逆転世界で俺はビッチに成り下がる

樋川カイト

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第1話

 俺がこの世界の異変に気付いたのは、昼寝から目覚めてすぐの事だった。
 猛烈な喉の渇きに耐えかねてリビングに降りた時、そこには妹の美希がソファで寛いでいた。
 それだけなら別に変わった事のない普通の光景なのだが、問題なのは美希の格好だ。
 そもそも妹の美希はズボラな俺と違って貞操観念の塊と言っても良いほど性に対して潔癖だ。
 もはや自意識過剰なまでに家でもオシャレを絶やさず、男の事を毛嫌いしていて、ついでに俺も嫌っている。
 兄だからと言う事で話くらいはしてくれるけど、つい胸に視線を送ってしまったりするとそれだけで不機嫌になってしまい、蔑んだ視線を浴びせられて深いため息をつかれてしまう。
 俺はそんな美希も大好きで、最近冷たい目で見られるのにも慣れてむしろ気持ち良くなってしまうほどの重度のシスコンなのだが、だからこそ妹の変化に目敏く気付く事ができた。
 普段だったら家でも肌の露出を極力減らしてキチッとオシャレな服を着こなしているはずなのに、今日の美希はタンクトップにショートパンツと言う、かなりきわどい衣装をしている。
 しかもゆるゆるな襟元からは谷間がばっちり見えていて、本来見えるはずのブラが見えない。
 そして良く見ると健康的なおへそまでチラっと見えている。
 前言撤回。
 美希の変化は普段の彼女を知っている者なら誰が見ても明らかだった。
 そして俺が何よりもおかしいと感じたのは、これだけ美希の事を凝視していても全く怒られないと言う事だ。
 今朝まではチラ見しただけで切れられていたのに、いったいどんな心境の変化なのだろう?
 なんだか恐ろしくなった俺は、声を掛ける事なく冷蔵庫の中の麦茶を取り出して眺めていることしかできずにいた。
 しかし気配に敏感なのは変わらないらしく、物音に気付いた美希は俺を見つめる。
 そしてその瞬間、顔を真っ赤にしてしまった。
「よ、よぉ。おはよう……」
 やばい、怒ったか?
 勝手にそんな恰好をしていたとはいえ、俺に見られた事が嫌だったのかもしれない。
 運動部で毎日のように身体を動かしている美希は、はっきり言って俺よりも腕っぷしが強い。
 自慢じゃないが、帰宅部の俺は全体的に華奢で弱々しい。
 余談だが、そのせいで顔は悪くないのにモテた例がない。
 ちなみに顔が良いと言うのは友人談だ。
 決して俺の自称でない事をここで明言しておく。
 と、現実逃避している間にも美希の顔はどんどん赤みを増していく。
 これは、一発くらい殴られるのを覚悟しないといけないかもな。
 そう覚悟を決めていると、やがて美希は俺から目を逸らして口を開いた。
「お兄ちゃん! なんて恰好してるのよっ!」
 なんて恰好?
 そこで初めて、俺は自分の姿をまじまじと確認した。
 だぼっとしたスウェットパンツに、着古してすっかりくたびれてしまったTシャツ。
 ……うん、普通だ。
 別に変わった事のないいつもの昼寝スタイルだし、なんなら今朝だってこの格好だった。
 その時には、特に何も言われなかったはずだぞ。
 今朝と違う事なんて、スウェットが少しずれてパンツが見えている事くらいだが、それだっていつも通りだ。
 とりあえずスウェットを直してパンツをしまっても、相変わらず美希は顔を赤くしたままだ。
 どうやら、俺の姿を見て照れてしまったらしい。
 しかし、どうしたのだろうか?
「別に俺の格好に変わった所なんてないだろ。それよりも、美希の恰好こそどうしたんだ?」
 ともかく怒られないみたいなので、さっきから気になっていた事を聞いてみる。
 しかし帰ってきたのは、予想外の言葉だった。
「はぁ? 別に、私の恰好こそいつも通りじゃん」
 何を言っているんだ、と言った風に首を傾げた美希は、俺の姿をチラチラ見ながら言葉を続ける。
「そりゃあお兄ちゃんがズボラなのは知ってるけど、せめて妹の前でくらい隠してよね。私だって、女なんだから」
「いや、お前が女なのは分かってるぞ」
「だったら、もっとちゃんとして!」
 当たり前の事に当たり前に答えたら怒鳴られた。
 なんたる理不尽だ。
 ともかくこれ以上ここに居ると殴られそうなので戦略的撤退としよう。
 麦茶を一気飲みしてリビングを出ると、俺はそのまま自分の部屋へと帰る。
 そしてドアを閉めると、ついでに鍵までばっちり施錠した。
「ふぅ、これでこの部屋には誰も入れない」
 それなら、やる事は一つだ。
 パパッとズボンを脱ぐと、俺の愚息はすでに臨戦態勢だ。
 思えば、リビングで美希の姿を見た時からこうだった。
 物陰に隠れて美希には見えなかったみたいだが、ばれていたらきっとリンチに遭っていただろう。
 そんな愚息を握ると、さっきの美希を思い出しながら扱く。
 ゆるゆるの胸元や、むちむちの太もも。
 いつの間にかすっかり育っていた美希の姿は、俺にとって最高のオカズだった。
 しかし、まだ足りない。
 更なるオカズを求めて点けっぱなしだったパソコンに保存してあるエロ画像を見た瞬間、愚息は一気に萎れてしまった。
 いやぁ、百年の恋……、じゃなくって性欲も萎えるね。
 そこにあるはずの無修正エロ画像は、全て無修正男性器に変わっていた。
 どの画像を見ても、ちんぽ、ちんぽ、ちんぽ。
 吐き気を抑えるようにパソコンの電源を落とすと、俺はすっかりしょげかえってしまった愚息を慰めながらパンツにしまう。
 ごめんな、また今度遊ぼうぜ。
 ベッドに腰掛けて深いため息をつきながら、俺はこの世界の事について考えた。
 俺だってオタクだ。
 正直、なんとなく気付いてたさ。
 美希の恰好がやけに緩くなって、普通の恰好してるのに怒られる。
 そしてエロ画像は男性器に変わり、ベッドの下に隠してあったエロ本も確認したら全滅だった。
 と言う事は、つまりそう言う事だろう。
 ここは、貞操逆転世界だっ!
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