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第三章 柴イヌ、出世する
第四十九話 ご主人様の匂い
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「教えてくださいっおネエさまッ! 一体ご主人様はいまどこにいるのですかッ!?」
オレは躾のいい飼いイヌです。なので人にさわる時は驚かさないよう、とても気をつけています。
しかし今のオレはそんな基本も忘れて、乱暴におネエさまの肩を揺すりました。興奮したイヌは時にこうなってしまうのです、お許しを。
「い、痛いわっ、ちょっ乱暴にしないでぇ、感じちゃうじゃないのぉ! あっイイっ」
「コテツ君っ、落ち着きたまえッ!」
いやレーガンさん、落ち着けとか無理でしょ。やっとご主人様の居どころを知る人に会えたのですよ!
無理無理、絶対にムリーッ!
「俺たちもボルトミからその事を聞き出すつもりでいるんだよ、だからそんなに慌てないでくれっ」
そうなのですか? ならここは一旦レーガンさんにおまかせしましょう。
人間と人間の方がコミュニケーションはとりやすいはずでしょうからね!
「わかりましたレーガンさん。おネエさまをよろしくお願いします!」
「イヤンっ、次はレーガンちゃんに責められるのぉ? ステキッ!」
「い、いや責めないよ……。でも教えて欲しいな、ドン・キモオタの居場所を。ドッグランの本拠地に彼は居るのかね?」
「なによもぅ、つまんなぁ~い。アタシとってもドキドキしてたのにぃ。でもそぉねえ、教えてあげない事もないわよぉ。アタシのお願いを叶えてくれたらねっ。ウフフ」
「取引というわけかい?」
おネエさまはニヤリとして頷きました。これはいい感じですね! さすがは人間同士、話が早くて素晴らしいっ。
だのにミネルバさんが、そんなオレの期待に水を差すようなことを言ったんです。
「あなた、ご自分の立場が分かっていらっしゃるの? 犯罪者のくせして図々しいッ! レーガン殿と変態プレイをしたいだなんて、私でもした事がないのにっ。それを三日三晩も続けるつもりですって!? キーッ、レーガン殿もレーガン殿ですわッ!」
「ミ、ミネルバ?……。それは君の妄想だからね。ちょっと黙っていようか」
「あらやだっ、年増聖女の焼きもちぃ? 言ってる事が聖女というより性女ねっ! というかぁアタシ変態プレイなんか好きじゃないんですけどぉ? どうせならロマンチックなプレイの方がスキッ!」
「ふ、二人とも、とりあえず真面目に話そうか……。それでボルトミ。君の取引とは具体的に何が望みなんだい?」
「命の保証よぉ。アタシどうせこのままだと処刑でしょ? だからぁ終身刑でもなんでも生かされる事が条件。ただし、アタシのドン・キモオタに関する情報は一年前のものだからぁ、今もそこに居るとは限らないわよぉ? 居ない場合でも取引が成立するならって話になるわねぇ」
「ふむ、なら君が嘘をついても成立する取引という事にもなるね」
「レーガン殿! この男が嘘をつくのは明らかですッ! 自白魔法でも使って強引に情報を得るべきですわっ」
なんだか雲行きが怪しくなってきましたね。なんでもいいので早くご主人様の居どころを教えてもらって欲しいです。
ところがおネエさまとの取引についての回答は、一旦保留だとレーガンさんは言いました。オレたちだけで一度相談してから決めるということらしく。
なのでオレたちはお昼ごはんを食べながら、別の部屋で話し合いの真っ最中というわけです。
ちなみにオレはトリプルチーズバーガーを注文しました!
「もぐもぐ……。パフさんも今度トリプルチーズバーガーを食べてみてください。美味しいですよっ!」
オレは隣で野菜だけ食べているパフさんにオススメしてみたのですが……
「…………」
パフさんからはその返事はなく、野菜を食べる手も止まったままです。やっぱり野菜だけなんて美味しくないのでしょう。
「オレのバーガーを半分あげましょうか? そんな野菜だけじゃ元気出ないですよ!」
「あたいサラダ好きだし……。今は肉とか食べたい気分じゃないし……」
うーん。不機嫌な匂いがプンプンしますね。本当にオレはパフさんに嫌われてしまったのかもしれません。
「ちょっとコテツ殿、これ以上パフにちょっかい出さないで頂けますかしら。見てれば分かるでしょ? パフはもう貴方のような女たらしと関わりたくはないのですよっ!」
「そうなんですかミネルバさん!? オレ、知りませんでした……」
ミネルバさんの言ったことが本当なら、やはりオレは嫌われてますね。
せっかくパフさんと仲良しになれなのに残念です。
「パフさん、すみませんでした。何で嫌われたかは分かりませんが、もうパフさんにはちょっかい出しません!」
人間に嫌なことをしないのが躾のいい飼いイヌとしての掟です。
その掟を破ることは、ご主人様に恥をかかすことになりますからね!
ところが。
「ち、違っ! そうじゃなくて……。あたい、関わりたく無いとか、そんなんじゃないもん……」
「パフさん?」
じゃあパフさんはどうしてこんなに機嫌が悪いのでしょうか?
オレはパフさんの気持ちがとても知りたかったのです。でもそれはレーガンさんの一言によって遮られてしまいました。
「あー、食事も一段落した頃なので、ボルトミの取引についての協議を始めたいのだが。みんないいかね?」
「ごっつぁんです!」
「いいぞーっ、食った食った満腹だ」
パフさんのこともすごく気になりますが、今はご主人様の居どころが分かるかもしれない大事な時でした。
なのでここはしっかりおネエさまとの取引について話さねばなりませんね。
「実を言うとねみんな、ボルトミが処刑される事はないんだよ」
「ちょっ! どうしてですの? あんな変態犯罪者は殺すべきですッ!」
「まあミネルバ、話を聞いてくれ。ボルトミは確かに危険な錬金術師だが、紛うことなき天才でもある。それゆえ王国はその才能を惜しんで、王国の為に使わせる事を選んだんだよ。もちろん自由にではない、ボルトミは一生牢に繋がれながら王国の道具にされ続けるというわけさ」
「そういう事ですか。まあ、王国がそう決定したのなら仕方ありませんわね」
「だからね、ボルトミが命の保証を取引材料として選んでくれた時点で、俺たちは丸儲けなんだよ。仮にドン・キモオタの居場所について嘘をついたとしても、現状維持に留まるだけの話なのさ」
「いずれドン・キモオタにボルトミ捕縛の事実は知れるだろうしな、身の危険を感じてトンズラされる前にボルトミの証言に乗ってみるのは悪い手じゃねえって事か」
「そういう事だよバウワー。すでに時間との勝負になっているからね、この取引に賭けてみる価値はある」
「なら尚更、自白魔法を使うべきでは?」
「それは駄目だ。ミネルバも知っての通り自白魔法は脳にダメージが残る可能性が高い。天才の脳を傷付けるわけにはいかないだろ?」
なんだかちっとも話が分かりませんが、でもご主人様を捜しに行くことになっていそうな気がしますね。
これはいい感じじゃないでしょうか!
「それでだが、コテツ君」
「はい! なんでしょうか」
「コテツ君は嗅覚に異能があるとパフから聞いているのだが、ドン・キモオタの匂いを判別する事は可能かね?」
「もちろんですッ! ご主人様の匂いがすればすぐに分かりますよッ!」
「それは匂いの痕跡でも?」
「はいっ! わずかでも残っていれば余裕ですね。そこから追跡も出来ますよッ!」
イヌの嗅覚をナメてもらっては困りますね。しかもデキるオス全開にすれば、地の果てまでも追いかけられます。
匂いが消えていなければですが。
「それは頼もしいな。よし、じゃあボルトミとの取引を成立させて、急ぎドン・キモオタを捜索する事でみんないいかね?」
こうしてオレたちはご主人様の居どころへと向かうことになりました!
ああ、感無量ですね。もうすぐご主人様に会えるかもしれないと思うと、うれしょんしてしまいそうですッ!
翌朝早くにオレたちはまた何とか門という光る建物に来ました。一緒に行く仲間はこの前と同じです。
「みんな準備はいいね。今回の作戦はドン・キモオタの所在の確認だ。ボルトミの話ではこれから向かう先はドッグランの拠点の一つだそうだが、本拠地ではない。しかしドン・キモオタはその拠点を気に入っていて、普段の生活の場所としていたらしい」
相変わらずレーガンさんの話は長いですね。朝早いのでアクビが出てしまいそうです。
「もしそこにドン・キモオタがいたら捕縛するのか? 千載一遇のチャンだぜ?」
「うむ、バウワーの言う通り我々だけで捕縛が可能な場合は当然そうする。しかし敵の数が多く取り逃がす可能性がある場合は、あえて所在の確認だけに留めて監視を厳にするだけだね。改めて実行部隊を編成して確実に捕縛しよう」
そんなのお断りですね。ご主人様がいたらオレは誰が何と言おうと会いに行きます!
レーガンさんといえども邪魔するなら、容赦なく倒しますよ。
「それでその拠点の場所だが、ここ王都より東南に位置する海沿いの都市ウェーディア近郊にある港町に存在するらしい。ボルトミの書いた地図が正しければ都市間転移門でウェーディアまで行き、昼までには現地に到着するだろう。港町の名前はヤイーズだね」
ヤイーズですか。どこか懐かしい感じのする名前ですね。何だかますますご主人様がいる予感がしてきましたよ!
しかしその数時間後、オレの予感は悲しいことに外れていたことを知ったのでした。
ヤイーズにあるご主人様の家には今はもう誰も住んでいる気配はなくて、がらんとしています。
「この拠点はすでに破棄されたみたいだね。それも最近ってわけではないようだ。どうだろうコテツ君、ドン・キモオタの匂いは残っているかい?」
「はい、ご主人様の匂いは微かに残っています。けどかなり前の匂いですね」
「ふむ、追跡できそうかね?」
「いいえ。匂いはこの家の周りまでしか残ってないので、ご主人様がどこに行ったかはわかりません」
「そうか、それは残念だな……。まあ転移魔法で移動したのだろうね」
レーガンさんも残念かもしれませんが、オレはもっと残念です! いやそれどころか悲しくて泣きたいくらいですね。
ああ……お懐かしいご主人様の匂い。コテツはご主人様に会いたかったです。またご主人様の飼いイヌとして幸せに暮らしたかったです。
なのにどうしてご主人様は、コテツをここで待っていてくれなかったのでしょうか……
今頃ご主人様もオレを探してくれているのかな?
ご主人様の太って脂でテカテカした顔を思い浮かべたオレは、何となく空を見上げました。
そしたら空には白い月が浮かんでいて、オレはその月に向かって遠吠えを一つしたのでした。
オレは躾のいい飼いイヌです。なので人にさわる時は驚かさないよう、とても気をつけています。
しかし今のオレはそんな基本も忘れて、乱暴におネエさまの肩を揺すりました。興奮したイヌは時にこうなってしまうのです、お許しを。
「い、痛いわっ、ちょっ乱暴にしないでぇ、感じちゃうじゃないのぉ! あっイイっ」
「コテツ君っ、落ち着きたまえッ!」
いやレーガンさん、落ち着けとか無理でしょ。やっとご主人様の居どころを知る人に会えたのですよ!
無理無理、絶対にムリーッ!
「俺たちもボルトミからその事を聞き出すつもりでいるんだよ、だからそんなに慌てないでくれっ」
そうなのですか? ならここは一旦レーガンさんにおまかせしましょう。
人間と人間の方がコミュニケーションはとりやすいはずでしょうからね!
「わかりましたレーガンさん。おネエさまをよろしくお願いします!」
「イヤンっ、次はレーガンちゃんに責められるのぉ? ステキッ!」
「い、いや責めないよ……。でも教えて欲しいな、ドン・キモオタの居場所を。ドッグランの本拠地に彼は居るのかね?」
「なによもぅ、つまんなぁ~い。アタシとってもドキドキしてたのにぃ。でもそぉねえ、教えてあげない事もないわよぉ。アタシのお願いを叶えてくれたらねっ。ウフフ」
「取引というわけかい?」
おネエさまはニヤリとして頷きました。これはいい感じですね! さすがは人間同士、話が早くて素晴らしいっ。
だのにミネルバさんが、そんなオレの期待に水を差すようなことを言ったんです。
「あなた、ご自分の立場が分かっていらっしゃるの? 犯罪者のくせして図々しいッ! レーガン殿と変態プレイをしたいだなんて、私でもした事がないのにっ。それを三日三晩も続けるつもりですって!? キーッ、レーガン殿もレーガン殿ですわッ!」
「ミ、ミネルバ?……。それは君の妄想だからね。ちょっと黙っていようか」
「あらやだっ、年増聖女の焼きもちぃ? 言ってる事が聖女というより性女ねっ! というかぁアタシ変態プレイなんか好きじゃないんですけどぉ? どうせならロマンチックなプレイの方がスキッ!」
「ふ、二人とも、とりあえず真面目に話そうか……。それでボルトミ。君の取引とは具体的に何が望みなんだい?」
「命の保証よぉ。アタシどうせこのままだと処刑でしょ? だからぁ終身刑でもなんでも生かされる事が条件。ただし、アタシのドン・キモオタに関する情報は一年前のものだからぁ、今もそこに居るとは限らないわよぉ? 居ない場合でも取引が成立するならって話になるわねぇ」
「ふむ、なら君が嘘をついても成立する取引という事にもなるね」
「レーガン殿! この男が嘘をつくのは明らかですッ! 自白魔法でも使って強引に情報を得るべきですわっ」
なんだか雲行きが怪しくなってきましたね。なんでもいいので早くご主人様の居どころを教えてもらって欲しいです。
ところがおネエさまとの取引についての回答は、一旦保留だとレーガンさんは言いました。オレたちだけで一度相談してから決めるということらしく。
なのでオレたちはお昼ごはんを食べながら、別の部屋で話し合いの真っ最中というわけです。
ちなみにオレはトリプルチーズバーガーを注文しました!
「もぐもぐ……。パフさんも今度トリプルチーズバーガーを食べてみてください。美味しいですよっ!」
オレは隣で野菜だけ食べているパフさんにオススメしてみたのですが……
「…………」
パフさんからはその返事はなく、野菜を食べる手も止まったままです。やっぱり野菜だけなんて美味しくないのでしょう。
「オレのバーガーを半分あげましょうか? そんな野菜だけじゃ元気出ないですよ!」
「あたいサラダ好きだし……。今は肉とか食べたい気分じゃないし……」
うーん。不機嫌な匂いがプンプンしますね。本当にオレはパフさんに嫌われてしまったのかもしれません。
「ちょっとコテツ殿、これ以上パフにちょっかい出さないで頂けますかしら。見てれば分かるでしょ? パフはもう貴方のような女たらしと関わりたくはないのですよっ!」
「そうなんですかミネルバさん!? オレ、知りませんでした……」
ミネルバさんの言ったことが本当なら、やはりオレは嫌われてますね。
せっかくパフさんと仲良しになれなのに残念です。
「パフさん、すみませんでした。何で嫌われたかは分かりませんが、もうパフさんにはちょっかい出しません!」
人間に嫌なことをしないのが躾のいい飼いイヌとしての掟です。
その掟を破ることは、ご主人様に恥をかかすことになりますからね!
ところが。
「ち、違っ! そうじゃなくて……。あたい、関わりたく無いとか、そんなんじゃないもん……」
「パフさん?」
じゃあパフさんはどうしてこんなに機嫌が悪いのでしょうか?
オレはパフさんの気持ちがとても知りたかったのです。でもそれはレーガンさんの一言によって遮られてしまいました。
「あー、食事も一段落した頃なので、ボルトミの取引についての協議を始めたいのだが。みんないいかね?」
「ごっつぁんです!」
「いいぞーっ、食った食った満腹だ」
パフさんのこともすごく気になりますが、今はご主人様の居どころが分かるかもしれない大事な時でした。
なのでここはしっかりおネエさまとの取引について話さねばなりませんね。
「実を言うとねみんな、ボルトミが処刑される事はないんだよ」
「ちょっ! どうしてですの? あんな変態犯罪者は殺すべきですッ!」
「まあミネルバ、話を聞いてくれ。ボルトミは確かに危険な錬金術師だが、紛うことなき天才でもある。それゆえ王国はその才能を惜しんで、王国の為に使わせる事を選んだんだよ。もちろん自由にではない、ボルトミは一生牢に繋がれながら王国の道具にされ続けるというわけさ」
「そういう事ですか。まあ、王国がそう決定したのなら仕方ありませんわね」
「だからね、ボルトミが命の保証を取引材料として選んでくれた時点で、俺たちは丸儲けなんだよ。仮にドン・キモオタの居場所について嘘をついたとしても、現状維持に留まるだけの話なのさ」
「いずれドン・キモオタにボルトミ捕縛の事実は知れるだろうしな、身の危険を感じてトンズラされる前にボルトミの証言に乗ってみるのは悪い手じゃねえって事か」
「そういう事だよバウワー。すでに時間との勝負になっているからね、この取引に賭けてみる価値はある」
「なら尚更、自白魔法を使うべきでは?」
「それは駄目だ。ミネルバも知っての通り自白魔法は脳にダメージが残る可能性が高い。天才の脳を傷付けるわけにはいかないだろ?」
なんだかちっとも話が分かりませんが、でもご主人様を捜しに行くことになっていそうな気がしますね。
これはいい感じじゃないでしょうか!
「それでだが、コテツ君」
「はい! なんでしょうか」
「コテツ君は嗅覚に異能があるとパフから聞いているのだが、ドン・キモオタの匂いを判別する事は可能かね?」
「もちろんですッ! ご主人様の匂いがすればすぐに分かりますよッ!」
「それは匂いの痕跡でも?」
「はいっ! わずかでも残っていれば余裕ですね。そこから追跡も出来ますよッ!」
イヌの嗅覚をナメてもらっては困りますね。しかもデキるオス全開にすれば、地の果てまでも追いかけられます。
匂いが消えていなければですが。
「それは頼もしいな。よし、じゃあボルトミとの取引を成立させて、急ぎドン・キモオタを捜索する事でみんないいかね?」
こうしてオレたちはご主人様の居どころへと向かうことになりました!
ああ、感無量ですね。もうすぐご主人様に会えるかもしれないと思うと、うれしょんしてしまいそうですッ!
翌朝早くにオレたちはまた何とか門という光る建物に来ました。一緒に行く仲間はこの前と同じです。
「みんな準備はいいね。今回の作戦はドン・キモオタの所在の確認だ。ボルトミの話ではこれから向かう先はドッグランの拠点の一つだそうだが、本拠地ではない。しかしドン・キモオタはその拠点を気に入っていて、普段の生活の場所としていたらしい」
相変わらずレーガンさんの話は長いですね。朝早いのでアクビが出てしまいそうです。
「もしそこにドン・キモオタがいたら捕縛するのか? 千載一遇のチャンだぜ?」
「うむ、バウワーの言う通り我々だけで捕縛が可能な場合は当然そうする。しかし敵の数が多く取り逃がす可能性がある場合は、あえて所在の確認だけに留めて監視を厳にするだけだね。改めて実行部隊を編成して確実に捕縛しよう」
そんなのお断りですね。ご主人様がいたらオレは誰が何と言おうと会いに行きます!
レーガンさんといえども邪魔するなら、容赦なく倒しますよ。
「それでその拠点の場所だが、ここ王都より東南に位置する海沿いの都市ウェーディア近郊にある港町に存在するらしい。ボルトミの書いた地図が正しければ都市間転移門でウェーディアまで行き、昼までには現地に到着するだろう。港町の名前はヤイーズだね」
ヤイーズですか。どこか懐かしい感じのする名前ですね。何だかますますご主人様がいる予感がしてきましたよ!
しかしその数時間後、オレの予感は悲しいことに外れていたことを知ったのでした。
ヤイーズにあるご主人様の家には今はもう誰も住んでいる気配はなくて、がらんとしています。
「この拠点はすでに破棄されたみたいだね。それも最近ってわけではないようだ。どうだろうコテツ君、ドン・キモオタの匂いは残っているかい?」
「はい、ご主人様の匂いは微かに残っています。けどかなり前の匂いですね」
「ふむ、追跡できそうかね?」
「いいえ。匂いはこの家の周りまでしか残ってないので、ご主人様がどこに行ったかはわかりません」
「そうか、それは残念だな……。まあ転移魔法で移動したのだろうね」
レーガンさんも残念かもしれませんが、オレはもっと残念です! いやそれどころか悲しくて泣きたいくらいですね。
ああ……お懐かしいご主人様の匂い。コテツはご主人様に会いたかったです。またご主人様の飼いイヌとして幸せに暮らしたかったです。
なのにどうしてご主人様は、コテツをここで待っていてくれなかったのでしょうか……
今頃ご主人様もオレを探してくれているのかな?
ご主人様の太って脂でテカテカした顔を思い浮かべたオレは、何となく空を見上げました。
そしたら空には白い月が浮かんでいて、オレはその月に向かって遠吠えを一つしたのでした。
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