物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん

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15章 作られる未来

543話 感謝の言葉

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 ミュスカとの話を終えて、ひとまず俺のやりたいことは片付いたと言える。

 そんな中、俺は王女姉妹から呼び出されていた。パレードは終わっているし、どんな用なのかは気になるところ。

 俺の前に座る王女姉妹は、真剣な顔で話し出す。

「レックス君、お願いがあるの。王都の復興を、手伝ってくれないかしら?」

 そんなことを言われる。一応、基本的には敵地で戦っていたはずだ。それに、あんまり王都が戦場になった記憶もない。

 まあ、心当たりはあるが。そういうことなら、もっと早く言われても良かったのだが。パレードとどっちを優先すべきかは、かなり悩ましいところだ。

 すぐにでも復興したいというのが素直な気持ちではあるが、戦いが終わったというアピールも大事になってくるだろう。

 といっても、今さら順番を変えられるものでもない。ひとまず、受けておくのが妥当か。

「眷属の被害があったのか? まあ、あれだけ湧いていればな」
「そういうことです。レックスさんを便利に使うのは、心苦しいですけれど」

 一応、俺は功労者ではあるからな。自分で言うのは何だが。英雄みたいな扱いをされていたし、本来なら避けるべきことなのかもしれない。

 ただ、俺としては受けたいとは思う。それで民衆の助けになるのなら、悪くない。

「いや、構わない。民衆の生活を大事にするのも、王族の役割だろう」
「じゃあ、任せるわ。レックス君の力なら、どうやっても大丈夫だと思うの」
「念の為に言いますが、まずは周囲にいる人に相談してくださいね。無駄な対立を避けられますから」

 リーナはじっと俺の目を見ている。実際、大事な話だろうな。俺が周囲の仕事を奪う存在だと思われたら、良いことにはならないはずだ。

 まあ、いわゆる報連相を大事にすればいいという話。そこまで難しくはないと信じたい。

「ああ。人から役割を奪いすぎないように、だな」
「それもありますし、指揮系統の乱れもあります。気を付けてください」
「私が話を通しておくから、話しやすくなっているとは思うわ。頑張ってね」

 ということで、俺は現場へと送り出された。闇魔法を使って、いろいろと手伝っていく。

 ハッキリ言って、普通の人が苦労してやっていることでも、俺にとっては児戯に等しい時もある。それほどに、闇魔法の性能は高い。

 魔力量の多さも相まって、俺ひとりでかなりの戦力になっていると言えた。

「この一角、まとめて運んでもいいか?」

 そんな感じで、まとめて積まれている木材を運ぼうとする。重さで言うのなら、数トンくらいはあるんじゃないだろうか。実際に計ったわけじゃないから、正しいかは知らないが。

 だが、闇魔法なら簡単に運べる。それこそ、普通の人がカバンを持つ程度の気軽さで。

「魔法使いってのは、そんなこともできるのか? 壊さないのなら、問題ない」
「任せてくれ。これでどうだ?」

 現場監督の指示に従いながら、木材をそれぞれ必要な場所へと運んでいく。建築に使うやつだから、建てている場所にだな。

 それぞれの木材を魔力で浮かせて、人に当たらない高さで運ぶだけ。そう難しいことじゃない。

 現場監督は、口を開けながら俺の仕事を見ていた。

「凄いな……。10人でも運べないだろうに……。これは、優遇されるはずだ」
「なにか思いつくことがあれば、言ってくれ。案外、できるかもしれない」
「じゃあ、ここを掘ることはできるか? できれば、楽ができる」
「まあ、問題ないだろう。あんまり散らかすのは問題だよな……。よし」

 指示を受けて、基礎工事をしているらしい場所に穴を掘っていく。土を飛ばしたりしないように、ちゃんとまとめつつ。

 そこに土台を作っていけば、家の基礎ができるのだろう。次の指示も仰いで、こなしていく。

 現場監督は、腕を組みながら俺のことをずっと見ていた。

「これは、一人で全部こなせそうな勢いだな……。たまげたよ」
「技術継承できるものでもないから、あんまり頼りすぎるのもな」
「そこまで考えられると、こっちの顔がないってものだぜ。いや、さすがだ」

 そう言って頷いている。俺の意図は伝わったみたいだ。あんまり俺に頼りすぎると、次代で確実に破綻する。

 とはいえ、実際に土木工事に従事することはないだろうが。俺はあくまで貴族の当主なのだし。

「まあ、今回限りだと思って便利に使ってくれれば良い。復興ということを考えれば、妥当だろう」
「そうだな。普段の仕事まで奪われたら、食いっぱぐれちまう」

 半笑いで、そんな事を言っていた。冗談半分ではあるのだろうが、半分は本音でもあるのだろう。

 実際、仕事を奪わないというのは大事なんだよな。どれだけ合理的に見えても、恨みを買うものだから。

「ここに住んでいるわけでもないから、まず無いとはいえ。大事なことだ」
「おーい、こっちの荷物も運んでくれないか!」
「くくっ、人気者だな。俺はゴメンだが、頑張ってくれよ」

 手を振られながら、送り出される。実際、あれもこれも運ぶというのは重労働なはず。俺も、闇魔法を持っていなければ嫌だった。

 なんだかんだで、力を持っていると選択肢は広がるんだよな。日常的なことでも、よく分かる。

「ああ、すぐ行く!」

 たどり着くと、木材の束を指さされた。それを運べということらしい。

 近くで骨組みを作っていることもあり、そこに向けて運べば良いのだろう。屋根あたりを組んでいるところのようだ。

「高いところに運んでくれれば、かなり手間が省けるんだ」
「落ちる危険も少ないし、さっさとやるか。組み立ては、そっちに任せれば良いんだよな?」
「ああ。初心者にできるもんじゃねえ。それこそ、こっちの仕事だ」

 ということで、木材を浮かせて渡していく。うっかり人が落ちたりしないように、ゆっくりと確実に。ちゃんと持たれたのを確認してから、闇魔法を解除する。急に重くならないように、段階的に。

 何度か繰り返して、一通り組み終えた様子だ。ひとまず、俺の役目は果たせただろう。

「これでどうだ? 一応、持ちやすいように気を配ったつもりだが」
「助かる。あっちも忙しそうだな。行ってみたらどうだ?」
「兄ちゃーん、これを取り壊してくれ!」
「任せろ! この程度なら、楽勝だ」

 半分くらい壊れかけの家を差されたので、壊していく。周囲に土埃や破片なんかが飛ばないように、慎重に。

 お礼を言われて、次の場所に向かう。また、別の仕事があった。

 そんなこんなで、頼まれた範囲の仕事は終わっていった。一息ついていると、現場監督が働いていた人を引き連れてやってくる。

「ほんと、助かるよ。あんたが来てくれたおかげで、今晩は屋根の下で眠れそうだ」

 そう言われて、一斉に頭を下げられる。

 なんというか、胸に暖かいものが広がるのを感じた。感謝というものの心地よさが、理解できるような。
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