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傷跡の笑顔
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人目を避けるように薄暗い道を歩きながら、マーリャの胸には疑心ばかりがあった。
身体に奇妙な鱗が現れたのはジョサイアからハーフエルフではないかと疑いを掛けられた、あの日からだ。前日に蒸し風呂を使った時には肌に異常などなかった。
ジョサイアは常に神父の祭服を着ていて、私服ですら全く肌を見せない。彼が保菌者であった可能性はゼロではないのだ。
マーリャよりも身近に接していた中年の神父やソレルがごく普通に過ごせていた以上、勘違いと一蹴すべきである。だが、この病がエルフにしか伝染しないものであれば話が変わってくる。
持病が人間(ヒューマン)に感染しないと見越して人間の村に住みだしたのに、例外がいたとしたら気にしないではいられない。
予兆のようなものを感じ取り、ジョサイアはマーリャの出自を尋ねてきたのではないか。この病にかかることこそが、マーリャが拾い子である証明になる。
そう。全て、たった一人がもたらした不幸ならーー。
「……なんて。悪いんは全部、人のせいか」
思考が一定のまとまりを示した瞬間、マーリャは卑屈な薄笑いを浮かべた。
一度不安に駆られると何もかも悪い風にとらえがちだ。憶測に憶測を積み重ねて、それらしい想像で自分を守ろうとしてしまう。
これから縋(すが)ろうとする相手にさえトゲを向けてどうするのかと、自己を軽蔑した。
しかし発症してから混乱を極めていた頭の中が片付けられ、少しだけ落ち着いたのも確かだった。
教会の扉には鍵が掛かっていなかった。力を込めて扉を押し開けば、内にいた者が重たげな開閉音に振り返る。
「カーバンクル。どうしたんだい? 祈りの時間にしては遅いけれど」
聞き取りやすい声は聖堂の奥から聞こえてきた。少ないロウソクの明かりがジョサイアを照らしている。祭壇を磨いていたらしく、うっすら汚れた布を手にしていた。中年の神父は既に眠っているのか、その場にはいない。
時間外の掃除をこなすための地味な私服姿だというのに、陽光を受けていないステンドグラスを背にした彼は室内の暗さも相まって怪しげな雰囲気をかもし出していた。
編まずに高く結んだだけの金髪も黒子(ほくろ)一つない肌も白っぽく、作り物の象牙のように見えるのだ。
「……病気なんかもしれん。他に行くとこもないき、来たと」
全幅の信頼を寄せるのは危険かもしれない。警戒心を隠しきれないまま、マーリャは絨毯の敷かれた中央通路を歩いた。
ジョサイアはロウソクの灯る燭台を手に取って迎える。
「このところ噂になっていたよ。いつも元気な君が気落ちしてるって……すぐ来なかったってことは、怪我じゃないんだよね? おじさんを起こして、診察して貰うかい?」
前の一件で嫌悪を持たれたのを気にしてか、マーリャの様子を伺いつつも言葉は探り探りだ。心配そうに首を傾ける仕草に白々しさは感じられない。
ジョサイアの言う通り、幼少から見知った中年の神父を頼りたい気持ちもあったが、先ほど考えたように人間に治せない病であった時が恐ろしかった。
「あん人は呼ばんでええ。ジョサイア……肘と膝、見せてくれんね」
緊張し、肝が冷える感覚を味わいながらやっとの思いで口にしたのに、ジョサイアは何ら動揺を示さない。
マーリャに燭台を委ねて、ごく自然に服の裾を捲(まく)っていく。
「えっと、これでいいかな?」
前腕にも膝下にも、旅の過程でついたと思しき切り傷の痕が色濃く残っていた。刃物でない荒い裂傷やそれを縫い合わせた痕跡もある。
思いもよらぬ過去の負傷は明らかになったが、どこにも鱗らしきものは見受けられない。
ジョサイアは病の運び手ではなかったのだ。
「何や……」
組み立てていた考えが、根底から間違っていると理解したマーリャは肩の力を一気に抜けさせた。
出会い頭に当て推量で訴えかけていたらどうなっていたことかと改めて自省する。両親の思いを知り、自分の生まれに自信を持てたはずなのに呆気なく揺らいでしまっていた。
「立ち話もなんだし、具合を診(み)るよ」
緊張が薄れたのを察したジョサイアは燭台を受け取って微笑む。マーリャが何について疑惑の目を向けていたか、おそらく分かっていないだろう。
無関係だと判明した今になって荒唐無稽(こうとうむけい)な言い分を明かすのも恥ずかしく、マーリャは黙したまま診察室代わりとなっている空き部屋に通された。
ソレルが身体を休めていた場所はあくまで寝室であり、怪我人や病人は基本的にここで治療を受ける。
計量に使う秤と小さな薬棚が乗った調合用の台、医療について記された書物が並ぶ本棚など実用的な家具が並んでいて、少し手狭にも感じられた。
タルに備えた水で手を清めてから大椅子に座ったジョサイアに続き、マーリャは客用の椅子に座って手に巻いた布を取り払い、革靴を脱いだ。
患部は自己治療の甲斐(かい)なく変色したままだ。
「いつからこうなったの?」
ジョサイアは怪訝そうに眉をひそめる。痛ましく思ったのか、唇を噛みしめてすらいた。
「取り替え子の話をした日からや」
さらりと返すつもりが、どこか当てつけがましい言い方になってしまった。ジョサイアは気に留めておらず真剣に話を聞く姿勢でいる。
「……最初は足先だけやったのが段々広がって、手にも出来た。いくら掻いても皮が削げんかった」
「掻いたってことは、これ、痒い?」
「痒うなか。でも、たまに傷んとこが熱うなってくるけ、かさぶたみたいに取れんかち試したと」
飛び起きるような高温ではなく、少し汗ばむ程度だったが異変には変わりない。
日が経つにつれて、爪を立て思い切り力を込めても硬くなった表面に薄く傷が入るだけになっていた。
下手に隠匿しようとせず、発症したその日にここを訪れていればという後悔がじわじわと沸いてくる。
ジョサイアは鱗状になった皮膚の一部に指先で触れ、次にマーリャの額に手をあてた。
「皮膚表面の乾燥およびヒビ、患部の高熱が認められるが炎症や膿、発熱は見られない……か」
熱がないことを確かめてから悩ましく考え込み、おもむろに一度だけ頷く。
それはマーリャに対してというよりは、自分の意見を決定するための動作らしかった。
「ひとまず皮膚病として扱うよ。肌に湿気を与えて、薬を塗って様子を見よう」
立ち上がるやいなや忙しなく台や棚を行き来し、手を動かし始めた。
まず小鍋を使って湯を沸かし、半分の量を皿に分けておく。鍋の方の湯に厚手の綿布を浸してマーリャの手足を慎重に拭(ぬぐ)い、蜜蝋(みつろう)を溶いた保湿液を塗って真新しい亜麻布で包む。
「薬湯も作るから飲んでおいてね」
言いながら干しておいた木の実や草を何種類か薬研(やげん)ですり潰し、細長い黄銅の壺で精製していた黒に限りなく近い粘りけのある塊と共に布で漉(こ)した。
それを木製のマグに流し入れ、皿の湯を注いで薄めたものを無事である左手に渡される。
底が見えないほど濃い液体は強いて言えば珈琲(こーひー)に似ていたが、においは動物小屋のすみにある肥溜(こえだ)めとしか形容しようがなかった。
本当に効果があるのか尋ねたくなり見上げたところ、嫌みのない善良な微笑とかち合う。細められた紫色の眼が是非(ぜひ)飲んで欲しいと語っている。
「……ありがとう。貰うわ」
体調が改善する良薬であると信じるしかなかった。
呼吸を止めて一息に胃へ流し込み、マグが空になったことを確認して勢いよく口を離す。
だが息を吐いた途端、悪臭と恐ろしいまでの苦味が喉から立ちこめてきた。マーリャの顔から血の気が引いていく。
「臭えし、苦っ……」
「えっ、干した果物入れたのにな。やっぱり蜂蜜を入れた方が良かった?」
マグを突き返しながら呻き声混じりに文句を述べると、ジョサイアは不思議そうにマグの中を覗き込んだ。
彼にとってこれは想定外の事態らしい。
後から多少甘味を入れても、おそらく代わり映えはしなかっただろう。しかしマーリャにそれを指摘する余裕はなかった。
身体に奇妙な鱗が現れたのはジョサイアからハーフエルフではないかと疑いを掛けられた、あの日からだ。前日に蒸し風呂を使った時には肌に異常などなかった。
ジョサイアは常に神父の祭服を着ていて、私服ですら全く肌を見せない。彼が保菌者であった可能性はゼロではないのだ。
マーリャよりも身近に接していた中年の神父やソレルがごく普通に過ごせていた以上、勘違いと一蹴すべきである。だが、この病がエルフにしか伝染しないものであれば話が変わってくる。
持病が人間(ヒューマン)に感染しないと見越して人間の村に住みだしたのに、例外がいたとしたら気にしないではいられない。
予兆のようなものを感じ取り、ジョサイアはマーリャの出自を尋ねてきたのではないか。この病にかかることこそが、マーリャが拾い子である証明になる。
そう。全て、たった一人がもたらした不幸ならーー。
「……なんて。悪いんは全部、人のせいか」
思考が一定のまとまりを示した瞬間、マーリャは卑屈な薄笑いを浮かべた。
一度不安に駆られると何もかも悪い風にとらえがちだ。憶測に憶測を積み重ねて、それらしい想像で自分を守ろうとしてしまう。
これから縋(すが)ろうとする相手にさえトゲを向けてどうするのかと、自己を軽蔑した。
しかし発症してから混乱を極めていた頭の中が片付けられ、少しだけ落ち着いたのも確かだった。
教会の扉には鍵が掛かっていなかった。力を込めて扉を押し開けば、内にいた者が重たげな開閉音に振り返る。
「カーバンクル。どうしたんだい? 祈りの時間にしては遅いけれど」
聞き取りやすい声は聖堂の奥から聞こえてきた。少ないロウソクの明かりがジョサイアを照らしている。祭壇を磨いていたらしく、うっすら汚れた布を手にしていた。中年の神父は既に眠っているのか、その場にはいない。
時間外の掃除をこなすための地味な私服姿だというのに、陽光を受けていないステンドグラスを背にした彼は室内の暗さも相まって怪しげな雰囲気をかもし出していた。
編まずに高く結んだだけの金髪も黒子(ほくろ)一つない肌も白っぽく、作り物の象牙のように見えるのだ。
「……病気なんかもしれん。他に行くとこもないき、来たと」
全幅の信頼を寄せるのは危険かもしれない。警戒心を隠しきれないまま、マーリャは絨毯の敷かれた中央通路を歩いた。
ジョサイアはロウソクの灯る燭台を手に取って迎える。
「このところ噂になっていたよ。いつも元気な君が気落ちしてるって……すぐ来なかったってことは、怪我じゃないんだよね? おじさんを起こして、診察して貰うかい?」
前の一件で嫌悪を持たれたのを気にしてか、マーリャの様子を伺いつつも言葉は探り探りだ。心配そうに首を傾ける仕草に白々しさは感じられない。
ジョサイアの言う通り、幼少から見知った中年の神父を頼りたい気持ちもあったが、先ほど考えたように人間に治せない病であった時が恐ろしかった。
「あん人は呼ばんでええ。ジョサイア……肘と膝、見せてくれんね」
緊張し、肝が冷える感覚を味わいながらやっとの思いで口にしたのに、ジョサイアは何ら動揺を示さない。
マーリャに燭台を委ねて、ごく自然に服の裾を捲(まく)っていく。
「えっと、これでいいかな?」
前腕にも膝下にも、旅の過程でついたと思しき切り傷の痕が色濃く残っていた。刃物でない荒い裂傷やそれを縫い合わせた痕跡もある。
思いもよらぬ過去の負傷は明らかになったが、どこにも鱗らしきものは見受けられない。
ジョサイアは病の運び手ではなかったのだ。
「何や……」
組み立てていた考えが、根底から間違っていると理解したマーリャは肩の力を一気に抜けさせた。
出会い頭に当て推量で訴えかけていたらどうなっていたことかと改めて自省する。両親の思いを知り、自分の生まれに自信を持てたはずなのに呆気なく揺らいでしまっていた。
「立ち話もなんだし、具合を診(み)るよ」
緊張が薄れたのを察したジョサイアは燭台を受け取って微笑む。マーリャが何について疑惑の目を向けていたか、おそらく分かっていないだろう。
無関係だと判明した今になって荒唐無稽(こうとうむけい)な言い分を明かすのも恥ずかしく、マーリャは黙したまま診察室代わりとなっている空き部屋に通された。
ソレルが身体を休めていた場所はあくまで寝室であり、怪我人や病人は基本的にここで治療を受ける。
計量に使う秤と小さな薬棚が乗った調合用の台、医療について記された書物が並ぶ本棚など実用的な家具が並んでいて、少し手狭にも感じられた。
タルに備えた水で手を清めてから大椅子に座ったジョサイアに続き、マーリャは客用の椅子に座って手に巻いた布を取り払い、革靴を脱いだ。
患部は自己治療の甲斐(かい)なく変色したままだ。
「いつからこうなったの?」
ジョサイアは怪訝そうに眉をひそめる。痛ましく思ったのか、唇を噛みしめてすらいた。
「取り替え子の話をした日からや」
さらりと返すつもりが、どこか当てつけがましい言い方になってしまった。ジョサイアは気に留めておらず真剣に話を聞く姿勢でいる。
「……最初は足先だけやったのが段々広がって、手にも出来た。いくら掻いても皮が削げんかった」
「掻いたってことは、これ、痒い?」
「痒うなか。でも、たまに傷んとこが熱うなってくるけ、かさぶたみたいに取れんかち試したと」
飛び起きるような高温ではなく、少し汗ばむ程度だったが異変には変わりない。
日が経つにつれて、爪を立て思い切り力を込めても硬くなった表面に薄く傷が入るだけになっていた。
下手に隠匿しようとせず、発症したその日にここを訪れていればという後悔がじわじわと沸いてくる。
ジョサイアは鱗状になった皮膚の一部に指先で触れ、次にマーリャの額に手をあてた。
「皮膚表面の乾燥およびヒビ、患部の高熱が認められるが炎症や膿、発熱は見られない……か」
熱がないことを確かめてから悩ましく考え込み、おもむろに一度だけ頷く。
それはマーリャに対してというよりは、自分の意見を決定するための動作らしかった。
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立ち上がるやいなや忙しなく台や棚を行き来し、手を動かし始めた。
まず小鍋を使って湯を沸かし、半分の量を皿に分けておく。鍋の方の湯に厚手の綿布を浸してマーリャの手足を慎重に拭(ぬぐ)い、蜜蝋(みつろう)を溶いた保湿液を塗って真新しい亜麻布で包む。
「薬湯も作るから飲んでおいてね」
言いながら干しておいた木の実や草を何種類か薬研(やげん)ですり潰し、細長い黄銅の壺で精製していた黒に限りなく近い粘りけのある塊と共に布で漉(こ)した。
それを木製のマグに流し入れ、皿の湯を注いで薄めたものを無事である左手に渡される。
底が見えないほど濃い液体は強いて言えば珈琲(こーひー)に似ていたが、においは動物小屋のすみにある肥溜(こえだ)めとしか形容しようがなかった。
本当に効果があるのか尋ねたくなり見上げたところ、嫌みのない善良な微笑とかち合う。細められた紫色の眼が是非(ぜひ)飲んで欲しいと語っている。
「……ありがとう。貰うわ」
体調が改善する良薬であると信じるしかなかった。
呼吸を止めて一息に胃へ流し込み、マグが空になったことを確認して勢いよく口を離す。
だが息を吐いた途端、悪臭と恐ろしいまでの苦味が喉から立ちこめてきた。マーリャの顔から血の気が引いていく。
「臭えし、苦っ……」
「えっ、干した果物入れたのにな。やっぱり蜂蜜を入れた方が良かった?」
マグを突き返しながら呻き声混じりに文句を述べると、ジョサイアは不思議そうにマグの中を覗き込んだ。
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