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「さて、じゃあまずは自己紹介から始めよう。ボクの名前はガドリン。正義サイドのマスコットをしているよ」
「マスコット、ねぇ……。俺はアイン、こっちの彼女はクレビスだ」
胡散臭さ満載の自己紹介に顔をしかめながら、俺は短く名前だけを名乗る。
そんな俺たちの警戒を知ってか知らずか、リラックスした様子のガドリンは手の届くほど近くまでやってくる。
「なるほど、君がウワサの……」
「ウワサ? 正義の味方界隈じゃ、俺のことがウワサになってるのか?」
「そりゃあそうさ。なんと言っても、あのロイヤルフォーチュンを倒してしまったんだからね。そのせいで、ボクたちは新しいヒロインの増産で大忙しさ」
増産。
その言い方にどこか引っかかるものを感じながらも、まずは情報収集が先決だ。
せっかく向こうから接触してきてくれたんだから、この機会を逃すわけにはいかない。
「それで、どうしてお前はここに居るんだ? いったい、どこから忍び込んだ?」
「気付いてなかったの? ボクは玄関から堂々と入ったのに。それに、リビングで一度姿は見ているはずだよ」
「リビングで……? もしかして、佳奈が持って帰って来た物って」
「その通り。そして、佳奈ちゃんがボクを持っていた理由は、もう分かるよね?」
口角を上げてニヤリと笑うガドリンの言葉の意味を察して、俺はほんの少しだけ眉を顰める。
「佳奈が、正義のヒロインになったってことか」
だとしたら、なんという運命のいたずらだ。
悪の組織の一員である俺の妹が、正義のヒロインだなんてまるで漫画みたいな展開だ。
「だけど、それならどうして俺に接触してきたんだ?」
いくら俺が悪の怪人だと分かったからと言って、コイツが俺に接触してくる理由にはならない。
むしろ普通なら、正体を隠して隙を伺う方が得策だろう。
そんな俺の疑問を正面から受け止めて、ガドリンは涼しい顔で答える。
「確かに普通の状況なら、そうしたかもしれないね。機会をうかがいながら、時が来れば佳奈ちゃんに全てを話して戦わせることだってできた。だけど、彼女のあんな姿を見せられたらそうも言ってられないよ」
「あんな姿? ……もしかしてお前」
「とっても激しい交尾だったね。いくら好きあっていても、普通はあそこまで乱れたりしないはずだろう」
想像通り、どうやらこいつは俺と佳奈のセックスを一部始終覗いていたみたいだ。
「さっきもクレビスとのセックスを覗いていたし、もしかしてお前はそういう趣味でもあるのか?」
「失礼だな。ボクはそんな悪趣味なマスコットじゃないよ。どっちも、たまたま目撃してしまっただけだから」
憤慨したように語気を強めたガドリンは、一度咳ばらいをすると努めて冷静な声で話を始める。
「話が逸れたね。そろそろ本題に入りたいんだけど、聞いてくれるかな?」
やっと話が進むことに内心でホッとしながら、俺は無言を貫く。
それを了承と受け取ったのか、ガドリンは少しだけ表情を緩めて話を続ける。
「実は、君に提案したいことがあるんだ。きっと、君にとってもメリットもある話だと思うんだけどな」
「提案、ねぇ……。まぁ、聞くだけ聞いてやるよ」
いったい正義サイドの存在が俺にどんな提案があると言うのだろうか。
訝しみながらも続きを促すと、ガドリンは再び口角を上げてニヤリと笑う。
「簡単な話だよ。君には、しばらく悪事を働く頻度を下げてほしいんだ。さっきも言ったけど、君のせいでボクたちの仕事は日に日に増えているからね」
その提案は想像していたものとは違って、なんだか拍子抜けだ。
例え俺が頻度を下げても、他に怪人が居る限り仕事は減ったりしないだろう。
「そもそも、頻度を下げるだけでいいのか? 正義の味方なら、悪事を働くなってくらい言ってもいいんじゃないか」
もちろん従う気はないけど、それにしてもガドリンの提案は腑に落ちない。
俺の疑問を当然のこととして受け止めたガドリンは、それでも気にせずに話を続ける。
「止めてもらう必要はないよ。というより、止めてもらうと困るんだ」
「困る? いったいどういう意味なんだ?」
悪事を止めると困るなんて、どう考えても意味が分からない。
困惑する俺を眺めて、ガドリンは一人納得したように頷く。
「なるほど。君はまだ世界の真実を知らないんだね。それとも、わざと内緒にされているのかな」
「世界の、真実? いったいお前は何を言っているんだ?」
聞けば聞くほど、訳の分からない方向に話が進んでいく。
不安になって隣に座るクレビスに視線を向けても、彼女はいつも通りの無表情のままだ。
どうやら、この場で話の意味を理解していないのは俺だけのようだ。
「クレビス、説明してくれ。いったい世界の真実ってのはなんなんだ?」
「すいません。それをお答えする権限を、私は許可されておりませんので」
口調だけは申し訳なさそうに、クレビスはそう言って頭を下げる。
「ははっ、どうやら君の部下さんは融通が利かないみたいだね。それじゃ、代わりに僕が答えてあげるよ」
俺たちのやり取りを見て楽しそうに笑ったガドリンは、やがてゆっくりと語り始めた。
「マスコット、ねぇ……。俺はアイン、こっちの彼女はクレビスだ」
胡散臭さ満載の自己紹介に顔をしかめながら、俺は短く名前だけを名乗る。
そんな俺たちの警戒を知ってか知らずか、リラックスした様子のガドリンは手の届くほど近くまでやってくる。
「なるほど、君がウワサの……」
「ウワサ? 正義の味方界隈じゃ、俺のことがウワサになってるのか?」
「そりゃあそうさ。なんと言っても、あのロイヤルフォーチュンを倒してしまったんだからね。そのせいで、ボクたちは新しいヒロインの増産で大忙しさ」
増産。
その言い方にどこか引っかかるものを感じながらも、まずは情報収集が先決だ。
せっかく向こうから接触してきてくれたんだから、この機会を逃すわけにはいかない。
「それで、どうしてお前はここに居るんだ? いったい、どこから忍び込んだ?」
「気付いてなかったの? ボクは玄関から堂々と入ったのに。それに、リビングで一度姿は見ているはずだよ」
「リビングで……? もしかして、佳奈が持って帰って来た物って」
「その通り。そして、佳奈ちゃんがボクを持っていた理由は、もう分かるよね?」
口角を上げてニヤリと笑うガドリンの言葉の意味を察して、俺はほんの少しだけ眉を顰める。
「佳奈が、正義のヒロインになったってことか」
だとしたら、なんという運命のいたずらだ。
悪の組織の一員である俺の妹が、正義のヒロインだなんてまるで漫画みたいな展開だ。
「だけど、それならどうして俺に接触してきたんだ?」
いくら俺が悪の怪人だと分かったからと言って、コイツが俺に接触してくる理由にはならない。
むしろ普通なら、正体を隠して隙を伺う方が得策だろう。
そんな俺の疑問を正面から受け止めて、ガドリンは涼しい顔で答える。
「確かに普通の状況なら、そうしたかもしれないね。機会をうかがいながら、時が来れば佳奈ちゃんに全てを話して戦わせることだってできた。だけど、彼女のあんな姿を見せられたらそうも言ってられないよ」
「あんな姿? ……もしかしてお前」
「とっても激しい交尾だったね。いくら好きあっていても、普通はあそこまで乱れたりしないはずだろう」
想像通り、どうやらこいつは俺と佳奈のセックスを一部始終覗いていたみたいだ。
「さっきもクレビスとのセックスを覗いていたし、もしかしてお前はそういう趣味でもあるのか?」
「失礼だな。ボクはそんな悪趣味なマスコットじゃないよ。どっちも、たまたま目撃してしまっただけだから」
憤慨したように語気を強めたガドリンは、一度咳ばらいをすると努めて冷静な声で話を始める。
「話が逸れたね。そろそろ本題に入りたいんだけど、聞いてくれるかな?」
やっと話が進むことに内心でホッとしながら、俺は無言を貫く。
それを了承と受け取ったのか、ガドリンは少しだけ表情を緩めて話を続ける。
「実は、君に提案したいことがあるんだ。きっと、君にとってもメリットもある話だと思うんだけどな」
「提案、ねぇ……。まぁ、聞くだけ聞いてやるよ」
いったい正義サイドの存在が俺にどんな提案があると言うのだろうか。
訝しみながらも続きを促すと、ガドリンは再び口角を上げてニヤリと笑う。
「簡単な話だよ。君には、しばらく悪事を働く頻度を下げてほしいんだ。さっきも言ったけど、君のせいでボクたちの仕事は日に日に増えているからね」
その提案は想像していたものとは違って、なんだか拍子抜けだ。
例え俺が頻度を下げても、他に怪人が居る限り仕事は減ったりしないだろう。
「そもそも、頻度を下げるだけでいいのか? 正義の味方なら、悪事を働くなってくらい言ってもいいんじゃないか」
もちろん従う気はないけど、それにしてもガドリンの提案は腑に落ちない。
俺の疑問を当然のこととして受け止めたガドリンは、それでも気にせずに話を続ける。
「止めてもらう必要はないよ。というより、止めてもらうと困るんだ」
「困る? いったいどういう意味なんだ?」
悪事を止めると困るなんて、どう考えても意味が分からない。
困惑する俺を眺めて、ガドリンは一人納得したように頷く。
「なるほど。君はまだ世界の真実を知らないんだね。それとも、わざと内緒にされているのかな」
「世界の、真実? いったいお前は何を言っているんだ?」
聞けば聞くほど、訳の分からない方向に話が進んでいく。
不安になって隣に座るクレビスに視線を向けても、彼女はいつも通りの無表情のままだ。
どうやら、この場で話の意味を理解していないのは俺だけのようだ。
「クレビス、説明してくれ。いったい世界の真実ってのはなんなんだ?」
「すいません。それをお答えする権限を、私は許可されておりませんので」
口調だけは申し訳なさそうに、クレビスはそう言って頭を下げる。
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