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11話「練習開始」1/3
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あくびをしながら森くんが下駄箱の前に立った。
「おはよう! 森くん」
元気よく挨拶するオレを、森くんはきょとんとした顔をする。
「今日の放課後、スポーツ大会の種目のバスケの練習するから。帰らず参加よろしく!」
一瞬にして森くんのネコ目が攻撃的になる。
「やだ」
上履きに履き終えた森くんはそう一言いい残してオレを横切っていく。
直後、ひらりと何かカードのようなものが落ちた。拾うと、
「・・・安藤接骨院?」
診察券・・・かな?
パシッと森くんがそれを奪い、鋭く睨む。
何も言わず背を向けて去っていく森くんに、オレは負けずに笑顔で、
「中庭で待ってるからよろしくー!」
わざとらしく手まで振ってみる。
ポンッと肩に男の手が置かれ、
「ちーす、立川。朝からよくやんね。いくらなんでもお人好し過ぎない?」
「夏木」
振り返ると夏木が涙を拭うフリをしていた。
「机を投げつけられたのに懲りずにバスケに誘うし、本人無視してバスケに名前記入しちゃうし、放課後練習が始まっても参加しない金髪ヤンキーに健気に声かけるわ。もー俺見てらんない」
「語弊がある! また変な噂が広まるからやめろよ。だいたい、オレが好きで誘ってるだけだし」
最後の方は声が小さくなってゴニョゴニョになってしまった。
「まぁ、あきらめが肝心てね。クラスのみんな、金髪ヤンキーが素直に参加するなんてこれっぽっちも期待してないから。あんま無茶するなよ」
「そんなこと言うなよ」
「俺は立川の身を案じてんの。ある日突然行方不明になって金属バットでボッコボッコにされた立川が発見ーなんてことになったら!」
「語弊! 夏木楽しんでるだろ」
「いや~、マジで心配してんの!」
ケラケラ笑いながら夏木が先を行く。
森くんにはラインでもしつこいくらい誘いまくった。(既読スルーされたけど)
練習が始まって、6月に入った頃に森くんが登校するようになってからは、毎日練習に誘うのが日課になりかけている今日この頃。
指で数えると、スポーツ大会まであと2週間だ。
ため息が自然とこぼれる。
あきらめないと決めたけど、正直きつい。
推しに睨まれる毎日。最悪だ。
どう考えても嫌われた。
ボロボロのメンタルを引きずって歩き出すと、大人しそうな声に挨拶され振り返る。
「小倉さん、おはよう」
「立川くん・・・その、大丈夫?」
心配そうに見つめてくる小倉さん。
笑顔を貼り付けて、
「森くんのこと? 大丈夫だよ。まだ2週間あるし、声かけてたらきっと来てくれるよ」
多分。と心の中でつぶやく。
「でも・・・立川くんの気持ちもわかるけど、ここは声をかけるのを少しお休みしてみたらどうかな。押しつけすぎちゃってるかもしれない。森くんも意固地になってるかも」
「オレ、やめないよ? 森くんが練習に来るまであきらめない。心配してくれてありがとう、小倉さん」
ニコッと笑って、小倉さんに背を向ける。
良心がズキズキと痛む。
ちょっと前のオレだったら、「そうだね」て言って、小倉さんの言うことに合わせてた。絶対。
今だって、そうした方が楽だ。森くんにも嫌われない。
でもまた、後悔する。周りに合わせる自分に。
知ってる奴がいないこの高校にしたのは、自分らしくいたいからだ。
オレは変わる。
森くんも好きなバスケから逃げてほしくない。お節介と言われようが、嫌われようが、あきらめない。(嫌われるのはちょっと・・・)
タツ兄が言った『誰かが手伝えばいい』という言葉を思い出し、左胸に拳を押しつける。
「おはよう! 森くん」
元気よく挨拶するオレを、森くんはきょとんとした顔をする。
「今日の放課後、スポーツ大会の種目のバスケの練習するから。帰らず参加よろしく!」
一瞬にして森くんのネコ目が攻撃的になる。
「やだ」
上履きに履き終えた森くんはそう一言いい残してオレを横切っていく。
直後、ひらりと何かカードのようなものが落ちた。拾うと、
「・・・安藤接骨院?」
診察券・・・かな?
パシッと森くんがそれを奪い、鋭く睨む。
何も言わず背を向けて去っていく森くんに、オレは負けずに笑顔で、
「中庭で待ってるからよろしくー!」
わざとらしく手まで振ってみる。
ポンッと肩に男の手が置かれ、
「ちーす、立川。朝からよくやんね。いくらなんでもお人好し過ぎない?」
「夏木」
振り返ると夏木が涙を拭うフリをしていた。
「机を投げつけられたのに懲りずにバスケに誘うし、本人無視してバスケに名前記入しちゃうし、放課後練習が始まっても参加しない金髪ヤンキーに健気に声かけるわ。もー俺見てらんない」
「語弊がある! また変な噂が広まるからやめろよ。だいたい、オレが好きで誘ってるだけだし」
最後の方は声が小さくなってゴニョゴニョになってしまった。
「まぁ、あきらめが肝心てね。クラスのみんな、金髪ヤンキーが素直に参加するなんてこれっぽっちも期待してないから。あんま無茶するなよ」
「そんなこと言うなよ」
「俺は立川の身を案じてんの。ある日突然行方不明になって金属バットでボッコボッコにされた立川が発見ーなんてことになったら!」
「語弊! 夏木楽しんでるだろ」
「いや~、マジで心配してんの!」
ケラケラ笑いながら夏木が先を行く。
森くんにはラインでもしつこいくらい誘いまくった。(既読スルーされたけど)
練習が始まって、6月に入った頃に森くんが登校するようになってからは、毎日練習に誘うのが日課になりかけている今日この頃。
指で数えると、スポーツ大会まであと2週間だ。
ため息が自然とこぼれる。
あきらめないと決めたけど、正直きつい。
推しに睨まれる毎日。最悪だ。
どう考えても嫌われた。
ボロボロのメンタルを引きずって歩き出すと、大人しそうな声に挨拶され振り返る。
「小倉さん、おはよう」
「立川くん・・・その、大丈夫?」
心配そうに見つめてくる小倉さん。
笑顔を貼り付けて、
「森くんのこと? 大丈夫だよ。まだ2週間あるし、声かけてたらきっと来てくれるよ」
多分。と心の中でつぶやく。
「でも・・・立川くんの気持ちもわかるけど、ここは声をかけるのを少しお休みしてみたらどうかな。押しつけすぎちゃってるかもしれない。森くんも意固地になってるかも」
「オレ、やめないよ? 森くんが練習に来るまであきらめない。心配してくれてありがとう、小倉さん」
ニコッと笑って、小倉さんに背を向ける。
良心がズキズキと痛む。
ちょっと前のオレだったら、「そうだね」て言って、小倉さんの言うことに合わせてた。絶対。
今だって、そうした方が楽だ。森くんにも嫌われない。
でもまた、後悔する。周りに合わせる自分に。
知ってる奴がいないこの高校にしたのは、自分らしくいたいからだ。
オレは変わる。
森くんも好きなバスケから逃げてほしくない。お節介と言われようが、嫌われようが、あきらめない。(嫌われるのはちょっと・・・)
タツ兄が言った『誰かが手伝えばいい』という言葉を思い出し、左胸に拳を押しつける。
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