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17章 奪われたくないもの
592話 戦うと決めて
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俺たちは、サジタリウス聖国からやってきた使者に会いに行く。フィリスは断るつもりだと宣言していたし、最悪一触即発みたいになるかもな。
王国にある、とある屋敷。そこが待ち合わせ場所になっていた。すでにやってきていた使者は、フィリスに向けてうやうやしく頭を下げる。
「これはこれは、フィリス様。よくお越しいただきました」
「……考慮。サジタリウス聖国に関して、面倒なことばかり」
本当にうっとうしいという様子で話している。無表情に近くても、分かるものだな。俺がフィリスに慣れてきた証だろうか。
そして、使者は気づいていないようだ。となると、俺がフィリスを理解できている解釈で正しい。こんな状況なのに、ニヤけてしまいそうになる。
使者はようやく俺のことに気づいたようで、いぶかしげに見てきた。
「それで、そこの人間は一体どなたです? なぜ、ただの人間をここに……?」
「……弟子。私の決断を見せる、最も大事な相手」
フィリスは、俺だけに軽く唇を緩める姿を見せてくる。それだけで、どこまでも気持ちが伝わってくる。最も大事な相手という言葉なんて、むしろ軽いくらいなのかもしれない。
そこまで思ってくれているのだから、俺だって応えるだけだ。帝国や王国は犠牲にできないにしても、どんな敵だって打ち破ってみせる。女神が敵になるというのなら、戦うだけだ。
フィリスを、聖国にも女神にも奪わせたりしない。そんな想いが、胸の中で燃え上がっていくのが分かった。
「人間などが、フィリス様の……? いえ、構いません。それで、返事は……?」
「……回答。お断り。あなた達を導くことに、興味はない」
冷たい目を向けながら、淡々と告げている。心から興味がないと、誰にでも分かる姿だ。
まあ、勝手な期待だものな。フィリスが強いことも、かつての王族の血を引いていることも関係ない。今どう生きているかも見ようとせず、ただ自分の都合を押し付けるだけ。
なら、嫌われるのも当然の話。まあ、嫌っているというよりは無関心の方が近いのだろうが。
使者にとっては予想外だったようで、目を白黒させている。まったく、都合の良いことを考えていたようだ。
「な、なぜ……? 尊きお方が、役割を果たさないのですか……?」
「……無様。ただ人の力を当てにするだけの、くだらない存在」
「まあ、そうか。フィリスがいなければ何もできない時点で、程度は知れている」
「貴様! 人間ごときが、我らを侮るなど!」
じろりと俺の方をにらみながら、顔を赤くしている。いくらなんでも、簡単に怒りすぎだろう。使者としての適性すら無いと来た。
せめて、フィリスを落とすために俺と交渉するだけの態度でも見せてくれていればな。まあ、それでも結果は変わらなかっただろうが。
「……断定。あなた達は、レックスの足元にも及ばない。比べる気すらない」
「そこの人間が、あなた様を惑わせたのですな。なら、これで!」
使者は俺の方に手を向けて魔力を収束させていく。明らかに、攻撃するつもりのようだ。見た感じ、五属性相応の魔力。とはいえ、俺なら素の防御でどうにでもなる程度。
やはり、ミレアルは手加減しているのだろうか。邪神の眷属に苦しめられた時のことを考えれば、同じ程度のことはできても不思議ではないのだが。
そんな考察に入ろうとする前に、フィリスが動き出した。
「……既定。五曜剣」
「な、なぜ……」
魔力の刃にあっけなく切り裂かれ、使者は倒れていく。それを、フィリスは冷たく見下ろしていた。何の温度もこもっていない目に、少し見とれそうにすらなった。
「……単純。レックスの敵は、私の敵。この感情は、惑いではない」
「ありがとう、フィリス。とはいえ、困ったな。使者を殺したら、大変じゃないか?」
「……同意。おそらく、サジタリウス聖国の過激派は敵に回る」
分かっていて、動いたみたいだ。感情が抑えきれなかったのか、敵に回す覚悟を決めたのか。どちらにせよ、俺のやることは同じ。
どこまでも、フィリスと運命を共にしよう。それが、弟子としての役目というもの。
「とはいえ、帝国からも王国からも戦力は出せない。待つのも、厳しいだろう」
「……手段。私たちで、こっそりと首狩りするしかない」
なるほど。少数精鋭となると、妥当な手段かもしれない。俺たちふたりでサジタリウス聖国に侵入して、なるべく隠密行動をする。そして、敵を暗殺していく。
問題としては、どこに敵の本部があるか。まあ、フィリスは聞いているのかもしれない。知らないのなら厳しいが、提案されたことからしても、あたりはついているのだろう。
とはいえ、かなり厳しい手段ではある。転移も使えないし、派手に移動することもできない。そうなってくると、苦しい動きになるな。
「理屈は分かるが、他の手段はないのか? いや、フィリスが居れば勝てるだろうが……」
「……国土。大勢での潜入には向かない。足を取られて、動きが鈍るだけ」
森の中だと、陣地を組むのにも一苦労なのは分かる。そもそも、隊列を組んで進軍することすら難しいかもしれない。よく訓練された集団なら、話は別なのかもしれないが。
根本的な問題として、俺やフィリスが他の人達と足並みを揃えられるのかというものがある。となると、確かに良い手段とは言えないか。まあ、この状況で良い手段もなにもない気はする。
「まあ、確かにそうか。仮に戦力を集められたところで……」
「……結論。国と正面から戦っても、犠牲者は増える。なら、最低限だけを殺すべき」
それも大事なことだな。フィリス派と関係の無い敵だって、戦争になれば参加する。首刈り戦術を理想的に実現できれば、ごく少数を殺すだけで済むはずだ。
となると、できれば取りたい手段ではあるか。やはりフィリスは、俺のことをよく分かってくれている。本人の良心もあるのだろうが。
「なるほどな……。大掛かりな動きになればなるほど、敵も本腰を入れざるを得ないと」
「……肯定。私たちは、最大戦力。少人数の部隊なら、ほぼ最善」
「それはそうだ。フィリス以上の魔法使いなんて、そう居るものじゃない」
「……自負。私なら、レックスの足を引っ張ることはない」
胸を張っている。確かに、フィリスほどの存在なら頼りになる。俺としても、魔法使いとして最も信頼できる存在かもしれない。
ギリギリまで人数を増やすという手を取るにしろ、誰と組むかも問題になる。そうなると、当事者であるフィリスと俺が向かうのが理想に近いか。
「むしろ、俺が足を引っ張らないかが心配なくらいだよ」
「……謙遜。でも、嫌いじゃない。レックスらしくて、微笑ましい」
そう言って、頭をなでてくれる。優しい笑顔をしていて、少しだけ落ち着いた。とはいえ、少しは気になるところもあるが。
「子供扱いされている……。さて、そうなると潜入経路だが……」
「……提案。アリアから、話を通されている。一度、しっかりと対話するべき」
「なるほど。そうなったら、作戦会議だな。どんな戦術を取るべきか……」
「……味方。そうできるエルフにも、当たりをつけたい」
アリアにもフィリスにも、サジタリウス聖国に知り合いがいるかも知れないからな。そう言う相手を殺すのも忍びないし、できれば味方につけたいところ。
とはいえ、まずはアリアと話をしてからだ。ひとまず、プランを練ろう。
王国にある、とある屋敷。そこが待ち合わせ場所になっていた。すでにやってきていた使者は、フィリスに向けてうやうやしく頭を下げる。
「これはこれは、フィリス様。よくお越しいただきました」
「……考慮。サジタリウス聖国に関して、面倒なことばかり」
本当にうっとうしいという様子で話している。無表情に近くても、分かるものだな。俺がフィリスに慣れてきた証だろうか。
そして、使者は気づいていないようだ。となると、俺がフィリスを理解できている解釈で正しい。こんな状況なのに、ニヤけてしまいそうになる。
使者はようやく俺のことに気づいたようで、いぶかしげに見てきた。
「それで、そこの人間は一体どなたです? なぜ、ただの人間をここに……?」
「……弟子。私の決断を見せる、最も大事な相手」
フィリスは、俺だけに軽く唇を緩める姿を見せてくる。それだけで、どこまでも気持ちが伝わってくる。最も大事な相手という言葉なんて、むしろ軽いくらいなのかもしれない。
そこまで思ってくれているのだから、俺だって応えるだけだ。帝国や王国は犠牲にできないにしても、どんな敵だって打ち破ってみせる。女神が敵になるというのなら、戦うだけだ。
フィリスを、聖国にも女神にも奪わせたりしない。そんな想いが、胸の中で燃え上がっていくのが分かった。
「人間などが、フィリス様の……? いえ、構いません。それで、返事は……?」
「……回答。お断り。あなた達を導くことに、興味はない」
冷たい目を向けながら、淡々と告げている。心から興味がないと、誰にでも分かる姿だ。
まあ、勝手な期待だものな。フィリスが強いことも、かつての王族の血を引いていることも関係ない。今どう生きているかも見ようとせず、ただ自分の都合を押し付けるだけ。
なら、嫌われるのも当然の話。まあ、嫌っているというよりは無関心の方が近いのだろうが。
使者にとっては予想外だったようで、目を白黒させている。まったく、都合の良いことを考えていたようだ。
「な、なぜ……? 尊きお方が、役割を果たさないのですか……?」
「……無様。ただ人の力を当てにするだけの、くだらない存在」
「まあ、そうか。フィリスがいなければ何もできない時点で、程度は知れている」
「貴様! 人間ごときが、我らを侮るなど!」
じろりと俺の方をにらみながら、顔を赤くしている。いくらなんでも、簡単に怒りすぎだろう。使者としての適性すら無いと来た。
せめて、フィリスを落とすために俺と交渉するだけの態度でも見せてくれていればな。まあ、それでも結果は変わらなかっただろうが。
「……断定。あなた達は、レックスの足元にも及ばない。比べる気すらない」
「そこの人間が、あなた様を惑わせたのですな。なら、これで!」
使者は俺の方に手を向けて魔力を収束させていく。明らかに、攻撃するつもりのようだ。見た感じ、五属性相応の魔力。とはいえ、俺なら素の防御でどうにでもなる程度。
やはり、ミレアルは手加減しているのだろうか。邪神の眷属に苦しめられた時のことを考えれば、同じ程度のことはできても不思議ではないのだが。
そんな考察に入ろうとする前に、フィリスが動き出した。
「……既定。五曜剣」
「な、なぜ……」
魔力の刃にあっけなく切り裂かれ、使者は倒れていく。それを、フィリスは冷たく見下ろしていた。何の温度もこもっていない目に、少し見とれそうにすらなった。
「……単純。レックスの敵は、私の敵。この感情は、惑いではない」
「ありがとう、フィリス。とはいえ、困ったな。使者を殺したら、大変じゃないか?」
「……同意。おそらく、サジタリウス聖国の過激派は敵に回る」
分かっていて、動いたみたいだ。感情が抑えきれなかったのか、敵に回す覚悟を決めたのか。どちらにせよ、俺のやることは同じ。
どこまでも、フィリスと運命を共にしよう。それが、弟子としての役目というもの。
「とはいえ、帝国からも王国からも戦力は出せない。待つのも、厳しいだろう」
「……手段。私たちで、こっそりと首狩りするしかない」
なるほど。少数精鋭となると、妥当な手段かもしれない。俺たちふたりでサジタリウス聖国に侵入して、なるべく隠密行動をする。そして、敵を暗殺していく。
問題としては、どこに敵の本部があるか。まあ、フィリスは聞いているのかもしれない。知らないのなら厳しいが、提案されたことからしても、あたりはついているのだろう。
とはいえ、かなり厳しい手段ではある。転移も使えないし、派手に移動することもできない。そうなってくると、苦しい動きになるな。
「理屈は分かるが、他の手段はないのか? いや、フィリスが居れば勝てるだろうが……」
「……国土。大勢での潜入には向かない。足を取られて、動きが鈍るだけ」
森の中だと、陣地を組むのにも一苦労なのは分かる。そもそも、隊列を組んで進軍することすら難しいかもしれない。よく訓練された集団なら、話は別なのかもしれないが。
根本的な問題として、俺やフィリスが他の人達と足並みを揃えられるのかというものがある。となると、確かに良い手段とは言えないか。まあ、この状況で良い手段もなにもない気はする。
「まあ、確かにそうか。仮に戦力を集められたところで……」
「……結論。国と正面から戦っても、犠牲者は増える。なら、最低限だけを殺すべき」
それも大事なことだな。フィリス派と関係の無い敵だって、戦争になれば参加する。首刈り戦術を理想的に実現できれば、ごく少数を殺すだけで済むはずだ。
となると、できれば取りたい手段ではあるか。やはりフィリスは、俺のことをよく分かってくれている。本人の良心もあるのだろうが。
「なるほどな……。大掛かりな動きになればなるほど、敵も本腰を入れざるを得ないと」
「……肯定。私たちは、最大戦力。少人数の部隊なら、ほぼ最善」
「それはそうだ。フィリス以上の魔法使いなんて、そう居るものじゃない」
「……自負。私なら、レックスの足を引っ張ることはない」
胸を張っている。確かに、フィリスほどの存在なら頼りになる。俺としても、魔法使いとして最も信頼できる存在かもしれない。
ギリギリまで人数を増やすという手を取るにしろ、誰と組むかも問題になる。そうなると、当事者であるフィリスと俺が向かうのが理想に近いか。
「むしろ、俺が足を引っ張らないかが心配なくらいだよ」
「……謙遜。でも、嫌いじゃない。レックスらしくて、微笑ましい」
そう言って、頭をなでてくれる。優しい笑顔をしていて、少しだけ落ち着いた。とはいえ、少しは気になるところもあるが。
「子供扱いされている……。さて、そうなると潜入経路だが……」
「……提案。アリアから、話を通されている。一度、しっかりと対話するべき」
「なるほど。そうなったら、作戦会議だな。どんな戦術を取るべきか……」
「……味方。そうできるエルフにも、当たりをつけたい」
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