬い皮膚ごと、肉を引き千切ってやりましょう。
「キキャャャーッ!」
「キョキャーッ!」
どうやらレーガンさんの刺していたリザくんも死んだようですね。
二匹のリザくんたちが床に倒れふすと同時に、パフさんの弾んだ声が後ろから聞こえてきました。
「レーガンさん、ボルトミの捕縛完了したよおっ!」
「こっちもホムンクルス討伐完了だッ! みんなよくやってくれたねッ!」
レーガンさんはパフさんによって厳重に縛りあげられたおネエさま確認すると、オレたち全員を見渡して小さく微笑んだようです。
「作戦は成功を収めたが、まだこの研究所に脅威が残っているとも限らない。オレとパフとコテツ君で残存勢力の制圧をしている間、ミネルバはバウワーとごっつぁんですの治療を。そして捕縛したボルトミの監視を三人にお願いするよ」
「ああ、了解だレーガン」
「ごっつぁんです!」
「治療は任せてくださいな」
そのあとオレたちはまだ逃げずに残っていた四人のおじさんたちを捕まえて、全部で八人のおじさんたちを研究所の牢屋に入れました。
ちなみに便秘に打ち勝った人もその中にいて、ずっとトイレで気絶していたそうです。
まあとりあえずこれで少し休むことが出来そうですね。正直疲れましたよ。
あ、そうそう。スラ蔵はレーガンさんに危険な存在だと判断され、魔剣術で切り刻まれて死んでしまいました。
ホムムクソスのみなさん、どうか安らかにお眠りください──
オレとパフさんはおネエさまの捕縛を失敗して、予定の作戦とは違う展開になってしまっています。となるとオレが加勢に行った方がいいのでしょう。
なのでドアの隙間からこっそりと戦いを見ていたオレは、一緒に見ているパフさんにそのことを言ったんです。
ところが……
「待ってコテッちん! あのね多分だけどボルトミはまだあたいたちがホムンクルスと戦っている最中だと勘違いしていると思うの。もしコテッちんがいま参戦したら、ボルトミは劣勢を覚って転移スクロールで逃げちゃうんじゃないかな?」
ふむ。確かにそれはありえそうですね。てか、きっとそうなりますよっ!
「パフさん天才ですかっ!」
「い、いや、うん。だからね今のうちにこっそりとボルトミの背後に回って隠形から一気に捕縛したいなあって思ったの」
「なるほど、そうしましょう!」
パフさんが言うには、この部屋の二つ隣の部屋まで行けばおネエさまの背後に回れるそうです。
ちなみにレーガンさんたちはまだ一匹もホムムクソスを倒していません。とはいえ怪我をした人もいないようですね。
攻めきれていない理由はオークたん三匹が肉の壁になって、後ろから伸びる爪で攻撃するリザくん四匹を守っているからだとパフさんが教えてくれました。
おネエさまが魔法結界を張りながら細かく指示を出している分、七匹も手強くなっているそうです。
よくわかりませんが、それでもレーガンさんたちは強いのでそのうち倒してくれるでしょう。
「そうだねコテッちん。でもだからこそ戦況が膠着気味の今のうちにボルトミを捕まえなくちゃだね!」
「でもパフさん。どうやっておネエさまの後ろまで行くんですか?」
「それが難しいんだけど……結局は壁に穴を開けて二つ隣の部屋まで行くしか方法がないんだよお。調べてみたらレンガの壁だったからそれほど硬くはないんだけど、火焔石とかのアイテムで派手に壊すと爆発音でボルトミに警戒されちゃうんだよね……」
「あのぉ……。ちょっといいですか?」
おや? さっき捕まえたおネエさまの匂いのするおじさんが、何か言いたそうにして話しかけてきました。
オレたちのおしゃべりに参加したいのでしょうかね。もちろん大歓迎ですよ!
けどパフさんはイヤだったみたいで、ジロリとおじさんを睨みつけると素早くナイフを抜きました。
「なんだい? いま忙しいんだけど。邪魔をするならまた猿轡をかまそうか?」
「ち、違うんです! え、えっと……。みなさんにとって有益な情報があるのです。わ、私も拉致されて嫌々ここで働かされているもので……。その辺を酌量して頂けるようお口添えを貰えましたら……。えっと、その情報をお伝えしたいなあと」
「はぁ? 何それ取引のつもり?」
パフさんはおじさんの首にナイフを当てて凄んでいます。ちょっと恐いです。
「ひぃ! す、すみませんっ!」
「でも話だけは聞いてあげるよ。言ってごらん、いい情報だったら口添えも考えてあげない事もないから」
「は、はい……。えっと、そこにいるスラ蔵を壁に突っ込ませれば、壁が溶けて穴が開くと思うのです……」
「あ、なるほど! でもどうやって突っ込ませればいいのさ?」
「そ、それは、スラ蔵の足はゴブリンの普通の足で出来ているので……。足を持って壁に叩きつけると、攻撃されたと勘違いして壁に消化液を出すかなと……」
「ホントかなあ……。足を持った途端、攻撃されたと思ったスライムがこっちに消化液出してくるんじゃないの?」
「それは……。だ、大丈夫です」
「怪しいなあ、あたいたちを騙そうとしていない? 騙したら殺すよ?」
ふむ。パフさんはおじさんを疑っていますが、おじさんからはウソを言っている匂いはしてきません。きっとその話は本当なのでしょう。
なのでオレは恐い顔をしているパフさんにそう伝えてあげました。
「そっか。コテッちんがそう言うなら試してみる価値はありそうだね……。うん、やってみよう!」
ということでオレたちはスラ蔵さんに協力してもらって、壁に穴を開けてみることにしました。
スラ蔵さんはとても軽いので、オレ一匹でも余裕で持ち上げられます。これなら振り回すのも簡単ですね。
「コテッちん、足以外のところに触ったら駄目だよお、気をつけてね!」
「はい気をつけます! ではスラ蔵さん、行きますよっ──ブンッ!」
ベチャッ!!
壁に叩きつけたスラ蔵さんがベッチャリと拡がって張りつきました!
するとブシューッと音をたてながら、壁を見事に溶かし始めたのです。素晴らしいですねっ!
「すごっ! 見てよコテッちん、あっという間に穴が開いたよっ。スライムこわっ! てか、これ失敗作でマジ良かったね……。こんなのと戦いたくないよお」
オレは開いた穴から隣の部屋へと入り、続けてその部屋の奥の壁へと急ぎました。そしてその壁めがけてスラ蔵さんを振りかぶったのです。
さあ、もう一度お願いしますよスラ蔵さん、ベチャッといってくださいっ。そーれッ!
スラ蔵さんを叩きつけた壁からはブシューッという頼もしい音が響きます。見事にやってのけてくれたスラ蔵さんの作った穴は、見惚れてしまうほどに立派です。
オレは思わずスラ蔵さんをペロペロしたくなりましたが、舌が溶けてしまうことを思いだし危ういところでやめました。
壁から引き剥がしたスラ蔵さんはすぐに元の形へと戻ります。どこか誇らしげな顔をしているスラ蔵さんを、オレは部屋の隅に丁重に立たせてあげました。
「ありがとうスラ蔵さん!」
無口なスラ蔵からは返事はありません。でも心が通じ合った気がしたオレは、親しみを込めてスラ蔵さんの肩をポンと叩いたのです。それなのに……
「アチッーいっ!!」
「なにやってんのさコテッちんッ! そんなことしたら手が溶けちゃうじゃんッ!」
いや、ちょっぴり溶けましたよ! くっ、おのれスラ蔵めえっ……
まあいいです。スラ蔵とは友だちになってはあげませんので! てか、二度と関わるのはよしましょう。
「コテッちん傷みせて、もうっ、気をつけてよね!」
怒りながらもパフさんは、小瓶から水みたいなのをふりかけてくれてヤケドを治してくれました。ほんと優しい人で大好きです。ペロペロしたいですね!
スラ蔵なんかにペロペロしたいと思った自分がバカでした。
「あのぉ……。先ほどの件、ご納得頂けましたでしょうか……」
「ん? ああ、トリムさん。いいよ、口添えしてあげる、ありがとうね」
さあ、急いでおネエさまを捕まえてレーガンさんたちの加勢をしましょう!
なのでオレとパフさんはドアを少しだけ開けると、その隙間からこっそり覗いてもう一度戦いの様子を見てみました。
「ボルトミは……。うん、上手く後ろに回れたみたい! 良かったあ、これならコッソリ捕縛できそう。あ、でもレーガンさんたちがホムンクルスに押されててヤバいかもっ! コテッちん、急ごうッ!」
確かにヤバそうです。オークたんとリザくんが一匹ずつ死んでいますが、こっちもバウワーさんとごっつぁんですさんが血まみれですね。ミネルバさんも疲れきっています。
パフさんはすでに隠形という魔法で姿をかくしているようです。なので声と気配と匂いだけになっています。
「コテッちん、準備はいい?」
オレは急いでイヌの牙をつけると準備はできたと頷きました。もちろんデキるオスも全開です。
「じゃあドアを開けたらいくよ! 三、二、一、いまっ!」
ドアから飛び出したオレはその勢いのまま一匹のリザくんの背中に飛び乗って、いつもの様にうなじから首の骨を噛み砕いてやりました。
後ろからはおネエさまの驚いた叫び声が聞こえてきます。
「ウソぉーっ! コテツちゃん死んでなかったのぉ!? えっ? というか何でそこから飛び出して──」
トンッ。
おネエさまの声が途絶え、代わりにトンッが聞こえてきました。
パフさんが無事におネエさまの捕縛に成功したのでしょう。
レーガンさんにもそのことがわかったようですね。トンッの音と同時に一気にオークたんに攻撃をし始めました。
「よしっ結界が解けたぞっ! オーク型ホムンクルスに魔法をブチかませッ!」
「ごっつぁんですッ!」
わおっ! 突然二匹のオークたんが炎に包まれて丸焼きになっています! しかも丸焼きになりながらも、ごっつぁんですさんへと突進している姿は大迫力ですね。
でも今度はバウワーさんの大きなトンカチが、燃えているオークたんの頭を順番に割っていきました!
「ブギャーッ!」
なんか、残酷ですね……。って、見とれている場合じゃありません。リザくん二匹がオレに襲いかかってきているのでした。
まあ、この伸びる爪も見飽きているので、余裕で避けられますけど。
しかし避けるまでもなく、レーガンさんの剣がリザくんの爪を切り落としてくれたようです。
「コテツ君っ、そっちのホムンクルスを頼むよッ!」
「わかりましたっ!」
レーガンさんの剣がものすごい速さで、何度も何度もリザくんの皮膚の同じ所を突き刺さしています。
リザくんの皮膚は硬いですからねえ。それでもイヌのオレに噛み千切れないものはありません。
オレは残ったリザくんの喉に噛みつくと、アゴに力を込めて身体を回転させます。
ブチブチと音のするその硬い皮膚ごと、肉を引き千切ってやりましょう。
「キキャャャーッ!」
「キョキャーッ!」
どうやらレーガンさんの刺していたリザくんも死んだようですね。
二匹のリザくんたちが床に倒れふすと同時に、パフさんの弾んだ声が後ろから聞こえてきました。
「レーガンさん、ボルトミの捕縛完了したよおっ!」
「こっちもホムンクルス討伐完了だッ! みんなよくやってくれたねッ!」
レーガンさんはパフさんによって厳重に縛りあげられたおネエさま確認すると、オレたち全員を見渡して小さく微笑んだようです。
「作戦は成功を収めたが、まだこの研究所に脅威が残っているとも限らない。オレとパフとコテツ君で残存勢力の制圧をしている間、ミネルバはバウワーとごっつぁんですの治療を。そして捕縛したボルトミの監視を三人にお願いするよ」
「ああ、了解だレーガン」
「ごっつぁんです!」
「治療は任せてくださいな」
そのあとオレたちはまだ逃げずに残っていた四人のおじさんたちを捕まえて、全部で八人のおじさんたちを研究所の牢屋に入れました。
ちなみに便秘に打ち勝った人もその中にいて、ずっとトイレで気絶していたそうです。
まあとりあえずこれで少し休むことが出来そうですね。正直疲れましたよ。
あ、そうそう。スラ蔵はレーガンさんに危険な存在だと判断され、魔剣術で切り刻まれて死んでしまいました。
ホムムクソスのみなさん、どうか安らかにお眠りください──
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