物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん

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16章 皇帝への道

567話 考えられる意図

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 ひとまず、帝都に攻め込むための段階を踏み終えた。ここからが本番ではあるが、ひとまず区切りがついているのも事実。

 今後のことを考えるためにも、俺は王女姉妹と面談をしているところ。フィリスの仮説を共有したので、その話も出てくるらしい。

 大きく予定を変えられる余裕があるとは思わないが、知っているのと知らないのでは判断が変わってくる。まずは、王女姉妹の対応を見たいところだ。

 今は3人で私室におり、バレれば大変なことになりそうだ。王女に無体を働いたみたいなことに。今更ではあるのだが、かなり危険な橋を渡っている。本当に今更ではあるのだが。逆に、どうして今まで気にしてこなかったのか。

 まあ、有用なのも確かなんだよな。密談する上で、仕事と関係のない場所は都合が良いのは間違いないし。前世だと、ホテルとか旅館とかも聞いたが。それよりは用意しやすい場所だ。

 リスクとリターンを考えれば、まあ悪くない選択でもあるのか。いま考えてどうするのかという話だが。

「レックス君、ありがとう。首尾は聞いているわ」
「予定とは明確に違いますが、問題なく勝てる範囲でもあるでしょうね。幸いではあります」

 ミーアもリーナも、かなり落ち着いている。今のところは苦戦していないし、分かる判断でもあるが。五属性ペンタギガが異常発生しているのは事実ではあるが、俺たち基準では弱い。

 もともと皇帝がどの程度の実力者で、どの程度強化されたのか。事前に集めた情報から、ある程度は判断できる気がする。なんだかんだで、王国は諜報に力を入れているみたいだからな。

 まあ、帝国も調査はしているのだとは思うが。ただ、俺たちの戦力が常識はずれすぎて、報告した人間の正気を疑われそうではある。だからこそ、俺にちゃんと対策ができていないのだろう。

 実際、原作知識がない前提で、俺がこの世界の常識に染まっていたら。たぶん、五属性ペンタギガ一属性モノデカが倒したという情報を信じなかったはずだ。

「実際のところ、どうなんだ? これまで集めた情報は、偽情報だったりするのか?」
「可能性は、ありますね。ただ、急に強くなった想定の方が説明はつきやすいです」
「皇帝の座を狙った戦いなんかもあるのに、ずっと将たちが手加減しているというのはおかしいもの」

 確かに、いつでもどこでも力を温存するのはおかしいか。特に、帝国は力こそ全てという価値観をしている。そんな状況で、わざわざ自分の立場を下げるような真似を、何人も実行するものか?

 皇帝に完全な忠誠を誓っているのならば、ゼロではない。だが、そこまで慕われているという情報もないんだよな。原作では、ただの悪役だったのだし。

「なるほどな。闘技大会で皇帝を決めるんだったか。目撃者すべてを情報操作するのは、不可能に近いな」
「それだけ強力な幻惑の可能性も、完全には否定できないけれど……」
「フィリス・アクエリアスですら気づけない幻惑ですか? 皇帝がそれほどの実力者なら、王国はとっくに落ちているでしょうね」

 そこまでの幻術なら、これまで俺たちが倒してきた相手すべてが幻影だったりするのだろうか。いや、ないな。俺たちを完全に騙せているのなら、その場で殺さない理由がない。俺が生きていることそのものが、答えだ。

 なら、やはり隠され続けてきたという可能性はゼロに限りなく近い。無視して良いレベルの確率だ。言わば、5連続でロイヤルストレートフラッシュが出るような話。

「まあ、そうか。圧倒的な力があるなら、今まで攻め込まれなかった理由がない」
「となると、力を手に入れたことがきっかけで攻め込もうとしたなんて、ありそうじゃない?」
「ミレアルが敵に着いている可能性も高まる、厄介な仮説ですけどね……」

 女神ミレアルは、原作では味方だったのだが。そもそも邪神がラスボスだったので、立場が逆転している可能性もある。

 というか、嫌な可能性が思いついてしまった。ミュスカや俺を排除するために、ミレアルが動いたことは、あり得るんじゃないか?

 まあ、そこまで本腰を入れている段階ではなさそうだ。原作でも、顕現していた描写はある。その手を打ってこない時点で、まだ本気じゃない。少なくとも、今はマシな状況だ。

「だが、本気で加護を与えたとかではなさそうだな。邪神の眷属の力を考えるに」
「本人が出てこないのも、気になるところね。いろいろと説は思い浮かぶけれど……」
「どれも確信には至らないと。妙な隠し札があれば怖いが……」

 ミレアルそのものが皇帝を倒した後に出てくるとか、かなり危険な未来ではある。負ける可能性は、普通にある。勝つ手段も思いつかなくはないが、仮説だからな。

 少なくとも、ミレアルは原作で戦うような敵ではなかった。どの程度の実力なのか、確かな描写はない。確実と言える策なんて、何も無い。

「ただ、どうせ攻め込まれていますからね。反撃しないというのは、手としては無いです」
「むしろ、時間を与えればもっと強化されかねないよな」

 俺の言葉に、ミーアは神妙に頷いた。どの道、帝国は敵だ。戦わなくては、ただ奪われるだけ。相手から宣戦布告をしてきて、それで王国に軍隊を動かしてきたのだから。

 なら、リスクを承知で攻めるしかない。何もしないことが、最悪の選択肢になる。

「ええ。賭けにはなるけれど、どの道負けたら王国は終わりよ」
「そうなんですよね。攻め込まれて負けるか、反撃を潰されて負けるか。どちらの負けでも、結果に差はありません」
「攻め込まれている側のできることは、攻撃できないくらいに相手を叩き潰すことだけだからな」
「ええ。最低限、大打撃を与えないといけないわ。レックス君には負担をかけるけれど……」
「ミレアルが本格的に参戦する可能性は、まだ低いです。仮に加護を与えていても、現状は様子見に近いかと」

 本気だったら、そもそも王都やブラック家に何かしらを仕掛けてくるだろうからな。帝国の将を強化するというのは、間違いなく遠回りだ。

 ミレアルの意図は、どこにあるのだろうな。分かりさえすれば、早いのだが。

 まあ、俺にできることは備えることだけ。他のことを考えようとしても、無駄に終わるだけだろう。

「本人が出てこない、加護そのものが弱い。確かに、納得できるか」
「いずれは、本格的に敵対するかもしれないけれど……。きっと、今じゃないわ」
「なら、皇帝に勝って備える時間を作らないとな。ミレアルが、どう動いても良いように」

 ミーアもリーナも、すぐに頷き返してきた。よほどのことがない限り、今回ミレアルが出てくることはない。それが、今のところの結論だ。

 当たっているとは言い切れないが、かなり確率は高いと思う。というか、最悪の可能性は想定しても仕方ないからな。ミレアルがその気になった瞬間に世界ごとリセットをかけられて終わりとか。俺たちに対応できる範囲で、策を練っていくしかない。

 リーナは呆れたようにため息をついていた。俺もため息をつきたくなる気分だ。

「そうなりますね。また、後手に回らないといけません。まったく、もう……」
「いつか分からない攻撃に怯えることになるかもな。確かに、困るな……」
「そんな先のことよりも、まずは目の前の課題を乗り越えましょう! お願いね、レックス君」

 ミーアは笑顔で両手を合わせていた。まあ、その言葉が正しい。

 とにかく、確実に皇帝を倒す。話はそれからだ。ミーアに向けて、俺は拳を突き出した。
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