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魂の戯れ part.22(終)
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公園にゲートがある。
それは地上に通じる門。
天使が地上に下りたり、上ってくるところの起点となる場所だ。
今まで何回もこの鐘が鳴るのを聞いてきたが、これは地上に人間に生まれ変わることを祝する時に鳴る物らしい。
そして、まさか自分がそこを通る時が来ようとは。
公園の周りには、たまたま居合わせ何が起こるかを見に来た者、このイベントをわざわざ見に足を運んだ者、別れを惜しむ者、様々な魂たちがいた。
それにしても改めて見ると、みんな姿が薄く見える。
いや、私が既に物質に近づいている証拠だろう。
彼らの視線は分かるが、声が届かない。
届くのは私と共にいた者だけだ。
そうした存在が私の目の前に立っている。
「いよいよだな」
「ああ」
「まあすぐ帰って来ると思うが、多分その時のお前は変わってしまってるんだろう」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「俺はそうであって欲しいと思うよ」
私同様、ぶっきらぼうな口調の相方だが今日は随分と素直で柔らかい口調だった。
脇にサキが立っている。ユウという少女も一緒だった。
「地上でも交信出来るんでしょう。何かあったら連絡するから」
「ああ、まあ何もないと思うが」
「もう少し、あんたとゆっくり話出来ればよかったわね」
「すぐ帰って来るって。お前らは本当にお前とか、あんたとか遠慮をしないよな。今さらだが」
「あんただってそうじゃないの」
そう言って、サキは横を向いてしまった。
私の口調も不思議といつもより多い。
そんなことを思っていると、相方の後ろに髪を縛ってる男が立った。
今日はサングラスを外しているようで、視線を寄こすとすぐに気付いてくれた。
「ホムラをよろしく頼むよ。色んなところに連れて行ってやってくれ」
「保護者みたいだね。いいよぉ。まあ地上は色々あるけど、頑張ってねぇ」
そう言って、彼は笑った。
保護者という言い方に子供呼ばわりされたと思ったのか、ホムラが顔をしかめた。
ふと、アサナギに会った時の記憶が甦って来た。
「なあ、地上って何かあったりする? 」
「何かって何ですか? 」
「何かトラブルとか」
ユウが手を口元に当てて笑った。
「そんなものないですよ。考え過ぎです。ロウさん、冷静に見えて意外に高ぶってらっしゃるんじゃないですか」
「そうかな」
「そうです」
門の鐘が鳴った。集合の合図だ。
私は集まってくれたメンバーに頭を下げ、門の前に向かった。
同じように別れを惜しんでいた同僚たちが集まって来た。
ふと、キリコが顔をしかめている。
「どうしたんだ? 」
「一緒に暮らしたパートナーに行くなって泣きつかれた。行く前から俺も疲れた」
「言うことが人間じみて来たな」
「お前もだろう。まあとにかく、下では運命共同体だ。よろしくな」
「言い方が大袈裟だが、ああこっちからもよろしく」
集合先は門の向こうにある。そこから、肉体をまとって地上の住まいに送られるのだ。
その手順はどう行われるかは知らない。
ハギリが入ると鐘が鳴った。ウキクサが入ってからも同様だった。
一体入るごとに鐘がなるらしい。
私は振り返って今まで世話になった存在たちに手を振った。
らしくないなとは思いながら。
最後に相方の顔をはっきり見た。
複雑そうな表情だ。
今までの礼や、地上で上手くやって欲しい、そして微かに置いていかれる寂しさなどのごっちゃな感情を感じた。
それに対し、私はただ手を振った。
そうすることが私の知る一番の相方に対するベストの反応だった。
門をくぐる際、自分の鐘の鳴る音は聞こえなかった。
それは地上に通じる門。
天使が地上に下りたり、上ってくるところの起点となる場所だ。
今まで何回もこの鐘が鳴るのを聞いてきたが、これは地上に人間に生まれ変わることを祝する時に鳴る物らしい。
そして、まさか自分がそこを通る時が来ようとは。
公園の周りには、たまたま居合わせ何が起こるかを見に来た者、このイベントをわざわざ見に足を運んだ者、別れを惜しむ者、様々な魂たちがいた。
それにしても改めて見ると、みんな姿が薄く見える。
いや、私が既に物質に近づいている証拠だろう。
彼らの視線は分かるが、声が届かない。
届くのは私と共にいた者だけだ。
そうした存在が私の目の前に立っている。
「いよいよだな」
「ああ」
「まあすぐ帰って来ると思うが、多分その時のお前は変わってしまってるんだろう」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「俺はそうであって欲しいと思うよ」
私同様、ぶっきらぼうな口調の相方だが今日は随分と素直で柔らかい口調だった。
脇にサキが立っている。ユウという少女も一緒だった。
「地上でも交信出来るんでしょう。何かあったら連絡するから」
「ああ、まあ何もないと思うが」
「もう少し、あんたとゆっくり話出来ればよかったわね」
「すぐ帰って来るって。お前らは本当にお前とか、あんたとか遠慮をしないよな。今さらだが」
「あんただってそうじゃないの」
そう言って、サキは横を向いてしまった。
私の口調も不思議といつもより多い。
そんなことを思っていると、相方の後ろに髪を縛ってる男が立った。
今日はサングラスを外しているようで、視線を寄こすとすぐに気付いてくれた。
「ホムラをよろしく頼むよ。色んなところに連れて行ってやってくれ」
「保護者みたいだね。いいよぉ。まあ地上は色々あるけど、頑張ってねぇ」
そう言って、彼は笑った。
保護者という言い方に子供呼ばわりされたと思ったのか、ホムラが顔をしかめた。
ふと、アサナギに会った時の記憶が甦って来た。
「なあ、地上って何かあったりする? 」
「何かって何ですか? 」
「何かトラブルとか」
ユウが手を口元に当てて笑った。
「そんなものないですよ。考え過ぎです。ロウさん、冷静に見えて意外に高ぶってらっしゃるんじゃないですか」
「そうかな」
「そうです」
門の鐘が鳴った。集合の合図だ。
私は集まってくれたメンバーに頭を下げ、門の前に向かった。
同じように別れを惜しんでいた同僚たちが集まって来た。
ふと、キリコが顔をしかめている。
「どうしたんだ? 」
「一緒に暮らしたパートナーに行くなって泣きつかれた。行く前から俺も疲れた」
「言うことが人間じみて来たな」
「お前もだろう。まあとにかく、下では運命共同体だ。よろしくな」
「言い方が大袈裟だが、ああこっちからもよろしく」
集合先は門の向こうにある。そこから、肉体をまとって地上の住まいに送られるのだ。
その手順はどう行われるかは知らない。
ハギリが入ると鐘が鳴った。ウキクサが入ってからも同様だった。
一体入るごとに鐘がなるらしい。
私は振り返って今まで世話になった存在たちに手を振った。
らしくないなとは思いながら。
最後に相方の顔をはっきり見た。
複雑そうな表情だ。
今までの礼や、地上で上手くやって欲しい、そして微かに置いていかれる寂しさなどのごっちゃな感情を感じた。
それに対し、私はただ手を振った。
そうすることが私の知る一番の相方に対するベストの反応だった。
門をくぐる際、自分の鐘の鳴る音は聞こえなかった。
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