物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん

文字の大きさ
31 / 622
1章 レックスの道

31話 侵食する悪意

しおりを挟む
 カミラが襲われた事件があって、俺は警戒を高めていた。黒幕の目的は分からない。それでも、俺の親しい人が傷つかないようにしたいところだ。

 とはいえ、俺にできることは、周囲に俺が危険を察知するための道具を贈ったところで終わっていた。犯人が分からないと、どうしても後手に回ってしまう部分がある。なので、即座に対応できるように準備する形にした。

 そんな時間を過ごしていたのだが、また状況が進むことになる。きっかけは、メイド達が部屋にやってきたこと。

「レックス様、フェリシア様がいらっしゃったとのことです」
「またか? つい最近やって来たばかりじゃないか」

 帰ってすぐにとんぼ返りしたくらいじゃないか? また何かあったのだろうか。そう考えるが、まずは会うところからだよな。

「ご、ご主人さまとなら、わたしは、何度でも会いたいですっ」
「俺は最高なんだから、当然だよな」

 自分で言っておいて何だが、恥ずかしいセリフ過ぎる。でも、自信満々なのがレックスなんだよな。正直、キャラを演じるのはしんどい部分もある。だが、少なくとも今はやめられない。悲しいことだがな。

 できれば、アリアやウェスにも本音を伝えたい。俺にとって、大切な相手なのだと。だが、ブラック家でメイドに好意を示すのは、相当危険に思えるからな。今は無理だ。

「今回も、ウェスさんに衣装を整えてもらいましょう」
「が、頑張りますねっ、ご主人さま」

 ウェスの成長が嬉しくなるが、表に出せない。できれば、よくやったと言ってやりたい。ありがとうと言いたい。ずっと仕えてくれと伝えたい。いつか、本音が言えるように。そう祈るばかりだ。

 それから着替えを終えて、フェリシアを迎えに行く。なにか嫌な予感がするが、フェリシアと会える事実は嬉しかった。基本的には、もっと親しくなりたい相手だからな。困らされることも多いが。

「よく来たな、フェリシア。いったい何の用だ?」
「つれませんわね。久々の再会ですのに」

 そんな事を言うが、久々なんて大げさを通り越してウソでしかない。まあ、毎日会えるのなら、そっちの方が嬉しいが。

「からかうな。この前に会ったばかりだろう」
「それでも、すぐやってくるだけの用ですわよ」

 フェリシアにも問題があったのだろうか。そんな心配をしてしまう。もしケガでもしていたら。俺の力で治せるだろうか。

「……何かあったのか?」
「そう心配なさらず。軽く傭兵に襲われただけのことですわ」

 心臓が止まったかのように錯覚した。カミラに続いて、フェリシアまでも。怒りがふつふつと湧き上がってくるが、八つ当たりする相手も居ない。まさか、フェリシアに怒りを向ける訳にはいかないのだから。

「なっ! ……いや、今ここに居るということは、無事だったんだな」
「当然ですわよ。せっかくですから、わたくし達で討伐に向かいませんこと?」

 ずいぶんと気楽なものだ。正直、安心できたが。少なくとも、トラウマになったりはしていない。それが分かっただけでも。

 俺と一緒に討伐に向かうのなら、ケガをさせずに済むだろうな。闇の衣グラトニーウェアで守ってしまえば、フェリシアは安全なはずだ。なら、ひとりで討伐に向かわれるよりは都合が良い。ここは、受けておくべきだろう。

「つまり、まだ残党が居るんだな。分かった。ところで、どんな敵かは分かっているのか?」
「強いて言うならば、鷹の模様をった衣装を着ていましたわね」

 鷹の模様というのは、『デスティニーブラッド』では印象的な模様だ。主人公であるジュリオに協力したり、敵対したり。物語にこまめに関わってきた集団である。

 特に覚えているのは、帝国の皇帝を襲撃する事件だよな。力こそ全てのスコルピオ帝国で、次代の皇帝になるためにとある人間が依頼したもの。結局、主人公が撃退してしまうのだが。それが、次の事件へとつながるんだよな。

「ということは、フリュー傭兵団か」
「ご存じですの?」

 原作では、何度も出てきたからな。名前は忘れられなかった。首領がブラッドと名乗っていて、本名は分からない。報酬次第で何でもやる、良くも悪くも傭兵らしい集団だった。

「それなりに、名のしれた傭兵団らしいな」
「ではレックスさん、拠点を調べて討伐に向かいましょう。そのついでに、依頼人を探りましょう」
「じゃあ、いったん調査だな。とりあえず、拠点が分からないことには話が進まないからな」
「そうですわね。じゃあ、しばらくここに滞在しますわ。よろしくお願いしますわね」

 フェリシアが去っていき、俺はひとりで部屋に戻った。

「フリュー傭兵団を倒してしまえば、原作での事件が無くなってしまう」

 それが、俺にとっての大きな悩みだった。俺の大きなアドバンテージは、原作について知っていること。その知識を、無価値なものにしかねないんだ。フリュー傭兵団は、何度も原作に関わってきたからな。

「いや、それでも、フェリシアの危険を放置する訳にはいかない。原作崩壊については、諦めよう」

 原作の流れを保つためにフェリシアを見捨てるなんて、あり得ない。それに、フェリシアが死んでしまえば、どうせ原作は崩壊するんだ。その考えもあって、結論はすぐに決まった。

 それから次の日、フェリシアが俺の元へとやってきていた。何かあるのだろうか。まあ、ただの雑談でも楽しいけどな。

「結局、本拠地は分かったのか?」
「ええ。ですから、ふたりで討伐に向かいましょう。逢引ですわね」

 ということで、俺たちでフリュー傭兵団を倒しに行くことになった。何が何でも、フェリシアは守らないとな。

「物騒な逢引もあったものだな……。闇の衣グラトニーウェア。とりあえず、これで安全だろう」
「わたくしにも、防御魔法をかけるのですか。信頼なりませんか? なんて、冗談ですわ。ありがとうございます」

 そのまま、情報のあった拠点へと向かう。ボロボロな建物で、見張りがいる。そこで、そのまま突っ込んでいく。攻撃されても、闇の衣グラトニーウェアがある限りは大丈夫だろう。

 まっすぐ向かったので、すぐに敵に見つかってしまう。だが、武器を構えたりはされていない。

「なんだ、ガキふたりか? 迷い込んだのなら、帰りはあっちだぜ」
「あなた達の死神が、やってきましたわよ。獄炎インフェルノフレイム!」

 フェリシアの炎で、敵は灰になっていく。現実感のない光景が、人が死んだのだという実感を薄めてくれた。

「やべえ、こいつら、ただのガキじゃねえ! お頭を呼べ!」

 そう言って何人かが逃げ出していき、赤い髪の男が現れた。ひげを蓄えており、中年といった感じだ。ブラッドと名乗る、傭兵団のリーダー。原作でも、それなりの重要人物。だが、もう死ぬだろう相手だ。フェリシアが殺さなくとも、捕らえられたら、ブラック家かヴァイオレット家が殺すだろう。

 つまり、もう原作が崩壊することは確定してしまった。悲しいが、仕方ない。

「お前たちが、襲撃者か。ガキとはいえ、容赦はしない」
「わたくしを襲撃しておいて、よくもぬけぬけと」
「お前、フェリシア・ルヴィン・ヴァイオレットか!」

 そのまま、ブラッドは剣を取って攻撃してくる。魔法も放ってくる。だが、闇の衣グラトニーウェアの守りは抜くことができない。後はどうとでも料理できた。

 という訳で、剣をへし折って、ついでに両手足も折っていく。これで逃げ出せないから、尋問も簡単だろう。

「さて、これで終わりだな。誰からフェリシア襲撃の依頼を受けた。答えてもらおうか」
「レックス・ダリア・ブラックだよ」
「俺が?」

 心当たりがない。つまり、どういうことだろうか。少し困惑してしまった。

「当然、偽物ですわ。誰かが、レックスさんに罪を着せようとしましたのね。では、さようなら」

 そのまま、俺が止める間もなく、フェリシアはブラッドを燃やし尽くしていく。残ったのは、灰だけだった。

 これで、完全に原作知識があてにならなくなった。だが、問題はそっちじゃない。

 カミラを襲撃した犯人、フェリシアの攻撃を依頼した黒幕。どちらも、俺を狙っているのだろう。俺をおとしめるために、彼女達を危険にさらした相手。なんとしても、許しはしない。改めて、決意を固めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...