美少年異世界BLファンタジー 籠の中の天使たち

キリノ

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第二部 ドラゴンシティ

再び大部屋で

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 ちろちろと舌先を動かされ、身を引こうとすると
「約束しただろ」
 冷たい声でとどめられ、リオは、目を瞑って、刺激に耐えた。まだ未成熟な乳首は、しかし愛撫には慣れていて、舌の触れる部分から、じんわりとした快感が広がっていく。
 「あっ……ああん……はあっ」
 光の生暖かい舌が、胸の飾りを転がすように愛撫する。
「乳首だけで感じるんだな」
 感嘆の声に、羞恥心は倍増して、リオは身を引き逃れようとした。
「駄目だよ。じっとして」
「でも、」
 涙の溜まった目でやめてほしいと訴えるリオを、光は軽くいなし、
「リオの乳首は、煙草の匂いがする。キム先生は吸わないから、きっと京さんの匂いだよな。もう、染みついてんのかな?」
 微妙な表情を浮かべた。
「京ちゃんとは、ずっと会ってなかったもん……」
悶えながら、リオは被りを振る。そう。昨日の授業が久々の接触だった。
いつも笑みをたたえた、優しげな瞳。だけどいつからか彼は変わってしまった。
 うっすらとした無精髭と、少しこけた頬。人相までもが、数ヶ月前の彼とは大きく変化している。たとえ正気に戻ったとしても、一度植えつけられた警戒心は解けそうにもない。以前のように甘えていく気分にはなれない気がした。
「俺の気持わかってるよな。お前を抱きたいよ」
 抱かれながら他の男について考える行為を咎めるように、光はまっすぐにリオを見つめ、静かに告げた。
「光……」
「自分が蒔いた種だってわかってる。だけどお前が別室に行ってしまうなんて、凄く嫌だ」
「…………」
「だから、せめて、今だけ、一緒にいられる今だけは、な」
 してもいいか、と言われて、思わずリオはこくんと頷いた。
「リオは、俺の事、どう思ってる?ちょっとは好き?」
 不安げな声に、リオは、胸の奥を探ってみる。
 勿論、光の事は大好きだ。だが、その感情には友情以上のものは含まれていない。
「俺、沙蘭が好きなんだ。ふられちゃったけど、いつか、凄くいい男になって、沙蘭に恋人として認めてもらうんだ」
 正直にリオは告げた。
「あいつは人殺しだよ」
「そんな事、ない。沙蘭がそんな事するわけ、ないもん」
「お前にあいつの何がわかるんだよ」
 吐き捨てるように言った後、
「リオ、俺のズボンを少し下ろして。そこに自分のそれを押し付けて擦ってくれないか」
 光はとんでもない要求を突きつけた。
「なっ」
 身を引こうとすると、
「俺、石像にずっと繋がれてて、身体が疼いてたまらないんだ。お前のでそこを刺激してもらえたら、少しは収まるような気がするんだ」
 甘えるように続けられる。
 石像に貫かれて、それでもリオを安心させるように笑ってくれた、光の姿を思い浮かべて、壮絶な罪悪感が蘇ってきた。
 何もかも自分のせいだった。
 おずおずと縞のズボンのゴムに手をかけて、太もものあたりまで下ろしてみる。
 もう大人とほとんど変らない、たくましい光のものが、だらりと顔を出した。
「さあ、もっとこっちへ来て、リオのを、ここに、ぴったり擦り付けるんだ。俺は、今は全然動けないから、自分で、来て。早く。皆が起きないうちに」
 促され、身体を心持ち下へとずらし、下半身を密着させる。
 いきなりきつく身体を抱き寄せられ、二つの性器が、重なりあった。
「気持ちがいいよ。まるでゴムの玩具を挟んでるみたいだ」
 うっとりと、光は呟いた。 壁の時計に目をやると、ちょうど4時半をまわったところだった。
 起床の時間が迫っている。
「お兄ちゃん、もう、やめてもいい?」
 淫らに、腰を動かしながら、リオは尋ねた。
「続けるんだ。リオ。今やめられたら、俺、おかしくなってしまうよ」
「だって、もうすぐチャイムが……」
「皆に見てもらえばいい」
 きっぱりと光は言い捨てた。
「なっ」
「お前が、淫らに腰を動かして、感じている様をな」
 逃げようとしたリオより一瞬早く、長い腕が、拘束を強める。
 暴れるリオに、耳もとで
「御願いだ。リオ。助けてくれよ。俺、もうこんなになってんだよ」
 吐息と共に流される言葉。
 手を取られ、強引に男根を握りこまされる。
 犯す元気はない、と言っておきながら、光のそれは、あと一息で挿入できる程度に固くなっていた。
 しくしくとリオは泣き始める。
「大丈夫だよ。今日は酷い事は何もしない。御願いだから、達かせて。もうちょっとなんだ」
 甘えるように懇願されると、拒めない。
 泣きながら、リオは再び腰を動かし始めた。
 自身の先端からも、甘い汁が滲み出し、光のと混じりあって、形の違う二つの茎をまんべんなく濡らしていく。
「ああ、リオ、いいよ。もっと……」
 うわごとのように繰り返される喘ぎ声を聞きながら、リオは段々行為に夢中になってきた。
「ひやっ」
 いきなり尻に冷たい感覚を覚えて、悲鳴を上げる。
 振り向くと、同室の少年が、憑かれたような表情で、リオの尻を覗き込んでいた。
 手早く衣服を下ろし、両手でそっとアヌスを開かれる。
 窓の外は、十分に明るい。起床までは後数分だった。
「お兄ちゃん、もっ……やめてっ……離してっ」
 今度こそ本気で上げた悲鳴は、重ねられた唇に呑み込まれた。
 たっぷりと唾液を流し込まれ、荒い息をついている間にも、後ろの少年は、無言でじっくりとリオの一番恥ずかしい部分を検分している。
「お兄ちゃん……」
 唇の開放と同時に、もう一人の少年に呼びかける。
「ここが、開いて、赤くなってる」
 少年が言うと、光は
「さっきから、乳首をいじってやってるからな。無意識に欲しくなってるんだろう」
 と落ち着いた口調で教えた。
「俺は、ダメージが抜けなくて、リオを喜ばせてやれないんだ。俺のかわりに、気持ちよくさせてあげてくれる?」
 とんでもない提案に、少年は即座に頭を縦に振る。
「やだっ」
 これ以上は我慢できない。
 リオは全身を使って暴れ始めた。
 どこにそんな力が残っていたのだろうか。光は、リオを難なく拘束すると、自分の身体の上に乗せてしまった。
 もう一人の少年に、今度は正面から下腹を晒すようになる。
 光は、あの恐ろしい石像に、バージンを与えたばかりなのだ。
 それを思うと、これ以上、全力での抵抗は躊躇われ、リオは、光の身体の上で、
「見ないで……お兄ちゃん」
 震えながら一人の少年に訴えた。
「お尻のところに、俺を挟んで。さっきみたいに、気持ちよく擦って」
 光は、どうかしてしまったのだろうか。
 少年が見ているというのに、まだそんな事を言う。
「やだ……御願い……もう、やめて……光」
 情けない涙声にも、光は怯まなかった。
「さあ、早く。もうすぐ看護士が来るき
 それでも動かないリオに、業を煮やしたのか、もう一人の少年が、尻の後ろに手を入れて、狭間の部分に、丁度光の性器が挟み込まれるように調節した。
 濡れて半立ちになった男根が、蕾に当たる。
「ああ、リオのここは、小さくって、本当に可愛いよ。今は無理だけど、この中に、いつか俺のを淹れて、何回も出し入れして、気もちよくさせてやりたいよ」
 リオの下で、今度は自分が腰を動かしながら、光は喘ぐように言った。
 光の先端から滲み出る精液で、蕾の入り口がびちゃびちゃと卑猥な音をたてる。
「あっ……ああっ……お兄ちゃん、やあっ……」
後腔に与えられる刺激と、見られることへの羞恥心が、リオの全身をピンク色に染めた。
「立ってるのに、こんなに小さいんだ。可愛いな」
 もう一人の少年が、リオの性器をちょんとつまむと、笑った。
「意地悪っ」
 光の身体の上で、リオは、叫んだ。
 腰をリズミカルに動かしながら、光も
「そうだよ、リオは可愛いんだ。どこもかしこも。食べてしまいたいくらいに」
 と言った。
 たまらなく恥ずかしいけれど、だんだんと後ろの蕾が開いていく感覚がある。擦られているだけでは物足りない。
 もっと、自分も気持ちよくなりたくて、リオは、そっと腰を振った。
「ああ、リオ、俺、もう我慢できないよ」
 正面にいた少年が、そう言うと、舌を出して、リオの唇に、自身のそれを近づけてきた。
 口を開けて受け入れる。
 滑った舌は、口腔を這い回り、唇の端や鼻の頭を舐めまわしていく。
 少年にしては大人びた、性的な口付けだった。
 右手が、リオのそそりたった性器をやんわりと包み込む。
 舌の挿入にあわせるように、上下に、それを扱かれて、リオは、頭の中が真っ白になった。
 リオが開放されたのは、起床時間の直前だった。
 下腹を攻めていた少年は、優しい言葉であやしながら、たっぷりと精を吐き出させ、どこからか持ってきたタオルで身体を拭く。いつかの夜みたいに、リオは少年達に取り囲まれていた。
「ここにいるの見つかったら、またやばい事になる。一人で帰れる?」
 布団に横臥したまま、光は弱々しく尋ねた。リオはこくりと頷き、立ち上がる。
「沙蘭に気を許すなよ」
 ドアを開けようとした時、かけられた鋭い声に、リオは足を止め振り向いた。
 反論しようと口を開くが、予想外に厳しい表情に気押されて、
「光、ほんとにごめんね。また来るから」
 あえて話題をそらし、リオはばいばい、と手を振って見せた。
 少年の目が穏やかに細められる。リオはそっとドアを閉めた。

 はあはあと、息をきらして戻ってみれば、沙蘭はすでに起きていた。布団を片づけ、手鏡に自分の顔を映しながら、さらりとした髪の毛を丁寧に梳っている。
「どこ行ってたの……って、大部屋か、京さんのとこだよね」
 ちらりとリオを振り返り、そしてまた沙蘭は視線を鏡に戻した。
「大部屋だよ。光の様子見てきた……ゆうべ、ちょっと心配な事があったから」
 京に会いに行ったと勘違いされるのは心外で、リオは大部屋、という単語を強調した。
「石像に繋がれたんでしょ? 彼、どうだった?」
 事情は一星から聞いたのだろう。あっさりと尋ねられ、
「すごく疲れてたみたいだけど……思ったほどじゃなかった」
 正直に、リオは答えた。
「あれは、翌日はきついけど、すぐ慣れるから」
 沙蘭はどこからか用意していたピンを口にくわえ、前髪を横分けにして斜めに止めた。
「可愛い……」
 小さな櫛の鋸形の隙間から、赤茶の髪がさらさらとこぼれ、その美しさと、女の子みたいに前髪を上げた額の愛らしさに、リオは思わずため息をつく。
「変な子。君の方がよっぽど可愛いのに。そんな事言うのって、ここじゃあ、君くらいだよ」
 昨日口説いたときと同じように、沙蘭はくすくすと笑い始める。リオは畳の上に膝をつき、ずりながら鈴を転がしたように笑い続ける少年の傍らへと距離を縮めた。
「ねえ、俺、やっぱり沙蘭の事、すっごく好き。だからキス……しちゃっていい?」
 二対の宝石のような目を覗き込み、リオは尋ねた。
 口走った後で、きょとんとこちらを見ている沙蘭の表情に気がつき、真っ赤になる。
「えっと、あの、俺、」
 数時間前にふられたばかりで、もっと時間をかけて口説くつもりが、つい本能のままに動いてしまった。
「って、もういいや」
 赤面したまま、リオは沙蘭を押し倒す。下になって、自分を見上げている沙蘭の顔は、剥き出しになったおでこの面積を含めてさえ、握り拳ほどに小さい。
 その小さな顔に、絶妙なバランスで配置されている大きな目が、精一杯見開かれている。そして、半開きになった小さな唇から、欲情を誘うような赤い舌が、ちらりとのぞいている。
「沙蘭!」
 込み上げる思いに突き動かされ、リオは、沙蘭の唇に自身のそれを近づけていった。
 抵抗はほとんどなく、華奢な少年の身体から、むせるような花の匂いが香り立つ。甘く怪しいその香りが、リオの頭の中を侵食し、かき回し始めた。
「沙蘭……」
 囁きに、沙蘭は目を閉じる。
 だが、唇が触れ合う、直前に、
「おい、もう起きてるか?」
 邪魔者の声が、かつて経験した事のない緊張に、幕を引いた。 

「リオ、お前、何やってんだ」
 細いつりあがり気味の眉が、不信げに潜められる。
「一星」
 この上なくしらけた様子で呼びながら、リオはのろのろと身体を起こした。
 
 ※ ※ ※ ※ ※ ※

「隔離したはずのお前が、逆に沙蘭を襲ってどうすんだ。第一役不足だろ? 俺は呆れてものも言えないぜ」
「役不足だなんて、誰が決めるんだよ……」
 ぶつぶつと反論しながら、リオは一星の向こう側にいる、沙蘭の様子をうかがった。
 さっき、受け入れかけていたのが嘘みたいな、変ぜんとした表情。人の感情を読み取るのは苦手だが、そんなリオにも、一つだけわかっている事がある。沙蘭は、この絶妙なタイミングのお邪魔虫を、リオほどには迷惑がってはいない。
「お前、沙蘭が好きなのか?」
 無粋な男は、無神経にも、本人の前で、そう尋ねた。
 一瞬うろたえるが、所詮相手に気持はばれている。リオは馬鹿にされるのを覚悟で大きく頷いた。しかし、一星は笑わなかった。
「変な組み合わせだが……まあ、お前達が仲良くするのは、悪くない……いや、それが一番いいのかもしれない……」
 何かを確かめるように呟きながら、一星は二人の顔を交合に見た。
「よし、今日はトレーニングに出なくていいぜ。ここで一日親睦を深めろ」
「親睦?!」
 リオの心臓は飛び上がった。
「ああ、言ったろ? 毒をもって毒を制す、だ。お前らがくっつくのが、施設の平和と秩序を保つには一番いいのかもしれないしな」
「でも……」
 リオは沙蘭をちらりと見た。女神のような少年はやれやれという風に肩をすくめている。
「いいか。リオ。こいつを落としたいなら本気で口説けよ。こいつは一筋縄ではいかないからな」
 冗談とも本気ともつかぬ顔で一星は言い、リオの肩を両手で掴んだ。
「うん」
 思いがけぬエールに、リオは頷く。
「じゃあな、検討を祈る」
 一星は言うと、するりと踵を返し、出ていった。どこかで、同じ台詞をかけられた事があったと思いつき、オークションが記憶の底から蘇る。
 そういえば、ここは元いた場所とはまるで次元の違う世界なのだ。その事実よりも、そんな重大な事をすっかり忘れてしまっていた自分自身に怖けずく。
 しかし、今はそれどころじゃない。
「えっと、って言う事だから、あの、さっきの続き……」
 リオはもじもじと言い募った。
「あんな風に煽られて、君は素直に従うつもり? 言っとくけど、もう僕にその気はないよ。トレーニングに出なくていいのはお互いラッキーだけど明日からはまたきっといつも通りだから身体を休めておかなくちゃ」
「え……?」
 沙蘭は冷たくそう言うとちゃぶ台の上に肘をついて座った。
「君も座れば」
 ちょいと指で誘われて、リオはうちひしがれた気持のまま正座する。
「じゃあ親睦深めようか?」
 いたずらっぽい目が沈んだリオの顔を覗き込んだ。
「え?」
 リオはぱちばちと瞳をまたたかせる。
「ずっと一人ぽっちで退屈してたんだ。話し相手が出来てよかった。今からお互いの事を話してみようよ。覚えている事だけでいいから。どうやってここに来たのか。ここでどんな事があったのか。まあ、君のここでの生活はなんとなく僕もわかってるけど」
「教えてくれるの? 知りたい! 話して沙蘭」
 リオは身を乗り出し、
「あのね」
 沙蘭は語り始めた。

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