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17章 奪われたくないもの
606話 手頃な要求
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ニッカと出会って、ひとまずはエルフとの窓口になってくれるとのこと。そのために、エルフの中で俺に対してどうするかの話をまとめてくるのだとか。
ということで、屋敷に案内されてその一室で待っていた。森の恵みを豪華に調理したみたいな、肉も野菜もふんだんに使われた料理を食べている。
こう言っては何だが、森でサバイバル生活していた時とは比べ物にならない料理だ。もちろん、フィリスの手料理は最高だったが。また機会があれば食べたいと思う程度には。
それでも、家庭料理と高級レストランくらいの差は感じるのが正直な気持ちでもある。
フィリスも満足そうに食べているので、似たような感覚は覚えているのかもしれない。あまり罪悪感を覚えずに済むのは、助かる。
とりあえず、久しぶりに休息できた。活力を取り戻すためにも、良い時間だったと思う。
少しウトウトしかかった頃に、足音が響いてくる。扉が開いて、ニッカが現れた。
「レックスさん、お待たせしました~。一通り、意見をまとめておきましたよ~」
他の人は、誰もいない。つまり、俺と直接会う段階ではないということだろう。極端な可能性としては、ニッカが誰にも何も伝えていないというものもある。ただ俺たちだけの間で話しているだけで、エルフの意向とは何の関係もないとか。
まあ、そんな相手ならアリアが紹介しようとするはずもない。腹に一物抱えているのは分かるが、そこは信頼しよう。
「まだ、直接話すには早いか。それもそうか。何もかも、異質だものな」
「……肯定。レックスの存在は、あらゆる意味で劇薬」
「こちらの都合で、申し訳ありません~。私の方で、償わせていただければと~」
そう言って、ニッカは俺の手を取ってくる。息すら届く距離まで近づかれて、柔らかいところが色々と当たっている。
償うという言葉が、変な意味に聞こえてきそうだ。長老というあたり、本気で天然とも考えづらい。誘惑の気持ちも、あってもおかしくはない。
どちらであったとしても、とにかく適切な距離を取るのが大事だ。会ったばかりの相手に、深い関係も何も無いのだから。
「そ、そんなに近づかないでくれ……」
「……反復。前も同じ反応をしていた」
「お嫌でしたか? それは、すみません~」
悲しそうに、眉を傾けている。本当に罪悪感を抱えている様子で、こちらが悪い気持ちになってきそうだ。演技だとすれば、とんでもない。
とはいえ、嫌と言い切るのも問題だ。ニッカは友好的に接してくれている。それを遠ざけていても、他のエルフとだって良い関係を築けないはず。
今のところは、受け入れておくのが得策かもしれない。いや、あんまり恥ずかしいことはされたくないが。
「嫌というか、その……。ニッカが気にしていないのなら、構わないが……」
「もちろん、問題ありません~。では、最初に結論から言いますね~」
まだ手を握ったまま、にこやかな笑顔で告げてくる。話が早いのは、ありがたい。厄介な交渉をできるほど、俺は成熟していないからな。率直に本音を示してくれるのなら、むしろ助かる。
言葉の裏を読み続けるというのは、どうしても厳しいからな。避けたい。
「ああ、よろしく頼む」
「レックスさんが、サジタリウス聖国のエルフに明確な利益を示してほしい。そういうことですね~」
「俺がどうするかは問題ではなく、どんな結果を出すかが大事だと?」
「もっと言えば、制御が効く存在であってほしいということです~」
「……理解。レックスに首輪をはめたいということ」
かなりハッキリと言われたが、それくらいの方が気が楽だ。表向き友好そうな顔をしておいて罠を仕掛けてこられても、困る。
幸い、ニッカは真っ当に要求を伝えてくるタイプ。少し誘惑なんかをされている気配があるとはいえ、とても危険だとは感じない。
「私としては、レックスさんを苦しめたくありません。ですから、しっかり話をしていければと~」
「ひとまず、受けられる要望は受けたいとは思う。どうしても無理なら無理と言うが」
「はい~。お互いに、意見のすり合わせをしていければと思います~」
「……質問。レックスが従わない場合、どのような行動に出る?」
「本当に力ずくで出られたら、私たちに勝ち目はありません。できる限り言葉を尽くすだけです」
まっすぐに俺の目を見つめて語っている。その気持ちは、本音なのだろう。さっきまでとは、言葉の調子も違うからな。
とはいえ、俺だって力ずくで従えたいとは思わない。暴力は、あくまで最後の手段であるべきだ。どうしても敵対してくる相手に対してだけ使うべきもの。
だから、ニッカとはしっかりと交渉していきたい。そうすれば、俺の望みにも近づくはずだ。
「それは助かる。俺としても、戦わなくて済むのなら戦いたくないからな」
「レックスさんとは、気が合いそうですね~。私も、戦いは嫌いです~」
「……確認。ニッカは、王を倒すことはできた?」
「あれだけの軍勢相手に戦うのは、自殺行為というものです~」
とは言うものの、ニッカの魔力は五属性相当はあるように見える。ミレアルの加護を受けていないでこれなら、相当な才能だ。
フィリスには勝てないのは分かるが、王ひとりくらいなら倒せてもおかしくないかもな。まあ、王に敵対するのは無理か。ニッカが言うように、数が多すぎる。いくら強いとはいえ、常識的なレベル。ミレアルの加護を受けた存在多数を相手取れるほどじゃない。
なんというか、穏やかな強者なのかもしれないな。滅多なことでは力を振るわないたぐいの。
「それは確かに。俺たちがおかしいだけで、普通は勝てないか」
「……納得。レックスに危害を加える気がないのなら、好きに交渉していい」
「ありがとうございます~。フィリスさんの許可も得ましたし、まずはお願いを聞いてもらえますか~?」
「ひとまず、聞かせてくれ。良いかどうかは、その後でしか言えない」
「私たちの味方をすると、皆さんの前で宣言してほしいんです~」
まあ、大事なことだな。少なくとも敵意はないと示すためには、ちょうど良いかもしれない。いま残っているエルフは穏健派だろうし、その味方ということなら異論はない。
俺の存在を前提に周囲に暴虐を振るうようなら、考えなくてはならないが。そうなるようなら、本当に力ずくになるかもしれない。ニッカの態度からして、ないな。
「それくらいなら、構わない。エルフたちということで良いのか?」
「私が集会を開きますので、そこで宣言していただければと~」
「分かった。エルフたちをちゃんと守れということか?」
「はい~。レックスさんが、いざというときは守ってくださる。そう安心させたいんです~」
ニッカは真剣な顔をしている。確かに、大事なことだ。王の圧政から逃げていた人たちなのだから、安心したいだろう。
もしかしたら、まだ過激派の生き残りもいるかもしれない。ミレアルの加護があるかは、怪しいとはいえ。これまでの流れからするに、段取りを踏むタイプに思える。
なにせ、エルフを転移させられるというのなら、俺たちがサジタリウス聖国に入る前にも襲撃させられたのだから。そのあたりが、余計にゲームというか試練らしさを感じさせてくる。
帝国の件もあるし、今回も落ち着くまでは襲撃はないと判断する。無論、気は抜かないが。なんとなく、そこは守る相手のような気がしている。
となれば、やはり受けた方が良い。もしかしたら、いざという時にエルフが後方支援してくれるかもしれないし。
「フィリス、お前も構わないか?」
「……了解。私としては、文句はない」
フィリスも頷いてくれた。ニッカは相変わらずニコニコしていた。
とりあえず、次は宣言ということだな。さて、どんなことを言えば良いのやら。
ということで、屋敷に案内されてその一室で待っていた。森の恵みを豪華に調理したみたいな、肉も野菜もふんだんに使われた料理を食べている。
こう言っては何だが、森でサバイバル生活していた時とは比べ物にならない料理だ。もちろん、フィリスの手料理は最高だったが。また機会があれば食べたいと思う程度には。
それでも、家庭料理と高級レストランくらいの差は感じるのが正直な気持ちでもある。
フィリスも満足そうに食べているので、似たような感覚は覚えているのかもしれない。あまり罪悪感を覚えずに済むのは、助かる。
とりあえず、久しぶりに休息できた。活力を取り戻すためにも、良い時間だったと思う。
少しウトウトしかかった頃に、足音が響いてくる。扉が開いて、ニッカが現れた。
「レックスさん、お待たせしました~。一通り、意見をまとめておきましたよ~」
他の人は、誰もいない。つまり、俺と直接会う段階ではないということだろう。極端な可能性としては、ニッカが誰にも何も伝えていないというものもある。ただ俺たちだけの間で話しているだけで、エルフの意向とは何の関係もないとか。
まあ、そんな相手ならアリアが紹介しようとするはずもない。腹に一物抱えているのは分かるが、そこは信頼しよう。
「まだ、直接話すには早いか。それもそうか。何もかも、異質だものな」
「……肯定。レックスの存在は、あらゆる意味で劇薬」
「こちらの都合で、申し訳ありません~。私の方で、償わせていただければと~」
そう言って、ニッカは俺の手を取ってくる。息すら届く距離まで近づかれて、柔らかいところが色々と当たっている。
償うという言葉が、変な意味に聞こえてきそうだ。長老というあたり、本気で天然とも考えづらい。誘惑の気持ちも、あってもおかしくはない。
どちらであったとしても、とにかく適切な距離を取るのが大事だ。会ったばかりの相手に、深い関係も何も無いのだから。
「そ、そんなに近づかないでくれ……」
「……反復。前も同じ反応をしていた」
「お嫌でしたか? それは、すみません~」
悲しそうに、眉を傾けている。本当に罪悪感を抱えている様子で、こちらが悪い気持ちになってきそうだ。演技だとすれば、とんでもない。
とはいえ、嫌と言い切るのも問題だ。ニッカは友好的に接してくれている。それを遠ざけていても、他のエルフとだって良い関係を築けないはず。
今のところは、受け入れておくのが得策かもしれない。いや、あんまり恥ずかしいことはされたくないが。
「嫌というか、その……。ニッカが気にしていないのなら、構わないが……」
「もちろん、問題ありません~。では、最初に結論から言いますね~」
まだ手を握ったまま、にこやかな笑顔で告げてくる。話が早いのは、ありがたい。厄介な交渉をできるほど、俺は成熟していないからな。率直に本音を示してくれるのなら、むしろ助かる。
言葉の裏を読み続けるというのは、どうしても厳しいからな。避けたい。
「ああ、よろしく頼む」
「レックスさんが、サジタリウス聖国のエルフに明確な利益を示してほしい。そういうことですね~」
「俺がどうするかは問題ではなく、どんな結果を出すかが大事だと?」
「もっと言えば、制御が効く存在であってほしいということです~」
「……理解。レックスに首輪をはめたいということ」
かなりハッキリと言われたが、それくらいの方が気が楽だ。表向き友好そうな顔をしておいて罠を仕掛けてこられても、困る。
幸い、ニッカは真っ当に要求を伝えてくるタイプ。少し誘惑なんかをされている気配があるとはいえ、とても危険だとは感じない。
「私としては、レックスさんを苦しめたくありません。ですから、しっかり話をしていければと~」
「ひとまず、受けられる要望は受けたいとは思う。どうしても無理なら無理と言うが」
「はい~。お互いに、意見のすり合わせをしていければと思います~」
「……質問。レックスが従わない場合、どのような行動に出る?」
「本当に力ずくで出られたら、私たちに勝ち目はありません。できる限り言葉を尽くすだけです」
まっすぐに俺の目を見つめて語っている。その気持ちは、本音なのだろう。さっきまでとは、言葉の調子も違うからな。
とはいえ、俺だって力ずくで従えたいとは思わない。暴力は、あくまで最後の手段であるべきだ。どうしても敵対してくる相手に対してだけ使うべきもの。
だから、ニッカとはしっかりと交渉していきたい。そうすれば、俺の望みにも近づくはずだ。
「それは助かる。俺としても、戦わなくて済むのなら戦いたくないからな」
「レックスさんとは、気が合いそうですね~。私も、戦いは嫌いです~」
「……確認。ニッカは、王を倒すことはできた?」
「あれだけの軍勢相手に戦うのは、自殺行為というものです~」
とは言うものの、ニッカの魔力は五属性相当はあるように見える。ミレアルの加護を受けていないでこれなら、相当な才能だ。
フィリスには勝てないのは分かるが、王ひとりくらいなら倒せてもおかしくないかもな。まあ、王に敵対するのは無理か。ニッカが言うように、数が多すぎる。いくら強いとはいえ、常識的なレベル。ミレアルの加護を受けた存在多数を相手取れるほどじゃない。
なんというか、穏やかな強者なのかもしれないな。滅多なことでは力を振るわないたぐいの。
「それは確かに。俺たちがおかしいだけで、普通は勝てないか」
「……納得。レックスに危害を加える気がないのなら、好きに交渉していい」
「ありがとうございます~。フィリスさんの許可も得ましたし、まずはお願いを聞いてもらえますか~?」
「ひとまず、聞かせてくれ。良いかどうかは、その後でしか言えない」
「私たちの味方をすると、皆さんの前で宣言してほしいんです~」
まあ、大事なことだな。少なくとも敵意はないと示すためには、ちょうど良いかもしれない。いま残っているエルフは穏健派だろうし、その味方ということなら異論はない。
俺の存在を前提に周囲に暴虐を振るうようなら、考えなくてはならないが。そうなるようなら、本当に力ずくになるかもしれない。ニッカの態度からして、ないな。
「それくらいなら、構わない。エルフたちということで良いのか?」
「私が集会を開きますので、そこで宣言していただければと~」
「分かった。エルフたちをちゃんと守れということか?」
「はい~。レックスさんが、いざというときは守ってくださる。そう安心させたいんです~」
ニッカは真剣な顔をしている。確かに、大事なことだ。王の圧政から逃げていた人たちなのだから、安心したいだろう。
もしかしたら、まだ過激派の生き残りもいるかもしれない。ミレアルの加護があるかは、怪しいとはいえ。これまでの流れからするに、段取りを踏むタイプに思える。
なにせ、エルフを転移させられるというのなら、俺たちがサジタリウス聖国に入る前にも襲撃させられたのだから。そのあたりが、余計にゲームというか試練らしさを感じさせてくる。
帝国の件もあるし、今回も落ち着くまでは襲撃はないと判断する。無論、気は抜かないが。なんとなく、そこは守る相手のような気がしている。
となれば、やはり受けた方が良い。もしかしたら、いざという時にエルフが後方支援してくれるかもしれないし。
「フィリス、お前も構わないか?」
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