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17章 奪われたくないもの
595話 ミルラの先手
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レックス様は、サジタリウス聖国へと戦いに向かうことになりました。秘書である私には、直接戦いを支えることはできません。
そもそも、今回はレックス様とフィリス様だけで向かうということです。兵站という面でも協力は難しいというところ。
では、何もできないのか。そのような判断をするようなら、レックス様にはふさわしくありません。戦いそのもので支えられずとも、できることなどいくらでもあります。
とはいえ、戦いの最中に効果が出ることはほとんどないと言って良い。レックス様が勝つことを祈るしかありませんね。
ただし、勝った後に良い流れを作ることはできる。それが、今の私が果たすべき役割でしょう。
「さて、戦後に向けての動きを始めないといけませんね」
とはいえ、短期的にできることは少ない。どれほど長くとも、年はかからない。それどころか、週で終わっても不思議ではありません。
そうなってくると、大きな動きはできません。いえ、無論先を見据えて動くつもりではありますが。レックス様が勝った段階で効果が出ることを、まず優先しなければいけないのです。
サジタリウス聖国にレックス様が大きな影響を与えるのなら、今後も関係は深まるでしょう。その準備も、必要ではあります。
ただし、聖国ばかりを優先することもできません。帝国やブラック家を安定させるのも、私の仕事ですから。
「レックス様に少しでも楽をしていただけるように、全力を尽くさせていただきます」
とにかく、打てる手を有効な順に打つことです。それが、私のやるべきこと。サジタリウス聖国に与える影響とかかる費用や手間、期間を計算すること。
いくつかの案が、頭に浮かびます。その多くを、まずは切り捨てます。今の段階で効果を出せそうな案から順に、検討していきましょう。
「そうですね……。現段階で圧をかけておいて、後で緩めましょうか」
民は生活が苦しくなった段階で、国家に不満を抱く。即座に効果が出る物品となれば、食料でしょうね。レックス様が勝つまでに、民の生活を一度悪くする。それができるのならば、好手と言えるでしょう。検討する価値は、十分にありますね。
ただし、レックス様が勝ってから生活が悪くなるようなら本末転倒です。慎重に考えるべきことでもあります。
結果を出せたのならば、相応の効果を発揮するでしょう。失敗すれば、足を引っ張るでしょう。ただし、悩んでいる時間はありません。難しい判断になりますね。
「レックス様の影響を、分かりやすく示す。大事なことでございます」
レックス様が大きく動けば、民の生活が良くなる。そういう事実をもたらせば、他の国にまで影響が波及する可能性もあります。
今後を考えると、ぜひ成功させたい策ではありますね。ジャン様に、話を持っていく必要があります。
レックス様の転移さえ活かせるのなら、おそらくは不利益の可能性を消しながら利益の可能性を高めることができるでしょう。打っておいて損のない手にできる道は、見えますね。
今のところは、前向きに考えましょう。失敗しても不利益を消せるのであれば、十分な策になります。
「エルフとの関係については、どうしたものでしょうか」
サジタリウス聖国にレックス様の影響が出るのなら、交流は避けて通れません。そうなった場合、エルフと人間の関係が大事になります。というより、ブラック家を中心としたレックス様の派閥とエルフの関係でしょうか。
いずれにせよ、エルフとの関係において最大限の利益を出す必要があります。しっかりと、策を練るべき部分ですね。
「善良な市民だけに、魔道具を与える。そのような手も、ありますね」
もちろん、善良な市民の定義はこちらが決める形になりますが。レックス様にとって有用な市民を、より良い待遇で誘導する。逆に、レックス様の敵になる市民には悪い待遇を与える。
いっそのこと、反抗勢力は何をしても良い対象にするという手もありですね。仮に恨むとしても、自分たちに暴虐を働く同族になるでしょうから。悪くありません。
ひとまず、腹案として抱えておきましょう。打つべき時が来たら、打てば良い。それだけのことです。
「私たちにできる形で、最大限にレックス様を支えなくては」
どれほど民を踏みにじろうと、私としては知ったことではありません。ただ、レックス様の耳に届かない範囲に抑える必要はあります。民の苦しみを、痛みとして感じ取ってしまう方ですから。
とはいえ、必ずしも民を痛めつける必要もありません。残虐な行為で喜ぶような趣味を持っていても、仕方ありませんから。最も効率の良い手段として民を踏みにじるべきなのです。私が考えるべきは、レックス様の利益。それだけのことです。
サジタリウス聖国そのものを、どう活用するか。それも、しっかりと考えないといけませんね。
「森で採取できるものを、どう活用するかも必要でございますね」
それならば、民を痛めつける必要もないでしょう。無論、労働力そのものは必要ではありますが。森というのは、資源の宝庫ではあります。
ただし、正しく採取するための手順も見分けるだけの知識も必要になります。気軽に手を出せば、火傷するでしょうね。専門家と協力しなければなりません。アリアさんやフィリス様が良いツテを持っていれば、楽ができるのですが。
単純に有効な手となると、そう多くはないですね。とはいえ、ひとまずは検討していきましょう。
「林業に関しては、拡大させれば侵入しやすくなりますが……」
今後攻め込みやすくなったところで、あまり有効ではないでしょうか。人間の支配域を増やすことには、特に意味はありませんし。
エルフという種にも、相応の特徴がある。必要な資源として、狩り尽くすべきではありませんからね。
もちろん、もっと大事な理由もありますけれど。それが一番大事なことです。
「あまり大きな変化を誘導するのは、レックス様は好まないでしょうね」
急進的な改革は、血が流れるものです。そして、表向きにも争いが広がるでしょう。レックス様の耳にも届くでしょう。そうなってしまえば、配下の名折れ。
レックス様に喜んでいただける未来こそ、私の作るべきもの。でしたら、別の道も探る必要があります。
「単に木材として使う以外の端材を、どうにか運用できないでしょうか」
王国や帝国に輸入されているのは、木材として。皮や樹液などは、捨てられています。今すぐに運用が思いつくものではありませんが、考えるべきことでしょうね。
もちろん、ただの素人である私が有効な利用法を思いつくはずもありません。専門家と協力するのが、また前提となります。
「マリンさんたちとも相談する必要がありますが、魔道具にも運用できるかもしれません」
新しい資源が手に入るというのは、大事なことですからね。研究というのは、思いもよらぬものが役に立つ。それくらいは、私でも知っていますから。
魔力を通しやすい木でもあれば、それだけで魔道具に応用できるでしょう。マリンさんたちであれば、もっと有用な運用法が思いつくかもしれません。何もなくとも、失敗する価値はあります。
「本来捨てるものが売れるとなれば、私たちを優先して取引する機会も増えるでしょう」
そう。大口の取引先となることができれば、王国や帝国での木材の動きに大きな影響を与えられます。副次効果ではあるものの、軽んじるべきでもありません。
私たちは、二手三手先まで読んで、レックス様の未来を切り開かねばならないのですから。
「もし足元を見るようであれば、分かっていただくまでです」
レックス様本人でなくとも、武力を抱えているのがブラック家です。そして何より、政治的経済的に手を打つこともできます。
あらゆる方向から締め付ければ、いずれ息を吐き出すしかない。そういうものです。
「ひとまず、今のうちから動き出しましょう。そうしなければ、だんだん遅れていきますから」
今の段階から打てる手を、打てる限り。そうすることで、レックス様の理想に近づくのです。
「エルフを労働力として使う未来も、実現できるかもしれませんね」
今後とも、レックス様のために。私のすべては、そのためにあるのです。
そもそも、今回はレックス様とフィリス様だけで向かうということです。兵站という面でも協力は難しいというところ。
では、何もできないのか。そのような判断をするようなら、レックス様にはふさわしくありません。戦いそのもので支えられずとも、できることなどいくらでもあります。
とはいえ、戦いの最中に効果が出ることはほとんどないと言って良い。レックス様が勝つことを祈るしかありませんね。
ただし、勝った後に良い流れを作ることはできる。それが、今の私が果たすべき役割でしょう。
「さて、戦後に向けての動きを始めないといけませんね」
とはいえ、短期的にできることは少ない。どれほど長くとも、年はかからない。それどころか、週で終わっても不思議ではありません。
そうなってくると、大きな動きはできません。いえ、無論先を見据えて動くつもりではありますが。レックス様が勝った段階で効果が出ることを、まず優先しなければいけないのです。
サジタリウス聖国にレックス様が大きな影響を与えるのなら、今後も関係は深まるでしょう。その準備も、必要ではあります。
ただし、聖国ばかりを優先することもできません。帝国やブラック家を安定させるのも、私の仕事ですから。
「レックス様に少しでも楽をしていただけるように、全力を尽くさせていただきます」
とにかく、打てる手を有効な順に打つことです。それが、私のやるべきこと。サジタリウス聖国に与える影響とかかる費用や手間、期間を計算すること。
いくつかの案が、頭に浮かびます。その多くを、まずは切り捨てます。今の段階で効果を出せそうな案から順に、検討していきましょう。
「そうですね……。現段階で圧をかけておいて、後で緩めましょうか」
民は生活が苦しくなった段階で、国家に不満を抱く。即座に効果が出る物品となれば、食料でしょうね。レックス様が勝つまでに、民の生活を一度悪くする。それができるのならば、好手と言えるでしょう。検討する価値は、十分にありますね。
ただし、レックス様が勝ってから生活が悪くなるようなら本末転倒です。慎重に考えるべきことでもあります。
結果を出せたのならば、相応の効果を発揮するでしょう。失敗すれば、足を引っ張るでしょう。ただし、悩んでいる時間はありません。難しい判断になりますね。
「レックス様の影響を、分かりやすく示す。大事なことでございます」
レックス様が大きく動けば、民の生活が良くなる。そういう事実をもたらせば、他の国にまで影響が波及する可能性もあります。
今後を考えると、ぜひ成功させたい策ではありますね。ジャン様に、話を持っていく必要があります。
レックス様の転移さえ活かせるのなら、おそらくは不利益の可能性を消しながら利益の可能性を高めることができるでしょう。打っておいて損のない手にできる道は、見えますね。
今のところは、前向きに考えましょう。失敗しても不利益を消せるのであれば、十分な策になります。
「エルフとの関係については、どうしたものでしょうか」
サジタリウス聖国にレックス様の影響が出るのなら、交流は避けて通れません。そうなった場合、エルフと人間の関係が大事になります。というより、ブラック家を中心としたレックス様の派閥とエルフの関係でしょうか。
いずれにせよ、エルフとの関係において最大限の利益を出す必要があります。しっかりと、策を練るべき部分ですね。
「善良な市民だけに、魔道具を与える。そのような手も、ありますね」
もちろん、善良な市民の定義はこちらが決める形になりますが。レックス様にとって有用な市民を、より良い待遇で誘導する。逆に、レックス様の敵になる市民には悪い待遇を与える。
いっそのこと、反抗勢力は何をしても良い対象にするという手もありですね。仮に恨むとしても、自分たちに暴虐を働く同族になるでしょうから。悪くありません。
ひとまず、腹案として抱えておきましょう。打つべき時が来たら、打てば良い。それだけのことです。
「私たちにできる形で、最大限にレックス様を支えなくては」
どれほど民を踏みにじろうと、私としては知ったことではありません。ただ、レックス様の耳に届かない範囲に抑える必要はあります。民の苦しみを、痛みとして感じ取ってしまう方ですから。
とはいえ、必ずしも民を痛めつける必要もありません。残虐な行為で喜ぶような趣味を持っていても、仕方ありませんから。最も効率の良い手段として民を踏みにじるべきなのです。私が考えるべきは、レックス様の利益。それだけのことです。
サジタリウス聖国そのものを、どう活用するか。それも、しっかりと考えないといけませんね。
「森で採取できるものを、どう活用するかも必要でございますね」
それならば、民を痛めつける必要もないでしょう。無論、労働力そのものは必要ではありますが。森というのは、資源の宝庫ではあります。
ただし、正しく採取するための手順も見分けるだけの知識も必要になります。気軽に手を出せば、火傷するでしょうね。専門家と協力しなければなりません。アリアさんやフィリス様が良いツテを持っていれば、楽ができるのですが。
単純に有効な手となると、そう多くはないですね。とはいえ、ひとまずは検討していきましょう。
「林業に関しては、拡大させれば侵入しやすくなりますが……」
今後攻め込みやすくなったところで、あまり有効ではないでしょうか。人間の支配域を増やすことには、特に意味はありませんし。
エルフという種にも、相応の特徴がある。必要な資源として、狩り尽くすべきではありませんからね。
もちろん、もっと大事な理由もありますけれど。それが一番大事なことです。
「あまり大きな変化を誘導するのは、レックス様は好まないでしょうね」
急進的な改革は、血が流れるものです。そして、表向きにも争いが広がるでしょう。レックス様の耳にも届くでしょう。そうなってしまえば、配下の名折れ。
レックス様に喜んでいただける未来こそ、私の作るべきもの。でしたら、別の道も探る必要があります。
「単に木材として使う以外の端材を、どうにか運用できないでしょうか」
王国や帝国に輸入されているのは、木材として。皮や樹液などは、捨てられています。今すぐに運用が思いつくものではありませんが、考えるべきことでしょうね。
もちろん、ただの素人である私が有効な利用法を思いつくはずもありません。専門家と協力するのが、また前提となります。
「マリンさんたちとも相談する必要がありますが、魔道具にも運用できるかもしれません」
新しい資源が手に入るというのは、大事なことですからね。研究というのは、思いもよらぬものが役に立つ。それくらいは、私でも知っていますから。
魔力を通しやすい木でもあれば、それだけで魔道具に応用できるでしょう。マリンさんたちであれば、もっと有用な運用法が思いつくかもしれません。何もなくとも、失敗する価値はあります。
「本来捨てるものが売れるとなれば、私たちを優先して取引する機会も増えるでしょう」
そう。大口の取引先となることができれば、王国や帝国での木材の動きに大きな影響を与えられます。副次効果ではあるものの、軽んじるべきでもありません。
私たちは、二手三手先まで読んで、レックス様の未来を切り開かねばならないのですから。
「もし足元を見るようであれば、分かっていただくまでです」
レックス様本人でなくとも、武力を抱えているのがブラック家です。そして何より、政治的経済的に手を打つこともできます。
あらゆる方向から締め付ければ、いずれ息を吐き出すしかない。そういうものです。
「ひとまず、今のうちから動き出しましょう。そうしなければ、だんだん遅れていきますから」
今の段階から打てる手を、打てる限り。そうすることで、レックス様の理想に近づくのです。
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