初恋のあなたに、二度目の恋を

maricaみかん

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1話 運命の出会い

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 俺がミネルバさんを好きになったきっかけは、きっと彼女の使う魔法が綺麗だったから。

 俺はフレスベルグという国にある王都で、魔法を極めることを志す学生として生活していた。
 幼い頃からずっとのめり込んでいた魔法では、きっと誰にも負けることはない。そう考えていたが、この学園には優れた魔法使いが大勢いた。
 少しだけプライドが傷ついたけれど、それよりも、大好きな魔法を他の人達と競いあえるという事実がとても嬉しかった。
 なにせ、他の人達の意見を取り入れること、他の人達の魔法を見ること。
 それらは俺の故郷では殆どできないと言っていいことだったから。

「ルイス、電撃魔法と水魔法を組み合わせるのなら、相手に電気を通りやすくする以外の使い道は何があると思う?」

 そんなふうに俺に質問をするクラスメイトのアベル。金髪を短く切っている顔のいい男だ。
 単一属性の魔法を極めようとするのではなく、複合属性の魔法を使おうとする人間なんて、俺の故郷にはいなかった。
 それが当たり前のようにこの学園では複合属性を使うのだ。それが嬉しくて、同時に悔しくもあった。
 この学園では、学生はその先にある空間魔法というものを目指しているらしい。俺はそんなものの存在は知らなかったので、それが授業にのめり込んでいく理由になっていた。

「そうだな、水で電気の通り道を作って複数箇所に電気を伝えるってのはどうだ?」

 電撃魔法はなかなかうまく操作できない属性で、真っ直ぐ飛ばすことしか出来ないことがほとんどだった。それ故の提案なのだが、アベルは納得していないようにみえる。

「水魔法をそんなふうに使ったら、どこに攻撃が来るのかまるわかりじゃない?」

 たしかにそうなのだが、ある程度は工夫でどうにかできると俺は考えていた。

「例えば、水の形を事前に決めておいて、電撃魔法とほぼ同時に出すとか、わかっても避けられない位置に誘導しておくとか、使い方は色々あるんじゃないか?」

「なるほどね。選択肢としては悪くないかもね。その方向について考察を進めてみようと思う。ありがとう、ルイス」

「気にするなよ。俺もお前には何度も意見をもらっているんだからな。それよりも、今度の試験はどうなんだ?」

 この学園では実技と筆記の試験があり、あまりにも成績が悪いとこの学園で学ぶことはできなくなる。
 アベルのことだから最低限の成績はキープできるだろうが、友達の成績は気になるものだからな。

「大丈夫だと思うよ。僕は先輩に色々と教わっているからね。それよりも、ルイスはどうなの?」

「俺も問題はないだろうな。上位10人には入れるだろうと思っているぞ」

「さすがだね、ルイス。とはいえ、僕以外にそんなことを言わないほうがいいよ。色々と面倒事になるだろうからね」

 アベルの言う事は分かるような気がする。初めての試験も受けていないのに、自信満々なやつなんておかしいと思われることは否定できない。
 ただ、授業風景を見ている限りでは、俺より上の成績を出せる人間が10人を超えるとは思えない。
 この学園で一番になることは出来ないにしろ、だからといって底辺というわけではないと確信できていた。
 学年で100人近くいるこの学園の学生だが、成績順にクラス分けされているからな。俺のクラスが一番上である以上、この組で俺より上を10人見つけられないのだから、そうそう10位を下回るとは思えない。

「分かっているさ。それよりも、これからの試験が待ち遠しいな」

「ルイスは変わってるね。僕は試験なんて受けたくないよ」

 俺は試験ではどんな問題が出るのか、今から楽しみで仕方がなかった。
 成績に不安があるのなら試験など受けたくないのだろうが、俺は魔法の問題を解くことが楽しくて仕方がない。
 変に前情報を仕入れて、その楽しみを奪われたくはなかったので、わざと先輩には問題を聞いていない。
 念のために先生に初見殺しが出ないか聞いてみたが、笑いながら否定された。
 だから、安心して試験を楽しみに待つことができる。この学園に入ってできた喜びはとても多いから、退学にはなりたくなかった。

 それから、試験の日がやってきた。筆記は俺の期待に反して、これまで解いてきた問題の空欄を変えただけの問題や、数値だけを変えた問題ばかりだった。
 退学がかかっているとなると優しさは必要なのかもしれないが、俺は新しい問題を解きたかったので正直がっかりしていた。
 ただ、この問題で9割を下回ることはないだろうな。退学は筆記だけでも避けられるだろう。
 難しい問題には未だに未練があるが、しっかりと間違いをしないように確認しておくか。

「はい、次は実技試験ですよ。今回の試験はみなさんなら簡単でしょうが、念のために油断はしないでくださいね」

 俺たちの担任のミヤビ先生が試験監督を務めている。赤い長髪の穏やかな先生だ。筆記試験の簡単さに沈んでいたが、先生のいつも通りの優しい姿に俺も落ち着きを取り戻していた。

 そして実技試験に移っていく。そこでは、指定された魔法と、自分の好きな魔法を発動させることで採点される方式となっていた。
 指定された魔法はどれも簡単なものだったから、俺のクラスで発動できないやつなんていない。
 問題は、好きな魔法に何を選ぶかということだ。実技は順番に皆の目の前で魔法を発動していくことになる。
 すでに指定された魔法は全員が発動し終えていて、あとは任意の魔法の時間だ。的を壊すことさえできていれば、あとはなんでもいいらしい。

「みなさんは今回の試験で退学することはなさそうですね。先生は安心しました。ですが、しっかりと実力を見せてくださいね。みなさんの今後にも関わってきますからね」

 実は俺はこの学園にはそこまで詳しくないのだが、今後とはクラス分けのことでいいのだろうか。
 まあ、俺に今できることは全力を尽くすことだけだ。これまでの研鑽の成果を見せてやる。

 俺より前にアベルが魔法を使っていたが、俺と討論していたあの魔法を使っていた。
 水をクモの巣状に張って、そこに向けて電撃を放つ。スピードも範囲も優れているのが見て取れて、俺と議論していたときよりよほど優れた形にできている。
 やはりアベルが友達で良かった。ここまで努力できる友人がいるのだから、俺も負けてはいられない。
 故郷にずっといては、こんな風に友達に影響を受けることも出来なかったと思えば、本当に学園に来れたことは僥倖だった。
 ここにいれば、思う存分魔法を極めることに向けて進むことができる。俺にとって最高の環境だ。

「アベルくん、素晴らしい魔法ですね。一年生でこれは将来が期待できますよ」

 俺の番がやってきたとき、俺の使った魔法は4属性の複合だった。水を電気で分解し、炎で爆発させて、風でその向きを制御する。
 狙った的だけに高威力をぶつけることが出来て、俺は存分に成果を堪能していた。
 こんな危険な魔法はそうそう使うことが出来ない。ミヤビ先生が監督してくれているからこそ、安心して放つことが出来た。

「ルイスくん、先生はとっても感心しました。4属性の複合なんて、3年生でも出来ない人はできませんからね」

 それは退学する基準にはなっていないのだろうか。学生は空間魔法を使うことが目標で、空間魔法への道に複合させる属性を増やすというものがあったはずだが。
 それはいずれ知ることになるだろうし、今は他の人の魔法を見ることに集中するか。
 他の人の魔法からは、俺だけでは得られない発想を知ることができる機会が多い。見逃すほど俺は魔法に本気でないわけじゃない。

 それから何人かの魔法を見ていたが、やはり感心する場面も多かった。
 特に俺が気に入ったのは、2属性で爆発を起こしたやつだ。炎と水の2つだけで爆発を起こしていたその光景は、少ない属性での複合の可能性を感じさせるものだった。
 俺は爆発自体は3属性で行っていた。それを2属性でできるのだから、魔法の可能性というものは偉大だ。
 俺の爆発ほど細かく制御できていたわけではないし、威力自体も俺のものより小さかった。
 だが、似たような現象をより少ない属性で行うということは、更に他の属性を付け足せるということだ。
 俺はあの魔法を絶対に覚えることを決めていた。

「アベル、やはりこの学園は最高だな。見たことのない魔法をいくらでも見られるぞ」

「ルイスは余裕だね。僕はあの人達と競っていかないといけないと思うと気が重いよ」

「アベルならばその中でも間違いなく上位に入れるだろう? 俺はアベルがどれだけ努力しているかよく知っているつもりだ」

「期待してくれるのは嬉しいけど、僕はほどほどでいいかな。この学園を卒業できるだけでも十分な実績だからね」

 俺は心の底からアベルの言葉をもったいないと思っていた。アベルならば、俺を超える可能性は十分以上にある。
 今は子供の頃からの経験で俺が上だとはっきり言えるが、アベルの発想も、努力も、埋もれるには惜しいどころではないと思えた。

「アベルが嫌がるのなら無理強いはできないが、アベルの才能は本物だよ。俺はそう信じている」

「ルイスは本気でそう言ってるんだよね。よく分かるよ。でも、君の友達ができる人は少ないんじゃないかな。それでも僕は君の友達だけどね」

 アベルはなぜそんな事を言うのだろう。俺の友達が少ないことは事実だが、そんなに嫌な態度を取っているだろうか。
 だが、アベルが友達でいてくれるのならば、それでいいと思えた。アベルは間違いなく尊敬できる相手で、だからこそこうして親しくしていたいのだから。
 俺は何より魔法が好きだから、魔法について何もわからないやつとはきっと仲良く出来ない。
 なぜなら、俺の魔法が上達する可能性を奪う相手としか思えないからだ。

 その点、アベルは努力家で、魔法についてよく考えるすごいやつだ。俺が思いつかない意見を何度言ってくれたかわからない。
 アベルとなら、きっと魔法を極めることができる。そう思える。

「アベルが俺を嫌いでないならば十分だ。俺はお前とずっと友達で居たいからな」

「ルイスのそういうところは好きなんだけどね。まあ、君にはきっと一生わからないよ。でも、だからこそ君はすごいんだろうね」

 流石にほとんど貶されているというのは分かるぞ。やはり俺のどこかに問題があるのだろうな。
 だが、アベルが一生分からないと言うのならば、そうなのだろう。
 わからないだろうことを考えるより、俺は目の前の魔法について考えていたかった。
 いろいろな発想、いろいろな技術。永遠に飽きることはないだろうと思えるくらい、魔法というのは広い世界だ。
 俺の前で皆が思い思いの魔法を使っていたが、得るものがとても多くて感動すらする。

 そんな中、皆をざわつかせる何かがあったようだ。注視してみると、今から魔法を使う人に注目しているらしい。
 その人はミネルバさんという人で、確か主席で合格した人だ。俺が主席でないという事実とともに、よく刻まれた名前だった。
 黒色のきれいな髪を伸ばしていて、少し冷たさを感じさせる容貌の人だ。
 ミネルバさんが魔法を発動すると、俺はそれに目を奪われた。

 満天の星空のような光景から、色とりどりの花のような景色。静寂感を感じさせる白の世界。
 どれもこれも美しくて、俺は今までとは比較にならないほどに注目していた。
 魔法というものはこんなにも綺麗にできるのか。俺は息をするのも忘れるほど夢中になって目の前の魔法を見つめていた。
 魔法以外は無音の世界で、俺は生まれてから初めて味わうほどの感動に身を震わせていた。
 俺もこんな魔法を使ってみたい。そして、もっともっと先へと進んでいきたい。
 魔法でこんな事ができるのならば、一生をかけることに迷う理由なんてなにもない。

 気がつけば、的はすべて破壊されていた。なぜそんな事が起こったのかはわからないし、いつ壊れたのかもわからない。
 だけど、わからないということが心地よかった。これからこの魔法を知っていけるのだと思えば、喜びを叫びだしたいくらいだった。

「まさか、1年生で空間魔法を使える人がいるだなんて思っていませんでした。さすがはミネルバさん。今年度の主席です」

「ありがとうございます。ですが、これくらいは当然です」

 これが空間魔法なのか。俺は絶対に空間魔法を習得してみせると、その時に決意した。
 単に知らない魔法だからじゃない。これが最高の魔法だと信じることができる目標を見つけて、俺は歓喜に浸っていた。
 これからの一生を俺は空間魔法に捧げることになるだろう。だが、間違いなく幸せなはずだ。
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