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第二部 ドラゴンシティ

トレーニング初日

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翌朝も、一星はやってきて、昨日よりもぞんざいにリオを起こした。
「いったぁ……い……」
 布団から転がされ、少年は寝ぼけ眼で泣き言を言う。
「お前がちっとも起きないからだろうが。今晩からは大部屋だ。わざわざ誰も起こしちゃくれないから自力でなんとかしろよ。言っとくが遅刻は重罪だ。トレーニングに遅れたら、お前、ひどい目にあわされるぜ」
「やだっ」
「嫌なら、ちゃっちゃと準備しろ」
 支度をすませ、一星について廊下を歩く。今日用意されていたのは、青と白のストライプの上下で、それを着ると、いかにも囚人っぼい出で立ちになる。文句を言ったが、勿論スルーされてしまった。

 施設の中は、とても広く迷路みたいに複雑に入り組んでいて、リオには、どこをどう進んでいるのかわからない。
 だが、昨日沙蘭が薬を塗られていた、あの時の部屋に、いつの間にかたどり着いていた。
「じゃあな。トレーニングデビュー、頑張れよ」
 柄にもなく、まともな激励を残し、一星はリオを白衣の男に受け渡す。そして、来た方角へと去っていった。
 目の前に立つ男は、一星と違って穏やかで優しい目をしていて、リオはほっとした。
「初めてだから、今日は、皆が頑張っているのを間近で見学した後に、ちょっとしたトレーニングをしてみようね」
 わけもわからずリオは頷く。ここが、どんな施設で、何をトレーニングしているのか、その時はすっかり忘れてしまっていた。
 部屋の中には、何人もの少年達がいて、前後二列に並んでいた。今日は皆リオと同じ囚人服である。白衣の男達も数人いて、少年達を見守っている。
 沙蘭を探したが、見つけられない。だが、どの子も綺麗な顔だちをしている。一星や沙蘭のような特別美しい造形が横にいなければ、十分すぎるほどの美少年ばかりだ。
 彼らの前に、背の高い警察官のような服を身につけた男がいて、両手を後ろに組んで、何やら指示を与えている。
 リオはあっと小さな声をあげた。それは、京だったのだ。
「……では、トレーニングを始める。一列目、ベッドに横になるんだ」
 京は言い、彼らが従っている間に、やっとリオの方を見た。
「よう。リオ。どうだ。元気だったか」
「うん。元気だった。京ちゃんここの先生だったの?」
「ああ、本業はこっち。人さらいは副業だよ」
 リオはなんだか嬉しくなった。拉致された時は腹がたって、口なんてきくものかと思ったが、今では妙に京が懐かしい。元の世界で顔を合わせた、数少ない人物だからだろうか。
「しかし、初日が俺の授業だなんて、一星も底意地悪いよな。まあ、あいつらしいと言えばそうだが」
 京は、少し表情をこわばらせた。
「……?」
「まあ、仕方ない。そのうち、わかる事だ」
 まるで自分に言い聞かせるように呟いて、京はリオのそばを離れる。そして、
「準備しろ」
 白衣の男達に目配せをした。

 男達は、徐にベッドに近づくと、横たわる少年たちのシャツに手を伸ばした。上から順にボタンをはずしていく。ある者は全てを、そして、ある者は第二ボタンまでをはずし、それぞれのやり方で、少年の淡い乳首を露にしていった。
「京ちゃん、何……?」
 おろおろとリオは、男を見上げる。京はさっきと打って変わった厳しい顔で、繰り広げられる様を見守っている。そして口を開いた。
「今日は久しぶりに新入りがいる。だから、いつもより軽いトレーニングにしてやってるんだ。わかってるよな?」
 ベッドの上で、上半身をはだけられ、少年達は頷いた。
「じゃあ、いい声で啼いてみろ。新入りがその気になるように、良い手本を見せるんだぜ。制限時間は二十分。過ぎたら交代だ。弄られるのは胸だけだから、絶対漏らしちゃあ駄目だぜ。わかったな?」
 もう一度、少年達は頷く。
「それじゃあ、始めろ」 
 その声を皮切りに、白衣の男達は、一斉に少年達の乳首に唇を寄せた。
「両手をあげろ。そう。万歳するみたいに」
 京の指示に、少年達は、素直に従う。可憐ないくつもの果物の粒は、まるっきり無防備な状態になる。
「あっ……ああん……はっ……」
 一人が悶え、次いで数人が喘ぎ始めた。ただ、乳首を刺激されているだけなのに。
 信じられない光景に、咎めるように京を見る。
 京はリオの視線を避けるように、ただ前を見据えていた。

「一班終了。脱落者一人もなし。皆よく頑張ったな。二班準備、できるだけ早くするんだ」
 リオが目を丸くしている間に、トレーニングは終わり、少年たちははだけられたボタンを留め、ベッドから降りる。
 次いで後続の少年たちがベッドに上がり、さっきと同じように、白衣の男達が傍に群がった。
「京ちゃん……」
 信じられない思いで、リオは男の広い背中を見る。聞こえてないのか、それとも聞こえない振りをしているのか、京はまっすぐ前を向いたまま微動だにしない。そういえば初めて会ったときも、彼はリオの乳首や性器をもて遊び、毛布の中でさんざんいたずらをしかけてきた。だけど、それはモニターの向こうにいるたくさんの男たちを欺くためであり、決して本意ではなかったはずだ。
「用意はいいか。では、はじめ」
 掛け声と共に、また乳首へのトレーニングが始まった。耐えられなくて、リオはぎゅっと目を瞑る。制限時間は二十分。微かな時計の音に意識を集中し、その時間をやりすごそうと決めたのだ。だが淫媚な呻きが部屋を少しずつ浸食しはじめると、電子音など、あっと言う間にかき消される。その中に混じる、一際悩ましい喘ぎ声に気づき、リオははっとして目を開けた。
「あ……ああ……はっ……」
 可愛らしい顔にそぐわない、少し掠れ気味のハスキーボイス。
 少年はざっとあたりを見回した。
 いた。京の斜め前のベッドの上で、大きな目に涙を浮かべ、うわ言のような喘ぎを繰り返している。
 沙蘭。昨日の天女だ。

 瞬間、心臓が、あり得ないくらいに跳ね上がる。

 沙蘭は、形のいい眉をひそめ、男が乳首の先を指でいじる度に、悩ましい声で快感を訴える。
「せんせ……ああ……はっ……」
「乳首なんかでエレクトしちゃあ、駄目だよ。君は選ばれた子供なんだから。わかってるよね」
「んんっ……」
「そう。いい子だ。君は本当に我慢強い」
 他の少年達と同じように、沙蘭も両手を万歳の形に固定したまま、ぎゅっと唇を噛んで耐えている。長い指が、せわしなく全てのボタンをはずし、男は大きく前立てを開いた。
 狭い撫で肩を露にし、白い素肌を優しく撫でながら、桃色の乳首に舌を這わせる。
「んん……はっ……せんせい……」
「いいのかい?」
「ん……」
 鼻にかかったような声をあげながら、沙蘭はそっと首を左右に振った。
「嘘つきだね。気持よくないのなら、どうしてそんな厭らしい声で啼いているのかな?」
「あ……先生……」
「甘い、綺麗な乳首だ。何度舐めても清純なままだ」
 それは、トレーニングというよりも、本気で攻めているようで、沙蘭の小さな乳首は、男の唾液でてらてらと濡れはじめる。食い入るようにその様を眺めながら、リオはごくりと唾液を飲んだ。
「沙蘭が気になるんだね」
 隣に立つ男が断定的に言った。
「えっと……」
「隠さなくていい。皆そうだ。あの子には心を奪われる」
 白い肌に真珠のような汗の玉が幾つも浮かび上がり、コロコロと肌の上をころがっていく。
「あんなに感じやすいのに、彼はとても優秀なんだよ。達くなと言われたら必死で我慢しようとする。他の子たちも一応の努力はするが、三回に一度は失敗するんだ。ほら、手前の子を見てごらん」
 看護士の指し示す方角には、短髪の少年が横たわっていて、おおきく体をのけぞらせていた。
「ああ……っ……ああ……」
 びくびくと体を震わせた後、少年は白衣の男に胸を与えたまま腰を浮かせた。盛り上がった下ばきにじっとりとした染みが広がっていく。男は、ゴムに手を入れて、中のものを片手で握りこんだ。
「シーツを汚すと、後が面倒だからね。でも、ああ、駄目だね。意外と量が多そうだ」
 看護士の言うとおり、下ばきの染みは広がっていく。
「退場」
 京の一声で、白衣の男は少年の胸から顔を上げた。解放された少年はのろのろと立ち上がり、男に連れられ部屋を出ていく。
「ああ、彼は今から追加レッスンだよ。かわいそうに」
 男は解説した。
「胸なんかであんなに感じて、おかしいと思うかい? ここにいるのは皆セックスのスペシャリストだからね。そこいらの人間とはテクニックが違う」
 そしてもう一度沙蘭に視線を移し
「ほら……ご覧。あんなによがってるのにちっともあそこを立ててない。あの子は本当に特別だ。生まれついてのセックスドールだよ」
「ん……んんっ……んんっ……」
 見れば、沙蘭は相手の男と激しいキスを交わしていた。品のいい小さな唇が、男の舌にこじ開けられゆがんでいる。男の指は乳首をこね、かろうじてトレーニングの形式を保ってはいるものの、実際にはこのスキンシップに夢中になっているように見える。
「あっ……」
 次に目にした光景に、リオは小さな驚きの声をあげた。沙蘭を口づけで攻めながら、そろそろと男の右手が下腹へと下りて行く。そして薄い囚人服の上から性器の形をなぞるように撫で始めた。
「ねっ……あの人、ほら、あそこ」
 リオは、隣の男の袖を引く。
「ああ、トレーニング中、どんな形になってるか確かめるのは許されてるんだよ。いたずらに刺激するのは許されてないけどね。今は乳首の開発中だから」
 男は言った。リオば、行為に注視する。どう考えてもあの手の動きは確認のためだけじゃない。
「あ……んんっ……はっ……んっ……」 
 新しく加えられた挑発に、沙蘭はまたも悩ましい声をあげてしまうが、どこまでも追ってくる、男の唇が、途中でそれをかき消してしまう。
「んっ……んんっ……」
 両足をもじもじとすり合わせ、それでも両手は頭の上にあげたまま、沙蘭は必死で押し寄せる快感に耐えている。もう。駄目だ。やっぱり目が離せない。
 リオの股間が、ずくりと疼いた。
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