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未知なる存在
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その後、取り押さえた警官が応援要請をしていたのか。
二台目のパトカーがトンネル内へと到着した。
そして、狂人はそこに乗せられて、トンネルから姿を消していった。
パトカーに乗せられる間も、狂人は【女の霊】という言葉を、のどがつぶれるほどに連呼していた。
そして、その様子に一条は俺の背中で震えながら隠れ続けていた。
言い方は悪いかもしれないが、これで一条も心霊スポット巡りなんかをする気はなくなるだろう。
少し刺激が強すぎただろうが、良い薬になるはずだ。
そうして、俺達は警官付き添いのもと、帰宅しようとしていると、前方から黒塗りの車がやってきた。
それは、ここに来た時に見た車種とは違い、ナンバープレートも違うものだった。
「はぁ、また心霊スポット巡りか、本当いい迷惑だよなぁ」
そういいながら警官が黒塗りの車へと向かおうとしていると、黒塗りの車から一人の男が現れた。
その人は、綺麗なスーツを身にまとった長身の男性であり。
険しい顔をしながらツカツカと歩いてきていた。
その速度は速く、風を切る音が聞こえそうなほどの歩幅で警察官の横を通り過ぎた。
すると、その人は俺の目の前に立ちはだかった。
威圧感のある背丈、鋭い目つき、俺を見下ろすことでずり下がった眼鏡を上げる仕草。
その様子に、俺は任侠ドラマに出てくるインテリヤクザを思い出した。
「さぁ、帰るぞマロン」
「え?」
困惑する状況の中、一条がようやく俺の背中から離れた。
そして、彼女はうつむきながらスーツの人の元へと向かっていった。
それにしてもマロンってなんだ?
「あ、おい、一条その人は?」
「大丈夫、迎えの人だから・・・・・・えへへ、見つかっちゃったみたい」
「見つかったって、お前」
「やっぱり夜遊びはだめだよね」
「え、あぁ、そうだけどその人は」
「楽しかったよ山藤君、またね」
一条は苦笑いしながらそんな事を言うと、俺に軽く手を振ってきた。
だが、それを遮るかのようにインテリヤクザが俺に話しかけてきた。
すると、一条が心配そうに俺の元へと駆け寄ろうとしたのだが、インテリヤクザさんが声を上げた。
「先に車に乗っていなさいっ!!」
トンネルに響く強い語気に、一条は臆した様子を見せた。
そして、トボトボと悲しそうな背中を見せながら黒塗りの車に乗車した。
そして、その間も俺から目を離すことのないインテリヤクザは口を開いた。
「君は?」
「・・・・・・山藤です、一条さんとは同じクラスで」
「君があの子をたぶらかしたのか?」
「いや、ここは危険だから帰る様に忠告しました、でも、一条は言う事を聞かなかったので、せめて付き添いだけでもと思いまして」
「本当に?」
「本当ですよ」
どこか威圧感のあるインテリヤクザの言葉に臆することなく反論した。
すると、インテリヤクザは小さくため息を吐いた。
「そうか、それは迷惑をかけたな、申し訳ない」
インテリヤクザは信用してくれた様子を見せると、わずかに頭を下げた。
「いや、一条の方が怖い思いをしたと思うので」
「あぁ、あとはあの子から全部聞かせてもらう、ではこれで・・・・・・」
そうして、インテリヤクザさんは相変わらず警官を無視して黒塗りの車に乗車した。
そして、トンネルを去って行ってしまった。
なんともあっけない別れに俺と警察官は顔を見合わせた。
「なんだか、説教する暇もなかったですね」
「そ、そうだね・・・・・・とりあえず岳弥君も送ってくから乗っていってよ」
「いや、でも俺、自転車で来てますので」
「すぐに回収するから、ほらっ、乗って」
そうして、俺は警官のパトカーに乗り込み、トンネルの傍に置いてある自転車を回収した後。
パトカーで家まで送ってもらうことになった。
その帰り道、警官がどこか控えめに話しかけてきた。
「そ、それで岳弥君、最近の夜釣りの成果はどうかな?」
「えーっと、それはどっちの意味ですか?」
「も、もちろん例の件だよ」
「・・・・・・そうですね、やはり、精神病棟の付近で妙な動きがみられます」
「それって、やっぱり」
「はい、さっきの捕まった男も言ってましたけど、やはりあのトンネルには何かがいます。夜なよな、精神病棟の方へ向かっては、患者をたぶらかしている様子ですね」
「じゃあ、ここ最近多発してる脱走事件は偶然じゃないって事かい?」
「それは警察判断で・・・・・・ただ」
「ただ、なんだい?」
「何が怖いって、おそらく、それを誘導している奴らがいるって事です」
「さっき、トンネルの傍にいた黒塗りの車だね」
「はい、定期的に車種を変えているようですが、繰り返し精神病棟とトンネルを往復しているのを何度も確認しています、おそらく確信犯です」
「とはいっても、それを検挙することはできないしねぇ」
「職務質問したことあるんですか?」
「あるよ、めちゃくちゃ怖かったけどね」
「どうでした?」
「ほとんどが、男二人で心霊スポット巡りとか何とか言って誤魔化すだけ、もちろん車には二人以外乗っていない、トランクにもね」
「そうですか、じゃあ本当に幽霊の仕業かもしれませんね」
「ほ、本当かい?」
「確証はありませんけど」
「そうかい、でも、どうしてこんな事をするんだろうね」
「これは父親が言っていた話なんですが、都合の良い飛び道具が欲しいそうです」
「飛び道具?」
「はい、精神的に疾患を持った人物は、健常な人よりも洗脳しやすいそうです、そしてそれを特定の組織や、人物に危害を加える時に利用するそうですよ」
「あ、あれかい、神の声が頭に聞こえてきたって奴かい?」
「今回の一件はずいぶんと古臭い手法ですが、だからこそ効果は抜群みたいですね」
「・・・・・・そうかい、しかし悪いね、高校生にこんな事を頼むなんて」
「それが一番の恐怖ですよ、俺だってこんな事したくありません」
「でも、仕方ないじゃないか岳弥君、人間が一番怖いはずなのに、それをたぶらかす《未知なる存在》》がいるなんて、本当に恐怖でしかないよ」
「いやぁ、でもあの幽霊は綺麗な女の人ですよ」
「え、本当かいっ」
警官は運転中にもかかわらずよそ見しながら俺の顔を凝視してきた。
俺の顔を見たって見える様にはならないだろうに・・・・・・
「まぁ、そうでもないとホイホイとついてきませんよ、血みどろの女についていきたいですか?」
「そ、それはそうだね・・・・・・」
「個人的には、警察官がこんな事を真剣に頼み込んでくることに恐怖してますよ」
「そ、そういわないでよ岳弥君、この件が収まるようにしてくれないと、交番勤務としてはつらいんだよぉ」
「まぁ、何とかなるように頑張ってみます・・・・・・あ、ちなみに、後部座席にトンネルの美人幽霊が」
「うわぁーーーっ!!」
警官は突如として叫び出すと、急ハンドルを切って交差点にある電信棒にぶつかる直前で停止した。
「だ、大丈夫ですか?」
「た、岳弥君、本当に後ろにいるの?」
「じょ、冗談ですよ」
「もぉ~、やめてくれよぉ~」
「あ、あはは、すみません」
今回の一軒、人間の狂気か、はたまた零の仕業か。
そんなものは圧倒的に人間の狂気の方が多い。
だが、日常に潜む狂気は時として未知なる存在によって、引きこされる事もある。
そして、俺が今日一番恐怖を感じたのは、人を下手に驚かすのは絶対にだめだという事だった。
二台目のパトカーがトンネル内へと到着した。
そして、狂人はそこに乗せられて、トンネルから姿を消していった。
パトカーに乗せられる間も、狂人は【女の霊】という言葉を、のどがつぶれるほどに連呼していた。
そして、その様子に一条は俺の背中で震えながら隠れ続けていた。
言い方は悪いかもしれないが、これで一条も心霊スポット巡りなんかをする気はなくなるだろう。
少し刺激が強すぎただろうが、良い薬になるはずだ。
そうして、俺達は警官付き添いのもと、帰宅しようとしていると、前方から黒塗りの車がやってきた。
それは、ここに来た時に見た車種とは違い、ナンバープレートも違うものだった。
「はぁ、また心霊スポット巡りか、本当いい迷惑だよなぁ」
そういいながら警官が黒塗りの車へと向かおうとしていると、黒塗りの車から一人の男が現れた。
その人は、綺麗なスーツを身にまとった長身の男性であり。
険しい顔をしながらツカツカと歩いてきていた。
その速度は速く、風を切る音が聞こえそうなほどの歩幅で警察官の横を通り過ぎた。
すると、その人は俺の目の前に立ちはだかった。
威圧感のある背丈、鋭い目つき、俺を見下ろすことでずり下がった眼鏡を上げる仕草。
その様子に、俺は任侠ドラマに出てくるインテリヤクザを思い出した。
「さぁ、帰るぞマロン」
「え?」
困惑する状況の中、一条がようやく俺の背中から離れた。
そして、彼女はうつむきながらスーツの人の元へと向かっていった。
それにしてもマロンってなんだ?
「あ、おい、一条その人は?」
「大丈夫、迎えの人だから・・・・・・えへへ、見つかっちゃったみたい」
「見つかったって、お前」
「やっぱり夜遊びはだめだよね」
「え、あぁ、そうだけどその人は」
「楽しかったよ山藤君、またね」
一条は苦笑いしながらそんな事を言うと、俺に軽く手を振ってきた。
だが、それを遮るかのようにインテリヤクザが俺に話しかけてきた。
すると、一条が心配そうに俺の元へと駆け寄ろうとしたのだが、インテリヤクザさんが声を上げた。
「先に車に乗っていなさいっ!!」
トンネルに響く強い語気に、一条は臆した様子を見せた。
そして、トボトボと悲しそうな背中を見せながら黒塗りの車に乗車した。
そして、その間も俺から目を離すことのないインテリヤクザは口を開いた。
「君は?」
「・・・・・・山藤です、一条さんとは同じクラスで」
「君があの子をたぶらかしたのか?」
「いや、ここは危険だから帰る様に忠告しました、でも、一条は言う事を聞かなかったので、せめて付き添いだけでもと思いまして」
「本当に?」
「本当ですよ」
どこか威圧感のあるインテリヤクザの言葉に臆することなく反論した。
すると、インテリヤクザは小さくため息を吐いた。
「そうか、それは迷惑をかけたな、申し訳ない」
インテリヤクザは信用してくれた様子を見せると、わずかに頭を下げた。
「いや、一条の方が怖い思いをしたと思うので」
「あぁ、あとはあの子から全部聞かせてもらう、ではこれで・・・・・・」
そうして、インテリヤクザさんは相変わらず警官を無視して黒塗りの車に乗車した。
そして、トンネルを去って行ってしまった。
なんともあっけない別れに俺と警察官は顔を見合わせた。
「なんだか、説教する暇もなかったですね」
「そ、そうだね・・・・・・とりあえず岳弥君も送ってくから乗っていってよ」
「いや、でも俺、自転車で来てますので」
「すぐに回収するから、ほらっ、乗って」
そうして、俺は警官のパトカーに乗り込み、トンネルの傍に置いてある自転車を回収した後。
パトカーで家まで送ってもらうことになった。
その帰り道、警官がどこか控えめに話しかけてきた。
「そ、それで岳弥君、最近の夜釣りの成果はどうかな?」
「えーっと、それはどっちの意味ですか?」
「も、もちろん例の件だよ」
「・・・・・・そうですね、やはり、精神病棟の付近で妙な動きがみられます」
「それって、やっぱり」
「はい、さっきの捕まった男も言ってましたけど、やはりあのトンネルには何かがいます。夜なよな、精神病棟の方へ向かっては、患者をたぶらかしている様子ですね」
「じゃあ、ここ最近多発してる脱走事件は偶然じゃないって事かい?」
「それは警察判断で・・・・・・ただ」
「ただ、なんだい?」
「何が怖いって、おそらく、それを誘導している奴らがいるって事です」
「さっき、トンネルの傍にいた黒塗りの車だね」
「はい、定期的に車種を変えているようですが、繰り返し精神病棟とトンネルを往復しているのを何度も確認しています、おそらく確信犯です」
「とはいっても、それを検挙することはできないしねぇ」
「職務質問したことあるんですか?」
「あるよ、めちゃくちゃ怖かったけどね」
「どうでした?」
「ほとんどが、男二人で心霊スポット巡りとか何とか言って誤魔化すだけ、もちろん車には二人以外乗っていない、トランクにもね」
「そうですか、じゃあ本当に幽霊の仕業かもしれませんね」
「ほ、本当かい?」
「確証はありませんけど」
「そうかい、でも、どうしてこんな事をするんだろうね」
「これは父親が言っていた話なんですが、都合の良い飛び道具が欲しいそうです」
「飛び道具?」
「はい、精神的に疾患を持った人物は、健常な人よりも洗脳しやすいそうです、そしてそれを特定の組織や、人物に危害を加える時に利用するそうですよ」
「あ、あれかい、神の声が頭に聞こえてきたって奴かい?」
「今回の一件はずいぶんと古臭い手法ですが、だからこそ効果は抜群みたいですね」
「・・・・・・そうかい、しかし悪いね、高校生にこんな事を頼むなんて」
「それが一番の恐怖ですよ、俺だってこんな事したくありません」
「でも、仕方ないじゃないか岳弥君、人間が一番怖いはずなのに、それをたぶらかす《未知なる存在》》がいるなんて、本当に恐怖でしかないよ」
「いやぁ、でもあの幽霊は綺麗な女の人ですよ」
「え、本当かいっ」
警官は運転中にもかかわらずよそ見しながら俺の顔を凝視してきた。
俺の顔を見たって見える様にはならないだろうに・・・・・・
「まぁ、そうでもないとホイホイとついてきませんよ、血みどろの女についていきたいですか?」
「そ、それはそうだね・・・・・・」
「個人的には、警察官がこんな事を真剣に頼み込んでくることに恐怖してますよ」
「そ、そういわないでよ岳弥君、この件が収まるようにしてくれないと、交番勤務としてはつらいんだよぉ」
「まぁ、何とかなるように頑張ってみます・・・・・・あ、ちなみに、後部座席にトンネルの美人幽霊が」
「うわぁーーーっ!!」
警官は突如として叫び出すと、急ハンドルを切って交差点にある電信棒にぶつかる直前で停止した。
「だ、大丈夫ですか?」
「た、岳弥君、本当に後ろにいるの?」
「じょ、冗談ですよ」
「もぉ~、やめてくれよぉ~」
「あ、あはは、すみません」
今回の一軒、人間の狂気か、はたまた零の仕業か。
そんなものは圧倒的に人間の狂気の方が多い。
だが、日常に潜む狂気は時として未知なる存在によって、引きこされる事もある。
そして、俺が今日一番恐怖を感じたのは、人を下手に驚かすのは絶対にだめだという事だった。
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