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現王の退位は宰相一派の抵抗があり思ったよりも難航したが、第一王子が現王派だった宰相一派をまるっと自分の側近と挿げ替える事で問題を無かったことにした。
その内の何人かは戦争の責任を取らせて首まで飛ばしている。
元々長きに渡る戦争が終って燃え尽きかけていた現王もこれで王位を退くことを決意。
円満解決とはいかなかったが、これ以降現王が表舞台に上がることはなかった。
その後、ライレリアは惜しまれつつも王族を離れ、大地母神神殿に聖人として登録された。
大地母神神殿内や、他の神を祭る神殿では、水面下で戦争を引き起こすきっかけたなった国の元王族を聖人として登録することに反対の声も上がったが、大地母神がほぼ眠りについている今、その声を聞き、力を行使出来る大地母神の愛し子に表立って反対の声をあげれる者はいなかった。
■■■
廃墟となった始まりの街。
そこには双子の勇者とその仲間たち、そしてライレリアが大地母神神殿跡地に向かい歩を進めている。
天には陽が登り、その柔らかな日差しは優しく降り注いでいいた。
微かな鳥の声と一行の歩む足音だけが静かに響いている。
「なんか、帰ってきたなーって感じだね」
「そう、だね。あれから俺達も戻ってこれなかったから」
くっと腕を空に向けて身体を伸ばしながら感慨ぶかけに呟くライレリアに、フィルが後ろから抱き着いて、肩口に顔を埋める。
「フィルは甘えんぼさんだな、よしよし」
「あの、俺達の前でもいちゃいちゃするのやめてもらえませんかね」
「レイゼル、お前何で来たの?いらん帰れ、若しくは死ね」
「フィル!?戦友に対して相変わらず酷くない!?」
「ふふ、レイゼルは学ばないですね」
「そうだね、サティ。レイゼルは戦いや斥候に関しては頭が回るけど、結局はフィル同じ戦闘馬鹿筋肉馬鹿だからね」
「クリス!?さり気なく馬鹿にするのやめて!」
レイゼルとサティはそれぞれの理由でライレリア達について来ていた。
サティは大地母神神殿から聖人であるライレリアの付き人として。
レイゼルは元々第三王子直属という事もあり、ライレリアが王族を離れてからの立ち位置が難しかった。
下手をすると知らなくていいことまで知ってるからと暗殺されたり、うっかりライレリアが不利となる立ち位置に追い込まれて、勇者たちに始末される危険があったため、ライレリアが王族を離れた際に、そのまま自身の所属も大地母神神殿に変更していた。
将来的に死の危険性がある中で名誉を得るよりも、生き延びる事を優先した結果だ。
ライレリアはフィルの頭を撫でつつ、楽しそうに口論する勇者とその仲間たちを見て目を細める
「ほんと君たち仲いいよね」
その言葉にはほんの少しの寂しさが含まれていた。
ソレを感じたフィルの腕が微かに強張ったが、すぐに甘えるようにライレリアの肩口に頭をこすりつける。
「うっわ、どうしたフィル?」
「これからは3人一緒だから……あ、サティもいる。俺達にはまだこれから沢山の時間があるから……おまけにレイゼルもいるけど」
「そうだな、これからの時間を大切にしような。ってフィル!?」
微笑むライレリアに顔を赤くしたフィルは抱きしめていた身体を離すと、今度はライレイアの膝下に手を回し横抱きに抱え上げる。
「これやりたかったんだ。筋肉馬鹿だから出来る役得だろ」
「フィル、後で交代な」
「いいけどクリスには無理じゃない?筋肉無いし」
「俺には魔法があるからな」
「なんだよそれずるじゃん-」
「ずるなものか」
ライレリアは、笑い合いながら仲良く口論する双子の姿に自分の意思は関係ないんだなと心で溜息をつきつつも、スーキヌムとして生きた幼い双子との日々を思い出してしまい、その琥珀色の瞳から涙が零れ頬を伝った。
「す、スーにぃ、どうしたの?どこか痛い?」
「いや、本当に、帰って、きたんだなって。クリスとフィルが目の前にいるんだなって思ったらさ、嬉しく……て」
慌てるフィルに対して落ち着いた様子のクリスはそっとライレリアの涙を拭った。
「にぃ、これからは3人ずっと一緒だ。俺もフィルも守られてばかりの子供じゃない。今度何かあっても俺とクリスがにぃを守るよ」
「ふふ、有難う。けどその時は僕も一緒に戦うよ」
「また無理して俺達の前からいなくなっちゃいそうだからダメ」
「信用無いなぁ~」
三人の後ろではレイゼルが脛を抱えて地面に転がっていた。
三人の様子にまた何か口を開きかけたレイゼルの脛を、サティが手にもっていた杖で強打したのだ。
「うぉぉぉぉ。さ、サティちゃん、俺まだ、何も、言っ、ないん、だけど……」
「どうせ「三人でいちゃつかないで貰えますかね」とか言おうとしだんでしょ。大地母神様に変わって天罰を下したまでです」
ふんと澄まし顔でレイゼルを見下ろすサティの瞳はいやに楽しそうだ。
「あの二人も仲いいよね」
「レイゼルが馬鹿だから気が付いてないけどね。あ、フィルも馬鹿だから気が付いてないか」
「馬鹿っていうなよ!で何の話?」
「サティとレイゼルが二人になる時間を作ってあげようねって話だよ」
「そんなの夜は俺達三人の時間が必要なんだから自然とそうなるんじゃない?」
当然のように語るフィルの言葉に、ライレリアの対応が若干上昇し、クリスは小さく溜息をついた。
「クリス……弟の教育……」
「ごめんなさい」
ライレリアの苦情に素直に謝るクリスに対して、フィルは不満そうに唇を尖らせている。
フィルに抱えられたライレリアはそのままクリスを抱き寄せ、三人の額をそっとつける。
「クリス、フィル。ただいま」
クリスとフィルは目を合わせると、満面の笑みを浮かべた。
「にぃ、お帰り」
「お帰り、スーにぃ」
その内の何人かは戦争の責任を取らせて首まで飛ばしている。
元々長きに渡る戦争が終って燃え尽きかけていた現王もこれで王位を退くことを決意。
円満解決とはいかなかったが、これ以降現王が表舞台に上がることはなかった。
その後、ライレリアは惜しまれつつも王族を離れ、大地母神神殿に聖人として登録された。
大地母神神殿内や、他の神を祭る神殿では、水面下で戦争を引き起こすきっかけたなった国の元王族を聖人として登録することに反対の声も上がったが、大地母神がほぼ眠りについている今、その声を聞き、力を行使出来る大地母神の愛し子に表立って反対の声をあげれる者はいなかった。
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廃墟となった始まりの街。
そこには双子の勇者とその仲間たち、そしてライレリアが大地母神神殿跡地に向かい歩を進めている。
天には陽が登り、その柔らかな日差しは優しく降り注いでいいた。
微かな鳥の声と一行の歩む足音だけが静かに響いている。
「なんか、帰ってきたなーって感じだね」
「そう、だね。あれから俺達も戻ってこれなかったから」
くっと腕を空に向けて身体を伸ばしながら感慨ぶかけに呟くライレリアに、フィルが後ろから抱き着いて、肩口に顔を埋める。
「フィルは甘えんぼさんだな、よしよし」
「あの、俺達の前でもいちゃいちゃするのやめてもらえませんかね」
「レイゼル、お前何で来たの?いらん帰れ、若しくは死ね」
「フィル!?戦友に対して相変わらず酷くない!?」
「ふふ、レイゼルは学ばないですね」
「そうだね、サティ。レイゼルは戦いや斥候に関しては頭が回るけど、結局はフィル同じ戦闘馬鹿筋肉馬鹿だからね」
「クリス!?さり気なく馬鹿にするのやめて!」
レイゼルとサティはそれぞれの理由でライレリア達について来ていた。
サティは大地母神神殿から聖人であるライレリアの付き人として。
レイゼルは元々第三王子直属という事もあり、ライレリアが王族を離れてからの立ち位置が難しかった。
下手をすると知らなくていいことまで知ってるからと暗殺されたり、うっかりライレリアが不利となる立ち位置に追い込まれて、勇者たちに始末される危険があったため、ライレリアが王族を離れた際に、そのまま自身の所属も大地母神神殿に変更していた。
将来的に死の危険性がある中で名誉を得るよりも、生き延びる事を優先した結果だ。
ライレリアはフィルの頭を撫でつつ、楽しそうに口論する勇者とその仲間たちを見て目を細める
「ほんと君たち仲いいよね」
その言葉にはほんの少しの寂しさが含まれていた。
ソレを感じたフィルの腕が微かに強張ったが、すぐに甘えるようにライレリアの肩口に頭をこすりつける。
「うっわ、どうしたフィル?」
「これからは3人一緒だから……あ、サティもいる。俺達にはまだこれから沢山の時間があるから……おまけにレイゼルもいるけど」
「そうだな、これからの時間を大切にしような。ってフィル!?」
微笑むライレリアに顔を赤くしたフィルは抱きしめていた身体を離すと、今度はライレイアの膝下に手を回し横抱きに抱え上げる。
「これやりたかったんだ。筋肉馬鹿だから出来る役得だろ」
「フィル、後で交代な」
「いいけどクリスには無理じゃない?筋肉無いし」
「俺には魔法があるからな」
「なんだよそれずるじゃん-」
「ずるなものか」
ライレリアは、笑い合いながら仲良く口論する双子の姿に自分の意思は関係ないんだなと心で溜息をつきつつも、スーキヌムとして生きた幼い双子との日々を思い出してしまい、その琥珀色の瞳から涙が零れ頬を伝った。
「す、スーにぃ、どうしたの?どこか痛い?」
「いや、本当に、帰って、きたんだなって。クリスとフィルが目の前にいるんだなって思ったらさ、嬉しく……て」
慌てるフィルに対して落ち着いた様子のクリスはそっとライレリアの涙を拭った。
「にぃ、これからは3人ずっと一緒だ。俺もフィルも守られてばかりの子供じゃない。今度何かあっても俺とクリスがにぃを守るよ」
「ふふ、有難う。けどその時は僕も一緒に戦うよ」
「また無理して俺達の前からいなくなっちゃいそうだからダメ」
「信用無いなぁ~」
三人の後ろではレイゼルが脛を抱えて地面に転がっていた。
三人の様子にまた何か口を開きかけたレイゼルの脛を、サティが手にもっていた杖で強打したのだ。
「うぉぉぉぉ。さ、サティちゃん、俺まだ、何も、言っ、ないん、だけど……」
「どうせ「三人でいちゃつかないで貰えますかね」とか言おうとしだんでしょ。大地母神様に変わって天罰を下したまでです」
ふんと澄まし顔でレイゼルを見下ろすサティの瞳はいやに楽しそうだ。
「あの二人も仲いいよね」
「レイゼルが馬鹿だから気が付いてないけどね。あ、フィルも馬鹿だから気が付いてないか」
「馬鹿っていうなよ!で何の話?」
「サティとレイゼルが二人になる時間を作ってあげようねって話だよ」
「そんなの夜は俺達三人の時間が必要なんだから自然とそうなるんじゃない?」
当然のように語るフィルの言葉に、ライレリアの対応が若干上昇し、クリスは小さく溜息をついた。
「クリス……弟の教育……」
「ごめんなさい」
ライレリアの苦情に素直に謝るクリスに対して、フィルは不満そうに唇を尖らせている。
フィルに抱えられたライレリアはそのままクリスを抱き寄せ、三人の額をそっとつける。
「クリス、フィル。ただいま」
クリスとフィルは目を合わせると、満面の笑みを浮かべた。
「にぃ、お帰り」
「お帰り、スーにぃ」
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